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2009年12月18日 (金)

ワーグナー 「ラインの黄金」 バレンボイム指揮

Roppongi_hills_1 六本木ヒルズの中庭。

こういう色の丸い物、ことにそこに水なんかがあったら、すぐに「リング」を思い出しちゃう。

え? リング?
ニーベルングの指環」ですよ、ワーグナーの。

水、火、森、黄金、何でもワーグナーに結びついちゃう私ですな。

Winter2

ワーグナー・シリーズもいよいよ、4部作「ニーベルングの指環」を聴くこととなった。
壮大な物語は、覚えてしまえばなんのことはなく、くどいくらいに、おさらいをしたり、昔を思い出したりと、ライトモティーフの実験台みたいになっている場面もあるが、延べ15時間に及ぶ台本と音楽を書いたワーグナーの、その弛緩のない仕事ぶりには、まったく驚きだ。

ジークフリートの死から物語を起こし、それじゃわかりにくいということで、ジークフリートの青年になるまでを描き、さらにその父母、神様たち、ラインの伝説などにまで話が遡って、逆算しながら台本を書きあげていった。
そもそも、「さまよえるオランダ人」を書いたとき調べた北欧神話、「タンホイザー」にまつわるドイツ=ゲルマンの物語などに大いに触発されていて、「ローエングリン」を作曲する前後には、「ニーベルングの指環」の台本は完成していた。
台本執筆は1848年頃から1852年。
音楽の方は、「ラインの黄金」から順に作曲され、「神々の黄昏」が終わったのが、1874年ということで、台本を起こしはじめてから実に26年の延大なる大作業であったのだ。
この間に、「トリスタン」と「マイスタージンガー」という相異なる2つの楽劇も書いているのだからまた凄いのであります。

1848年完成の「ローエングリン」から、1854年の「ラインの黄金」への劇面・音楽面の飛躍は実に大きい。
楽劇形式の萌芽はローエングリンにも明らかだったが、ではドラマと音楽がより対等になり、全1幕で明確な「場」の区切りもなくなり、2時間20分の全曲は休みなく大きな流れの中に括られていて緊張がずっと張り詰めて、いやがうえにも音楽とドラマに集中せざるを得ないようになっている。
好きな人には、たまらない140分間だが、そうでない人には耐えきれない140分でもあります。
私は当然、前者でして、冒頭の変ホ長調の原初の和音が鳴り始めたらもう全曲を聴かなくてはすまなくなってしまう。
ラインゴールドを聴いたら、ワルキューレ、ジークフリートと4部作聴き。これをこれまで何度繰り返して過ごしてきたことだろう。

リングは、映像でなくCDでまいります。
しかし、リングの全曲映像は
いったいいくつあるのだろう?
最初はブーレーズ&シェロー、そしてサヴァリッシュ&レーンホフだけだったのが、いまかぞえたら全部で9種類。まだまだ出てくる見込みだ!
CDなんて足の指を使っても数えきれない!
バイロイトの専売特許だったのは、今は昔。
世界中いたるところでリング、リング。
中国やタイでも上演されてしまう世の中となったのだ。
墓の中のワーグナーもにんまりしているだろうなぁ。自分の超大作が、世界の共感を得て文字通り、音楽で世界制覇してしまったのだもの。

Rheingold_barenboim 告白すると、ワタクシ、リングのDVDを持ってません。放送映像のビデオで、ブーレーズ、サヴァリッシュ、レヴァイン、バレンボイムを持つのみで、いまや画質も音質も堪えられないものになってしまった。
ゆえに、これまで取り上げていない指揮者のリングをバラバラに組み合わせて聴いてみる次第にございます。
 しかし、悩みましたなぁ。どの演奏を割り振るかで。
「ラインの黄金」は、当初レヴァイン盤を聴き始めたが、久しぶりに聴くレヴァインのワーグナー、正直、波長が合わなかった。音色が明るすぎるし、映画音楽のような味付けで、あの具象的なシェンクの演出の音版みたいに感じたし、イエルサレムのローゲも何だか妙に立派すぎて、狡猾さがないんだな。
同じヘルデンでもヴィントガッセンは、とぼけた雰囲気が漂っていて憎めないローゲになっていたのに。
 とかなんとかで、レヴァインはフライアが連れ去られるところまででお終い。

