「アルヒーフの軌跡」
昨年、創業350年を迎えた「菊正宗」。
限定醸造の、大吟醸秘蔵古酒を飲ませてもらった。
大阪北新地にて、昨秋のこと。
ご贔屓のお店には、特別に「菊正読本」とともに、配布されたそうで、ワタクシも久しぶりに顔を出した店なのに、ご相伴に預かってしまった。
ただでさえ、辛口の菊正が好きなのに、大吟醸です。でも古酒入ってるから、すこしマッタリととろみがあって、濃い口。
お刺身のいいところ、ちょっとつまんで。
あとは、燗酒で、普通の菊正宗を。
今は、前みたいに毎日大量に酒を摂取しなくなったから、たまに飲むと、本当にお酒ってウマイ
こんな画像をみてるとやばいやばい。。。
今週の土曜日は、今年初めてのコンサートを予定しております。
神奈川フィルハーモニーの定期演奏会で、金聖響さんの指揮で、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスという大曲なのだ。
聖響さん、なんという大胆な選曲なのでございましょう。
いかなることになりますか?
そこで、以前から開封してなかったノリントンとシュトゥットガルトのCDを聴いて練習中(?)です。
これだけの、まさに「おごそかなる」大曲は、このところおいそれとは聴けないと思っている。大学生の頃に、開眼したこの美しいミサ曲。
あのヴァイオリン・ソロを伴うベネディクトスの場面で、落涙してしまった。
クーベリックとバイエルン放送のFMエァチェック音源でのこと。
それから、ジュリーニ&ウィーン響(FM)、カラヤン&ベルリン(FM)、ベーム&ウィーン(レコード)、バーンスタイン&コンセルトヘボウ(レコード)などを聴きまくり。
CDでも再購入し、リヒターの素晴らしいライブも手に入れたりしております。
いずれにしても、この曲に関しては古楽風の演奏から遠いところで、ずっと馴染んできた私である。
さて、金さん、どんな「ミサ・ソレ」を聴かせてくれますか。
確実に楽しみなのは、コンマス石田氏のソロでございます。
聖書の各伝に、「新しいぶどう酒を、古い酒袋にはいれない。そんなことをしたら、酒が皮袋を切り裂いて、酒も袋も無駄になるだろう」とイエスが語るたとえがある。
古くなったものに新しいものは合わない。
パリサイ人ら古い考えの人には、新しい創造はできないということ。
う~む、音楽にも言えるのだろうか??
今日は、変ったところを1枚。
「アルヒーフ・レーベル」のサンプラー盤。
だいぶ前に、アルヒーフの何だかのシリーズを集めて、特典でもらったもの。
もう10年以上前。
ドイツグラモフォンの古楽レーベルであるが、1950年代のモノラル時代からあるのでしょうか。
私のような、オジサン世代になると、いやでも「カール・リヒター」。
そして、「マタイ受難曲」といった図式がすぐにイメージされちゃうレーベルでありますな。
ほかには、ヴェンツィンガーやパウムガルトナー、ヴァルヒャ、フルニエ、ニコレ、ホリガー、メルクスなどなど。
そして、その分野もバロックからどんどん遡って、ルネサンスやゴシック、グレゴリオ聖歌までに広がっていった。
デジタル時代になると、ガーディナー、ピノック、コープマン、プレストンらが主流となり、今度は時代を逆流してベートーヴェンまでをカヴァーして、古楽的演奏を網羅するレーベルとなった。
いまや、アバドやラトルまでがDGと境界線がなく活躍しているわけで、かつて、リヒターがベルリンフィルを指揮したハイドンがDGから出たのと逆のことが起きている。
これは、いまの音楽界を考えるうえで、とても示唆的なことだと思う。
アバドのモーツァルトやペルゴレージは、これがアバドかと疑うくらいに、古楽演奏家のそれそのもの。でも決して窮屈で貧血的な演奏でなく、アバドらしく、そこには豊かな歌と厳しい音の練磨がある。
逆に、多くは聴いてないので、断定的なことは言えないけれど、古楽系の人が、ロマン派以降の作品にチャレンジすると、ユニークな視点を開示するものの、ちょっと歌不足で血が通ってないようになってしまうような気がする。
もちろん、古楽系の人とそうでない人を区分けすること自体がナンセンスであることは百も承知のうえですが・・・。
でも、今後こうしたクロスオーバー現象は、どんどん加速するだろうし、ピリオド奏法も普通に根付いて、ほんとうに味のある演奏も生み出されてゆくものと思う。
こんなことを、書きつつ、懐かしのアルヒーフの過去を思い、私も柔軟な耳と心で、これからも音楽を聴いて行かなくてはならないと痛感。
1.ベツレヘム教会の鐘の音
2.コプト聖歌
3.グレゴリオ聖歌(シオン修道院)
4. 〃 (ボンロン聖マルティン・ベネディクト)
5.インスブルクよ、さようなら(ムント指揮ウィーン少年合唱団)
6.テレプシコーレ(ノイマイヤー)
7.ムファット 合奏曲(アーノンクール)
8.クープラン 王宮の合奏曲(ハンブルク・テレマン協会)
9.ヴィヴァルディ 調和の霊感(パウムガルトナー)
10.バッハ フーガ (ヴァルヒャ)
