ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番 五嶋みどり&アバド
車であのトヨタのおひざ元を走っているときに、突然現れた立派なお城。
あれっ、地図にもナビにも出てないぞ?
誰の居城ぢゃあ~?
実はこれ、「かに本家 豊田城店」だそうな。
まじですごい。
天守閣でカニを食うのか
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。
これは大曲であり、4楽章の連続しない完結した構成は、まるで交響曲の様相を呈している。
1947年~48年の作品で、交響曲でいえば9番と10番の間。
スターリン政権下の文化委員ジダーノフの行った時の知識人への抑圧キャンペーンとちょうど重なる時期で、ショスタコーヴィチはダヴィッド・オイストラフを想定した書いたこの協奏曲を引っ込めてしまう。
そしてあたりさわりない、映画音楽や合唱作品を書きつつも、この深刻な協奏曲を完成させた。
初演は遅れること1955年に、オイストラフとムラヴィンスキーによってなされている。
例のDSCH音型も使用されるなど、第10交響曲との関連性も窺われるが、なんといっても、ヴァイオリン・ソロに要求される超絶的な技巧と多様な音楽性でもって驚くべき作品となっている。
トランペットとトロンボーンを欠く、渋く、かつ名技性を要求されるオーケストラ部分も凄まじい。
第1楽章:夜想曲
第2楽章:スケルツォ
第3楽章:パッサカリア
第4楽章:ブルレスケ
沈滞ムードとノクターン的夢想が織り込まれた第1楽章は緩除楽章。
いかにもショスタコっぽいスケルツォは、途中ノリノリのお得意の行進曲モードで、聴いていて思わず体が動いてしまう。
ヴァイオリン独奏がずっとカデンツァのように弾きまくらなくてはならない高難易度のパッサカリア。その形式のとおり、古風で甘味な雰囲気もあるが、実に深みのある音楽。
アタッカで強烈に始まる終楽章はまた、無窮動的なショスタコモード満載。
ソロとオケが激しくぶつかり合い、しのぎを削るかのようでとどまるところを知らない。
ラストは興奮の坩堝だ。
ヴァイオリン:五嶋みどり
クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(1997.12 ベルリン)
こんな凄まじい協奏曲を、五嶋みどりがライブ録音したのが97年、26歳のこと。
技巧的にまったくの過不足がないばかりか、一音一音に込められた覇気がひしひしと伝わってきて、こんなに音楽に入り込んで大丈夫だろうかと思ってしまう。
スケール感はさほどではないものの、繊細さと鋭さにおいては目を見張るものがあるし、音の充実度においては先に書いたとおりである。
いまのところ、アバド唯一のショスタコーヴィチ録音であるという点で、アバディアンである私にとっては、ミドリさん以上に注目度が高い録音である。
アバドの持ち味である繊細さと鋭さは、ミドリさんと同じくするものであるが、どこか醒めた眼差しも感じるのは私だけであろうか。
もちろん天下のベルリンフィルだけあって、2楽章や終楽章は凄まじいまでの鳴りっぷりである。
アバドのショスタコーヴィチは、この他にベルリンフィル退任コンサートで「ハムレット」を取り上げているのみである。
ムソルグスキーにのめり込むほどに、ショスタコーヴィチには向かわなかったアバドである。それでも、パッサカリアの深刻極まりなく重厚な響きは、まったく素晴らしいものである。
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コメント
ミドリのお陰でアバドのショスタコが聴ける有難さでありますね。しなやかな、美しい演奏だと思います。でも、ショスタコ関係ありますよ、ほかにも。「ボリス・ゴドゥノフ」。ショスタコーヴィチ版です。こじつけですが。
ところで、お城のような建物、でも幼稚園が新潟でもありますよ。城というにはうーんとちっちゃいです。
投稿: IANIS | 2009年11月12日 (木) 01時25分
IANISさん、こんばんは。 アバドのショスタコ、ムソルグスキーがらみで、もうひとつ。 ホヴァンシチナもそうではなかったかしら? リムスキーだったっけ? アバドはロシアものが好きですねえ。 ショスタコの交響曲、13〜15あたりがむいてそうです。 さすがに名古屋のお膝元、城はこだわりがありますよ(笑)
投稿: yokochan | 2009年11月12日 (木) 20時26分
今、「ショスタコーヴィチ、アバドなら、13か14番が向いてるんでは?」と書き込もうとしたところでした・・・。先、越されました(笑)。特に13番は(ちょっと趣は違いますが)シェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」の衝撃的な演奏を知っている私たちですから・・・ね、なにかやってくれそうな。
五嶋さんとのこのCD、ちとチャイコフスキーが肌に合わず、ショスタコーヴィチばかり聴いています・・・。こちらは素晴らしいです。こうなるとやはりアバドのショスタコーヴィチを聴いてみたくなりますねぇ。
庄司さんの生演奏もすごかったですよ(またそこか)。
投稿: minamina | 2009年11月12日 (木) 22時53分
minaminaさん、こんばんは。やっぱり13、14ですよね。浮ついたところがなく、真剣な音楽なだけにそうですよね。
シェーンベルクは、ウィーン盤も素晴らしいですが、ザルツブルクのECユースオケ盤も凄まじいかぎりであります!
わたしも、A面のチャイコは1度聴いたきり。
ヴェンゲーロフ盤もグラズノフばかり。
アバドだったらミルシュテイン盤ですわ。
ちなみに、ムター&プレヴィンもコルンゴルトのみで、チャイコはまだ聴いてないことに気が付きました(笑)
庄司ちゃん、わたしも、聴いてみたい!
投稿: yokochan | 2009年11月13日 (金) 18時36分
こんばんは。五嶋みどり、アバドによるショスタコを聴かれたのですね。私はアバドがいずれもチャイコのコンチェルトで他はミルシティン、ヴェンゲーロフと3種があります。先日、「N響アワー」で放送されていたくらい再評価されています。ミルシティンのはカップリング曲メン・コンは最近になって聴いたミンツ、シカゴ響で再録した方が好きです。
ちなみに同一曲を録り直したチャイコはカラヤンがベルリン・フィルでフェラスと。ウィーン・フィルでムターと共演したのを出してますね。取り上げる曲が非常にアバドと一致しています。
ショスタコの方は後からパールマン、メータ、イスラエル・フィルも聴きました。
今日は13日の金曜日。これ以上はレスが長くなりますので、本日アップした記事で確認して下さい。(笑)
投稿: eyes_1975 | 2009年11月13日 (金) 22時31分
eyes_1975さん、こんばんは。
N響アワーは見そこねましたが、ジンマンの指揮だったのですね。しまった!
この交響曲のような協奏曲、私もとても気にいってます。
そして、カップリングがチャイコフスキーだと、そちらがメインのようになってしまいますが、私にとってもメインは、こちらのショスタコでありました(笑)
eyes_1975さんは、パールマンですね。
そちらも気になる演奏です。
投稿: yokochan | 2009年11月13日 (金) 23時33分
今日は。うつと不眠はかなりの重症です。
一ヶ月ほど仕事を休むことになるかもしれません。
私はタコのバイオリン協奏曲は、コンロン&スビバコフの一番とナクソスのイリヤ・カーラー&ヴィトの一番&二番しかもっておりません。でもいい曲ですよね。どちらも。第二番が特に好きです。第15交響曲をバイオリン・コンチェルトに作り直したような感じがいたします。
投稿: 越後のオックス | 2010年2月 4日 (木) 12時23分