ヴォーン・ウィリムズ 「田園交響曲」 B・トムソン指揮
「柚子」です。
実家の庭にたくさんなっておりました。
いくつかもらってきて、煮物や汁ものの香り付けに使っております。
今夜あたりは、お風呂に浮かせようかとも思っております。
どちらも、ほのぼのとした気分になりますなぁ~。
春から夏、和食には、木の芽だけれども、冬は柚子がいい。 新春さわやかシンフォニーは今日が最終回。
まだまだ、さわやかにしてくれるシンフォニーはたくさんありそうだけれども、ほかのシリーズものも待機してるし、通常業務に戻りましょう。
今日は、番号順に取り上げているヴォーン・ウィリアムズ(RVW)の、「田園交響曲」でまいります。
番号でいうと、交響曲第3番「田園」ということになる。
RVWの交響曲は、ベートーヴェンと同じく、9曲あるけれど、偉大な先達と同様にそれぞれが一曲一曲で内容の異なるものとなっている。
でも純音楽としての交響曲というよりは、表題性の強いものも多いのも特徴で、番号として呼ばず、表題交響曲として呼ばれる。
「海の交響曲(1番)」、「ロンドン交響曲(2番)」、「田園交響曲(3番)」、「南極交響曲(7番)」というような感じ。
田園の副題を持つ音楽って、結構あります。
当然に、ベートーヴェンの交響曲にピアノ・ソナタ。
バロック期のクリスマス・コンチェルトは「パストラーレ」という楽章があるがゆえに、クリ・コン(クリスマス・コンパじゃないよ!)と呼ばれるようになったし、バッハ、ヘンデルのオラトリオでもシンフォニアとして挿入されている。
これらは、イエスが生まれたときに星を見た羊飼いにまつわる意味でのこと。
古くは、田園劇として宗教劇にもルーツをさかのぼることができるかもしれない。
あとは、ずっと下って、本日のRVWの田園に、ドップラーのフルート曲(ハンガリー田園幻想曲)や、プーランクのチェンバロ協奏曲(田園のコンセール)などが思い浮かぶところ。
ほかにもありそう。
こんなわけで、田園にまつわる音楽はいくつもあるけれど、こうした流れを考えてみると、その根底には神や自然に対する感謝の念があるのがもしれない。
RVWの「田園交響曲」は、でもベートーヴェンのような感謝の音楽ではない。
この曲を着想したのは、北フランスにいたときのことで、その内容は以前のボールト盤の記事に書いたとおり。
英国のなにもない、なだらかな緑の丘や、厳しい大地などの心象風景が根底にあって、第一次大戦亡くなった人々へのオマージュも織り込まれている。。。
第1楽章「モルト・モデラート」、第2楽章「レント・モデラート」、第3楽章「モデラート・ペサンテ」、第4楽章「レント」
こんな按配で、全編これモデラート。ゆったりとした流れの中に、明確な旋律線もつかめないまま、たゆたうように音楽は進行する。
RVWらしい、異国情緒も感じさせるペンタトニック調もあり、鄙びた田舎風の旋律も顔を出し寂しげであったりする(1楽章)。
そうした中で、トランペットが営巣ラッパ風の、これまた寂しいソロを吹くのが印象的で、物悲しい(2楽章)。これを聴くと、わたしは刃に倒れ伏しているトリスタンの心にある北イングランドの海と城の風景を思い起こすことができる・・・・(行ったこともないのに)
テンポが唯一あがるスケルツォ楽章は、民謡調で懐かしい響き(3楽章)。
でも終楽章には、また前半のような静かでゆったりとした雰囲気に戻る。
ここでは、ソプラノの無歌詞の歌が心に沁み入るように歌われ、哀歌のようにも感じさせる。やがてオーケストラが全体を回顧するかのように時にボリュームをあげつつ様々な表情を示すが、最後にはそれも静まって、弦の持続音の上にソプラノの歌が入り、フェイドオウトしながら静かに曲を閉じる。
まるで後ろ髪を引かれるかのような印象的な終結・・・・・
1921年、RVW49歳のときに完成。
これより前、1904年の、交響詩「沼沢地方にて」(In the Fen Country)も、この交響曲と同じようなムードの情緒あふれる曲。
そして、のちの交響曲第5番も、静かで心癒されるシンフォニーであります。
ブライデン・トムソン指揮 ロンドン交響楽団
S:イヴォンヌ・ケニー
(87.11@ロンドン)
ブライデン・トムソンの男性的で、鷹揚な指揮で聴く「田園交響曲」は、ボールト以上にゆったりとした時間が流れてゆくのを感じるし、スコティッシュらしく自分の見てきた風景そのものを、慈しむかのようにじっくりと再現しているかのよう。
私は、トムソンが大好きで、彼の音源をかなり揃えているが、思わぬ情熱のほとばしりをい感じることがあって驚くときもある。
録音は、交響と声楽作品ばかりだが、きっとオペラを振っても面白い人だったであろう。
91年に63歳で亡くなってしまった。
ヒコックスとともに早世が悔やまれる指揮者で、ハンドリーもふくめて、英国音楽の使者でもあったトムソン。
誰が英国音楽の指揮の伝統を引き継いでゆくか・・・・。
M・エルダーとワーズワース、Jジャット、ロイド・ジョーンズ、ボストック。
この人たちに期待したい。あと、ボルトンやマクローシュも変貌するかもしれない。
A・デイヴィスやノット、テイト、ラニクルズらはオペラや世界基準の指揮者になってしまったし、もちろん、ラトルとハーディング、ノリントンは別次元。
RVWの交響曲全曲は、ボールト、プレヴィン、トムソン、ハイティンクと4種を気分に応じて聴いている。あとハンドリーも聴きたいところだし、未完のヒコックスとノリントンも欲しいし、定盤のサー・アンドリューを持っていないのはいけません!
