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2010年2月 6日 (土)

「松村英臣 ピアノ・リサイタル」

Saigosan 上野の山におわす「西郷さん」。
夜の西郷さん、しっかり犬も連れております。
今年の大河ドラマも幕末ものだから、西郷さんが登場することでしょう。

Hideomi_matsumura 松村英臣さんのピアノ・リサイタルに行ってまいりました。
一昨年秋に、初めて聴かせていただいた。
今回も、いつもお世話になっております、schweizer_music先生のご案内を頂戴し、今年も聴くことができました。

この西郷さんの北側の並びにある東京文化会館小ホールにて行われたコンサート。
かつてのクラシック音楽演奏会の殿堂、数々の音楽の歴史を刻んできた文化会館。
いまや、都内ではほかに専用ホールがたくさんできてしまったけれど、私がコンサート聴き始めのころは、ここか、日比谷公会堂、新宿厚生年金会館、杉並公会堂などくらいしかなかったもの。
久しぶりに上野の公園口に降り立ち、そんな感慨にふけってしまった。

そして音楽をじっくり聴く、という感興がおのずと溢れだすような雰囲気の小ホール。
響きのよいこのホールで、ピアノが聴けるというのは、ほんとうに素晴らしい体験でありました。

松村さんは、以前のコンサートの時にもその経歴を書いたとおり、大阪を活動のベースとしていたので、関東ではあまり馴染みが少ないかもしれない。
こちらの氏のHP。schweizer_music先生のレポートがございます。
 チャイコフスキー・コンクールでの逸話が示すとおり、日本人には数少ない本格ヴィルトゥオーソのおひとり。

    ベルク       ピアノ・ソナタ

    リスト        ピアノ・ソナタ

    シューベルト   ピアノ・ソナタ第21番

        チャイコフスキー 「四季」~舟歌

    ナザレー
         (曲名忘れ・・brejeiro?)     

         ピアノ:松村 英臣 
               (2010.2.5 @東京文化会館小ホール)
     

素晴らしいプログラムが据えられました。
どう見てもすごい演目。
前半が、ワーグナーつながり。そして時代も遡ってシューベルトで終わる。

ベルクの初期作品は、前期シェーンベルクやツェムリンスキー風の後期ロマン派風の曲で、始終ベルクを聴きながら、このソナタは初めて聴いたもの。
短い曲で、もやっとしているうちに終わってしまったが、終演後、schweizer_music先生のお話ではトリスタンの半音階も現れるし、何度も聴くと味わいの増す音楽とのことでして、ベルク好きとしては、これはひとつハマってみようかい、と思った次第。

次のリストは、松村さんならではの、バリバリの超絶技巧の音楽。
情念うずまく、そして幻想的ともいえるその音楽は、まるでオペラの世界。
婿さんのワーグナーにも通じてゆくのも感じることができた。
どうしても、曲中何度も訪れる凄まじいパッセージの続く劇的な部分に耳がいってしまうが、そして確かに松村さんのピアノの素晴らしさはその完璧な技巧に裏打ちされた、そうした部分だけど、リストの詩情に満ち溢れた静かな場面の方にこそ魅力を感じる演奏だった。
強い音も弱い音も、しっかりと弾かれてホールに響き渡るさまは、これはある意味、快感でございました。

後半のシューベルトの長大なソナタ。
ここには、本当に豊かな歌があふれておりました。
シューベルトの中でも大好きな旋律が、第1楽章の冒頭のもの。
静かに、ゆったりと抒情的に流れるこの素敵な旋律は、こうして眼前のピアノで接すると、感銘もひとしお。
余裕を持たせながらも、しっかりとシューベルトに没頭している松村さんのピアノは、前半とまったく異なる世界を描きだしてくれた。
さらに素晴らしかったのが、第2楽章。
深遠を見尽くしてしまったかのようなぎりぎりの音楽のようにも感じ、そしてその演奏でありました。聴いていて「冬の旅」を思い起こしていたが、後にパンフレットを読んだら同じことが書いてあって、大いに納得。
この楽章をあっさりスルーしてしまう演奏も多いが、松村さんのピアノはそのあたりを想起させる感動的なものと思った。
続く2つの楽章は、すっきりと、そして軽やかに、シューベルトを聴くときの気持ちのよい気分に満たされるものでありました。
シューベルトの音楽にある、明と暗のような要素を弾き出していて見事なものだったと思います。

アンコールの舟歌はもう、絶品!
氏の十八番とのことだけど、こんなにリリシズムあふれ、音の粒立ちが豊かな演奏を聴いたら誰しも耳が釘付けになっちゃう!

最後に、近々のコンサートのご案内もユーモアを交えてお話され、これまた初聴のブラジルの作曲家ナザレーの明るく陽気な音楽でお開きとなりました!
満足満足

アフターコンサートは、先生を交えて、とても楽しく有意義な時間を過ごし、上野の森の夜は更けゆくのでございました~
皆様、ありがとうございました。

 

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コメント

昨日はご一緒させていただき、また楽しいアフター・コンサートと本当にありがとうございました。
彼とのつきあいはもうかれこれ35年になりますが、円熟という果実が、彼にも顕れてきたようで、うれしい反面、昔のとがっていた頃の演奏もまた良かったなぁと思ったりします。この辺りは長年付き合っている者としては、微妙なのですが、あの良い(私の知る小ホールの中でも最高のものの一つ)ホールで聞けたことで、昨年よりも一層印象深いものとなりました。
来週は神奈川フィルです!!みなとみらいで再見!!

投稿: Schweizer_Musik | 2010年2月 6日 (土) 21時45分

どうもその節はお世話になりました。
素晴らしいコンサートでしたね。
リストもシューベルトも私が今まで聴いたこの曲の印象を変えてくれたような演奏でした。
美しく、繊細で、それでいてダイナミックで。
また次回が楽しみになりますね。

さて次は神奈川フィル、来週もまたよろしくお願い致します。

投稿: yurikamome122 | 2010年2月 6日 (土) 22時01分

schweizer_music先生、こんばんは。
昨晩はどうもありがとうございました。

リストにシューベルト、そしてチャイコフスキーにと、松村さんのピアノを堪能しました。
長年のお付き合いの先生ですからこそ、微妙な変化がおわかりなるんですね。
それでも、在京のリスナーには、未開のピアニストです。
秩父もいいけど、横浜や千葉で名前をあげて欲しいと願っております。
在京オケとの共演も夢でありますね!

素晴らしいホールとともに、印象に残る一夜でした。
学生さんがたも、熱心で真面目、いい耳をお持ちですね。
ありがとうございました!

投稿: yokochan | 2010年2月 7日 (日) 01時10分

yurikamomeさん、こんばんは。
昨晩はどうもお世話になりました。
重い思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。
早速、ラトルとボーンマスで泣いてます(笑)

ピアノのコンサートは、集中力も高まり、こちらの気分も研ぎ澄まされていいものですね。
ことのあのシューベルトは素晴らしかったです。
秩父は遠いですが、これからの予定をチェックしておきたい松村さんでした。

ではまた神奈フィルにてお願いいたします。

投稿: yokochan | 2010年2月 7日 (日) 01時14分

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