「明日の担う音楽家による特別演奏会」 現田茂夫指揮
クリスマスシーズンが終わっちゃうと1年で一番寂しい雰囲気になるオペラシティ。
でも隣接のオペラパレスは年中、晴れやかに感じられるのは私だけ?
今日は、文化庁主催による「明日を担う演奏家による特別演奏会」に行ってきました。
国が若い広範な分野の芸術家を海外研修に送り出していて、その後、活躍の場を海外や国内に得て頑張っている若い歌手の皆さんの成果発表ともいえるコンサートであります。
新進芸術家海外留学制度といわれるもので、21年度からは、新進芸術家海外研修制度と呼ばれるもの。
勉学よりは、より、実地の研修を重んじるということらしい。
例の芸術家や愛好家を心底ヒヤヒヤさせた事業仕訳のターゲットにされた分野であります。
今回のコンサートは、平成18年から20年度に派遣された方々のコンサート。
愛好家としては、実績を上げつつある上り調子の歌手のイキのいい歌が数々、それも格安に聴けるということで、こんなにうれしいことはありませんね。
(私の席は1階後方A席2000円ですよ!)
しかも、オペラを得意とする神奈川フィルハーモニー名誉指揮者の現田茂夫さんの指揮だから、もういうことなし。
メンバーの皆さんに声をかけなかったのが悔やまれるが、今日は「勝手に神奈川フィルを応援する会」ひとり分課会となったわけです。
グルック 「オルフェオとエウリディーチェ」~序曲
「おいで、君の夫についておいで」 鷲尾 麻衣・小野 美咲
モーツァルト 「コジ・ファン・トゥッテ」~「岩のように動かずに」
吉田 珠代
ヴェルディ 「エルナーニ」~「エルナーニ、一緒に逃げて」
石上 朋美
「リゴレット」~「悪魔め、鬼め」
町 英和
「トロヴァトーレ」~「わかったか 夜が明けたら…」
石上 朋美
プッチーニ 「蝶々夫人」~「夕暮れは迫り」
田口 智子・塚田 裕之
グノー 「ファウスト」~「宝石の歌」
田口 智子
ビゼー 「カルメン」~「母のたよりを聞かせて」
駒井 ゆり子・塚田 裕之
オッフェンバック 「ホフマン物語」~「お前はもう歌わないのか」
吉田 珠代・町 英和・小野 美咲
プーランク 「ティレジアスの乳房」~「いいえ、だんな様」
駒井 ゆり子
バーンスタイン 「キャンディード」~「きらびやかに着飾って」
鷲尾 麻衣
ワーグナー 「ラインの黄金」~「避けよ、ヴォータン!避けよ!」
小野 美咲
「ワルキューレ」~「さらば 大胆で輝かしき娘よ!」
大塚 博章
現田 茂夫 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
(2010.2.3@オペラシティコンサートホール)
「THE JADE」の成田さんの司会で進められたコンサート、曲目をご覧のとおり、イタリアを発し年代順に進行し、後半はフランス、アメリカ、ドイツと、 万遍なく楽しめるもので、ヴェルディとワーグナーを中軸に、オペラの歴史を俯瞰できるものになっている。
文化庁らしい優等生的なことでもあるが、歌手の留学先に応じた得意曲でもあるので、成果披露の目的も万全に達しているわけ。
こうして、皆さんしっかり成果をあげて、オペラ界に羽ばたいていってるわけで、こんな立派な制度はどんな名前に変わっても、しっかり存続させていただきたいものだ。
ここで、個々の歌い手さんたちを、どうこう言ってもしょうがないですね。
皆さん素晴らしい!
強いて印象深かったのは、鷲尾さんのコケットリーで軽やかなキャンディード。
小柄な体から、深々としたメゾを聴かせた 小野さんのエルダ。
しっかりワーグナーしてました!
そして、私の耳と目は、しばしば、現田マエストロのしなやかな指揮に向かうのでありました。
歌手の呼吸や声を入念に見守りながら、時にオーケストラを抑制しつつ、そして煽りもして、美しくも味わいある背景を作りだしておりました!
