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2010年5月 9日 (日)

コルンゴルト 「ポリュクラテスの指輪」 ザイベル指揮

Ikura
「美しく赤きいくら」

お口の中で、プチポチと、思わず微笑んでしまいますね。
海の宝石やぁ~

でも、美味しいものにはトゲがある。
食べ過ぎ注意だ。

美味しいものや、美味しいお酒ばっかり摂取していると、懐への負担もかかるが、何よりも体に悪いですな。
野菜中心生活を心がけ中のワタクシですが、野菜がまた高いときたから困ったもんだ。

いまは大変なことになってるギリシアの紀元前の昔、「ポリュクラテス」という王がいて、連戦連勝、やることなすこと人生旨くいっていた。
この幸運が不幸へと変わらないように、一番大切なものを捨てるようにと、忠告を受けた。
そして、大事な指輪を海に捨てた。
でもそれを呑みこんだ大魚がいて、そいつを捕まえた漁師が王に献上して、指輪が戻ってきちまった!
やがて、ポリュクラテスの運命は下降線に・・・、娘が止めるのを聞かずに、わかっているのに暗殺者が待ち受ける場所へと飛び込んでゆく。

 絶頂期に大事なものを捨てるなんて、なかなか出来ないですねぇ。
酒や美味しいものはやめられんない。まして音楽を止めろって言われたら死んじゃう。
 わかってて、自らはまること・・・・罰せられたい欲望を、「ポリュクラテス・コンプレックス」  というそうな。 (ウィキをちょろっと参照しました)

Korngold_polykrates
その「ポリュクラテスの指輪」をタイトルに持つオペラ。

エーリヒ・ウォルフガンク・コルンゴルト(1897~1957)のシリーズ。
全部で5つあるオペラの最初の作品であります。
こんな小難しそうな内容のオペラを書いたのが、17歳の青年コルンゴルト。
毎度ご紹介のとおりの早熟ぶりだが、ユダヤ人ゆえにアメリカに渡り、ハリウッドで活躍し、ヨーロッパを夢みたものの戦後は、まったく受け入れられず失意の後年・・・・。

このオペラは、自作の「ヴィオランタ」とともに、ブルーノ・ワルターによって初演され大成功を収めているが、この頃から、亡命前の40歳くらいまでが、クラシック作曲家としてのコルンゴルトの絶頂期だったかもしれない。

タイトルは難しそうでも、こちらは、1幕ものの洒落たラブ・コメディなのでありました。
青年にして、男女の機微をオペラに創作しちゃうなんて、モーツァルトみたいですな。
 そして、その音楽は親しみにあふれ、いつものように甘味な旋律も次々に溢れだしてきて陶然としてしまうし、一方ではユーモアやしっとりしたビターな雰囲気もありだ。
音楽家が主役だから、ハイドンの話になったりすると、驚愕94の旋律がちょろっと流れてきたりする。

  ウィルヘルム・アルント(宮廷音楽監督):エンドリック・ヴォトリヒ
  ラウラ (その妻)              :ベアテ・ベランツィヤ
  フローリアン・ドブリンガー(打楽器奏者/写譜屋):ユルゲン・ザッヒャー
  リーシェン(ラウラの家政婦)       :キルステン・ブランク
  ペーター・フォーゲル(ウィルヘルムの友人):ディートリヒ・ヘンシェル

   クラウスペーター・ザイベル指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団
          
                   (95.9@ベルリン、イエスキリスト教会)

簡単なあらすじを。

 

古典派の時代1797年、ところはザクセン国の宮廷音楽家の邸宅にて

ウィルヘルムのアシスタントのフローリアンが、リーシェンと仲良くしていて、二人でウィーンのハイドンの元にいって・・・と夢を語っている。
一方、ウィルヘルムとラウラは結婚して2年。幸せ絶頂継続中で、今日もベタベタしてる。
そこへ、友人のフォーゲルからの手紙。
彼は二人の結婚いらい、ヴァイマールに去ってしまっていたのだ。
その彼がいますぐそこに来てると。なんでも、財布をすられて金に困っているのだそうな。
 ひとりになったラウラは、夫への変わらぬ愛を美しく歌う。
そして、日記を取り出し、読みながら淡々と歌う~なかなかに素敵なモノローグなのだ。
15歳の3月、ペーター・フォーゲルに出会った・・・、不器用でシャイな彼、彼のこと好きなのかしら?

