ヴェルディ オペラ合唱曲集 ヴァルヴィーゾ指揮
有楽町駅銀座口。
「有楽町で逢いましょう」だけど、かつては古くさくてイマイチの雰囲気だったけれど、商業ビルがいくつか出来たりして、いくつかある銀座の入り口の代表となった。
でも、左手の交通会館は、中に入って探索してみると新旧織り交ぜて面白い店がたくさんある。
各県のアンテナショップはあるし、古くからの居酒屋や喫茶店もあるしで、ニュー新橋ビルに似てる。
大阪でいうと、第1から第4まである駅前ビルみたい。
ヴェルディのオペラは、全曲を聴くに限るが、そのアリア集や序曲集もたくさん出てるし、そうして聴いても聴き応え充分だ。
ワーグナーも同じであります。
そして、合唱だけ取り出した1枚もヴェルディのいいところがぎっしり詰まっていて、大いに楽しめる。
この点は、ワーグナーは違いますな。
W・ピッツがワーグナー合唱曲集を録音しているが、それが唯一かも(明日いきます)。
ヴェルディのオペラ合唱曲で特徴的なことは、前中後期と渡って満遍なく名作が多いが、前期のものは歴史劇的なスペクタクル作品の中に、愛国心を思い切り歌い込んでいるという点。
中期以降は、文豪作品をとりあげ、心理劇への志向が強まり、壮大さよりは内面重視の歌に変わってゆき、合唱も立派な登場人物としてしっかり機能するようになった。
「ナブッコ」~「行け、思いよ、金の翼にのって」
「祭りの踊りよ」
「トロヴァトーレ」~「アンヴィル・コーラス」、兵士の合唱
「アイーダ」~凱旋の合唱
「マクベス」~踏みにじられし祖国よ
「十字軍のロンバルディア」~「エルサレム!」
「おお神よ、生まれし家より」
「ドン・カルロ」~「ここに喜びの日が明けた」
「オテロ」~火の合唱
シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
ドレスデン国立歌劇場合唱団
(1983.12 ドレスデン)
私の愛聴盤、アバド&スカラ座と同じ内容。
スイスの名指揮者だったヴァルヴィーゾが、ドレスデンでヴェルディを。
イタリア人の見当たらないこの組み合わせ。
これが実は、しみじみと味わい深いすっきりユニークなヴェルディだ。
ヴァルヴィーゾは、1924年チューリヒ生まれ、2006年にアントワープで82歳で亡くなった指揮者で、キャリアは相当長く、死ぬまで現役で活躍し、私のような世代からすると、オペラ指揮者のイメージが強い。
クレメンス・クラウスの弟子でもあり、スイスの歌劇場からスタートしたそのキャリアは、欧米のハウスからひっぱりだこになるまでになった。
69年にバイロイト・デビューを飾り、70年代はシュタインと並んでその中心指揮者だった。
バイロイトの「マイスタージンガー」のライブ録音は、ヴァルヴィーゾの代表盤でありましょう。
ストックホルム、シュトットガルト、パリオペラ座、バーゼルと、ヴァルヴィーゾの劇場監督の経歴は渋いが手堅いものがある。
デッカを中心とする録音では、有名大歌手との共演ばかりのイタリアものが多い。
ロッシーニからマスカーニまで、ベルカントものからヴェリスモまでと網羅しているほか、各地では、ワーグナーは当然として、モーツァルトやR・シュトラウス、マスネ、ビゼー、ブリテンなどなど、あらゆるオペラをレパートリーにしていた、マルチ指揮者だったのだ。
このあたりが逆に、その存在が、個性が定まらなく却って地味にしてしまった一因かもしれない。
オーケストラ指揮者としても当然に活躍していて、70年代にN響にもやってきている。
私の記憶では、イタリア、ドヴォ8、ダフニスなどを演奏したのではなかったかな?
