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2009年12月28日 (月)

武満 徹 「ノヴェンバー・ステップス」 ハイティンク指揮

Horyuji_1 法隆寺の回廊。

渋いですな。
何年に改修されているかわかりませんが、いぶし銀を感じるとともに、こうしたさりげない部分にも美的なこだわりを感じさせる日本人の細やかさ。

Tosyodaiji

唐招提寺。
12月の初旬、まだ残る紅葉。

均衡のとれた建築美に自然のおりなす彩。

Heiteink_takemistu_2 クリスマスが終わると、街にはまったくその形跡も跡形もなくなってしまう日本。

ま、欧米じゃないからあたりまえだけど、クリスマスに浮かれていた人々が、いまは慌ただしく、よいお年をとかいいながら、年越しの準備をして、神妙に正月を迎える。
 天の邪鬼だから、普通にしていたいし、クリスマスも延長したいから、クリスマス・オラトリオやメサイアを聴いたり、バイロイト放送を確認したりしている今日この頃のわたくしです。

しかし、土曜の第9は空しい内容だったなぁ・・・。

ヨーロッパと日本、それぞれの伝統の融合。
曲も演奏も、そんな意義のもとに選択してみた。

武満徹「ノヴェンバー・ステップス」。
琵琶と尺八とオーケストラのための二重協奏曲ともいえる音楽。

融合とか、先に書いけれど、この曲における日本の伝統楽器と西洋のフルオーケストラは、溶け合うというよりは、互いが拮抗し、聴きあい、その2者の間に生まれる緊張感を奏者も聴き手も感じ取る・・・・、といった風情のありかたに思う。

1967年11月、ニューヨークフィルの創立125周年の記念の依嘱作として初演された。
その11月という意味と、「序」と11の「段」からなっているところから「ノヴェンバー」の名前が付いているという。
11の段といっても、私のような素人では判別不能。
でも、日本の11月という、冬を迎える前の深まる秋、その静謐感がこの東西楽器の競演によく聴いてとれる。
竹林のざわめき、風の音色、空気の香り、高く澄み切った空、百舌の鳴き声・・・・などなど、われわれ日本人の心にある秋の心象。
武満氏が、それを思って作曲したかどうか不明なれど、わたしは武満の音楽にいつも感じるそうしたものを、和楽器が大胆に使われていることも相まって、この曲に強く感じる。

初めて聴いたのは、オーケストラがついていない、この曲の元になっている「エクリスプス」。これを、NHKの教育テレビで中学生の時に観た。
当然に、鶴田錦史の琵琶と横山勝也の尺八のコンビである。
和楽器には、まったく興味がなかっただけに、これには心底驚いた。
その、劇的な表現の幅の大きさに。
 で、すぐにあと、ノヴェンバー・ステップスを小沢征爾の指揮で、これもテレビで観た。
オーケストラとの組み合わせの妙。そして終盤のカデンツァで、あのエクリプスの場面が再現され、いたく感激したものだ。

実演では一度だけ、岩城宏之の指揮で武満徹の作品だけの一夜で。
コンサートすべてが武満作品で、途中安らかにあっちの世界へ行きそうになったのを覚えている(笑)

Heiteink_takemistu3 いまや、日本のクラシック音楽の古典ともいえる作品に、ハイティンクコンセルトヘボウ鶴田&横山コンビとともに録音を残している。
1969年の録音で、カップリングはメシアン。
ほんとは、メシアンの方がフランドル風の渋さがコンセルトヘボウっぽくて面白いのだけれど、われらがハイティンクが貴重にも武満作品を指揮しているので、この1枚はとても大切な音源となっている。
 たしかに、あのホールと、フィリップス録音の響きがオーケストラばかりでなく、琵琶と尺八の音にもする。
当時から、日本人奏者の多かったコンセルトヘボウだけれども、やはり、小沢盤や若杉盤の冷凛とした透徹感とは隔たりがあって、ちょっと生ぬるい。
でも、それがふくよかなハイティンクとコンセルトヘボウの特徴。
よいではないか。
 和楽器と完全なる対比が、巧まずしてなされている。

現代物をあまりやらない印象があるハイティンクだが、オランダの作曲家や、リゲティなどもいくつかライブ以外にスタジオ録音しているので、復刻が待たれる。

若いぜ、ハイティンク。

Yakushiji こちらは薬師寺の回廊。
改修したから、派手なくらい・・・・。

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コメント

この曲、西洋と東洋の音楽が見事に融合した傑作で、必ずや後世に残る作品ですね。
それにしても、ハイティンクがリゲティも!録音しているとは知りませんでした。聴いてみたいです。

投稿: golf130 | 2009年12月29日 (火) 17時33分

golfさん、こんばんは。
この曲は、誰も真似できないし、二番煎じではまったくつまらなくなるしで、ほんと、独創的ですね。

そして、ハイティンクのリゲティ、70年代の録音と記憶しますが、日本では発売されてないかもしれません。

「われ、ハイティンクのCDの復刻・発売を待ち望む」であります(笑)

投稿: yokochan | 2009年12月30日 (水) 00時05分

ときどき拝見しています(以前、ディーリアス「人生のミサ」とスクリャービン「交響曲第1番」で少しコメントさせていただきました)。

個人的に大変なつかしさを覚える盤です。私は昔、中学の音楽室にあるこのLPを借りて聞きました。武満もメシアンも、これが初体験。その後、大学生の頃に輸入盤CDで売られているのを見つけ、しばらく持っていましたが、だいぶ前に手放してしまいました。いまは入手困難なのでしょうか。
ノヴェンバー・ステップスは、おそらく本文中でご言及されているものと同じ岩城&N響のライヴ盤を、いまも持っています。もう長いことケースから出していないので、この機会に改めて聞き直してみようかと思いました。

投稿: snuffy | 2009年12月30日 (水) 16時22分

stuffyさん、こんばんは。
ディーリアスの名曲にコメント頂戴しましたので、覚えております。
このレコードは、私が小学生のころのものでして、当時のレコ芸では、ほとんど無視状態。
ハイティンクだったからであります。

もしかしたら廃盤の憂き目にあっているかもしれません。
私の手持ちは、国内廉価盤です。
こうした名曲・名演奏は、いつでも手に入る状態にしておいて欲しいですね。
私のようなクラヲタだけの楽しみにとどめておくのは、とてももったいないです。
武満作品を、欧米の一流が演奏した数少ない実例ですし!

岩城さんのコンサートは、CBS(ソニー)から発売されましたね。欲しいひと組です。
文化会館でご一緒だった訳ですね!
コメントありがとございます。

投稿: yokochan | 2009年12月30日 (水) 21時56分

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