ビゼー「カルメン」&サラサーテ「カルメン幻想曲」 アバド指揮
盆栽の「さつき」。
亡父は庭いじりが好きだったので、実家は緑が豊富で、鳥や虫もたくさん来ます。
私は平気だけど、蜘蛛やムカデ、蛾の幼虫などが登場すると、マンション育ちの子供たちは恐怖の雄叫びをあげることになります。
でも、親父の残した花々は、四季折々キレイなのです。
アバド特集。
ベルリンフィルの指揮者になると、定期演奏会ばかりでなく、いろんな演奏会をも指揮・プロデュースすることになる。
カラヤンが始めたザルツブルク・イースター音楽祭と、同じザルツの夏の音楽祭、ヨーロッパコンサート、そして海外ツアーに、大晦日のジルヴェスターコンサートと盛りだくさん。
これだけ、ベルリンフィルと一緒に過ごすわけだから喧嘩もするし、仲良くもなります。
カラヤンもアバドもそうだったし、ラトルもきっと。
プログラミングに関しては、カラヤンはあまり手のこんだことをせずに、堂々たるドイツの歴史に根差した王道プログラム+有名オペラを常とした。
偉大な先達のあとを継いだアバドは、若い頃からロンドンやウィーンで行ってきたことと同じことを、さらにパワーアップしてやり始めた。
それは、ひとつのモティーフを年間テーマにして、音楽や文学なども交えた総合的な芸術を街中で行うというもの。
知的で熱意あふれるアバドならではのことで、広い人脈もこうしたことで生き、そして築かれるといった具合で、人望が期せずして生まれてしまうというもの。
若い頃は、アバドを師とも仰いだラトルも、いまそうしたテーマ性のあるシーズンコンサートを仕掛けているのもご存じのとおり。
日本では、アルミンクと新日フィルがそうした試みで充実したプログラミングを仕立ててますな。
毎年テレビにくぎ付けになったジルヴェスターでも、テーマコンサートは実に考え抜かれたものばかり。
ベートーヴェン、シューマン、ワーグナー、R・シュトラウス、ヴェルディなどの単独作曲家の特集。
オペラ、今回聴いたのジプシー+スペインにまつわる音楽、ミレニアム前年にはフィナーレ特集・・・・、などなど、枚挙にいとまがない。
アバドの音楽造りもふくめて、若手奏者・オーケストラ育成など、大局的にこうしたアバドの音楽活動を見て、アバドのことをあれこれ言う輩が私には信じられませぬ。
音楽のことしか頭にない純粋な人なんです。
アバドを語ると、熱くなっちまいますね。
で、1997年のジルヴェスターは、「スペイン&ジプシーにまつわる音楽特集」。
ビゼー 「カルメン」から
カルメン:アンネ・ゾフィー・オッター ドン・ホセ:フランシスコ・アライサ
エスカミーリョ:ブリン・ターフェル フラスキータ:ヴェロニク・ジェンス
メルセデス:ステラ・ドゥフォー
ラヴェル スペイン狂詩曲
サラサーテ 「カルメン幻想曲」
Vn:ギル・シャハム
ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲
Pf:ミヒャエル・プレトニョフ
ブラームス ハンガリー舞曲第5番
クラウディオ・アバド指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1997.12.31@ベルリン)
血沸き、肉躍る躍動する音楽の連続。
後半にいくほど、音楽が乗りにのってくるのがよくわかる。
休みをいれないライブの真髄。
克明なまでの前奏曲で始まる「カルメン」は、賑々しい安っぽい名曲とは完全に一線を画した本格的なドラマの一端を感じさせる優れた演奏で、70年代のロンドン響との名演よりも音楽は鮮烈に聴こえる。
オッターのおっかなくない、普通の女性としてのカルメンはそういうことで迫力はないものの、とても音楽的で、アバドの演奏にぴたりと寄り添っていて、かつてのベルガンサのカルメンの初登場(クーベリック)を思い出してしまうもの。
アライサの目の覚めるのよな素晴らしいホセにくらべ、ターフェルのエスカミーリョはこの演奏にはちょっと異色すぎ(というか声の威力しか感じない~そんな役柄だからいいのか、妙に張り切りすぎて、発声が鼻に抜けなくて変なことになってます(笑))
ちょい役にフランスの名手二人を起用してるのも贅沢なこと。
ついで、精妙さと、熱気の入り混じった素敵なラヴェル。
そして、シャハムのスリムで鮮やかなヴァイオリンは、チョーかっこよくって、オジサン舌を巻いてしまった。会場にいたら即ブラボーだよ。
サラサーテのこの曲、めちゃくちゃ盛り上がります。
珍しいプレトニョフとの共演のラフマニノフ。
プレトニョフさん、鼻息と唸り声激しすぎ。
ヘッドホンで聴いてたら、誰かの声が聴こえたとおもって、「え?」って振り返ったら誰もいない。
で、ヘッドホンをまたかけたら声がする。
そう、プニョフさんのお声でしたよ。
この演奏もたいそう熱のこもった熱い演奏です。
で、最後はアバドのお得意のノリノリ・ブラームスで、賑やかに、よいお年を・・・、となる1枚でございました。
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