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2010年3月11日 (木)

ワーグナー 「ニーベルングの指環」 ショルティ指揮

Rainbow_brdg
晴れた日のレインボーブリッジ
お台場方面から都心に向かうの図であります。
夜のライトアップは、高速から見るときれいなんだけど、走行中はブレブレで撮影不能。

Wagner_ring_solti
今週のシリーズ企画、今宵はいよいよ佳境にさしかかってきました(何がじゃ?)。
そこで、ショルティ閣下にご登場いただきましょう。
軍曹閣下の号令一下、どんなつわものオーケストラでも、ひれ伏してしまう。
切れ味鋭く、一刀のもとに断つかのごとくエッジの効いたその音楽は、大音響を伴う曲ほどに、その威力を増したものだ。
 雄大なスケール感を持ち合わせていたから、閣下のオペラは独仏伊なんでも素晴らしかった。

そして、オランダ人以降のすべてのワーグナー作品を録音したのもショルテイ様だ!
中でも燦然と輝くのは、「ニーベルクングの指環」の史上初のステレオ・スタジオ録音。
レコード録音芸術上の一大偉業でありましょう。
しかし、まさかのカイルベルトのリングが、それより以前にライブながら録音されていようとは、閣下は知っていたのでしょうか?
知ってたら、怒髪天を抜く勢いで怒ったかもしれませぬねぇ~

カクカクとしたあの指揮ぶりから、そのダイナミックな音楽が想像できるけれど、その鬼軍曹も歳とともに、丸くなり、モーツァルトやシューベルト、ドビュッシーなんかも繊細に優しく聴かせるようになった。
人間、歳とると誰しもまぁるくなるもんです。
 ショルティ閣下の場合、円熟期は柔軟さとともに、剛毅さも兼ね備えていたから、まさに鬼に金棒。

82年に音響のいいゾフィエンザールで録音された「リング」のオーケストラ・ハイライトは、まさにそんな円熟ショルティが味わえる。
「森のささやき」なんて、ウィーンフィルのさざめく上質の弦と、チャーミングな木管が心憎いほどに楽しめる素敵な演奏なんだ。
翌年にバイロイトデビューを控え、練習も兼ねての久しぶりの「リング」録音は、本格化したデジタル=CD時代に名録音の残さんとする、デッカの意気込みも感じさせる。
レイバーンやJ・ロックの録音スタッフの名前もクレジットされている。

「ワルキューレの騎行~ヴァルハラへの入城~ウォータンの告別・魔の炎の音楽~森のささやき~ジークフリートの葬送行進曲~ブリュンヒルデの自己犠牲」

告別が長く入っていて、ウォータンの歌は金管によって代用されていて、私なんぞにはこれはカラオケとして利用できます。
それと、ラインの旅が入ってなくて、最後の自己犠牲があるのも完結感あってよろしい。
そして、58年録音の「ラインの黄金」全曲で驚愕だったドンナーのハンマーの一撃。
ここでも入城コーナーの前にしっかりカツーンと一発収録されてまして、実際の雷鳴までものすごい音で入ってますぜ。

レコード時代、ショルティのリングのダイジェスト盤がベストセラーになっていて、それは当然に歌入りだったわけだけれど、そのタイトルが「ニュー・ワーグナー・デラックス」だったところが可笑しい。
閣下のバイロイトは、最初の1年で終了。
音響に苦労したとか、歌手がこけた(ゴールドベルク)とか、散々だったが、あの時の録音は、私も音は悪いながらもカセットテープ起こしのCDRで持っている。
それがまぁ、もの凄いハイスピードなんざんす。
あの劇場の響きと悪戦苦闘している閣下の興奮ぶりが伝わってくる演奏なんですよ。
その次の年に急場を救ったのが、ペーター・シュナイダー。
そろそろ出そうな(?)シュタインと同じように、バイロイトを知り尽くしていて、職人芸以上のお手並みでもって素晴らしいリングを作りあげた。
両方とも、いずれレビューしたいと思います。

