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2010年5月 4日 (火)

オッフェンバック ホフマン物語 ジュネーヴ大劇場

Ninomoya
この連休中、5月初頭の青い空と新緑ですよ。
この時期は、紫外線が強いから思わぬ日焼けに注意だ。
わたしは地肌をやられちまうから、よけいに注意。

でも、なんだか連休も、天気がやたらといいだけに、かえって虚しくて、疲れちまいますね。
何も楽しみがないオッサンだからよけいでしょうか。

音楽聴くしか能がないオッサン1号でございます。

そんなオヤジ心をくすぐるオペラ映像を今日はどうぞ。

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最愛のソプラノ歌手、パトリシア・プティボンが得意のオランピアを歌うDVDを観劇しましたぞ。
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だいぶ前から購入していたけど、どうも触手が伸びなかった映像。
HMVサイトから買ったのだけど、そちらの宣伝文句からして、妙な先入観を植え付けられてしまい、半年間放置
 そして観ましたがね、予想通りの嫌な展開に目をつぶりたくなる。

注目のパトリアシアのオランピア。
目をつぶってきくと、これはまさに、いつもの慣れ親しんだ完璧なまでに歌い込まれたオランピアで、これは完成された芸術品なのであって、思わぬほどの意思を持った力強い歌は、技巧だけ・キレイなだけ・お人形さんらしさ、などなどの表現の歌が浅薄に感じてしまう。

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でも目を開けると、このジャケット写真のようなあられもないお姿に身をやつしたパトリシアが・・・(笑)。
ギリギリの肉襦袢であるのだけれど、これはまさに、南極2号状態(知ってますかね・・)
知らない方は、ググってみてくださいまし。
本物のプロとしてのプティボンは、こんなことにも果敢に挑むわけであります。

こんな格好をさせたクソ演出家は、フランスの映画監督・俳優・演出家のオリヴィエ・ピィだ。
同じような経歴を持つ人として、パトリス・シェローを思いおこすことができるけれど、シェローは音楽をよく理解し、何よりもその演出には品があり、説得力があった。
同じジュネーヴのトリスタンは、あふれかえる水をうまく使った美しい舞台に思ったけれど、自身が携わったものと思われる映像のカメラワークが最低で、欲求不満の残ったDVDだった。
 今回は、そんなこと以前の問題で、モノクロームの舞台に、人工的な照明や鏡面。
2階・3階に別れた足場のような多層的な舞台装置。
それらが、目まぐるしく変転し、動き回る。
訳もなく裸が満載で、あっちでブラブラ、こっちでもぞもぞ。
実はこれがまったく困ったもので、先のプティボンのオランピアはいい方で、3幕に登場の情夫シュレミルなどは、全裸を余議なくされているし、冒頭近くに出てきて酔えるホフマンを別世界へいざなう牧神のような連中も全裸で、男子たるワタクシとしては、そのブラブラ加減が鬱陶しいことこのうえなし。
女性も同じく、ウニャウニャでてきますぜ・・・。
S○●もどきの動きも満載だし、歌手ってたいへん。

こんな映像を、家族を持つワタクシがどのようにして自宅で視聴したらよいのだろうか。
観てたら、娘に踏み込まれてしまったし・・・。
夜中に、こっそり観るしかねぇえんだわ。

そのブラブラ・うにゃうにゃが、音楽を邪魔せず、演劇の必然として機能してれば、どんなに過激でもよしとしよう。
でも、私にはまったく音楽とは別物に感じざるを得ないのだ。

何百ものオペレッタを書いたオッフェンバックが最後に書いた3つの恋物語。
酔っ払いの居酒屋のホフマンを前後に挟んで、夢想の中に登場する、オランピア・アントニア・ジュリエッタ。
それぞれ、人形・歌手・娼婦。
男の側からのみ見た、女性の3態。そこにいとも簡単に溺れるホフマン。
ある意味、男からしたら、この女性遍歴は深淵なる世界ともとれ、これをオペラ化したオペレッタの王様のオッフェンバッハの心に宿ったのもユーモアの精神だったりして・・・。

この3つの恋物語に統一感を持たせようとしたのは、まず3人のお顔と髪型。
それぞれ、おかっぱで、パンダ顔の化粧。キョンシーみたい。
でも、他の人物たちはホフマンも含めて、ごく普通の人物。
ただし、リンドルフ・コッペリウス・ミラクル・ダッペルトットの4役はよくあるように同一歌手が演じ、まさに悪魔的な隈どりの濃い人物。というか、悪魔か。
3人の女性の特異性と同一性を浮かびあがらせんとする演出はどれも一緒だけど、少々気持ち悪し。
 舞台には、仮面を付けた無表情の第3者(=合唱)と、骸骨やおかっぱの女性多数。

だいたい、こんな舞台をご想像ください。
オペラの内容は検索してください。
なぜだか、投げやりなオペラ記事でありました。

でも、ここに演じる歌手たちが素晴らしいんです。
まさに彼らはプロ中のプロ。
映像なしで、音源のみ聴いて素晴らしい。

  ホフマン :マルク・ラオ  ミューズ、ニクラウス:ステラ・デュフェクシス
  リンドルフ、コッペリウス、ミラクル、ダペルトゥット:ニコラス・カヴァリエ
  アンドレス、コシュニーユ、フランツ、ピティキナッチョ:エリック・ヒュエ
  オランピア:パトリシア・プティボン 
  アントニア:ラヘル・ハルニッシュ
  ジュリエッタ:マリア・リッカルダ・ヴェッセリング   他

