ドヴォルザーク 交響曲第8番 バルビローリ指揮
私の郷里の神奈川の小さな町では、小さな山の上に、もう菜の花が咲いております。
お正月3日。
箱根駅伝見物の帰りに娘と登頂。
向こうには、相模湾、そして真鶴半島。
伊豆、箱根、富士、丹沢(大山)が360度ぐるりと見渡せます。
前にも書いたことですが、この山の麓の駅前には、小学校があり、そこが私の母校。
当時は、山頂にこんな公園が整備されてなくて、あるのは神社だけ。
日本武尊が海路やって来たときに嵐に会い、妃の弟橘姫命が入水し、嵐を沈めたのが、相模湾。
櫛が流れ着き祀ったのが、ここ「吾妻神社」で、日本武尊が「あぁ、わが妻よ・・・!」と嘆いたことから、この山は「吾妻神社」と言われております。
着物の袖が流れ着いた海岸が、「袖ヶ浦海岸」ですが、数年前の台風で、浜辺が消失してしまいました(悲しー)。
そして、海沿いには、「橘」という地名もあるんです。
ちっちゃな町だけど、これだけが自慢かな。
あとは小さなホールがあって、ここではコバケンもきちゃったし、来月は、安永徹さんもやって来る。
「ちあきなおみ」や「欽ちゃん」も住んでるんですよ(笑)
ふるさと自慢は、このへんにして、今日のさわやかシンフォニーです。
ドヴォルザークの交響曲第8番ト長調。
いまや、「新世界」と並んでドヴォルザークの超人気曲となっておりますね。
私が子供のころは、いまほどでなく、新世界一本。
たまに「イギリス」なんて、らしからぬ呼び名で取り上げられていた。
イギリスの出版社から出されたことから、「イギリス」と呼ばれていたが、全然英国じゃぁなくて、まさに「ボヘミア」ののどかな自然を思わせる桂曲なのです。
例によって、昔話から・・・。
私のこの曲の初聴きは、1970年。
その2年前に、「新世界」によって電撃的なクラシックとの出会いをしたワタクシ。
同じドヴォルザークということで、テレビ放送された「8番」の演奏にかじりついた訳だ。
テレビにマイクを押しつけちゃって、「みんな静かに」、と家族を制しテープレコーダーに録音して、飽くことなく聴き続けたのであります。
第3楽章の舞曲風の優美なワルツがことのほか気に入りましてございます。
岩城宏之とNHK交響楽団の演奏でありました。
その後たくさん聴いたけど、ずっとずっと聴きたいと思っていた演奏が、バルビローリとハルレ管弦楽団のもの。
これは、音楽評論家のデーヤンこと、出谷さんが、推薦しまくっていた演奏で、レコードでは廉価盤として、パイレーベルをテイチクが出していたものがあったが、長らく廃盤で、CD時代になってようやく手にすることができたアルバムなのだ。
デーヤンは京都在で、一度、京響のコンサートでCafe Elgar店主さまのご紹介でお会いすることができた。今思えば、この演奏のお話を聴かせていただくのだった。
ステレオ初期の録音で、音は鮮明ながらも時おりカスレたり混濁したりするので、お世辞にもよい音とはいえない。
でもですよ、この演奏は録音状態なんか超越して、ともかく素晴らしい。
素晴らしいなんて表現は、わたしのブログの常套句だけど、この8番の自分の思う理想形的な演奏に思うのだ。
知・情・意、ずべてが整っていながら、情の部分が勝っている。
バルビロ-リの音楽にあてはまる図式だけれど、イメージとしては、ウィーンフィルとの名盤のブラームス2番や、シベリウスの1番の情熱、「蝶々夫人」の悲しみの激情などを思い起こして欲しい。
バルビローリの録音によく聞かれる「唸り声」も隋処に漏れてきます。
音楽を一音一音、慈しみながら、気持ちを込めて歌いつくすバルビ節満載。
これがイコール、ドヴォルザークの郷愁みあふれた旋律の数々と完璧なまでに結びついて、聴くわたしたちを幸せの境地へと誘ってくれる。
2楽章と3楽章が、ともかく最高。
思い切りゆったりと、愛情たっぷりそそぎこまれた、このふたつの楽章には、滋養や養分がたっぷりとしみ込んでいて、それをただただ気持ちよく受け取るのみ。
ほんと、気持ちがいいんだから
1楽章の弾むリズムと、コーダのアッチェランドも素晴らしく、これはまさにオペラ指揮者のサー・ジョンの手腕。
終楽章の人懐こい旋律が変奏を重ねる中にも、どこかにこやかなバルビのご尊顔が浮かぶようで、オケは下手くそな場面があるが、そんなことも味わいのひとつになってしまう。
最後に切る大見得も、バルビローリならではで、ものの見事に決まってしまう。
新春さわやかシリーズとしては、やや異質かもしれませぬが、曲が本来、さわやかで和み力があるので、お許しを。
1889年、これもまさに世紀末の時代の音楽なのです。
マーラーは2番を作曲中だった。
ほのぼのと、いい曲でございますなぁ~
今日のドヴォルザーク、迷うことなくバルビローリを取り上げたけど、ブロムシュテットとドレスデン、スゥイトナー、ジュリーニ(シカゴ)、アバド、チョンさま、小澤さん、プレヴィン、セルなどなど、わたしの好きな演奏がたくさんありますよ。