で、ローゲに人を得たバレンボイム盤を取り出した次第。

 ウォータン:ジョン・トムリンソン   ドンナー:ボド・ブリングマン
 フロー:クルト・シュライプマイヤー ローゲ:グラハム・クラーク
 フリッカ:リンダ・フィニー       フライア:エヴァ・ヨハンソン
 エルダ:ビルギッタ・スヴェンデン  アルベリヒ:ギュンター・フォン・カンネン
 ミーメ:ヘルムート・パンプフ     ファゾルト:マティアス・ヘレ
 ファフナー:フィリップ・カン      ウォークリンデ:ヒルデ・リープラント
 ウェルグンデ:アネッテ・キュッテンバウム フロースヒルデ:ジェーン・ターナー

    ダニエル・バレンボイム指揮 バイロイト祝祭管弦楽団
    演出:ハリー・クプファー
                       (1991.6 @バイロイト)

クプファー演出のリングは、88年から92年までの5年間上演され、その時の不動のメンバーは、強固なもので、演出の優秀さもあって、録音と録画がなされるべくして行われた。
音楽祭の前に祝祭劇場で観客なしで行われたライブ感あふれる演奏は、映像のものと一緒だから、バタバタドシドシといろんな音が派手に入っている。
クプファーの社会性に満ちたメッセージ性の強い演出は、P・ホールで弛緩してしまったシェロー以降のメッセージ・リング・コンセプトを強く打ち出すもので、このあとのキルヒナー、フリム、ドロストと続くなかでも、一番優れた演出とも言われる。
5年で交代のなるパターンのリング。映像で全部見てみたいものであります。

そして、当初はただ振ってるだけ的なバレンボイムだったが、年とともにリングをすっかり手のうちに収め、この年と翌年は大変充実していた。
ただ、こうして音だけ聴いてると、音に気が入ってる部分とそうでなく鳴ってるだけの部分の格差が多少あるように感じる。これが視覚を伴うと異なるのであろう。
冒頭の和音から、最後の入場の場面まで、やはり耳に馴染んだバイロイトの劇場の響きは心地よい。マンハッタンの摩天楼のもとでのゴージャスな響きと多違いなのである。

歌手は、そうG・クラークの小憎らしいまでに軽めのローゲが楽しい。
ジークフリートでは、ミーメに変わるところなんかも、先輩格のツェドニクとおんなじ。
強い男とずるい男が同居したトムリンソンのウォータンも久しぶりに聴いて懐かしさをもった。この人、存在感バッチリだから舞台で観たときも声もデカイしすごかった。

「ラインの黄金」は物語の始まりだけど、ここだけでもう出てこない人たちも何人もいる。

ローゲ:歌わないけど、ワルキューレとジークフリートでは炎になってるし、神々の黄昏ではウォータンの槍をかじっちゃってる。の主役ともいえる狂言回し。
最近の演出では、歌わないのに登場させたりして重要人物化している。

ドンナーフロー:ちょっとしか歌わない神様たち。黄昏では、ギービヒ家の人たちに祭られていたりする。フローは、テノール歌手の登竜門で、R・コロもここからスタート。

フライア:女性(美・若さ)の代名詞。ジークフリートが、女性を思うときフライアの主題が鳴る。ウォーナー演出では、ファゾルトと怪しい仲を醸し出していた。

ファゾルト:フライアに恋して、弟に殴り殺されてしまう可哀そうな純情兄巨人。

常連さんたちは、では・・・・。

ウォータン:新居が完成したが、そろそろ浮気の虫が騒ぎだした。男は、家をもつと、そうしたもの。

フリッカ:まだ強い夫を信頼している。このあとだんだんたくましくなるのは、世の中の常。

エルダ:得体のしれないヒト。神さまなのに、単独生活をしている。
のあと、母となる。ワルキューレにノルンたち、子沢山。

アルベリヒ:すけべオヤジから、悪の道へ踏み出し、実業家的な側面も見せつつ野望を実現に向け邁進するが、ちょっとおっちょこちょい。カエルに変身しなければ彼の人生は勝ちだったか?

ミーメ:兄弟喧嘩はしょっちゅう。兄の後釜を狙う狡猾な弟。ハーゲンはミーメの子の新説あり??

