ハウェルズ スターバト・マーテル ロジェストヴェンスキー指揮
雪降りしきるマリア像。
山形県鶴岡市のカトリック教会。
奥は幼稚園ですよ。可愛い園児たちが、あのオジサン雪降ってるのに写真なんか撮ってる、って感じで見てましたよ。
「岸壁の母」の二葉百合子さんが引退を発表しましたね。
昭和47年、札幌オリンピックの年に大ヒット。私は中学生。
よく覚えてます。
あの頃はさっぱりわからなかった母親の気持ち、そして親の子を思う気持ちが、いまになっていやというほどわかるようになりました。
私の老母とほぼ同じ歳の二葉さん、元気なうちに幕を引きたいと語ってましたね。
マリア様の悲しみは、世の母親の悲しみとおんなじ。
いくつになっても母親は神様のように思える。
英国音楽を愛する「さまよえるクラヲタ人」。
その中にあって好きな作曲家のひとり、ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)。
長命であり、つい最近まで存命した作曲家だが、英国抒情派とわたしは勝手に名付けているけど、ナイーブで旋律的、そして深淵なる宗教観に根差した音楽を書いた人。
以前の記事にも何度も書いているけど、40台にして9歳の最愛の息子を亡くしてしまう。
その直後に書かれた「楽園讃歌~Hymnus Paradis」は、涙なくしては聴けない名曲で、私の最大級のフェイヴァリット曲なのだ。
そしてこの「スターバト・マーテル」。
1959年頃から構想され、1965年に完成・初演された大作は、ハウェルズ最後の宗教的な合唱作品である。
英国音楽が好きになり、ハウェルズも好きになって、この10年くらい、ずっと聴いてきた曲。
息子の死からもう四半世紀が経っていたが、いまだにその思いを残存し、その悲しみを「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」という音楽スタイルに託した。
初演は、D・ウィルコックスの指揮。独唱はR・ティアーだった。
そう、テノール独唱と合唱、オーケストラによるユニークな編成。
7部からなる50分の大曲は、終始、深刻で悲しみと哀切に満ちていて、テノール独唱は常に痛切に歌いこんでくる。
全編にわたり短調が支配し、こんな悲しい音楽はないだろうと思われるが、そこは抒情派ハウェルズ、悲しいけれど、優しい。
悲しみの色調なのに、いつの間にか癒しの暖かな手にゆだねられ、心に一陣の風が吹いてゆくのを感じる。
息子イエスを失ったマリアの悲しみと、癒しの対象としての優しいマリア。
ハウェルズの音楽の本質的なものを、この音楽のスタイルに見出し、そして決して声高に叫ぶことのない楚々とした音楽に同化してゆく自分を感じる。
T:ニール・アーチャー
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮
ロンドン交響楽団/合唱団
(1994.4 @ロンドン)
以外なロジェストヴェンスキーのレパートリー。
BBC響の音楽監督時代、あらゆる英国音楽を指揮したロジェヴェンさん。
ディーリアスまで録音している。
ハウェルズではあと、ミサ・サブリネンシスも録音していて、われわれが従来もっているロジェヴェンさんの解放的なイメージとはまったく異なる、神妙で静謐な音楽造りを見せている。
ロンドン響と合唱団が自分たちの音楽として、指揮者の集中力に奉仕していて、この演奏は極めて密度が濃い。
アーチャーのテノールも、英国テノールの典型にして、知情意のバランスがよく適度なクール感がよい。
多くの方にお勧めできる曲ではありませんが、英国合唱音楽をお好きな方、フィンジ系の英国音楽をお好きな方などにはお薦め。
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コメント
英国音楽、ハウエルズまでくるとイマイチ良くわかりません(@_@)
レクイエムだけは聴くんですけれども…
↑
だったらコメントするなって(笑)
「ミサ・サブリネンシス」も物珍しさから、ブックオフで購入したんですけど、購入以来6年、一度も聴いておりませんm(__)m
これを機に聴いてみようと思います。
って、まずCDは家にあるのか捜索から開始しなくては
投稿: ライト | 2010年3月19日 (金) 11時48分
ライトさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ハウェルズ、大好きでして、ほとんどの作品を集めてしまいました。
ディーリアスやフィンジとともに、声高に語らないその音楽は、一人静かに聴くものかもしれません。
矛盾してますが、あんまり流行って欲しくない、といいますか、自分だけのものしておきたい感じの音楽なんですね、これが(微笑)
サブリネンシスも素敵な音楽ですよ。
こちらも近々取り上げようと思ってますが、いつ順番が回ってきますことやら・・・・。
投稿: yokochan | 2010年3月20日 (土) 00時33分