相模湾。
国府津の駅のそばに無粋なマンションが出来てしまい、こうして景観を壊すことおびただしい。
菜の花をもう一度UPしときます。
これにて、さわやかシンフォニー終わり。
ありがとうございました。
さわやかさとは、程遠い音楽も続々出しますよ(笑)
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コメント
新春さわやかシンフォニー、楽しく拝読しました。
それにしてもまあ、なんと精力的に書かれますね。
多くの美しい写真も。感服いたします。
投稿: | 2010年1月10日 (日) 16時25分
あれっ、上のコメント、名前を書かずに送信してしまいました(^。^/)。
投稿: crest | 2010年1月10日 (日) 16時30分
crestさん、こんばんは。
ご覧いただきましてありがとうございました。
ちょっと興がのって、今週は調子にのって書きまくってしまいました。
写真も正月の実家帰りの産物で、鮮度切れにならないうちに出しまくりです。
まぁ、暇人の証しであります(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月10日 (日) 21時08分
こんばんは。さわやかシンフォニーはヴォーン・ウィリアムズで華々しい選曲。でも、スキャットが寂しげ。タイトルとは裏腹ですね。でも、「田園」というタイトルアはかなり存在し、シャブリエの「田園組曲」グラズノフの「交響曲第7番」。後は玉置浩二のもありますね。(笑)
まことに申し訳ないが、プレヴィン、ロンドン響の「全集」しか持ってない。(英国指揮者でなかった~)でも、私としてはバージンなのよりもこのコンビネーションの方が面白いかな。(勝手な想像)
菜の花は南房総がやはり、定番ですね。河津は桜の下に咲いて、ピンクと黄色のツートン・カラーが素敵でした。春が来た。都心へと移り、浜離宮庭園は周りがビルだらけで景観を損ねてしまいます。地方も再開発でこのままどんどんビルやマンションが増えてしまうのでしょうか。
投稿: eyes_1975 | 2010年1月10日 (日) 21時10分
eyes_1975さん、こんばんは。
さわやかシリーズ、お付き合いいただきましてありがとうございました。
このトムソンのRVWの全集は、そのジャケットにターナーの絵画がいずれも使われていて、その茫洋とした雰囲気がいかにもぴったりのものです。
プレヴィンの全集は、いかにもその柔和な人柄があらわれた演奏で、抒情的な作品ばかりでなく、切れ味にも富んだ名演だと思います。私にも大切なひと組ですね。
房総の菜の花に対抗して、私の郷里では、一番早く観れるをキャッチフレーズにがんばってます(笑)
4月まで、菜の花ロングランです!
