ベルク 抒情組曲 ブーレーズ指揮
今日25日の東京タワー。
週の中日だというのに、ダイヤモンドヴェール。
事務所から先っちょが見えていて仕事帰りに歩いて行ってまいりました。
「女性に対する暴力廃絶国際日」なのだそうです。
そのイメージカラーが、パープルということで、紫の東京タワーは初めて見たわけ。
女性もそうだけど、男性に対する暴力は・・・?
我が家では、日々恐々としているオヤジひとりいます。
R・シュトラウスモードから、耳を切り替えなくてはと、本日はベルク(1885~1935)。
1926年に作曲された、弦楽四重奏曲である「抒情組曲」は、ベルク初の12音技法によるものである。
6つの楽章から、2、3、4の楽章を弦楽5部の編成に組みなおしたのが、この「抒情組曲」である。
その名に惹かれて、抒情だから、さぞかし美しく繊細なのでは、と思って聴くと、これがなかなかにシャープな曲で驚かれるかもしれない。
1楽章と3楽章が無調。2楽章が12音技法によっている。
ベルクの作品は、どれも緻密な構成で出来上がっていて、この曲の1年まえの「ヴォッツエック」は、シンメトリーな構図がさらに組曲として細分化された構造となっていて、知らず知らずに、聴き手は蜘蛛の巣に絡めとられてしまうかの感覚を受けることになる。
この「抒情組曲」も、真ん中の楽章が、さらに3つの部分になっていて、急速な12音のパッセージの間に、「トリオ・エスタティコ」=「恍惚のトリオ」という無調の響きが挟まれていて、ある意味、楔のような存在になっているという。
不安を掻き立てる早いパッセージに支配されたこの楽章の真中に、情熱を込めたようなトリオ部分を聴くと、ベルクが明らかに、ワーグナーやマーラーの系譜にある人であると確認できる。
この曲は、アルマ・マーラーに紹介された人妻ハンナ・フックスに捧げられていて、ハンナを表す数やベルク自身を表す数を、音や小節数、テンポなどに落とし込んでいて、遂げられぬハンナへの想いが、髄処ににじみ出ている。
ハンナとその子供たちを表した第1楽章は、親しみやすく、しかしどこか寂しい雰囲気。
第3楽章は、情熱的なアダージョと名がつけられ、ツェムリンスキーの抒情交響曲からの引用がなされている、緊張感に満ちながらも、なかなかに美しい曲。
この曲も、ベルクの他の作品と同じく、最初はとっつきが悪いが、何度も何度も聴いていると、耳になじみ、そしてそれが甘味な美しさへと変わってゆく。
原作は、「潜在的オペラ」とも言われたこの作品。
これも原作では、トリスタンの引用もある。
いずれまた、オリジナル四重奏曲を取り上げましょう。
オペラは死んだ、の、ブーレーズは、なんだかんだで、オペラの指揮が上手。
ニューヨーク・フィル時代に、録音したこちらのCDは、切れ味もいいが、ブーレーズらしからぬ、リリシズムもある。
ニューヨーク時代のブーレーズは、バーンスタインとのお気楽NYPOを鋭利なオケに変えてしまった。
いまの丸くなってしまった大家ブーレーズより、当時の方が適度にキツくて好きだな。
もう一丁
暴力反対っと
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コメント
こんばんは。私は祖父の葬儀で東京を離れてました。
ブーレーズの「抒情組曲」は同じニューヨーク・フィルハーモニックによるシェーンベルクの「浄夜」ズーカーマン、ロンドン響によるベルクの「ヴァイオリン協奏曲」と異なったタイプの作品と組み合わさったCDが手元にあります。
現代音楽のスペシャリストであるブーレーズのサロン風にジャンピングが加わっています。なお、カラヤン、ベルリン・フィルのもあり、こちらは標題通り、しっとりした個性派シンフォニック・サウンド。勿論、カラヤンも「浄夜」を取り上げてます。
弦楽合奏、弦楽四重奏といずれにしても取り上げる演奏家は希なようですね。
投稿: eyes_1975 | 2009年11月26日 (木) 20時19分
今晩は。ブーレーズ指揮の叙情組曲は、私も持っています。私のは国内盤でルル組曲と演奏会用アリア「ワイン」が入っています。カラヤン&ベルリンフィルやギーレンが指揮したのも持っていますが、個人的にはブーレーズのものが一番好きです。無調だの十二音だのは良くわかりませんが、ベルクの無調や十二音を使った曲はシェーンベルクやウェーベルンよりも分かりやすいから好きです。確かにワーグナー・マーラー的な響きがしますよね。カラヤンのベルクは嫌いではありませんが浪漫的に過ぎるような気がします。カラヤンは実演でヴォツェックやルルやモーゼとアロンを取り上げたことがあるのでしょうか?柴田先生は、カラヤンにルルやヴォツェックやモーゼとアロンを録音して欲しかったようですね。新ウィーン楽派管弦楽曲集国内盤の解説でそういう主旨のことを書いておりました。
私は楽譜はほとんど読めませんし、得意な楽器があるわけでも在りませんが、音楽を聴くのは好きです。
投稿: 越後のオックス | 2009年11月26日 (木) 20時38分
eyes1975さま、おはようございます。
このたびはたいへんでございました。
抒情組曲は、美しい曲ですね。
ベルクは女性に対する思いをいろいろ音楽に託してますが、この曲が随一です。
ブーレーズはこのあたりは、本当にうまいものですね。
カラヤンの新ウィーン楽派は、4枚セットのレコードで出たとき、大いに驚いたものです。
そして、この曲では、あとアバドとウィーンフィルが素晴らしい演奏を残しておりますよ!
投稿: yokochan | 2009年11月27日 (金) 07時53分
越後のオックスさん、おはようございます。
私は、このブーレーズとアバドが好きです。
カラヤンは、ペレアスと浄夜の1枚しか持ってないので、いずれ聴いてみたいと思ってます。
最近は、カラヤンを大いに見直しておりますので。
あと、ガッティが素晴らしいとの情報もありますので、そちらも大いに気になるところです。
いやはや、困ったものです。
カラヤンは、新ウィーン楽派のオペラは手掛けてないはずです。不思議なことです。
ベームがドイツオペラの系譜の中で取り上げたのと、好対照です。
投稿: yokochan | 2009年11月27日 (金) 08時03分