このバルビローリ盤は、後期3曲と合わせて廉価にて入手可能であります。
追記)
今朝の民放でも小澤さんの食道がんの会見を放送し、世界の小澤という略歴を紹介していた。さすがはマエストロ小澤さん。
でもこの局は、表面的な報道に終始していて誤解を呼ぶこともしきり。
たとえば、アメリカでの活躍を映像はボストン響なのに、アナウンスはサンフランシスコやシカゴで活躍と言ってたし、日本人としてウィーンフィルを初めて指揮したともあったが、確かにザルツブルクで「コシ」を振ったのが初かもしれないが、日本人としての快挙はウィーンフィルの定期に初めて登場した岩城さんの方が定期演奏会ゆえに大きな出来事に思う。
それと、小沢幹事長との会見も放送し、天下りはけしからん的な話し合いをした、とかいう内容になっていた。それもひとつだが、小澤さんの思いは、事業仕訳けによりオーケストラへの援助が薄くなることを危惧して会見したはずなのに、テレビは一切そのことには触れず。
明らかに報道にミスリードされてしまった内容に朝から憮然とした次第。
いつもお世話になってます、romaniさんと、minaminaさんが、小澤さんのドヴォ8を期せずして取り上げてらっしゃいます。嬉しい選曲に素敵な演奏の選択にございますね。
この菜の花の向こうは、桜の木。
春には、まだ残る菜の花と桜が同時に楽しめます。
普通にスニーカーでヒョイヒョイと登れます。
麓のコンビニで、ビールとお弁当を仕込んで、みなさんどうぞお越しください
| 固定リンク
コメント
お早うございます。
私もクラヲタになったばかりの頃にドヴォルザーク8番を聴きました。私もやはりクラヲタになるきっかけになったのは新世界よりでした。小学校の音楽の時間に新世界よりの第4楽章を聞いたのです。そして家にあったライナー&シカゴの新世界より全曲のLPを聴きました。それからセル&クリーヴランドやカラヤン&ウィーンフィルの新世界よりも聴きました。中学時代のことです。初めて聴いた8番はノイマンとチェコフィルの演奏でした。中学2年のときのことです。今はドホナーニ&クリーヴランドやメニューイン&ロイヤルフィルで聴いています。ドヴォルザークの全交響曲を聴いたのは比較的最近でブリリアントのコシュラー他が指揮した全集で聴きました。忘れた頃になって聴きたくなる作曲家ですね。バルビローリのドヴォルザークは興味はあるのですが未聴です。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月 9日 (土) 04時38分
本年もよろしくお願い致します。
これ、好きです。テイチク=パイのLPは持っていて、2枚組でドヴォルザークの7~9番が入っているという詰め込みもの(同じシリーズでチャイコフスキーの4~6番というのもありました)でしたが、よく聞きました。3楽章がチャーミングなんですよねぇ、特に。と思って棚を探してみたら、LPは無かったですが3枚組のCDを見つけました。3曲の交響曲に管弦楽曲が何曲かと、ブラームスのドッペル・コンツェルトまで入っている徳用盤でした。へぇ、カンポーリ&ナヴァラかぁ、これ聞いてみます。
投稿: ガーター亭亭主 | 2010年1月 9日 (土) 07時26分
yokochanさん、おはようございます。
私も小さい頃にテレビの前のマイクを置いて録音していたものです。yokochanさんも同じだったんですね(^^
8番を最初に聴いたレコードはシルヴェストリ/ロンドンフィルによるセラフィム盤でした。これは今でも処分せずに保存しています。
小沢氏ですが、ごく初期の癌ということなので完全復活してくるでしょう。
小沢氏の8番は昨年末に拙ブログでも取り上げました。
お粗末なものですがトラックバックさせていただきます
投稿: 天ぬき | 2010年1月 9日 (土) 09時57分
越後のオックスさん、こんにちは。
新世界はやはりこの道の登竜門ですね。
私の初レコードでもあり、ケルテス・ウィーンフィルの名盤でした。
新世界は、たまに聴くと、ほんとに名曲だなぁ、と思うのですが始終聴く音楽ではないと思います。
たいする8番は、いつでもOK。
人懐こいドヴォルザークの音楽は、日本人向けかもしれませんねぇ。
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 16時02分
ガーター亭亭主さん、こんにちは。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
やはり、ご存知でしたか。そしてお持ちでしたか、テイチク=パイ盤。
チャイコフスキーの後期も合わせて、ディスキーが廉価盤セットにしているようです。
私の2枚セットには、二重協奏曲がさすがに入りきれなかったようで、ソリストがとても魅力的ですねぇ~。
ともかくバルビのドヴォ8は、素敵な演奏です。
まさに、>チャーミング<と呼ぶにふさわしいです。
昨晩は、3回も聞いちゃいました!
