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2010年3月 8日 (月)

ブルックナー 交響曲第8番 クーベリック指揮

Todaiji 以前訪れた、奈良、東大寺。
でかいんです。
この中に、あの大仏さまがいらっしゃる。
もうビル並み。
でもデカイのに均整がとれていて、静謐感もあるところが日本の美でありましょうかね。

Bruckner_sym8_kubelik バイエルン放送交響楽団60周年記念CD
その2枚目は、2代目主席指揮者の、ラファエル・クーベリックの指揮で、ブルックナー交響曲第8番が、1枚のCDにきれいに収められている。
その演奏時間、78分。1977年5月の状態のいいライブ録音。
遅すぎず早すぎないタイム。でも聴いていると、立ち止まることなく、早めに音楽は進行する。音色が明るいからよけいにそう感じる。
でも、ここぞというときのタメの入れ方、旋律の思い入れを込めた歌わせ方は相当に聴かせるし、いやでも感動的な第3楽章のクライマックスではわずかにルバートをかけ、壮麗な伽藍を築いている。
随処にこうした立派なか所が頻出するが、よどみなく流れのよいブルックナーで、往年の大演奏や、ヴァントの息詰まるような緊張感あふれる演奏よりは、人間味があってよいと思った。
 もちろん、げんきんなもので、ヴァントを聴きばすごい、カラヤンを聴けば素晴らしいという私なのであるけれど、要はその時聴いてる音楽が、自分にとって瞬間よければ、それはそれでよいのでありますな。

そんなことをグタグタ考えるまでもなく、初めて聴いたクーベリックのブル8は、とかく構えがちなこの大曲を、南ドイツ風の明るい響きの中に解放してしまい、感興にあふれながらも、実は緻密な構成でがっちり固めてしまった演奏と聴いた。
 しかし、うかうか気持ちのよい流れで聴いてると、最後にヤケドするよ。
ぐわぁーーっと、猛然とアッチェランドがかかり、まるでオペラの最後のように興奮の坩堝と化してしまうのでありました。
おっと、これはネタバレかしらん。あしからず。

クーベリックの思い出は、私のようなオールドタイマーには、1975年の来日。
当時は、手兵バイエルンをはじめ、シカゴ、ニューヨークでも活躍し、メトの監督にも一時なっていた時期なんだ。
でもマネージメント的な仕事を一切きらい、要職から手を引いてしまい、慣れ親しんだバイエルンの指揮者のみを継続した頑固もの。
75年は、NHKがテレビもラジオもすべて放送してくれたから、その指揮ぶりや頭の具合(?)をつぶさに観察することができたし、その音源はすべて自家製CDRにして後生大事に持っている。
「我が祖国」「マーラー第9」「フィルトナー、プラハ+ベト7」「タンホイザー、ヒンデミット、ドヴォ8」。この4演目。
あの素晴らしいベト7は、レアな同コンビの録音にも勝るものだし、タンホイザーも素晴らしかった。
でも、「我が祖国」には泣けた。ない髪を振り乱して指揮をする熱きクーベリック。
ライブで燃える指揮者だったのだな、これが。
最初、文化会館の指揮台に立ち、上から指揮台に当たるスポットライトを眩しそうに見上げ、神経質そうにしていた。
なんて気難しい人なんだろうか。
当時、ようやく来日したニコリとしない大物に、そんなイメージがまずあった。
でも、音楽は真摯でそれにひたすら奉仕する熱い男のそれであった。
 有名な話だが、日比谷公会堂で予定されていたマーラーの第9を、ホールを見聞するなり、ここではこの曲は演奏できないとして、文化会館のベト7と演目交代をした。
たしかな判断であるし、そこには音楽への厳しさと良心が窺える。
一方で、当時の日本の主催者側のお粗末さも露呈している、といえよう(あんた誰?)。

ボヘミア出身のクーベリック。
ブルックナーよりは、マーラーかなぁ・・・。
ブル8の記事だったのに、また昔話になっちゃった。


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コメント

クーベリックの来日、確か私が高2の時です。懐かしいですね。来日直後の「わが祖国」の演奏をNHKが直ちに放送してくれました。あの頃は、今みたいにメディアが発達していなかったから、テレビでも充分楽しめました。
ヒンデミットの「ウェーバーの主題による変奏曲」もいい演奏だったように記憶しています。