ページをめくる・・・。
20歳の8月、そしてウィルヘルムがやってきた、私は彼を見つけ、彼が私の人生に入ってきた・・・、そして結婚したの・・、と暖かく歌う。

フォーゲルがやってきて部屋に一人、幸せそうな室内を観察し、私はまだ独りもの、と呟く。
やがて、ウィルヘルムと友情を交わし合うが、ウィルヘルムのとどまるところを知らない幸福話と成功話に、もうたくさんだと、ムッとしてしまう。
 実はね、こんな素晴らしい本を見つけたんだ、とフォーゲル。
シラーの詩集で、「不幸の妬みで神を鎮めるために、犠牲を払う準備をしなさい・・」とうもの。じゃぁ、最愛の人を手放さなくてはならないのか・・・と、最初は取り合わないウィルヘルムだが、喧嘩したことある?何か隠し事は?自分の前に好きな人がいたんじゃないの?とかとか、いろいろ不安を焚きつけるので、ウィルヘルムもその気になってしまう。

妻と二人になったウィルヘルムは、徐々に、友人の助言通りに妻を試すが、何度聞いても、妻の自分への篤い思いは変わらないという・・・。
ここで二人は、素晴らしく甘い二重唱を歌い、よかったよかったということになるのだが・・。
ウィルヘルムは、実はね、フォーゲルに言われてテストしてみたの、とばらしてしまう。
ラウラはこれには怒り、でも内心、フォーゲルが自分の執心を試しに来たんだわ、と困惑。

ついに喧嘩して泣きだしちゃう。
 これじゃいけない、すべてを明快にしよう、とのことで、お互いに「日記」と「詩集」を交換し合い、別室で確認することに。

ここに登場のフローリアンとリーシェン。
ともにご主人たちの様子を観察していて、フローリアンも「海に指輪を捨てるんだ」と、リーシェンを試してみるが、平手でビンタを喰らってしまう。
これを見ていた夫婦たちは、笑いあう。
そう、もうお互いがわかったのですな。
リーシェンに求婚するフローリアン。
そして、ウィルヘルムに、彼女との結婚とウィーンへ行く許しを乞い、ウィルヘルムは快諾。

こんな和やかなムードのところに、フォーゲルが「ポリュクラテスの指輪」と言いながら、手に指輪を掲げてやってくる。
 一同、え?確かに犠牲の印だ、と笑いだす。
きょとんとするフォーゲル。
シラーの詩集は、私たちを惑わしたけれど、神が望んだ犠牲は、そう、君だよ、と親愛をこめてウィルヘルムは歌う。

二人きりになった夫婦は、さぁ、これから新しい詩を読んでいこう。。。
と仲睦まじい~


だいたい、こんな感じかと。
気の毒なフォーゲルさんだけど、こうした役回りの人ってよくいますよねぇ。

ほんと、よく書けてる音楽でして、CD1枚・70分だから気楽に聴けます。ホンワカします。

歌手の中で、オッと目を引くのが、そうヴォトリヒですな。
新国ですっかりおなじみのテノールなんだけど、劇場と発声の相性からか、いつも声が埋もれてしまうひと。
こうしてCDで聴けば、そんなことはなくって安心して聴いてられます。
ジークムントのような悲劇的な役柄よりは、こうした甘口の役やキャラクター役の方がよいかもしれない。
 ほかの歌手のみなさんも、本物です。
ドイツ語が美しく感じられるのも、コルンゴルトの音楽の特徴かも。
 それとオケがやたらとウマいし、録音もよいです。

さぁ、みなさんは、大事なものを捨てられますか
わたしは、まだ幸福はこれからだから、捨てるものはこれから・・?
いや、知らぬ間に捨ててしまっているかもです。
そう思って、笑ってすませましょうかね。

 

 

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コメント

こんにちは。
やはり、このCDお買いになられたのですね。
でも、こんな筋書きだったんですね(さぼって訳そうとしませんでした)。参考になりました。
自分のところにも書きましたが、「ラウラの日記の歌」はいい曲ですね。(ヤノヴィッツが歌ったものは本当に素敵です。)久しぶりに聴いてみようかなと思いました。

投稿: naoping | 2010年5月12日 (水) 20時37分

naopingさん、こんばんは。
北方面におります。

カトリーンと一緒に購入しまして、まずは音楽のみ何度も何度も聴いて馴染みました。
その後、悪戦苦闘のすえ、こんな内容ではないかと想像力も働かせつつ書いてみました。
違ってたらごめんなさい。
無名オペラは楽しいけれど、苦労しますね!

ヤノヴィッツがあの素敵な日記の歌をうたってるなんて、さらに素敵すぎますよ。
コルンゴルトの歌ものは、ほんと美しくて痺れますねぇ!

投稿: yokochan | 2010年5月13日 (木) 22時15分

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