それと、ウィーン国立歌劇場の来日にも同行していて、「フィガロ」を指揮した。
ラインスドルフが全部振れなくなって、代わりでやってきたのだが、私はチケットを持っていながら、上司や先輩の誘いに断りきれず、チケットを棒に振ってしまったのだ。
いま思えば、なんというもったいないことを
移動があってすぐの環境だったし、当時はお誘いを断るなんて滅相もない風潮だったし・・・・。ちなみに、後日、この上演はNHKで放映されました。
このときのほかの演目は全部行きましたよ。
「シノーポリのマノンレスコー」、「ホルライザーのトリスタン」、「シュナイダーのばらの騎士」
すげぇな。独身時代はこうして、給料はみな音楽と酒に次ぎこんでいた「うつけもの」にございましたねぇ。
ヴァルヴィーゾに関して長く書きすぎてしまったけれど、ドレスデンのヴェルディが実によろしい。
派手なところが一切なく、その音はくすんでさえ聞こえる渋さ。
爆発や飛翔も聴かれない。
ヴァルヴィーゾは、サヴァリッシュと同じように、スタイリッシュな指揮をする人だから、テンポもすっきり速め。
でも、ここに感じるのは、合唱部分をここに抜き出してやってみましたという仕上げ方じゃなくて、オペラの流れの中に、普通に位置する合唱曲としての在り方。
前にも後にも、続きがありそうで、もっと聴きたくなるけれど、さすが普段、劇場で演奏している面々の取り合わせだけあって雰囲気は抜群。
ドレスデンは適応力ある柔軟なオケでもあるから、ヴェルディだって、全然普通に楽しめる1枚であります。
このコンビ、あとワーグナーのオーケストラ曲もあります。
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コメント
ヴァルヴィーゾがドレスデンのオケやコーラスを相手に録音したこのヴェルディは、わたしも愛聴しております。もう一枚、イタリアやフランスのオペラの間奏曲やバレエの音楽を集めたディスク(もちろん指揮はヴァルヴィーゾ)とともに、来日公演ではドイツ物しかやら(せてもらえ)ないドレスデン国立歌劇場の歌劇場としての懐の深さを感じさせてくれますね。
投稿: 白夜 | 2009年12月17日 (木) 23時22分
ヴァルヴィーゾの70年代のN響との演奏(ドヴォ8とコチシュとのモーツァルトでした)や80年代のウィーン国立歌劇場来日公演のフィガロをたまたま聴きましたが、正直格別の印象は残っていません。私にとってのヴァルヴィーゾは、ベルガンサらとのロッシーニ・オペラ録音でして、特に「アルジェのイタリア女」で声の饗宴をしっかり支えるオペラ職人ぶりが好印象でした。
投稿: ろべると | 2009年12月18日 (金) 00時20分
白夜さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
もう1枚のヴァルヴィーゾのディスク、ワーグナーともども未入手ですので、探してみます。
そろそろ、ドレスデンの来日公演もドイツものから脱却して、ラテン系やエルガーなんかもいいですね。
ディスクで聴ける、ラヴェルやエルガーなんて、ほんといい味出してます。
次期指揮者が、ティーレマンとなると、そうした思いとは別の方向に向かいそうですねぇ・・・・。
投稿: yokochan | 2009年12月18日 (金) 00時22分
ろべるとさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ヴァルヴィーゾお聴きなられているのですね。
私は記事のとおり、聴き逃してしまいましたので、実演に接することなく終わってしまいました。
ベルガンサとのアバドの前の一連のロッシーニ、ありましたね。あと、スリオティスとコソット、デル・モナコのノルマなども、もう一度確認してみたいオペラです。
投稿: yokochan | 2009年12月18日 (金) 01時09分
ヴァルヴィーゾといえばベルガンサやギャウロフとのDECCA録音の「セヴィリアの理髪師」を思い出します。やはりオペラ指揮者の印象が強いですよね。しかし先日、某中古LPレコード店でスイス・ロマンドとの「ボロディン/第2交響曲+チャイコフスキー/フランチェスカ~」に遭遇。この録音の存在は知らなかったのでビックリしました。まだまだCD化されていない埋もれている録音って多いですね。
投稿: EINSATZ | 2009年12月18日 (金) 01時56分
有楽町ホントに変わりましたよね~。
20年ほど前。銀座口出てすぐに立ち食い蕎麦+焼そばのお店があって。なぜかインド系のお兄さんが働いてて、鋭い眼光を光らせながら焼きそばを盛ってくれたっけ。。。
音楽について語れずスミマセン。。。m(_^_)m。
投稿: 左党 | 2009年12月18日 (金) 22時08分
EINSATZさん、こんにちは。
ヴァルヴィーゾは、ロッシーニからワーグナー、マスカーニまで、オペラすべてを指揮した達人ですね。
そのスイス・ロマンドのレコード、覚えてますよ。
あとプロコフィエフのバレエ音楽、石の花かシンデレラもそのコンビで録音していたと記憶しております。
ほんとに、埋もれたレコードってたくさんありますね。
そんな風に思ってるとますます聴いてみたくなるところが病気であります・・・・。
投稿: yokochan | 2009年12月19日 (土) 15時15分
左党さん、こんにちは。
有楽町駅はいまや待ち合わせのメッカですな。
昔の君の名は・・・の世界そのものであります。
その焼きそば屋はなんだか魅力的ですね。
まだガード下にはそんな雰囲気が残ってます。
有楽町高架下商店街なんてものを見つけましたので、今度探検してみます(笑)
投稿: yokochan | 2009年12月19日 (土) 15時25分
yokochan様
このアルバム、CDが世に出た最初期にリリースされたような覚えが、ございます。規模が大きくダイナミック・レンジの広いこのようなレパートリーが、コンパクト・ディスクの性能アピールに、最適とフィリップス社が、判断したのでしょうか。仰せのベルガンサが一回目にロジーナを受け持った盤での、『ナポリ・ロッシーニ管弦楽団』。おそらくこの名称の常設オーケストラは存在しない筈ですので、同地のサン・カルロ歌劇場のオケ辺りでしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年10月19日 (水) 14時35分
アナログ末期から、ドレスデンシュターツカペレは各レーベルに引っ張りだこでした。
西と東とであきらかに違いがあったので、歴史あるドレスデンの音は録音する側としても魅力でしたでしょう。
そんななかで、デンオンとフィリップスはドレスデンの魅力を見事にとらえた録音を続出してくれました。
ヴァルビーゾとオペラ録音を残して欲しかったものです。
投稿: yokochan | 2022年10月31日 (月) 08時48分