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2010年5月 6日 (木)

ジュリエッタ・シミオナートを偲んで

Enoshima_1
イタリアの往年の名メゾ・ソプラノ、ジュリエッタ・シミオナートさんが亡くなったそうです。
5日、ローマにて。
1910年5月12日生まれ。
あともう少しで100歳を迎える間近だった。
まさに、イタリアオペラ界の一時代を築き上げた大歌手の大往生であります。

1930年代から1966年の引退まで、少しばかり短く感じる現役時代。
自己に厳しかったのか、その早すぎる引退のこともあって、私がクラシックを聴き始めたころには、もう伝説と化していた名歌手。
そう、でも私たち、日本人にとって、かけがえのない存在の歌手であったのです。

NHKが企画し、何度も本場のオペラを楽しませてもらった「イタリア・オペラ」団の初回から来日して、テバルディ、デル・モナコ、ゴッピ、バスティアニーニ、トゥッチ、ステルラ、コレッリらとともに、われわれ日本人が、イタリアオペラがなんぞやという初歩から真髄を味あわせ、植え付けてくれた恩人の一人なのであります。
56年から4度の公演で、アムネリス、ケルビーノ、カルメン、サントゥツァ、アズチェーナ、ロジーナなどを歌っている。

Simionato
生粋のイタリア歌手。
アメリカ、北欧、アングロサクソン、アジアなど、いまやオペラ界は多土済々にあるけれど、
「純正」という言葉がまさしくあてはまる、どこもかしこもイタリアの太陽と土、空気を感じさせる「ホンモノ」の歌うたいが、初期イタリアオペラ団のメンバーだったし、ジュリエッタ・シミオナートでもあったのだ。

ロッシーニを中心とするベルカント、ヴェルディ、そしてヴェリスモと、イタリアオペラのすべてを歌い込んだシミオナート。

今日は、そんな大歌手を偲んで、私の好きなジャンルから、ヴェリスモ系のロールをふたつ。

Cavalleria_simionato
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」から、サントッツァ役で、「ママも知るとおり」。
デル・モナコの一直線のトゥリッドウと張り合い、そして彼の老いた母と合い哀れむ、悲しいシチリア女を、強くそして優しく細やかに歌い込んでいる。
それにしても、気品があります。思わず背筋を伸ばしてしまいます。
 そして、これまたセラフィンとローマのオーケストラの耳洗われるレモンを絞ったがごとくのフレッシュな音色にも感激。

ついで、私の最愛のオペラのひとつ、チレーアの「アドリアーナ・ルクヴルール」から。
こちらは、ブイヨン公妃、メゾのロールによくある憎っき恋敵役。
テバルディと丁丁発止、恋のさや当てを演じきるシミオナートは、テバルディとともに大女優の雰囲気にあふれながらも、決してワルじゃない、女性らしいいじらしさをも感じさせる。
相手役が、あまりにヒロイックなデル・モナコだからよけいにそう感じるかもしれない。
第2幕から不倫の恋の喜びに打ち震える「甘き喜び・・」。
そのあとの、マウリツィオ(モナコ)に迫る二重唱。
その幕の最後の、テバルディとの熾烈な応酬。
3幕で、その戦いの勝ち誇ったさまと、その反動の憎しみの爆発。
 もう、すごいのであります。

ロッシーニやヴェルディを置いておいておいて異論はあろうかと思いますが、私はシミオナートの代表盤は、このアドリアーナのブイヨン公爵夫人ではないかと思うのです。

彼女のあとには、フィオレンツァ・コソットが続いたイタリアのメゾ。

まさにオペラの歴史に、その名を刻んだ名花でありました。

ご冥福をお祈りいたします。

(写真は、遠く富士を望む相模湾の夕日)

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コメント

こんにちは、ご無沙汰してます

オペラには疎い人間ですがシミオナートの名前はよく知っていました。特にイタリア・オペラの日本公演でその名声は高まったと思います。
私も以前拙ブログにて同じマスカーニのオペラを取り上げました。
オペラ通のyokochanさんに見ていただくには恥ずかしいものですが暇がありましたらご覧くださいませ。