ファフナー:黄金を身代金にするなど、頭のよさそうな行動をする。しかし、兄を殺してからは、ただ凡庸に食って眠るだけの恐竜生活にふけってしまう怠け者だった。

ラインの乙女たち:いたずら好きのライン川の妖精。日本なら河童だけど、こんなんなら会ってみたいぞ。

クプファー&バレンボイムのリングDVDが激安になったので、注文したら来年の2月まで入荷待ち。
きれいな映像で楽しんだら、また記事にします。
それはまた来年のはなし。

さて、「ワルキューレ」は、誰で行きますか。



「ラインの黄金」過去記事

「カラヤン&ベルリンフィルの」
「ブーレーズ&バイロイトの」
「ドホナーニ&クリーヴランドの」
「新国立劇場 ウォーナー トーキョーリング」

「ベームのリング」
「朝比奈隆のリング」

Roppongi_hills_4

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コメント

お早うございます。
指揮者バレンボイムを最近見直すようになった私ですが
彼の指環は苦手です。市立図書館にクプファー演出で
バイロイトでライブ収録されたバレンボイム指揮の
DVDがあったので見てみたのですが、「スローテンポでしかも重たい!」と弱音を吐いてしまいました。
中学高校時代に初めて買った指環はショルティですが、今はベームと
ブーレーズのバイロイト・ライブが好きです。
あとノイホルトの激安リングが結構好きだったりします。あのCD、買っても安物買いの銭失いにはならないと思います。

投稿: 越後のオックス | 2009年12月19日 (土) 05時24分

越後のオックスさん、こんにちは。
苦手ですか、バレンボイムのリング。
私は、バイロイト私家録音を長年楽しんでますが、リング初登場の年から、年々腕をあげてゆくバレンボイムの実力に目を見張りました。
ベーム、シュタイン、ブーレーズ、ショルティ、シュナイダーと快速リングが続き、バレンボイム、レヴァイン、シノーポリ、フィッシャー、ティーレマンと重厚長大路線に変じました。
面白いものですね。
私はそのすべてが好きですから始末におえません。
ノイホルトは未聴なのですが、時間がないところが悲しいです。でもそう言われると欲しくなるのがサガと申せましょうねぇ・・・・

投稿: yokochan | 2009年12月19日 (土) 15時31分

 お早うございます。
古楽器出身の指揮者が聖地バイロイトにまで登場する時代になりましたね。フライブルク・バロックオーケストラを創った独逸の古楽器指揮者の気鋭トーマス・ヘンゲルブロックが来年のバイロイトに出演するのだそうです。もうご存知でしたら申し訳ありません。
ヘンゲルブロックが指揮した英楽聖パーセルの劇音楽集のCDにすっかり魅了されてしまった私は、彼がバイロイトで何を振るのか、祝祭管弦楽団を指揮してどんなワーグナーを聴かせてくれるのか楽しみでなりません。
彼は北独逸放送交響楽団のシェフにもなるそうですし(もうなったんだっけ?)、これからの活躍が楽しみです。
古楽器畑の指揮者でバイロイトに一番乗りするのはノリントンあたりではないかと思っていた私の予想は見事に外れてしまいました。でもノリントンの指揮でトリスタンやマイスタージンガー全曲が聴いてみたいですね。半分は怖いもの見たさですが・・・

投稿: 越後のオックス | 2009年12月20日 (日) 09時22分

 ヘンゲルブロックのバイロイト・デビューと北独逸放送響就任は再来年2011年のことでした。すみませんでした。

投稿: 越後のオックス | 2009年12月20日 (日) 09時30分

越後のオックスさん、こんばんは。
ヘンゲルブロックのバイロイト登場は察知しておりましたが、再来年とは知りませんでしたね。
おそらく、ローテーション的に、オランダ人かタンホイザーの新演出になるのではないでしょうか。
そして、演出は当然にカテリーナです。
こりゃ面白ろそうです。
古楽系(とはいえないかもしれませんが)のワーグナー全曲としては、ブルーノ・ヴァイルのオランダ人がありますが、案外普通の響きでした。
ノリントンのバイロイトも、アーノンクールも期待したいですね。

投稿: yokochan | 2009年12月20日 (日) 23時56分

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