11.バッハ 組曲第2番(リヒター)
12.バッハ イエスはわが喜び(リヒター)
13.ヘンデル 水上の音楽(ヴェンツィンガー)
14.ヘンデル ヴァイオリンソナタ(メルクス)
15.テレマン ターフェル・ムジーク(リンデ)
16.モーツァルト 旧ランバッハ(パウムガルトナー)
以上、いずれも抜粋。
今聴くと、正直、のどかでユルく感じてしまう。
でも先鋭さのない、いにしえの音楽を奏者が真剣に、かつ楽しみつつ演奏しているのがよくわかる。
ここにはまぎれもなく、音楽が人を感動させる音楽として存在している。
文献や学究から、大きく脱して、われわれが今(当時)聴く音楽として記録された古楽のスタートラインかもしれない。
そして、いま思えば、古楽ジャンルの大幅な拡充は、バロックオペラの盛隆をもたらしたし、ルネサンス時代の音楽の興隆は、アマチュアもふくめて楽しめるようになり、あの時代のイキイキとした人々の顔まで思い起こすことができるようになった。
音楽のジャンルがひとつ生まれたみたいで、これはとても大きなこと。
そして、その演奏様式が古典やロマン派の音楽にまで及ぶようになっている今。
確かに、いま、音楽好きとして面白い時代に生きている。。。
追)ノリントンのミサ・ソレ、結構、普通です。73分間。
相変わらず、ツィーツィーと弦楽器はやっておりますが、合唱や独唱が入ると救われます。ベネデイクトゥスもかなり美しい、歌ってます。でもエンディングは・・・、あっけない。
ただいま出張中につき、本記事は、スウィトナー死去のニュースを知る前のものであります。
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コメント
今晩は。
荘厳ミサ曲はレニーとジンマンとギーレンしか
もっていません。65分で演奏しているジンマンが
いちばん気に入っています。
最愛のガーディナーを聴いたことがありません。
漫画家の砂川しげひさ氏がベートーヴェンの
第10番だといっていましたが私もそう思います。
砂川氏は、サヴァリッシュ&バイエルンで
聴いたそうです。サントリーホールで、です。
新潟では滅多に上演されない曲ですね。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月14日 (木) 20時39分
こんばんは。まず、「ミサ・ソレムニス」はベーム、バーンスタイン、ショルティと名演がありますね。カラヤンは数回録っているが、ドイツ・グラモフォンでヤノヴィッツと共演したものを持ってます。
アルヒーフとは俗に言えば、ドイツ・グラモフォンのアーカイヴ・レーベルのことですね。ヴァルヒャのバッハによる「オルガン大全集」はおなじみの「トッカータとフーガ」から知られざる曲まで入ってます。後、手元にあるのはピノックのCDかな。
最近はレーベル事情が目まぐるしい。フィリップスがデッカに吸収されてしまい、プレヴィン、ハイティンクのフィリップス音源による再発売は皆、デッカから出ていることになってます。
ひどいのはAmazonが各CDの曲目リストを省いてしまった。これでは新譜が出た時、買おうか買うまいか迷っている時と不便です。リニューアルしていることも告知していない。これには怒りを覚えます。
出張、気をつけて下さいね。
投稿: eyes_1975 | 2010年1月14日 (木) 21時47分
お晩です。親の入院で長岡と新潟の間を大雪の中、車で往復する毎日です。
遠山桜のミサ・ソレ、興味津々です。面白いだろうなぁ。ベートーヴェンの最高傑作ですから体調を十分に整えて聴いてください。以前風邪気味で、大友=東響がりゅーとぴあでやったらを聴きましたんですが、ただただ煩いだけでありました・・・(合唱のヴィブラートは癇に障るし佐藤しのぶのソプラノがなぁ)。
持ってたのが、ジュリーニ&フィルハーモニー管弦楽団、トスカニーニ&NBC交響楽団、アーノンクール&COE、バーンスタイン&RCO、クレンペラー&ニューフィルハーモニア管弦楽団、ベーム&VPO、バレンボイム&CSO、ショルティ&BPO、ギーレン&ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、カラヤン&BPO(EMI)でした。アバド、録音しないのかなぁ。不思議とこれ、避けて通ってますよね(演奏経験もあったかどうか)。2011年ルツェルンの希望的観測によるマラ8が終わったら、2012年にやって欲しいものであります(ブル8、「大地」とともに)。
投稿: IANIS | 2010年1月15日 (金) 00時40分
yokochanさん、おはようございます
このアルヒーブのサンプラーは懐かしいです
私はLPで持っていました。
「ミサ・ソレムニス」とは関係ないので
申し訳ないのですがTBさせていただきました
投稿: 天ぬき | 2010年1月15日 (金) 10時22分
越後のオックスさん、こんばんは。
第10は、ブラームスじゃなくて、ミサソレだったのですな!