春は遠いけど、こうなると近いですね。
地方のマンションは、数年前の計画が、今、実現化してきていて、この景気悪化は織り込んでいなかったため、今後問題化しそうです。
無理な開発は、日本の自然を乱すだけになる結果となるかもしれません・・・・。
空しいことです。
投稿: yokochan | 2010年1月10日 (日) 21時41分
新春さわやかシンフォニー、次から次に出てきて追うのに精一杯です。
ビゼーも第2楽章までしか聴いてないですよ(苦笑)
さて、ヴォーン・ウィリアムスは結構好きだったりします。
…第4番が(爆)
第3番は第4番とは逆ベクトルに向かった感じの曲ですよね。
あまり頻繁には聴きませんけど、たまに終楽章を聴いたりします。
って、安易なヒーリングミュージックみたいに聴いていて反省…。
今回の記事を読んだのをきっかけに聴き直してみますね。
投稿: ライト | 2010年1月10日 (日) 23時06分
ライトさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
すさまじいスピード更新ですいません(笑)
ゆっくりとお付き合いください。
ヴォーン・ウィリアムズの交響曲は、みんな個性が違いますね。3番から4番、4番から5番、5番から6番と、抒情から激情の橋渡しがそれぞれあるように思います。
英国田園情緒の背景にも戦争の影があるところが、当時の英国作曲家のトレンドだったように思います。
こちら、じっくりとお聴きいただきたいと思います。
私も、ほかの演奏などを聴き直しておりますところです。
投稿: yokochan | 2010年1月11日 (月) 00時45分
お早うございます。
私はそのサー・アンドリューの全集しか持っておりません(笑)。でも素晴らしいシンフォニーですよね。
さわやかさとは程遠い音楽も続々お出しになるのですね。遂にショスタコ12番登場でしょうか?
楽しみでなりません(笑)
ビゼーの交響曲は未聴です。
昨日スウィトナーとクリヴィヌを探したのですが
田舎なのでどちらも在りませんでした(笑)
バティスのブリリアント盤もありませんでした。
悲しかったです(笑)
本当にブログ主様の更新は速いですね。
楽しいですが、私も追いつけません(笑)
投稿: 越後のオックス | 2010年1月11日 (月) 09時19分
ワーズワースという指揮者がいたのですか!
知りませんでした。
私は英国の詩人のウィリアム・ワーズワース
のことかと一瞬思ってしまいました(笑)
岩波文庫のワーズワースの詩集はいいですよ。
文章が平明な上に翻訳も悪くないと思います。
別の知をひけらかしているのではないので
誤解しないで下さいね(笑)
投稿: 越後のオックス | 2010年1月11日 (月) 09時41分
越後のオックスさん、こんばんは。
いえいえ、この曲、しいてはRVWは、わたしにとってはとても親しい存在ですし、充分にさわやかな作品なんです。
一度しか行ったことありませんが、英国の風景が目に浮かぶようなのです。
ショスタコこそは、さわやかさとは縁遠い作品ばかり。
まだ気分が来ませんねぇ・・・(笑)
ワーズワースは、英国ものばかりですが、本国ではオペラなども指揮してる本格派です。
日本にもBBCコンサートオケと一度来日しているはずです。もっと活躍して欲しい人です。
作家のワーズワースも、読みますよ。
英国音楽を愛するものとしては必読と思い所有してます。
ビゼーは、店頭や中古店ではなかなか手に入れにくいのではないでしょうか。
今回、皆さんのご意見を拝見して、その人気のほどがうかがえましや。
何とか聴いてみてくださいませ。
投稿: yokochan | 2010年1月12日 (火) 00時17分
今日は。ブログ主様、それは誤解です。
私もRVWの6番はさわやか交響曲だと思っています。
さわやか系が終わったので次は爽やかでない
名曲をやってくれるのではないかと思ったのです。
ショスタコ12番のような。
それにしてもブログ主様は私のような若造から見ると
パルシファルを知り尽くしているという感じが
します。私などはレヴァイン(メト&バイロイト)
とカラヤンとケーゲルの4種しか持ってないですよ。
ケーゲルの快速パルシファルが一番好きです。
レヴァインのバイロイト盤は私には遅すぎです。
タイトルロールがホフマンなのは嬉しいのですが・・・
今度はブーレーズとケント・ナガノが聴きたいです。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月12日 (火) 12時48分
6番ではなかった。3番でしたね。御免なさい。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月12日 (火) 12時50分
越後のオックスさん、こんにちは。
今頃返事を書いてます・・・。
えーと、RVWのあとですね。
ショスタコシリーズも完結させなくてはいけないのですが、ワーグナーも上がりが見えてましたので、迷わず行った次第です(笑)
それと、このところショスタコ気分にならないのですね。
ワーグナーに、バッハ、ドヴォルザーク、ベートーヴェン、シュレーカー、コルンゴルト、古楽などに心を奪われております。
そんな中に、スウィトナーの訃報が飛びこんできたりで、私の耳はもう大忙し・・・。
12番は、また後になっちゃった。
パルシファルやワーグナーについては、単に長く聴いてるだけ、盤暦だけですよ。
残された余生も、じゃんじゃん聴きたいです(笑)
投稿: yokochan | 2010年1月13日 (水) 12時59分