Solti
円熟期のショルティ。
若い頃と色が違うだけで全然かわんない。
閣下! ヘルメットがお似合いですぜ。
いや失礼しました。

一句 「あなたもと 言われてみれば そうだった」

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コメント

とあるシリーズとは、スキンヘッド?でしたでしょうか・・・。でも閣下は、好きだったんです。今でも好きですが。自伝を読むと、竹を割ったような男気。音楽のほうもそのままで、裏表がなかった人でした。しかし、「リング」もLP時代とデジタルでは随分変わってましたね。

投稿: IANIS | 2010年3月11日 (木) 23時26分

お邪魔します。
ショルティは、ウィーン・フィルをはじめとして、ヨーロッパのオケを指揮しているときはすばらしいですね。シカゴ響の初期はよかったですが、晩年のシカゴ響とのコンビは私個人的には好きではないです。
ところで、以前もワーグナーのオケ演奏盤をとりあげておられましたね。

私、今から、22年前にマゼール/ピッツバーグ響のタンホイザーのハイライトを買いました。最後の数分で歌詞のない女性合唱まで入ってきます。はじめは好きになれませんでしたが、何度も聴いているうちに、平気になってきました。

投稿: 上野のおじさん | 2010年3月11日 (木) 23時56分

IANISさん、おはようございます。
ご明察のとおり、「ずっとハ○頭しか知らない」シリーズであります。
突然の変貌は除外しました(笑)
ショルティ閣下は、録音優秀のデッカとともにあった人だと思います。
あれがEMIだったら、そのイメージは全然変わっていたかもしれませんね。
バイロイト・リングは、もう少し我慢して熟成させて、もう一組の録音を残して欲しかったものです。

投稿: yokochan | 2010年3月12日 (金) 08時33分

ついにやってきました。ワーグナー大先生。そして、ショルティの「リング」
ワーグナーの「オペラ」や「管弦楽曲」を指揮している方はワーグナー影響下作曲家を指揮している。(ヨッフムはワーグナー指揮者ですね)
ショルティの場合、一部、シカゴ響を除いて、録音はウィーン・フィルです。ワーグナーの場合はこちらの方が相性がいいみたいです。

投稿: eyes_1975 | 2010年3月12日 (金) 08時55分

上野のおぢさんさま、毎度ありがとうございます!
40年近くのワーグナー狂いですから、何度も出します(笑)
というか、オペラ以外のショルティをあんまり持ってないのに今回気が付きました。
シカゴをはじめ、やたらとレコードが出たものですから多すぎて買わなかったクチですし、貧乏小僧でしたから。
シカゴとのマーラー5番を文化会館で聴きましたが、噂にたがわぬ凄さでした。

マゼール編のものですね。
はなから怪しく思ってましたので、まったく視野にありませんでしたが、そんなこと拝見しちゃうと聴いてみたくねりますねぇ。

投稿: yokochan | 2010年3月12日 (金) 15時05分

eye_1975さん、こんにちは。
また出しちゃいましたワーグナー。
そしてまだしつこく続きますがあしからず(笑)

ワーグナーを得意とする人たちは、ブルックナーやシュトラウス、マーラーも得意ですね。
フルトヴェングラーとベームがちょっと違うかもしれないです。
シカゴだと、ショルティの鋭さがモロに出てしまいますが、ウィーンだと適度に中和されて、いい具合になりますね!