なるほどです。
多くの指揮者が愛してやまない作品ですね。
サヴァリッシュは歌劇場のオーケストラとの特別演奏会です。わたしも聴きた買ったです。
投稿: yokochan | 2010年1月15日 (金) 21時33分
eyes_1975さん、こんばんは。
ただいま帰還中です。
日本列島各地、冷え込んでますね。
レーベル統合も冷え込んだレコード産業の証しです。フィリップスのアーティストがデッカブランドで出てくると、ピンときませんねぇ。
ソニーとBMGもそうですし。
アルヒーフは、由緒正しく存続して欲しい取っ手だすよね。
カラヤンのミサソレは、お持ちの60年代DG盤が壮麗で、一番いいと思います。
投稿: yokochan | 2010年1月15日 (金) 21時43分
IANISさん、こんばんは。
親御さん、お見舞い申し上げます。
大変ですが、IANISさんも気をつけてくださいよ。
しかし、ぎょうさんミサソレ持ってますねぇ〜
金さんミサソレ、正直、怖いもの見たさではありますが、神奈川フィルの美音が聴かれるかどうかが、今回はかかっております!
アバドとともに、ハイティンクの録音もないですね。ハイティンクのウィーンフィルとのFM録音を持ってますので、今度お聞かせします。
アフター・マーラーのアバド、あげられた3曲に大賛成。
あとマタイとロ短調、パルシファルも希望します(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月15日 (金) 21時56分
天ぬきさん、こんばんは。アルヒーフ・サンプラー、レコードもあったのですか。このレーベルらしい、いいジャケットですよね!
ミサソレは、新監督の下でいろいろありそうな、神奈川フィルのコンサートに向けての付け足しで、本題はアルヒーフであります(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月15日 (金) 22時02分
ミサ・ソレムニス、ガーディナー盤なら持っていますね~。
アルヒーフつながりでこれならアリなコメントでしょうか?(^^;
昔はクレンペラー盤を聴いていたんですが、あのCDはどこにやってしまったのでしょう、なぜか家から姿を消しています(^^;
ともかく、ミサ・ソレムニスは偉大すぎて自分には過ぎた曲ですよ~
↑単にグローリアまでで力尽きるという話ですね。
ベネディクトゥスは他の方からも大々々々々傑作だから絶対に聴くべしと言われましたが、そこまでたどり着けません(苦笑)
そのくせ「オランダ人」は面白くなってきていたり。
自分の脳内回路は一体どうなっているんでしょう?(^^;
投稿: ライト | 2010年1月15日 (金) 23時13分
ライトさん、こんばんは。
ミサ・ソレ=ガーディナー=アルヒーフ、見事な流れですねぇ(笑)
私もよく、CDが行方不明になるんですが、忘れた頃にひょっこり出てきますが、遭難CDに出会えた喜びはあまり感じないのが不思議です。
聴きたいときが、価値ある、ということなのでしょうね。
ミサソレを一度、逆から聴いてみたらいかがでしょう。
オペラも結末から入ると、そこを楽しみに聴くようになり、意外とすんなり入れる作品がありました。
私の脳内回路は、キレギレでもっと悲惨ですよ(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月16日 (土) 00時11分
Archivレーベルと申しますと、CD化を渇望しながら、未だに望みが叶って居ないディスクが、あるのです。『第8交響曲』のチェンバロ編曲版で、レナード-ホカンソン、ピアノ-ソナタや弦楽四重奏曲から歌曲に編曲されたものを、ヘルマン-プライが唄ったアルバムですね。『2533-121』と言う輸入盤番号でした。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月 5日 (日) 08時20分
ご指摘のレコード覚えてます。
第8交響曲はリストの編曲によるものでしょうか。
アルヒーフはメルクスの演奏など、CD化されてないものが何気に多いですね。
いずれも、過去を懐かしむことができそうなので、CD化が望まれますね。
投稿: yokochan | 2020年1月 8日 (水) 08時30分