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2009年12月12日 (土)

レオンカヴァッロ 「ラ・ボエーム」 ワルベルク指揮

Roppongi_3 六本木ヒルズのけやき坂の様子。

華やかすぎず、ちょっとクールなイルミネーション。

事務所から散歩がてらに観察のオヤジ一人でありました。

Leoncavallo_la_boheme_wallberg もうひとつの「ラ・ボエーム」。

レオンカヴァッロの同名のオペラであります。

いうまでもなく、ボエームといえば、無条件にプッチーニなわけで、しかもプッチーニの最高傑作であるし、レオンカヴァッロに同名オペラがあることなんて知らない方も多いと思う。

そもそもレオンカヴァッロは、「道化師(パリアッチョ)」の一発屋みたいに思われていて、その点、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のマスカーニと同じような境遇にある。
しかし、マスカニーニの方が、「友人フリッツ」とか「イリス」とかがまだ上演されているのでましだ。
何かと気の毒な、レオンカヴァッロなんだけど、10曲以上のオペラや、オーケストラ作品、器楽曲、歌曲など広範に作曲していて、文才もあって、自作のオペラのほか、他の人のオペラの台本などの執筆や新聞記事なども書いていたという、大変な才能の持ち主だったのだ。

レオンカヴァッロ(1857~1919)は、ヴェルディ以降のイタリアオペラ界の覇者となったプッチーニ(1858~1924)と完全に同世代。
マスカーニは6歳下だけど、ともかく同じ年代に綺羅星のごとくオペラ作曲家が連なっていたのが、当時のイタリア。この年表は、こちらの過去記事をご参照。
だから当然に、お互い顔見知りであったり、ライバル心をむき出しにしたりしていたことであろう。

プッチーニとの因縁浅からぬ関係。
お互い、オペラは発表しつつも、ブレイクせず、貧乏作曲家。
リコルディ社に目を付けられたプッチーニが、「マノン・レスコー」に取り掛かるときに、同社が台本作者として連れてきたのがレオンカヴァッロだったのである。
でも人一倍、台本にこだわりの多いプッチーニは、レオンカヴァッロの作品を気に入らず、却下してしまう。(そのあと4組目でようやく決まった。)
 マノン・レスコーで成功を収めるまえに、マスカーニのカヴァレリア、レオンカヴァッロのパリアッチが、ともに成功し、焦ったであろうプッチーニ。

その後、アンリ・ミュルジュ「放浪芸術家たちの生活風景」という戯曲を見つけ出したのが、レオンカヴァッロ。(一節では、プッチーニ組のイッリカ)
「ラ・ボエーム」として台本を書いて、プッチーニに作曲を勧めた人のいいレオンカヴァッロ。しかし、断ったプッチーニ陣営。
しょうがないので、自分で作曲をはじめたレオンカヴァッロ。
プッチーニの方は、イッリカ=ジャコーザという黄金コンビを得て、作曲をはじめ、プッチーニ陣営ではこの作曲に関してはかん口令を敷いたものの、のちに発覚したときは、さしものレオンカヴァッロも怒りまくったという。

かくして、1896年にプッチーニ作品が先に初演され、徐々に成功をおさめてゆき、翌年97年には、レオンカヴァッロ作品が初演された。
その結果がいかがだったかは不明であるが、いま置かれているこの作品、ないしはレオンカヴァッロの境遇から察するに、同名の名作オペラの影に完全隠れてしまい不遇をかこっている気の毒なオペラという評価になろうか。

同じ4幕仕立てで、舞台は1937年のパリ。12月24日から翌年の同日までの1年間の物語。
大きな違いは、1幕と2幕が入れ替わっていること。
ミミとロドルフォは、ソプラノとバリトン。ムゼッタをミュゼッテと読み、メゾが歌い、相方マルチェロはテノール。ショナールの恋人まで出てくる。コルリオーネは、チョイ役。
ミミは花売り娘で、ミュゼッテがお針子という設定になってる。
 二人の恋人に焦点があたり、あとは仲間一同的なプッチーニに対し、レオンカヴァッロはそれぞれの恋人たち、つまりボヘミアンたちが主役で、そこにミミの死という劇的というよりもさり気ない悲しみが花を添えているといった感じだ。
いわば悲喜劇ともいえようか。

内容もかなり違うのでここにあらすじを書きます。

第1幕 カフェモニュス
 カフェの主人とショナールが言い争っている。今日は皆と食事をしてちゃんとお金払いますと。そこへ、ボヘミアンたちが登場。
そのあと、ミミが友達のミュゼッテを連れてきて、「ミュゼッテは歌が上手なの」と紹介する。ミュゼッテは「金髪のミミ・ピアソン」を歌う。
 マルチェロはミュゼッテに一目惚れ。ロドルフォは勘定が心配でならない。
店主は金を払わないと店を出さないとすごむ。
そこへ、芸術を愛するバルベムッシュが現れ、わざとビリヤードで負けてやって勘定をしてあげる。
傍らでは、マルチェロがミュゼッテに絵をかかせて、と口説いている。