それから十数年後、クーベリックはプラハの春でチェコ・フィルの指揮台に戻ってきましたね。もう少し元気なうちに、チェコ・フィルを振る姿を見たかったです。

歴史に翻弄された大指揮者の一人ですね。

投稿: 上野のおぢさん | 2010年3月 9日 (火) 08時35分

ブルックナーの8番。結構ですな!この曲を最初に聴いた演奏がワルターのコロンビア響。私には今聴いてもタイクツな演奏で、つまり第一印象があんまりよくないんです。おかげでその後誰の演奏を聴いても「あー。。。タイクツ。。」と思ってしまうんですよ。困ったもんだ。クーベリックのブルックナーですか!聴いてみますね。クーベリックのお父さんって、バイオリンのエライ人だったんですよね?HMVのSP盤を何枚か持っています^^ご紹介の「我が祖国」はNHKでドキュメンタリーみたいな特別番組をやっていました。かなり熱い音楽家ですね。
東大寺を見てからクーベリックですか。。。
いよいよさまよえる様って何してる人なんだろうって
フシギに思えます。。。。色々妄想してます!

投稿: モナコ命 | 2010年3月 9日 (火) 16時54分

こんばんは。まず、ブルックナーの「第8番」からです。カラヤンは1975年にベルリン・フィルで録音したものはカッコイイ。それに対し、メータ、イスラエル・フィルはきれい。こちらには「第0番」が併録され、ボーナスのようでした。マーラーを取り上げてたクーベリックなのできっと、素晴らしいかと思います。(勝手な想像)
ちなみにクーベリックはカラヤン時代のベルリン・フィル録音も多く、やはり、ドヴォルザークの「交響曲全集」を持ってて、1966~1973年までとなってます。「オペラ」はバイエルン放響時代の1964年にミラノ・スカラ座、ベルゴンツィ、フィッシャー=ディースカウ、スコットによる「リゴレット」も録音しているし、チェコ、バイエルンだけでなく、世界各国に活躍の場がある。
チェコ指揮者の回し方は日本の歌謡曲のフィーリングに似ているし、お国物という場所を選ばないオーソドックスな響きが似合っているのではないでしょうか。

投稿: eyes_1975 | 2010年3月 9日 (火) 21時07分

上野のおぢさんさま、こんばんは。
クーベリック&バイエルンの来日をテレビで見たのは、私も高2でした!
モルダウ以外を初めてまともに聴いて、その指揮姿とともに記憶に刻まれる演奏となりました。
今でも自家製CDRで聴くことができますが、あの映像がもう一度観たいものです。
 大巨匠となったチェコフィルとの来日の時よりも、はるかに思い出に残るものでした。

おっしゃるように、歴史に翻弄されたクーベリックですね。
でも、バイエルン放送響が今のような優秀なオーケストラになったのも、クーベリックが心血を注いだお陰でもありますね。

投稿: yokochan | 2010年3月 9日 (火) 22時15分

モナコ命さん、こんばんは。
ブルックナーの8番が、苦手のご様子ですね(笑)
そんなモナコ命さんには、このクーベリックはもたれずに、すんなり聴けると思います。

テレビのドキュメンタリーは、クーベリックが亡くなる前の最後の来日のものだと思います。
チェコの政治に翻弄されたクーベリックの祖国愛は熱かったものと思いますね。

東大寺画像は、2年前ですよ。
最近は遠出をあまりしてませんので、過去の写真から選び出している毎日であります。
決して、怪しいものでも、名乗るほどのものでもござんせん(笑)

投稿: yokochan | 2010年3月 9日 (火) 22時20分

eyes_1975さん、こんばんは。毎度ありがとうございます。
外はみぞれまじりの冷たい雨でして、シベリウスなんぞを聴いております!