    パトリック・タヴァン指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
                   ジュネーヴ大劇場合唱団
                   演出:オリヴィエ・ピィ
                   装置、衣装:ピエール=アンドレ・ウェイツ
                      (2008.10@ジュネーヴ)

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ホフマン役のベルギーのテノール、マルク・ラオの伸びやかな声がいい。
この役はドミンゴの訳知り顔の歌が刷り込みの方も多いかもしれないけれで、ベルカントを得意とするラオの歌は、適度にアホっぽくて純でよろしい。
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 そのホフマンにいつも付きまとう、ミューズ=ニクラウスのドゥフォー。フランクフルト生まれらしく、真面目な歌いぶりだけど、ちょっぴりセクシーで、可愛い狂言回しになってる。
アバドのファルスタッフにも出てたっけ。
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N・カヴァリエの悪魔三役は、かなりの説得力。
同じ4役のヒュエのキャラクター・テノールぶりもよろしく、実際、ベルクなども歌う人みたい。
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そう、あと素晴らしいのが、ハルニッシュのアントニアの清純無垢ぶり。
映像見てると変なお嬢さんだけど、音源のみで聴く彼女の澄み切った歌いぶりは、プティボンとラホと並んで、このプロダクションの白眉。
 
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ヴェセリングのジュリエッタは、ワーグナーメゾのそれ。
強くて、おっかないのです。そのお姿のエロさよりは、滑稽さが。。。、でも歌は素晴らしい。

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指揮は若いパトリック・ダヴァン
この人結構いいです。
スイスロマンドから、鮮度高い生き生きとした音楽を引き出してます。
このひと、世紀末系の音楽も得意にしていて、私の感度とばっちり合いそう。

この映像、一度見たら、あとは音だけで楽しんでます。

自分も含めて、お口直しのプティボン映像をどうぞ。



この頃は、おきゃんなムードで、かわゆかったけど、母となり、その歌もスケールを増して、女を歌う歌手になってきたパトリシア。
でもジュネーヴの「ルル」もそうだけど、ピィはやめて欲しいなぁ。

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コメント

プティボン、いいですね。Youtubeも見てみました。CDなども何枚かかって楽しんでいます。これもすべてこちらのブログの紹介あってのことです。本当にありがとうございます。プティボン、高音域も良いのですが中低音域の充実がいいああ、と思っています。

投稿: Shushi | 2010年5月 5日 (水) 08時07分

おはようございます。
南極・・・ググってしまった私が通りますよ。
しかしなんという演出(見てないけど想像で)・・・ひどいですね。この楽しいオペラに何すんじゃ!って感じです。何年か前にテレビで見たザルツブルグの「こうもり」を思い出しました(トラウマです)。

もうすぐ「影のない女」ですが、悪い予感がします。YouTubeでドニ・クリエフ演出のオペラを探してみたのですが、みんな現代の普通のカッコで舞台に上がってたりするんです。もっと夢のある演出が欲しいところです。

投稿: naoping | 2010年5月 5日 (水) 08時07分

shushiさん、こんにちは。
プティボンのDVDは、徐々に集めてますが、その演技力と抜群の歌唱力に痺れてます。
 実演で聴くと、意外なまでの声の強さに驚きますし、ご指摘の中低音域の充実ぶりも楽しめますよ!

投稿: yokochan | 2010年5月 5日 (水) 13時22分

naopingさん、こんにちは。
南極・・には参りましたよ。
途中でプティボンと人形(?)が入れ替わって、高いところから投げられて、憐れ、壊れてしまうのでした。

読み替え演出にはすっかり慣れて、普通に受け入れられてますが、こちらのように、余計なものを見せられても困ってしまうのですね。
「影なし」の演出家は、まったくノーマークなのですが、そんなお人なのですか・・。
あのオペラは、お互い思い入れがありますから、「夢なし」は困りものですねぇ。
でも、どんなになるか楽しみもあります!

投稿: yokochan | 2010年5月 5日 (水) 13時37分

こんばんは。「ホフマン物語」はレヴァイン、ウィーン・フィル。ドミンゴ、マレイ、ヴァン・ダムによるORFEOからのライブCDがあります。これで理解できました。
劇では歌入りの有名な「ホフマンの舟歌」数ある「舟歌」のルーツはヴェネツィアの「ゴンドラの歌」からきているのね。タッソーも書いてたし、ここはイタリアの影響もあるでしょう。TVで放送されたのを少しだけ見ましたが、それだけアップされることの多い場面でもありますね。ホフマンの短い命ははかないもの。
何度か改訂されているのに大胆にもリメークしているのは時代の流れでしょうか。
作者はE.T.Aホフマンで元々はファンタジー小説ですからね。

投稿: eyes_1975 | 2010年5月 5日 (水) 21時59分

eyes_1975さん、こちらにもありがとうございます。
レヴァインのザルツブルク公演ライブは、FM放送のエアチェックで楽しみました。もうずいぶん前ですが・・・。
ウィーンフィルが美しいですね。

名旋律がたくさん詰まったオペラですが、版の問題とか謎のたくさんある作品です。
こうしたオペラは、現実的に解釈されてしまうと夢も希望もなくなってしまいます。
やはり、これはファンタジー・オペラなのですね。

投稿: yokochan | 2010年5月 6日 (木) 00時19分

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