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2010年4月25日 (日)

ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 ティーレマン指揮

Sodegaura_2
堤防から覗き見。
足元に砕け散る波しぶき。
向こうの山は箱根の嶺。

今日は怒涛のワーグナーを聴くのだ。
あらかわバイロイトの「ワルキューレ」に行けなかったし・・・・。

Tristan_thielemann
本ブログ15本目の「トリスタンとイゾルデ」。
音源・映像22。エアチェックCDR・VTR・DVDはおそらく50くらい。
ばかですねぇ。
パルシファルもリングもマイスタージンガーもこんな感じ。

初トリスタンのレコードは、中学生のとき。
平塚か小田原だったかのレコード屋さん。
棚に鎮座してあったのをずっと見つめてはいつしか手にいれてやると思って半年。
ついに7000円を握りしめて、中学生のワタクシがずっしり重たい豪華カートンケース入りの「ベームのトリスタン」を手にレジへいくと、二人いた店員さんたちの驚愕ハイドン94状態のお顔。
いまでも忘れられませぬ。

今日開封して聴いたティーレマンウィーン国立歌劇場ライブのCDは、昨年秋に地方某塔の店で購入したもの。
思わぬ掘り出しものがあるから、出張時のCDショップめぐりは楽しい。
これ、ワゴンセールなんだけど、6395円の50%offのシールが。
少し悩んだけど、恐る恐るレジにもってゆくと、ポスレジを通らない。
え? 値段が間違ってましたと言われたらどうしよう・・・。
よってたかって店員さん3人がかりで手打ちしたり、なんだかんだやるけど、まったくだめ。
チーフらしき人が出てきて、本部だかなにかに電話してる。
ひとり残され、不安で一杯のわたくし。
 そして出された結論が、元値の間違いと。
6395円の60%引きが機械上すでになされていたのだそうで、そこでさらにその半額になったのでございます。
ということで、これ、1279円で購入したんざます。
あとで間違いでしたと言われないように、そそくさと店をあとにしたワタクシ。
しめしめと思いつつ、レンタカーに乗り込み急発進をして現場を逃げ去ったのです。

これもまた、思い出のトリスタン購入歴を刻む出来事でございます。

それにしてもこのジャケット、オペラにも造詣深いポップなアーティスト、ディヴィッド・ホックニーの「トリスタンとイゾルデ」だそうな。
演奏の内容と開きがありすぎるのでは・・・・。
各幕1枚、3CDのカラーが、赤・青・緑と、この絵のカラーモティーフとなっている。

 イゾルデ:デヴォラ・ヴォイト    トリスタン:トマス・モーザー 
 マルケ王:ローベルト・ホル    クルヴェナール:ペーター・ウェーバー
 ブランゲーネ:ペトラ・ラング    メロート:マルクス・ニミネン
 牧童:ミハエル・ロイデル      船乗り:イン・スン・シン
 若い水夫:ジョン・デッキー

   クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団
                         ウィーン国立歌劇場合唱団
                     演出:ギュンター・クレーマー
                     (2003.5 @ウィーン国立歌劇場)


Tristan_wien
ウィーン国立歌劇場のサイトで、この時の映像がちょこっと見れます。
この年がトリスタン37年ぶりのプリミエのクレーマー演出は、画像やリブレットでみるかぎり時代設定を近代に置き換え、装置は閉塞感ある雰囲気だ。
ウィーンのトリスタンといえばその前はエヴァーディングのもので、来日公演で観劇したけど、デイム・ジョーンズとテオ・アダムの素晴らしい声しか覚えておりませぬ・・・。

 音源だけなので演出のことはさておきだが、ときおりドシン・バタンと大きな舞台の音もそのまま収録されているので、びっくりするのも事実。

この上演は、NHKFMでも放送されCDRとして聴いたが音がいまひとつで、商品化したCDで聴く音は向上し、細部にわたって舞台の声とピットのオケ、それもウィーンフィルの美音が楽しめるのであった。それでもバイロイトの優れた録音には及ばないけど。

 かつてクナッパーツブシュ、ベームやシュタイン、レヴァイン、バレンボイムらが音楽監督的な存在であったように、ティーレマンはいまやバイロイトの音楽面での顔である。
7年前のこのトリスタンでは、いま現在のような図太いまでの圧倒的な説得力は弱め。
普通に非常に優れた演奏っていう感じ。
しかし、重心低めのド迫力低音、緩急の巧みさ、リズム感のよさとあふれる生気。
これらは今もティーレマンの音楽を特徴づけるもので、ウィーンフィルの艶色系の音色がそこに華を添えていて、第2幕の二重唱からその幕切れにかけての美しさと絶望感、さらに3幕のトリスタンの夢の熱烈さなどは、実に聴きものであった。
 いつしかまた、ドレスデンあたりと再録音をしてもらいたい。