カラヤンの75年盤は、未聴なのですが、同時期のFMライブは散々聴きました。たしかにカッコいいですよね。
メータとイスラエルの8&0も未聴。
メータはロスフィル盤にやたらと興味があります。
同コンビの4番がけっこう好きなものですから(笑)

クーベリックは、カラヤンとベームと同時期にDGを支えた名指揮者でしたね。
あげられたような、二人の有名指揮者とかぶらないようなレパートリーがたくさん録音され、今となっては嬉しい録音ばかりです。
そう、ドイツものでも、ガチガチのドイツじゃない、大らかな演奏が多いように思います。弦の国チェコならではで、弦の歌わせ方は伝統でしょうね。

投稿: yokochan | 2010年3月 9日 (火) 22時28分

クーベリックのブルックナーは素晴らしい。あまりにも自然に流れていくので、ちょっと聴くと何もしていないように感じられて、人によっては物足りないのかもしれませんが、クーベリックの真摯で誠実な音楽作りとバイエルン特有の明るく素朴で伸びやかなサウンドがあいまって、ブルックナーの音楽のひとつの理想を実現していると思います。4番からスタートした全集が第2弾の3番をもって打ち止めとなってしまったのは、クーベリックの健康問題があったにしても返す返すも残念なことでした。
8番はオルフェオからもライブが出ていますが、今回発売された録音も期待できそうでおおいに楽しみです。やはりこのセット、買わないといけないようです(笑)9番もオルフェオからライブが出ていますが、FMで聴いたベルリン・フィルとのライブが一層優れているので発掘を期待したいところです。

投稿: 白夜 | 2010年3月 9日 (火) 22時49分

白夜さん、こんばんは。
実は恥ずかしながらクーベリックのブルックナーは、これが初聴きだったのです。
世評高い3・4番も未聴でして、あいすいません。
ご指摘のとおり、ブルックナーに必須の要素でもあるバイエルンサウンドが、ここでも充分に堪能できました。
録音の続行がなかったのは残念ですね。
そういえば、ベルリンの第9は、自家製CDRにありました。でもこれも作っただけで、聴いてません・・・。

このセット、続くコンドラシンも素晴らしい演奏でした。
お薦めしておきます(笑)

投稿: yokochan | 2010年3月 9日 (火) 23時51分

 こんばんは。
東大寺は毎年行っています。今月末も、姫路、京都、鳴門などと同時に回ろうと思っています。

この得意でないブルックナー:交響曲第8番、、 ロジェストヴェンスキー、フルトベングラー、クナッパーツブッシュ、シューリヒト、スクロヴァチェフスキと、昨日今日で聴いてみました。まだ、よくわかりません。

3月25日に、スクロヴァチェフスキとインバルが同じ日にやるので、どちらか行こうと思っています。どうしたものでしょう。。

投稿: にけ | 2010年3月10日 (水) 21時51分

こんばんは。クーベリックのブルックナーは私も聴いたことがないのです(恥)。Auditeのマーラーなんかはかなり揃えてるんですがねぇ・・・。ぜひブルックナー聴いてみたいと思います。
「我が祖国」はTVでチェコ・フィル復帰ライヴを見たクチです・・・。感動的でした。特にあの激動の時代でしたからね。

東大寺、高校の修学旅行で行って以来です。本当に大きいですよね。大仏自体よりも写真にありますように、それを覆っている大仏殿の勇壮さが大好きな私であります。歴史の重みを感じる建物です。

投稿: minamina | 2010年3月10日 (水) 22時31分

にけさん、こんにちは!
奈良はゆっくりまわるとすごくいいですね。
あと、姫路にお泊りの節には生姜醤油で食べる姫路おでんがオススメです。

ブル8は以前は大得意の曲でしたが、最近はちょっと苦手です。すごすぎて、かえって感動できなくなった感があります(?)
ワーグナーの方が気安く聴ける自分って変ですね(笑)
ミスターSとインバルですか! あと、ティーレマンもその頃にやりますね。
ブル8だらけですなぁ!
わたしは、神々の黄昏一本に絞ってます(笑)

投稿: yokochan | 2010年3月11日 (木) 17時30分

minaminaさん、こんばんは。
クーベリックのブルックナーはすっきり、温かという感じで南ドイツ風の味わいがありました。
もっと聴きこまなくてはと思いますが、ブル8に最近疲れちゃったもんですからしばらくはお預けであります。
チェコとの我が祖国は、歴史的出来事でしたね。
同時にバイエルンとの古い映像もやたらと覚えているわたくしです。

大仏さんはやたらデカイし、大仏殿もビル並みでして、すごい技術だと思いますね!
ゆっくりと古都散策をしたいものです。

投稿: yokochan | 2010年3月11日 (木) 19時43分

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