ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第12番 アルバン・ベルク四重奏団
ウィーンの中央墓地にある、ベートーヴェンのお墓。
いまのところ、生涯唯一の新婚旅行、あ、いや、ウィーン旅行で訪問。
もう大昔ですよ。
当然、アナログカメラでの撮影。
ドイツが東西に分かれていたけど、その年に壁が崩れた。
東西の接点みたいなウィーンは、観光客には見えないものがあったのかもしれない。
そして、日本に帰ってきたら4月に入っていて、消費税が施行されていた。
何かと忘れられない年であります。
地下鉄で中心部からずいぶんと走ったところにある中央墓地。
作曲家のお墓やモニュメントが群生していて、お墓に目移りしてしまった(笑)
昨年暮れの第9から、ミサソレムニスを経て、ベートーヴェンの後期様式の作品を確認している。
最後は、弦楽四重奏曲を聴きます。
11番のセリオーソ(作品95)以来、十余年が経過。
ロシアの貴族ガリツィン侯爵から、作曲依頼があったものの、第9やミサソレ、ピアノソナタに取り組んでいたので、久しぶりの四重奏曲が仕上がるのは、しばらく時間がかかった。
こうして出来上がったのが、弦楽四重奏曲第12番変ホ長調 作品127。
第9が作品125だから、作品126が気になりますねぇ。
調べましたら、6つのバガテルでした。(これも聴いてみなくては)
ベートーヴェンの後期様式をわたしは、明確に言い表せないけれど、弦楽四重奏曲においては、この作品127を含む最後の5作品に大フーガが、後期四重奏曲としてひとくくりにされる。
このあとは、出版順に番号がついているから、作曲順を番号でいくと、12→15→13→14→16ということになるらしい。
実はこの順に聴いてゆくと、一口に後期様式といっても、後へゆくほど解脱して、いやむしろ違う領域へと向かいつつあった、そのあとにも次が来るといったような進行形的なものを感じるがいかがだろうか。
いずれじっくりと聴きなおしてみたいと思っている。
12番は、さほど難しいことを考えなくても、素直に聴きやすく、そして溢れ出る素晴らしい旋律に満ちている。
なかでも、第2楽章は美しくも心を安寧に導く平安の音楽である。
第9の3楽章のように歌謡性にあふれ、変奏曲形式となっているので、モティーフは単純ながらも、どこまでも続くかのように思われる天国的な調べとなって、思い切り浸りきることができるのだ。
お休みまえに、この楽章を聴いて寝れば、ぐっすりといい眠りがとれそう。
特徴的な和音で開始される素直で明るい1楽章、先の素晴らしい2楽章をはさんで、3楽章は変幻自在のスケルツォ、終楽章は楽想が見えにくいけれど、聴きこむとなかなかに魅力があって、ちょっと幻想的。ミサソレの最後、アニュス・デイに似てると思ったのは私だけ?
全体に明るい基調の12番は、一口に後期群と一緒にできない雰囲気もありますな。
アルバン・ベルク四重奏団の明快で、かつ緻密な演奏は完璧。
かつてはスメタナ四重奏団の演奏を盲信したが、それに比べると、微笑みの要素がかなり高い。
あとは、最近の若い四重奏団の演奏も聴いてみなくてはなりませんね。
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コメント
アルバン・ベルク四重奏団は最後の解散コンサートでようやく実演を聴くことができました。ノンヴィヴラートを織り交ぜた第15番のモルト・アダージョは精緻できめ細やかな、まさに音の織物でした。アンコールの第13番のカヴァティーナが終わり、いつまでも終わらないで欲しいという願いがホール全体を包み込んで、まるで時が止まったかのような静寂に胸がいっぱいになりました。
長らくズスケに親しんできたわたしでしたが、今ではベートーヴェンの弦楽四重奏曲というと真っ先にあの日のことを思い出すようになりました。カクシュカ健在のうちに聴いておくべきだったと悔やんでも後の祭りですが、残された録音を大切に聴いていこうと思っています。
投稿: 白夜 | 2010年1月22日 (金) 00時52分
お早うございます。
ベートーヴェンの四重奏曲全集は、アルバン・ベルクとグァルネリとアレクサンダーとコダーイのをもっています。アルバン・ベルクのがマイ・ベストです。スメタナ四重奏団のは未聴です。初期と中期の四重奏曲は大好きですが、後期のは私にはまだ難しすぎます。大学時代に恩師が「年を取らないと後期の四重奏曲は分からないと思う」と言っておられました。私が始めて独逸語を教わった教授です。私のヘルダーリン好きはその先生の影響です。その先生の形見のヘルダーリン全集は私の宝物です。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月22日 (金) 03時32分
やっべ〜、忘れていたよ。仕事などでもたまに(時々(笑))あります。
まあ、意図的に忘れた振りをして後回しにしている件も多いですが。
昨年、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を改めて聴き直そうと思っていたのですが、確か2、3曲で止まっていました。また、再開せねば。
全集としてはアルバン・ベルクが唯一の手持ちですが、他も色々聴いてみたいと思っております。
投稿: golf130 | 2010年1月22日 (金) 07時40分
後期の弦四で、私が所持するのはアルバン・ベルクは第15・16番のみで、後はブダペストとバリリ。どちらも古いですが(^-^/)・・・。
この第12番はバリリ四重奏団のモノラル盤でした。後期の作品の中ではあまり聴かなかった方ですが懐かしい一枚になっています。
投稿: crest | 2010年1月22日 (金) 09時43分
yokochanさん、おはようございます
ジャケットは違いますが同演奏のCDは大の愛聴盤です。