TBがうまくいかないようなのでアドレスにURLを貼りました(__)

投稿: 天ぬき | 2010年5月 7日 (金) 14時36分

天ぬきさん、こんばんば。
こちらこそ、ご無沙汰してしまって。

シミオナートの名前すら忘れさっていたこの頃に、その名を聞くのは、訃報だったりすることが悲しかったです。
NHKイタリアオペラのもたらした影響は、わたしたちの世代以上の方々には計り知れないものがありますね。
 シミオナートは、そんな中の代表格的なメゾでした。
天ぬきさんのお聴きになられたライブは持っていませんが、あの一連のライブは、いま聴いてもホットですね。

歌手の訃報は堪えます・・・。
TB、ご不便おかけしました。

投稿: yokochan | 2010年5月 7日 (金) 23時14分

シミオナート、持ってたよなぁ~とラックを探しましたが、ヴェルディ「運命の力」(あのデッカ/伝説の名盤)しかありませんでした。
しかしこのプレチオシルラ、本当に素晴らしいです。この盤でオペラの「歌」のすばらしさを知った私なので、こういう訃報は本当に悲しいです。
今日はこの録音を聴いてご冥福をお祈りしたいと思います。

投稿: minamina | 2010年5月 8日 (土) 14時28分

minaminaさん、こんにちは。
もうすぐ100歳のシミオナートさん。
まさに往年の大歌手の大往生。
ぐっときますねぇ~。

私も「運命の力」持ってます。レコード時代から聴いてました。すごいですよね、彼女のヴェルディ、おっしゃるように、まさに「歌」があふれてます。

往年の歌手を懐かしむとともに、いまを生きる歌手たちもしっかり聴いておかねば、と胸に誓ったりしてます。
忙しいですわ。

シミオナートさんのご冥福をあらためてお祈りします。

投稿: yokochan | 2010年5月 8日 (土) 21時21分

シミオナート、亡くなったのですね。。
私もこのカヴァレリアのCD持っていて、結構お気に入りです。
正直、一昔前の人、と思っていたので、
まだ御存命だったことの方が驚きでしたが、残念です。
御冥福をお祈りします。。

投稿: 恋するオペラ | 2010年5月 9日 (日) 21時34分

恋するオペラさん、こんにちは。
忘れた頃にやってくる、往年の名演奏家たちの訃報。
中でも歌手のそれは、いちばん心にこたえます。。。

いい歌手でした。
もう半世紀も前なんですね。

いま活躍の歌手たちが、このように永きに渡って愛されることを願ってやみません。

彼女のご冥福をお祈りしましょう!

投稿: yokochan | 2010年5月 9日 (日) 21時59分

え!!シミオナート様!亡くなったんですか!!??
そうでしたか。。。亡くなったんですか。。
ああ、死んでゆく死んでゆく、みな死んでゆく。。。
モナコもテバルディもバスティアニーニもプロッティも
私の好きな歌手はみんな死んでゆく。悲しすぎます。というよりも私の好きな歌手が1950年代~60年代の人が多いんですね。もしも時間をその時代にもどせるなら、モナコのコンサートを聴き、オペラを見て、次の日の新聞の批評欄を読みあさり、、、、すべて時間が押し流していくんですねー。。私も年を取りました。。。

投稿: モナコ命 | 2010年5月10日 (月) 20時34分

モナコ命さま、こんばんは。
そうなんです、亡くなってしまいました。
忘れさられた頃に、大往生。

時の流れですからして、止めようがないのですが、空しいですね。
私の、当時の歌手、とくにドイツ系が好きなものですから、タイムマシーンが欲しいのであります。
そして、若返りたいです!(ね!)

往年の歌手たちの残された音源を慈しみたいと思います。

投稿: yokochan | 2010年5月10日 (月) 21時55分

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