第2幕 ミュゼッテ家の中庭
 マルチェロのことがバレてしまい、パトロンから援助を打ち切られ、家財道具を運びだされてしまうミュゼッテ。じゃあ、僕の貧しい屋根裏においでと情熱的に歌うマルチェロ。
彼女も喜ぶが、今日パーティをする予定だったことを話す。
そこへ家賃の払えないショナール、詩が売れて金を手にしたロドルフォがやってきて、それでパーティをしようということに。
 ミミ、パオロ子爵、エウミーファ(ショナールの恋人)、ついでに通りがかりの若者もたくさん加わって、かまびすしいボエーム讃歌となる。
子爵はちゃっかりミミを誘惑し、贅沢な生活へと誘う。
ミュゼッテはワルツを歌ってるし、ショナールとロドルフォは2階でピアノを弾いて歌っている。この混乱のすきに、子爵はミミを連れ出してしまう。
 近所の人々が苦情をいって大騒ぎになり騒動となり、ミミが出ていったことを聞いたロドルフォは半ば狂ったように騒ぎに飛び込む。

第3幕 マルチェロの屋根裏部屋
 ショナールは破談となり、マルチェロと街へ金策に出てゆく。
ミュゼッテは、もう貧乏暮らしには耐えられないと別れを決意して手紙を書く。
そこへ、ロドルフォのことをまだ愛してるから、とミミがやってくる。
ミュゼッテは、マルチェロを愛してるけれど、この生活には我慢がならないの、と愛と貧乏のはざまの気持ちを熱く二重唱で歌う。
そこへ、マルチェロが帰ってくるので、ミミは隠れる。
別れの手紙を見た彼は怒りだし、ミュゼッテの首を絞めようとするが、そこへミミが飛び出すので、彼は笑いだし、ロドルフォを呼び出し、この女がミュゼッテのパトロンを探し出してくれたとよ、とひどいことを言う。
ロドルフォは、やぁ子爵夫人と冷たく言い、いってしまう。
泣く泣く帰るミミ。ミュゼッテは荷物をまとめて寂しげに出てゆく・・・・。
残されたマルチェロは、本当に出ていってしまったと空虚な部屋を見て嘆いて歌う。

第4幕 ロドルフォの屋根裏部屋
 クリスマスイヴ。
マルチェロはミュゼッテに戻ってくれと手紙を書いたが、喜んで、と言ってよこしたまま1週間たっても来ない、と嘆いて歌う。
そこへミミがやつれ切った姿であらわれる。どこにも行くところがないのと、1日でもいいからここにおいてと・・・。
子爵と別れて働こうとしたが、ひどい扱いを受けて、しまいに病に倒れて、あの20しかベットのない病院に、1か月入院していたと。
最後の10日間は、とても込んでいてかろうじて病院にいれたけど、もう完全に治ったと言われ退院したけれど、咳がとまらないの。だから、みんな離れて向こうで食事をしていて・・・。

はじめはそっぽを向いていたロドルフォ、でもたまらなくなってミミを抱きしめる。

 そこへミュゼッテが帰ってきて、再会を喜ぶが、ミミの容態が悪いのに気づき、腕輪と指輪をとってショナールに渡し、医者と薬を、と頼む。
ミミはミュゼッテは、とてもいい人ね、でももう遅いの。
ミュゼッテはここにロドルフォがいるじゃないの、と必死に励ます。
ミミは、死ぬのはいや、ロドルフォの愛が帰ってきたと語り、ロドルフォは神様が見捨てるはずはないと、歌う。

そして、ミミは、去年の楽しかったクリスマスのことを思い出しながら、ルドルフォに別れを告げ、クリスマス・・・・、と言いながらこと切れる・・・・・。


やはり最後は泣けますね。
こうして書いていても涙が浮かんできちゃうし。
こちらは、オペラ全集を参考に、対訳で肉付けしました。

1・2幕が喜劇風、3・4幕が悲劇風とそれぞれの色合いが際立つ。
そしてミミは最初から病気でなく、パトロンと別れてから病気になり、さらに病院から追い出されてしまうという、当時の社会性も物語っているような、その悲しみの死である。
 プッチーニのミミの死の方が、物語風で、一貫性があるのも事実だが、レオンカヴァッロ版は、より原作に忠実といえるのだろうか。

Leoncavallo 肝心の音楽。
メロディの甘味な美しさと、劇的なオーケストレーションの巧みさではプッチーニに敵うものではない。
しかし、レオンカヴァッロの旋律の豊富なことといったらない。
次々と歌が流れ、こぼれだしてくる、その豊穣さ。
アリアやちょっとしたソロが、みんなに与えられている。

列挙すると、ミミがミュゼッテを紹介する歌、ミュゼェッテの金髪のミミ・・の歌、マルチェロの屋根裏部屋へのお誘いの情熱ソング、ショナールのピアノ付きの歌、ミュゼッテのワルツ、ミュゼッテの貧乏生活を嘆く歌、そうじゃないと情熱を説くマルチェロの歌、ミミとミュゼッテの二重唱、まるでパリアッチョのようなすごみあるマルチェロの首絞めの場面!!、ミュゼッテが去ったあとのマルチェロの歌はまるで、サボテンの歌そのもの。
ロドルフォのミュゼッテを待ちわびる歌、ミミの切ない病気の歌、告別の歌。