16番とカップリングされたものですが、どちらの曲もこの演奏がマイベストです。12番は清澄な曲想とABQとの資質がマッチした逸品かと思います。
投稿: 天ぬき | 2010年1月22日 (金) 11時04分
今晩は。yokochanさんはオペラと後期ロマン派の人と思っていましたが、さすがですね。
ABQのベートーヴェン全集は当然持ってますが、新潟で実際に聴いたとき(音楽文化会館-400名程度の小ホールです)、あまりにピヒラーの音が汚くって並行した記憶があります。プロは7番と12番。楽聖の近い作風としては「英雄」と第7というところですが、その演奏に接して以来、ABQが大嫌いになりました。その後聴いたクリーヴランドやフェルメールの音楽の高貴な演奏スタイルと音の美しさは格別で、なおさらABQの演奏の粗が際立ってしまいましたっけ・・・。
それ以来僕の中でのABQは死語になっています。
ライヴのたった一回の出来不出来がその演奏家の印象を決定してしまうのは暴論であることは承知していますが、期待が大きかっただけに裏切られたという思いはより強いものです。
それ以来、過剰な思い込みをもって演奏会にいくことをやめました。
ABQとは直接関係ないことです。ご容赦を。
投稿: IANIS | 2010年1月22日 (金) 19時16分
越後のオックスさん、こんにちは。
わたしが、ベートーヴェンの四重奏曲を聴きだした若かりし日は、ラズモフスキーばかり聴いてましたから、同じようなものであります(笑)
後期は、スメタナSQで大学時代聴いて、澄み切った音楽に素直に感激。
あと、バーンスタインのオケ版でしょうか。
歳食いましたので、これからしみじみと味わいたい心境ではあります。
恩師さまとのエピソードは、大切な思い出ですね!これからも、大事になさってください。
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 19時59分
白夜さん、こんにちは。
ABQのラストコンサート、横浜の音楽堂で行われるのを横目にしながら、神奈川フィルを聴いてました。連チャンでも、無理して聴けばよかったと悔やまれます。
コメント拝読してて、会場の雰囲気が手に取るよいにうかがわれ、感動してしまいました。
ABQは、極限まで完成された団体になって終わったのですね。
カクシュカ追悼にアバドを初めとする名音楽家が集まったのも彼らの偉大さを物語ってますね。
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 20時08分
golfさん、こんにちは。
わたしも、シリーズ聴きを鳴り物入りではじめたはいいが、止まっるものがたくさんあります(笑)
すっきりさせたいけど、寝ると忘れちゃいます(涙)
普段離れていた、ベートーヴェンのソナタな室内楽に、今週は心洗われる思いでありました。
手頃だし、素晴らしい演奏だから、ABQにしましたが、いろいろ聴いてみたいと思ってます〜これは忘れないようにしないと!
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 20時22分
crestさん、こんばんは。
バリリ四重奏団のものは、むかし、レコ芸で大木正興さんが絶賛されてまして、聴いてみたいと思ったまま、いまだに、その機会を持っておりません。
こうして、皆様にいろいろお教えいただくと、高名な過去演や、最近の演奏などなど、ともかく聴いてみたくなります!
ブタペストのCBSソニー盤も、レコード時代欲しかった一品ですが、いまだに・・・(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 20時31分
こんばんは。名高いアルバン・ベルクは分売で出ていますが、「全集」で買う機会がなかったです。「中期」に集中してます。
「全集」はメロス四重奏団を持ってます。「中期」以外の曲も聴いてみたくて購入しました。やはり、シューベルト、メンデルスゾーンと今だ、メロスは「全集」として見かけます。
走れメロスと行きたいですね。ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲」を一通り聴くには「全集」が最適だそうですね。
投稿: eyes_1975 | 2010年1月22日 (金) 20時42分
天ぬきさん、こんばんは。
分売だと16番との組み合わせなのですね。
いい曲通しのカップリングです。
そしておっしゃるように、ABQの資質とぴったりでの演奏でした。
ワーグナー漬けの、わたくしにとって、なんとすっきりと、そして心に沁みる音楽であったでしょうか!
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 23時46分
IANISさん、こんばんは。
数は多くはありませんが、クラヲタというからには、このようにして一通り揃えております(笑)
IANISさんは、ABQとのライブの出会いがまずかったのですねぇ。
もう解散して、名誉挽回の機会は失われてしまいましたが、私の某若手指揮者のようですねぇ。
でも、私は彼を見直すべく努めておりまして、その機会がまだ多く残されていることにも恵まれておりますです、はい。
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 23時51分
eyes_1975さん、こんばんは。
メロスSQのベートーヴェンは、まだ聴いたことがないです。
皆さんのお薦めやお聴きの演奏を、こうして拝見づるだけで、触手が動いてしまいます。
まったく困ったものです、ヲタやってますと・・・・。
明日、HMVかタワーに、走る私が見えます(笑)
ベートーヴェンの四重奏曲は、1枚1枚買うとダブり買いをしそうだし、ほとんどの団体が全曲入れてますから、全集を手に入れたほうが安全ですね!
投稿: yokochan | 2010年1月22日 (金) 23時56分