ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番 リヒテル
冬の相模湾。
でも当地は陽光にあふれ眩しいのであります。
遠く、大島が見渡せる。
オペラや声楽、オーケストラ曲ばかりで、この分野の記事が少ない「さまよえるクラヲタ人」。
でもそこそこCDは持っているのですよ。
たまにこうして、ピアノ曲を聴いたりすると、耳にも心にも優しく響くものだ。
先日の、金さん&神奈川フィルの素晴らしかった「ミサ・ソレムニス」の流れで、ベートーヴェンの晩年の心境を同じく映しこんだ作品を聴いてみたくなった。
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調を、スヴャトスラフ・リヒテルのピアノで。
番号付きのピアノソナタで1番は、1795年の作品。もっと若いころのソナチネ作品もある。
そして、最後からひとつ前の31番1821年。
生涯にわたって、ピアノソナタを書き続けたベートーヴェンが、到達した晩年の境地は、同時に書きすすめられた「ミサ・ソレムニス」と同じく、透徹した心境がもたらす明晰さと、内面的な深みとともに、シンプルさを追い求める簡潔感がある。
30番以降の3つのソナタは、そうした要素をいずれも持ちながらも、それぞれに個性的な内容が際立っていると思う。
その中では、わたしは、情緒豊かで、より詩的な31番が好きであります。
このあたりは、もう完全に古典のソナタの枠を抜け出してしまっていて、ロマン派そのもの。
リリシズム溢れる第1楽章、スケルツォ的な躍動感ある第2楽章、そして深みある序奏を持つ第3楽章は、続くフーガがまるでバッハを思わせるような教会建築を見るかのような壮麗さ。
久方ぶりに、この曲を聴いて、わたしは大いに感銘を受けたのであります。
短めの曲なものだから、4回も聴いてしまった。
1991年、ルートヴィヒスブルクでのライブ録音でのリヒテルのピアノは、無用な力が抜けきった練達の技を思わせるもので、技巧的にはやや難があるものの、その味わい深さといったらない。
剛毅で、テクニック抜群だったリヒテルも、老いて至った心境は、軽やかなものであったのだろうか。
ポリーニの大理石のような演奏も好きだけど、リヒテルやゼルキンのあまり弾きまくらない演奏もいまや、わたしの気分には向いているようだ。
| 固定リンク
コメント
おはようございます。かなり前ですが私の住んでいる町に突然リヒテルが「あー、この町なら演奏してもいいかも」と発言し、突然コンサートということがありました。文化会館とか県民会館は急な出来事に対応できず、コンサート会場は児童会館^^;チケットも「今いそいで作りました」的な学校祭のノリのチケットでした。入場料は5000円。私の街でのコンサートとしては最高額でした。田舎町のことなのでハデなブラボーもなく、それがまたリヒテルが気に入ったらしく、「あー、またまたこの前の町でピアノを弾いてもよいよ」ということになり、なんと!ド田舎町では日本で唯一、リヒテルが2度もコンサートを開くという快挙をなしとげたのです。いやいや^^田舎暮らしもよいものです。リヒテルさんも田舎出身ですからねー。。しみじみ
投稿: モナコ命 | 2010年1月20日 (水) 11時15分
モナコ命さん、こんばんは。
ひぇ〜、そうなのですか!当初、幻のピアニストとか言われ、一度来たら、もう何度も来日してくれましたね。
日本がそれだけ、気に入るってくれた訳です。
そして、まさに、列島津々浦々だったんですねえ。
児童会館でのリヒテル、見てみたかったです。
忘れられない、に貴重な経験をされましたね!