どれも、聴き馴染むと素敵な歌たちである。
オーケストラは、パリアッチョと比べると大人しめだけど、これもまた美しい歌が満載。

 マルチェロ:フランコ・ボニゾッリ  ロドルフォ:ベルント・ヴァイクル
 ミュゼッテ:アレクサンドリナ・ミチェーヴァ ミミ:ルチア・ポップ
 ショナール:アラン・タイトス     エウフェーミア:ゾフィア・リス
 
  ハインツ・ワルベルク指揮 バイエルン放送管弦楽団
                     バイエルン放送合唱団
                          (1981.11@ミュンヘン)

イタリア人は、ボニゾッリただ一人のキャスト。
そして、そのボニゾッリが情熱ギンギンに歌いまくってる。
ガラコンサートで私は何度か聴いたことがあるけれど、その声のバカでかさと、熱血の塊ぶりは生だと崩壊寸前で、ムチャクチャ興奮させられる。
ここでの歌もかなり素晴らしい。こんな歌を歌う人はもういない。
 いないといえば、ポップの愛らしいミミも堪らない魅力。
歌いどころが決して多いわけでなく、相方がバリトンなのでやり取りは渋いが、イタリアものを歌っても、いつもの人懐こいポップに違いはなく、素敵である。
 ヴァイクルタイトス、ともに新国でファルスタッフを歌った名手であり、ワーグナー歌手でもあるが、ありあまる声をたくみに抑えつつ巧みな歌い回しで聴かせる二人。
ミチェーヴァというロシアの歌手も悪くなかった。あのワルツは曲も最高に素敵なのだ。

そして、当時こうしたメンバーで、モーツァルトやベルカント系オペラをいくつか録音していたワルベルクの貴重なレオンカヴァッロである。
オケも含めて、中間色のカラーであるが、華美にならず、ほどよく歌う均整のとれた演奏。
思えば、ワルベルクはレパートリーも広く器用な指揮者だった。

かなりの長文になってしまいました。
数か月前から聴きこんだこのオペラ。
多くに人に聴いて欲しい、もうひとつのボエームである。
そして、舞台の方も、プッチーニのセットがそのまま使えるのだから上演してくれませんかねぇ。

レオンカヴァッロ過去記事

 「五月の月」

 

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コメント

空いているこちらの方へ(笑)。
レオンカヴァッロに「ラ・ボエーム」があること知りませんでした。
パリアッチョは大好きなオペラなので、他の作品も聴いてみたい作曲家でした。
同名、同じ台本のオペラって、結構あるのでしょうか?
有名曲に隠れた方に興味ありますね。
久しぶりに一曲聴いてみようと思いました。

投稿: golf130 | 2009年12月15日 (火) 08時46分

golf130さん、こんばんは。
気の毒なレオンカヴァッロに閑古鳥も泣いていたところ、コメントを頂戴しまして、草場の陰のレオンカヴァッロさんもお悦びのことでしょう(笑)
 パリアッチは、いいですね。
子供のときは、バットマンでの印象でしたが、大人になって嫉妬に狂う悲しい道化師の姿に涙したものです。
 歌曲やオーケストラ曲にもいいのがあります。
5月の夜なんて、たいそうロマンティックな音楽なんですよ。
マスカーニとともに、探究中でございます!

投稿: yokochan | 2009年12月15日 (火) 22時33分

今NHKFMで、正にこの演奏が放送されています。
時間がないので全曲は聴けませんが…
余談ですが、オペラアワーは以前は日曜の午後3時からの
放送でしたね。
日曜午後の楽しみだったのですが、放送日時がいつの日か
変更になり誠に残念です。

投稿: よしお | 2013年12月20日 (金) 14時45分

よしおさん、こんばんは。
そうでしたか、FMでやりましたか、裏ボエーム。
聴きこむと魅力的なオペラです。

そして、そうなんですよね。
日曜のオペラアワー。
アナウンサーは、後藤美代子さん。
もう日曜の定番でした。

平日の午後とは理解しがたい編成ですね。
文句つけることにしました!

投稿: yokochan | 2013年12月20日 (金) 23時40分

今(2014.3.28)NHK FMで初めて聴きました。レオンカヴァッロのラ・ボエームすごく(^v^)です。CDチョッと高いナー。プッチーニとは別の味わい。歌手も素晴しー。

投稿: しんちゃん49 | 2014年3月28日 (金) 17時19分

しんちゃん49さん、こんにちは。
以前にもFMでやってたようですね。
この隠れた名作が、こうして聴かれるようになることはよいことですね。
プッチーニの陰に隠れた、レオンカヴァッロやマスカーニ、それ以外の同時代オペラに、もっと日が当たることを願います。
このCDの演奏は、ほんと素晴らしいです。

投稿: yokochan | 2014年3月29日 (土) 09時25分

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