アメリカ人二人の主役。
当時58歳のトマス・モーザーが実によいと思った。
モーザーはモーツァルト歌いとしてデビューし、カラヤンとのレコーディングもあったが、リリックから徐々にヘルデンに転向しワーグナーやシュトラウスには不可欠の歌手となった。
重ったるいロブストな声でなく、気品をともなったクリアボイスで、力強さや声量は少ないもの慎重で丁寧な歌い口で聴かせるトリスタンに思った。
Deborah_voigt
もうひとり、ジャイアント・デボラ・ヴォイトさんのイゾルデ。
かつてのカバリエのごとく、ビッグすぎて、演出家からイメージにそぐわないとして何度も降板させられてしまう愛すべきデビーさん。
そして何度もダイエットに挑戦し、メットのライブビューで観たイゾルデはいくばくか痩せておりました。
その時の進行役スーザン・グラハムとのやりとりもユーモアたっぷりで楽しく、なんでも笑い飛ばしてしまうアメリカ~ンなナイスなお方と感じましたね。
 そんなデボラ(一文字違うとたいへん)のイゾルデは、ちょっと表現の幅が大味だけど、これだけ立派で余裕を感じさせる声はそうそうにない。
メットのときも感じたけれど、人情味あふれる女将的なイゾルデでありました。
ことし、松本でサロメを歌う予定らしいけど、小澤さんもふくめてどうなるんだろう。

新国で若々しいザックスを歌ったウェーバーのクルヴェナールもいいが、P・ラングのブランゲーネが献身的な歌でもって印象に残る。
それと味わい深いホルのマルケ。

賛否両論あるらしいこのCD、わたくしは素直に楽しめました。
トリスタンが好きなもんですから、よっぽどひどくなければどんな演奏でもOK。
 ウィーンのこのプロダクション。
名指揮者が次々に登場していて、シュナイダー、W・メスト、セーゲルシュタム、ラトルなど。さすがはウィーンです。

聖響&神奈川フィルの素晴らしいマーラーの3番がいまだ耳に残る日曜。
マーラーも多大な影響を受けたトリスタン。
ともに「愛の救済」を描きつつも、どうしてこんなに違うのか。
どちらも慣れ親しんだ世界であるけれど、横浜のマーラーは素晴らしすぎた。
一方で、ワーグナー生涯愛は変わらないけど。(言うよねぇ~)

・トリスタン過去記事

 大植バイロイト2005
 アバドとベルリン・フィル
 
バーンスタインとバイエルン放送響
 P・シュナイダー、バイロイト2006
 カラヤン、バイロイト1952
 
カラヤンとベルリン・フィル
 ラニクルズとBBC響
 バレンボイムとベルリン国立歌劇場公演
  レヴァインとメトロポリタン ライブビューイング
 パッパーノとコヴェントガーデン
 ビシュコフとパリ・オペラ座公演
 飯守泰次郎と東京シティフィル
 ベームとバイロイト1966
 ジョルダンとジュネーヴ

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コメント

こんにちは♪ 

お出かけになれなかったのですね、とても残念です。 
「あ、この方クラヲタ様かな?」といろいろな殿方のご尊顔をチラチラ拝しておりましたのに… 
 
「アラカワ・リング」としての期待が大きく膨らんだ舞台でした。 
そしてわたくしはウサギのような眼になって会場を後にしてまいりました。

投稿: moli | 2010年4月26日 (月) 10時56分

moliさん、こんにちは。

そうなんですよ・・・、当日券で飛び込むつもりでしたが、コンサートが前日だったし、二日酔いになってしまったし、懐中も寂しいところから、涙を飲んだのです。

ねこのかぶり物のお約束を果たせず、申し訳ありませ~ん(笑)
なかなか素晴らしい上演だったようですね。
行っていたら、わたしもおそらくウサギ2号になってましたね。
1回お休みしちゃったから、リングが完結できないことに、いま気付き、大いに後悔してます・・・・(涙)
 でも、今後の展開が楽しみな「あらかわ」ですね。

投稿: yokochan | 2010年4月26日 (月) 21時10分

へへへ・・・このCD、中古屋で2千円ちょっとで買ったんですぜ~!と自慢しようと思った矢先!

参りましたm(_ _)m

よく追いかけられず、捕まらずに済みましたね?!(爆)。

ライヴ録音で、舞台上の物音もしっかり拾った録音ですが、逆に臨場感たっぷりですね。モーザーは、バーンスタイン&BRSOの録音では水夫を歌っているんですよね。これまた時代の流れというかなんというか・・・。
ウィーンで聴いた「魔弾の射手」のマックスが彼で、いい歌手だなぁ~と感心したのが十数年前。着実に成長していっているのですね!

ヴォイトは舞台姿を見たことがないのですが、見ない方がいいんですかね?!(おい)。このCDを聴く限り堂々とした歌唱です。

ま、堂々としている、といったらティーレマンの音楽に尽きるのですがね。

それにしても「トリスタン」、たくさんお持ちですねぇ。5組ぐらいしか持っていない私、これでもオペラの同曲異種では多く持っている曲目なんですけどね・・・(苦笑)。

投稿: minamina | 2010年4月26日 (月) 23時35分

minaminaさん、ほとんどバカです。
ばかと呼んでください。
たくさん持ってるなかでも、安値ゲットした品は、思い出深いものになりますな。
 それにしてもヒヤヒヤどきどきのお買いものでした。

ティーレマン、いまならもっと凄いと思えますが、これはこれで、貴重なウィーンのトリスタンです。
歌手もよく、なかなかのトリスタンだと思います。

投稿: yokochan | 2010年4月27日 (火) 01時11分

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