投稿: yokochan | 2010年3月12日 (金) 15時14分

こんばんは
ご無沙汰しております。yokochanさまのワーグナーのお話、大好きです。(^^)
数日前に年末の記事を再読させて頂いて、CDをガサガサと聴き直してました。
私はこの82年録音のCDをカセットに録ったものが、手元に残っております。私が録音したのは、22年前ですが・・・(^^;;
カセットのインデックスに、「ニュー・ワーグナー・デラックス」(F35L20058)と書かれていたのを見て、ニヤニヤしながら嬉しい気分に浸ってます。(^・^)
つまらない書き込みにて失礼しました。

投稿: みー太 | 2010年3月12日 (金) 20時39分

このアルバムを入手するために、学生時代にバイトしまくった記憶があります。指輪の演奏もおもしろかったしモチーフの説明のレコードも楽しいセットですね。このレコードセットが入っていた段ボールが私にはレコード以上に大切でした。一人暮らしの時に、枕元にこの段ボールの上にラジカセを置いて、いろんな曲をナイトキャップにしていました。なつかしい懐かしい独身時代の思いでです。楽しかったなー。。。しみじみ。。。
あ!向こうで妻が早く茶碗を洗うようにって怒ってます。洗ってきます。え?なに?あ!はい!部屋もかたづけます。え?はい!レコードもしまいます。
指輪の段ボールは私のシアワセだった&輝かしい独身時代の象徴です。

投稿: モナコ命 | 2010年3月12日 (金) 20時48分

みー太さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ご返事遅くなってしまいました。申し訳ありません。ワーグナーばかの長い記事をお読みいただいて恐縮です。
私たちがイメージする、おっかないシュルティさまは、旧録音の威勢のいい方ですか、こちらの新しいハイライト盤の方は、なかなかに味わいを持たせた、聴かせ上手の演奏です。
出て外盤て即買いでしたから、たしか4000円もしました!
CDが貴重な時代で、なんだか懐かしいですね。

投稿: yokochan | 2010年3月15日 (月) 19時42分

モナコ命さん、こんばんは。
ご返事が遅くなりまして申し訳ありません。
私はベームのレコードが初リングでしたが、多くの方がシュルティでしょうね。ライトモティーフ集もしっかり3枚組のゴージャスなものでした。
リング全曲、レコードで19枚。いまや、CDは、13枚ですから、隔世の感ありますね。

その段ボールに詰まった思い出、わたしも大量のエアチェックテープの箱に同じ独身ひとり暮らしのよき思い出が詰まってます(笑) いまや、シュルティ軍曹よりおっかない女性のもと、日々恐々としております(涙)

投稿: yokochan | 2010年3月15日 (月) 19時58分

 ブログ主様ご無沙汰しております。
おかげ様で先月28日に退院することが出来ました。
貴ブログも毎日拝読しておりました。
ショルティ閣下の指環管弦楽曲集、中学時代にカセットテープで買いました。夜明けとジークフリートのラインへの旅が入ってないのが不満でしたが、それ以外は、非の打ちどころの無い凄いアルバムだなーと思って聴いていました。メータ&ニューヨークやセル&クリーヴランドやドラティ&デトロイトの指環抜粋も好きです。ブログ主様がお嫌いなマゼール・ベルリンフィルも悪くありません。マゼール&ピッツバーグのタンホイザー組曲も以外にいいですよ。次はローエングリンかトリスタンの組曲盤でもやってくれるのではないかと期待していたのでリングとタンホイザーだけで終わってしまった時は少なからずがっかりしたものです。

投稿: 越後のオックス | 2010年3月15日 (月) 20時36分

越後のオックスさん、こんばんは。
退院おめでとうございます。焦らず養生ください。
人生捨てたもんじゃないですからね。

閣下のワーグナーは、ウィーンフィルの素晴らしさも相まって歴史的な存在になってますね。
これもまたディジタル時代のワーグナーです。

マゼールは嫌いではありませんが、ある局面が好きになれないだけですよ(笑)
先ごろもミュンヘンフィル就任のニュースも喜ばしいですが、なにもミュンヘンで、という感もありますところがマゼールらしいところであります。
スゴイおっさんです。

投稿: yokochan | 2010年3月15日 (月) 23時22分

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