軽やかなモーツァルト、弾むような推進力あふれるヴェルディ、痺れるような美音のプッチーニ、洒落たプーランク、ゴージャスなバーンスタイン。
そして、これら今日会場に来て知ったプログラムのなかでも注目は現田ワーグナー。
過去に全曲の上演を手がけているし、神奈フィルでも演奏しているワルキューレ。
いやこれが実に素敵なものだった。
決してうるさくならない、そして、重くならない、充分に抑制の効いた美しいワーグナーで、舞台に上がったから突出してしまう、金管や低弦を巧に抑えつつ、結果として柔らかなワーグナーが響いたのだ。
大々大好きな音楽だから、涙うるうるを覚悟のうえ構えたが、なんということでしょう、ブリュンヒルデを優しく眠りにつかせる絶美の箇所、そのあとのローゲの召喚、このふたつがカットされ、いきなり「我が槍を恐れるものは・・・」のウォータンの絶唱の部分に飛んでしまった。そのあとの魔の炎の音楽も少し短縮。
うーーーん。
いろいろ状況でおありだとは存じますが、歌入りのワーグナーにカットは厳禁ではないかと存じますが・・・。これならマイスタージンガーの方がよかったかも。
最後はややがっかりだったが、フレッシュな歌と素敵なオーケストラが聴けて満足の一夜でございました。
蛇足ながら、司会者のインタビューで、現田さんも派遣経験があるとのお話で、その場所はウィーン。そして、「ばらの騎士」をじっくり学んだと言われていた。
そんなんなら、来シーズンの新国の「ばらキシ」は、現田&神奈川フィルをピットにいれて欲しかった! アルミンク&新日フィルは、もう聴いてるし・・・・。
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コメント
こんばんは。曲目リストを見る限り、単独で歌われないアリアがズラリと並んでますね。
「カルメン」は手元にある劇版はカラヤン、ベルリン・フィルとアバド、ロンドン響があります。「組曲」録音回数が多いカラヤンに比べ、アバドのドミンゴによるのが結果的に良かったが、カラヤンのカレーラス。ホセ・カレーラスが演じるホセ。(笑)
一番、有名なのが「宝石の歌」でしょう。実は「ワルツ」の原曲である合唱版が聴きたくて「ファウスト」の劇版を購入。本命はクリュイタンス。プラッソンもなかなかだ。と思いつつ、ドミンゴ、フレーニ、ギャウロフのインデックスに魅かれ、プレートル、パリ国立歌劇場を中古店で見つけた。あまり期待してなかった(失礼)CDだが、「バレエ音楽」が併録されたり、フランスのエスプリを感じさせたゴージャスで夢見るようだ。これが縁だったのか、プレートルが2008年のニュー・イヤー・コンサート指揮者との情報が。思いもよらなかった。
あの時、注目されなかった演奏家が急にスポットライトを浴びた。
努力している演奏家はきっと羽ばたいているでしょうか。期待したいですね。
投稿: eyes_1975 | 2010年2月 4日 (木) 22時41分
eyes_1975さん、こんばんは。
なかなかに、ユニークで考え抜かれたプログラムでしょう。
東西南北・今昔、オペラ好きには堪えられない内容でした!
カルメンは、二重唱なら最後のフィナーレでしょうが、主役なしのミカエラとホセのデュエットとは珍しいものです。
ドミンゴのホセは何種類もありますね。でもホセことカレーラスは、カラヤン盤だけでしょうか?
宝石の歌は、いかにもフランスの香り。
プレートル盤は完全全曲盤ですから、バレエもカットなし。
あのバレエ音楽もいい曲ですね。
そして老いてプレートルは羽ばたいたわけで、昨晩の歌手のみなさんたちもこれから長く活躍して欲しいと願ってます。
投稿: yokochan | 2010年2月 4日 (木) 23時56分
こんばんわ。
羨ましいですな~、私も行きたかったです。
チェックはしていたのですがね。
結局、雪や鉄道事故やらのつけがその日は回ってきて、
行けず終いでした。
現田フリークとして、一つも取りこぼしたくないのですが。
というか、東フィルとのコンビも注目だったんですが。
ちなみに3月にもありますよ、オペラシティで、現田さん。
コンクール受賞者の演奏会でしたかね。
ちなみに、今月の現田さんは後は大フィルと群響ですかね。
投稿: スリーパー | 2010年2月 5日 (金) 00時49分
スリーパーさん、こんばんは。
行ってしまいました。
現田さんだし、オペラだし、安いし(笑)
東フィルは、やはりオペラにこなれていて、バラエティ溢れる音楽によく反応してました。
そして現田さんのワーグナーが聴けて、そして思わずよかったのも喜びでした。
このところ、各地で活躍しているので、スリーパーさんも追っかけるのが大変ですね! (笑)
投稿: yokochan | 2010年2月 6日 (土) 09時35分