リヒテル亡くなって、もう10年以上が経つんですねぇ〜しみじみ。。
投稿: yokochan | 2010年1月20日 (水) 20時27分
さまよえるクラヲタ人様,こんにちは。
hanbo と申します。いつもブログを楽しく拝読させていただいております。
私も作品110,大好きです。
記憶が曖昧なのですが,モンサンジョン著『リヒテル』の中に,併禄の作品111については,リヒテル自身の言葉として好きではないと語るところがあったと思います。確か,師ネイガウスからこの作品は勉強すれば必ず得るところがあるからと勉強を勧められた,というようなことも。
私は一度だけ生でリヒテルを聴いたことがあります。1988年9月15日の秋田県児童会館でのコンサートでした。もう既に視力がかなり悪くなっていた頃でして,ステージ上の照明は相当暗くし,手元だけを小さなライトで照らして弾いていました。曲目にはモーツァルトがあったのは覚えていますが,それが何番だったか,また,他にどんな曲があったかなどは,残念ながら思い出せません。リヒテルは,その前にも秋田市で1度コンサートを開いています。
河島みどり著『リヒテルと私』を読むと,リヒテルって,ある土地に行って,あっ,ここでコンサートを開きたい,などと言い出すことがよくあったそうですね。また,大ホールなどより小さなホールで弾くのが好きだったようです。モンサンジョンの『リヒテル』にはリヒテルがどこでコンサートを開いたかなどの資料が載っていますが,この世界的ピアニストにしては驚くほど,日本全国津々浦々でコンサートを開いていたのがわかります。これは,ヤマハの多大なサポートがあったこととも関係があるかもしれませんね。
投稿: hanbo | 2010年1月23日 (土) 20時29分
お早うございます。
リヒテル氏はたしかに親日家だったようです。
人口が二十万しかいない(今は合併を重ねて三十万になっていますが)長岡でも演奏会をしてくれたことがあります。曲はハイドンのソナタとショパンの練習曲でした。1986年のことです。当時私はまだ中学生でした。楽譜のページをめくる役の男性が小さく見えました。その人が小さいのではなくリヒテルが大きいのですね。戦艦と駆逐艦のように見えました。演奏が終わった後、若い女性から贈られた花束の中の一つの花を演奏を聴きに来てくれたおばあちゃんにあげていたのを今でも覚えています。完ぺき主義者で気難しい人だと聞いていましたが実際は優しそうなおじさんという感じのするリヒテル氏でした。
投稿: 越後のオックス | 2010年1月24日 (日) 11時53分
hanboさん、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。
後期ソナタの中では、このソナタが一番好きです。
リヒテルを聴かなかったことが悔やまれますが、幻が解けてからというもの、何度も日本に来てくれてたんですね。
秋田の児童会館ですか。
それはまたレアな思い出ですね。
(モナコ命さんが冒頭のコメントでおっしゃられていた場所でしょうか・・・)
そして録音もたくさん残してくれてソ連時代には考えられないことでありました。
エピソードがたくさんありそうなリヒテルですから、いろんな著作も出ているのですね。
いまは、飛行機で世界を駆け巡る音楽家ばかりですから、リヒテルのようなある意味、気ままな演奏旅行などをしてくれる大家が根絶してしまいましたね。
どうもありがとうございました。
投稿: yokochan | 2010年1月24日 (日) 14時44分
越後のオックスさん、こんにちは。
長岡のコンサートのエピソードは、なかなかに珍しいですね。
常に幻の・・・・、というレッテルがあって、ともかく気難しいイメージがあるリヒテルですが、気のいいオジサンだったのですね。
彼のピアノを聴くイメージが、これからまた変わります。
投稿: yokochan | 2010年1月24日 (日) 14時53分
秋田県児童会館のコンサート、私も行きました。たしかシューマンを演奏したと思うのですが、とにかく暖かい演奏。あの小さいホールの舞台。笑顔でおじぎをして、聴衆も暖かい拍手を送る。いまもあのときのリヒテルの優しい振る舞いを忘れられません。
昨日、横浜のパールマンのコンサートに行って「本当はこの人、こんな大劇場で、一般受けする曲ばかりやりたいんじゃないんじゃないの」とふと感じ「リヒテル」「児童会館」で引いたらここが出てきました。
秋田の聴衆は、演奏の品定めでもなく、過去の鑑賞経験を自慢するでもなく、老巨匠の渾身の演奏を、ただ聴くことに夢中でした。こういうコンサートにまた出会いたいです。
投稿: さすらいの写真屋さん | 2010年10月24日 (日) 17時51分
さすらいの写真屋さん、はじめまして、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。
幻とばかり思っていたリヒテルが、日本各地津々浦々、演奏会を開いてくれていたのですね。
大ホールや、首都圏ですと、ありがたみや名声が先行し、聴く側も絶対との意識で聴いてしまいますが、そうではないいわば純真なる聴き手の方々に、ほんとうに聴いてもらたいと思っていたんでしょうね。
私も聴き手として、数を聴くだけでなく、ほんとうに心がけなくてはならないことかもしれません!
示唆に富んだコメントありがとうございました。
またどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2010年10月24日 (日) 22時42分
こんにちは、海外旅行はドクターコパ、李家幽竹さんの2019年の風水の本を読み、吉方位へお出かけください。神社仏閣詣り、お墓参りをなさってください。毎日掃除なさると難を逃れるそうです。今年の凶方位は、カナダ、シアトル、東南アジア、タヒチ、フィジーですので日本からは行かないでください。今年の凶方位は、東北、南西、東南ですので行かないでください。神社仏閣の御守をご旅行に携帯ください。古い書類を2019年の吉方位へご移動、ご郵送ください。ベートーヴェンの生年月日から割り出した、ベートーヴェンの2019年の吉方位に、楽譜をご移動ご郵送ください。フロアの南に南の吉方位で買った鏡を置いてください。占いができる人が出たり、勘が冴える人が出たりします。トイレ掃除をなさって、トイレの便器に塩を入れてください。お節介ですみません。音楽仲間の皆様に、このメールをご転送ください。かしこ
投稿: ニイボリ | 2019年5月 8日 (水) 23時35分
ニイボリさん、情報をありがとうございます。
当面、渡航の予定はありませんが、参考とさせていただきます。
投稿: yokochan | 2019年5月14日 (火) 08時33分