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 16時09分
天ぬきさん、こんにちは。
TBもありがとうございます。
小澤盤も人気がありますし、ウィーンフィルの魅力が堪りませんね。
FM放送というものをロクに知らなかった子供でしたので、テレビのマイク録音でした。
ゲバゲバ90分なんてのも録音してましたよ(笑)
イヤホンジャックから録音できることを知ったときは愕然としましたし、FM録音に目覚めたら、あらゆるジャンルをエアチェックしまくりの小僧でした。
シルヴェストリは懐かしい名前ですね。
当時のセラフィムには、貴重な録音がたくさんありましたね。
わたしも、昨秋人間ドックに入りました。
数々の指摘を受けましたが、まぁ知らないよりはましです。小澤さんの復帰時は、ちょっと大変なことになりそうですね。
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 16時15分
こんばんは。ドヴォルザークの「第8番」って私の知っている範囲ではカラヤンはウィーン・フィルの2種があり、ベルリン・フィル録音は聞かないそうです。初期のデッカと晩年のドイツ・グラモフォンが手元にあります。評価が高いのはドイツ・グラモフォンの方ですが、私としてはデッカの方がフレッシュな感じがします。そして、ベルリン・フィルになるとアバドとクーベリックになります。「全集」はノイマン、チェコ・フィルでしたが、後からクーベリックのも購入。またまた、不思議なのはクーベリックは「交響曲」はベルリン・フィルでほとんどチェコ物はバイエルン放響がメインなのよね。
他はメータ、ロサンゼルス・フィル。サヴァリッシュ、フィラデルフィア管が好演奏です。この共通するところは「第7~9番」を取り上げている。(メータは「第7番」だけがイスラエル・フィル)
小澤さんは心配ですが、著名人ががんを克服した例がたくさんあるので希望を捨てないで早い復帰を祈ってます。
投稿: eyes_1975 | 2010年1月 9日 (土) 20時48分
初めて買った「新世界」のLPがバルビローリ盤でした。(コロンビアのダイヤモンドシリーズという廉価盤)ブリリアントクラシックスから7〜9番が出ているのを見てずっと気になっていました。
なかなか良さそうですね!今度聴いてみたいです。
投稿: golf130 | 2010年1月 9日 (土) 21時01分
大切なことを書き忘れていました。アシュケナージ&コンセルトへボウが、86年に長岡に来たことがあるのです。コンセルトヘボウはその年、ヨッフムとアシュケに率いられて来日したのです。長岡公演の指揮はアシュケで、曲目はドヴォ8とモーツァルトのコンチェルト(何番かは忘れました)をメインにしていました。自他共に認めるアシュケヲタの私はこの公演に様々な事情があって行けなかったのです!わが生涯最大の無念の一つです。未だにアシュケのライブは聴いたことがありません。でも37年生まれの彼はまだ72歳ですし、チャンスはまだあると思っています。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月 9日 (土) 22時30分
eyes_1975さん、こんばんは。
いつもお世話になりましてありがとうございます。
カラヤンの2種のウィーン盤では、新盤は聴いたことがなく、旧盤のほうに愛着があります。
ブラームスの3番とカップリングされて出てましたね。
昔のいい頃のウィーンフィルの音がしてました。
アバドは、わたし的にはバルビローリと2大演奏かもです。
全集はスウィトナーしか持ってませんで、クーベリックとノイマンは将来の課題ですね。
7~9は、多くの指揮者が録音してますし、いい演奏が多くて悩みます。それだけ名曲なのでしょうね!
