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2010年4月15日 (木)

シャルパンティエ 「愛はすべてのもに勝つ」 クリスティ&プティボン

Azumayama5
まだ桜。
向こうは相模湾。

日替わりで、冬と春。
なんだか変だぞ、日本。

Charpenter_les_plaisirs
「春のプティボン祭り」開催中

今夜は、クリスティ門下時代のエラート録音から、シャルパンティエ(1643~1704)のパストラレッタ「愛はすべてのものに勝つ」を。

パストレッラは、牧歌劇のことで、イエスの誕生にまつわるパストラーレ=田園曲とはことなる神話世界の寓意劇で、宗教的な意味合いはまったくないのどかで、現世離れしたもの。
後世のオペラの人間ドラマからしたら、まったくもって呑気で、バカらしく感じるけれど、そんな素材に必死に取り組み、滋味深い音楽を書き残した当時の作曲家たちを思い、いまこんな時代に、その音楽を聴く邪念いっぱいのわれわれが、空しい存在に感じてしまう。

フランス・バロックの作曲家、マルカントワーヌ・シャルパンティエ。
多くを聴いてないけれど、キリスト降誕の「真夜中のミサ」が有名。
抒情的な作曲家との印象が強い。
一方で、イタリアに学んだことから、フランス的な優美でノンシャランな音楽と同時にイタリア的な形式重視かつオペラティックな要素も合わせもっているといわれる。

このCDには、フランス語によるディヴェルティスマンと、イタリア語によるパストラッタが収められ、クリスティらしい見事な対比を見せているが、わがパトリシア・プティボンが多く歌うのは後者の方。

プティボンは、二人の娘のうちのひとり、フィッリを歌っている。
羊飼いリンコとシルヴィオの恋人は、それぞれフィッリとエウリッラ。
彼らは、恋人たる彼女たちがつれないので空しい。
一方の女性陣は、子羊が狼に追いかけられたり、自身が熊に脅かされたりで、恋人どころでなく、嘆きの真っ最中。
そこに、牧神パンが現れ、君たちに恋してる羊飼いたちが助けてくれるよ、と歌う。
そのお礼は、「愛」と歌う。
「愛は勝つ」であります。(まるで、KANの歌ですな!~ご存じでしょうかねぇ)

まったく、ばかばかしいけど、真剣かつ優美、そしてオペラのように心情こもった音楽であります。ともかく美しく、緑の園にぼんやり映える音楽に聴こえました。

儚む恋人のひとりを歌うプティボン。
子羊を嘆いて歌うアリアは、ヴァイオリンとテオルボを伴って楚々と歌われ、短くて単純だけど、ジーンとくる音楽であり、プティボンの清純なる歌でありました。
全体のアンサンブルの中でも、ひいき目に聴いてるにしても、ひと際目だって聴こえる彼女の歌声です。

クリスティの意欲が全体にみなぎったシャルパンティエの演奏。
 ルイ14世も聴いたであろう音楽を、こんなに歌と情緒に満ちて、いきいきと再現してしまうのだ。
レザール・フロリサンの秀逸さにも感服。
プティボンの多彩さにも感服。
ここに聴く彼女が、いまやベルクやプッチーニを歌うのだもの。
1996年の録音。

Azumayama6
こちらも郷里桜シリーズ。
早咲きの「つつじ」とともに。

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コメント

yokochanさん。
こんばんは。
大好きなディスク取り上げていただいて幸福です。久しぶりにデイヌマンの美声を聞きました。やっとワーグナーの毒が抜けていくようです。

投稿: Mie | 2010年4月15日 (木) 22時04分

Mieさん、こんばんは。
プティボンの声ばかりを気にして聴いておりましたが、聴き直すと、ご指摘のディヌマンのソプラノ、なかなかに聴かせますね、美しいですねぇ。
 わたくしの場合、常にワーグナー中毒中でして、解毒剤はまったく効きませんです(笑)

投稿: yokochan | 2010年4月16日 (金) 00時20分

もしこのアメリカの指揮者がこの世に現れ出でる事がなかったら、フランス-バロックの声楽を伴う名品が、音楽史作品愛好家のもとに届けられる事も、無かったでしょう。1970年代初頭の、ミシェル-コルボーズ‥柴田南雄先生の説に依りますと、南フランスやスイスに於けるフランス語の語尾の子音は、ベルリオーズ、ブーレーズの例のように、無音には成らないとか‥の登場に匹敵する存在では、無かったでしょうか。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月 5日 (日) 08時07分

クリスティの功績を見事にお書きになってらっしゃいまして、とても参考になります。
ありがとうございます。
あと数々の門下生を育てたことでしょうね。
レコーディングにも恵まれました!

投稿: yokochan | 2020年1月 8日 (水) 08時20分

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