小澤さんの飄々とした会見は、明るくすらありました。
きっと元気に戻ってきますよ!
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 23時11分
golfさん、こんばんは。
そうなんです。
新世界はダイヤモンド1000シリーズにありましたね。
それと悲愴も。悲愴は、私の初悲愴でした。
いずれも英国のパイレーベルですが、テイチクが版権を持ってレコードにCDにとかなり安く出しました。
7と8番も、ともかく粋で素敵な演奏ですから、是非にも聴いてみてください。
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 23時15分
越後のオックスさん、たびたびありがとうございます。
アシュケナージのドヴォ8の来日演奏、行きませんでしたが、覚えてますよ。
せっかくのコンセルトヘボウの来日なのに、軽めの曲ばかりで触手がそそられなかったのも覚えてます。
これだからいけませんね(笑)
フィルハーモニアがラトルとマリナーで来たときは、ラトルがシベリウスやブリテン。
マリナーがメンデルスゾーンやドヴォ8を演奏しました。
適材適所のナイスな演目でした。
アシュケナージの次回来日はN響で、マーラーを演奏しますよ。
あといずれシドニー響を引き連れてやってくるのではないでしょうか!
投稿: yokochan | 2010年1月 9日 (土) 23時21分
記事に刺激されて、今日は朝から手持ちのドヴォ8のCDを取っかえ引っかえ聴いております。なんと17枚もありました。困ったものです。カラヤンはベルリン・フィルのほうもいい演奏ですね。それにしても、こんなにあるのに何故かバルビローリはありません。いつかは聴かなければ!(まだ増える^^;)
手持ちのなかでのベストは、アンチェルのコンセルトヘボウ・ライブ(1970年)です。Great Conductors of the 20th Century なるシリーズものに収められたこのお宝音源、いったいどれだけ聴かれているのかわかりませんが、実に素晴らしい演奏なのであります。このシリーズ、あまり話題になりませんでしたがなかなかよい仕事をしております。ヘボウ・サウンドを愛する方々には、ベイヌムのセットに収められた「シュエラザード」もお薦め致します。
投稿: 白夜 | 2010年1月10日 (日) 17時02分
白夜さん、こんばんは。
ドヴォ8、17種とはまた驚きです!
ドヴォ8がお好きなんですね!
是非ともバルビローリの洒落た1枚もそこに加えてみてください(笑)
アンチェルとコンセルトヘボウがあるのですか。
ご案内のシリーズは、J・シュトラウス欲しさにジュリーニを持つのみで、ダブりが発生することからあまり購入しませんでした。
よくよく見ると、レーベルをまたいだ好企画ですね。
アンチェルにベイヌム、覚えておきます。
ご案内どうもありがとうございました。
投稿: yokochan | 2010年1月10日 (日) 21時20分
yokochan様
LP時代にテイチク(私などは、演歌や歌謡曲主体のレコード会社であった‥とのイメージが強いですけれども)から出ていた、バルビロリ&ハレ管弦楽団の、イギリスPyeレーベル原盤の音源は、現在はWarnerあたりに、吸収されてしまったのでしょうか。
テイチク社、ドイツ・ハルモニア・ムンディの、フランツ・ヨーゼフマイヤー率いる、コレギウム・アウレウム合奏団の録音も、出しておいででしたね。
投稿: 覆面吾郎 | 2024年9月17日 (火) 10時30分
子供時代、1000円の廉価盤レコードは、通常盤の半値で極めて重宝しました。
コロンビアのダイアモンド1000シリーズには、パイレーベルのものがいくつかありました。
そのあとに出たのがテイチクの廉価盤シリーズで、名の知らぬ指揮者と北西ドイツフィルのブラームスの交響曲が2曲とか、新世界と田園とか、ともかく詰め込みがすごかったのをよく覚えてます。
そのあとに来たのがパイ原盤シリーズで、バルビローリやボールトの演奏でした。
ドイツ・ハルモニア・ムンディの日本発売元もご指摘のとおり、テイチク社が手がけ、BSFレーベルの発売もありましたが、BSFのレコード撤退もあり、その後はクラシックから撤退してしまいました・・・
どんな形であれ、もう一度聴きたいものです。
投稿: yokochan | 2024年9月22日 (日) 22時01分