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2010年6月21日 (月)

ビゼー 「カルメン」 新国立劇場公演

Carmen2
ビゼー「カルメン」を観劇。
さるお方からチケットをお譲りいただき、嬉々として初台に参上。
恥ずかしながら、舞台での初「カルメン」でございます。
ワーグナーとR・シュトラウスは、たいてい観てるけど、こうした有名オペラは避けてるつもりはないけど、常に後回し。
ほんとうに、よい機会でした。ありがとうございました「I」さん。

そして、やっぱり名作は名作たるもの、隅から隅までよく出来てるし、名旋律の宝庫に心弾む思いでありました。
日曜の最終マチネ公演。
多くの観客が、リラックスしてオペラを楽しんでましたね。いい雰囲気。

Carmen_2010
2007年がプリミエ。
この人気オペラ、新国2度目の演出で、ちょっと調べたら、97年のオープニング以来、今回で5度目の上演。
 ちなみに、新国の上演回数No1は、「蝶々夫人」の6回。
次いで、「カルメン」と「セビリアの理髪師」の5回となっていて、以下「魔笛」「トスカ」「ボエーム」となってました。「椿姫」や「フィガロ」が上位にないんですね。
やはり、日本のオペラハウスは、蝶々さん。

   カルメン:キルスティン・シャベス   ドン・ホセ:トルステン・ケルル
   エスカミーリョ:ジョン・ヴェーグナー ミカエラ:浜田 理恵
   スニガ:長谷川 顯          モラレス:青山 貢
   ダンカイロ:谷 友博          レメンダード:大槻 孝志
   フラスキータ:平井 香織        メルセデス:山下 牧子

  マルリツィオ・バルバチーニ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
                      新国立劇場合唱団
                      NHK東京児童合唱団
                   合唱指揮:三澤 洋史
                         (2010.6.20@新国立劇場)

カルメンはレコーディングなどでは、アルコーア版がいまや常識で、それに耳が慣れてしまっている。
今回の上演では、アルコーア版と、レシタティーボのギロー編のものとの折衷とのことである。
聴き慣れてしまっていることもあるが、セリフ版の方がドラマの緊迫感が出るし、ヒゼーの劇的な音楽が引き立つものと思う。
日本での上演は、歌手の負担や聴衆の受けなどを考えると難しいものがあるかもしれないが、外来歌手も混合する新国であるならばこそ、オペラコミーク形式にて味わってみたい思いがあります。

この思いは、オーソドックスな演出にも感じられることで、ぼちぼち目の覚めるような斬新なカルメンを出してもらいたいものです。
ビジュアル的には、シンメトリーでバランスもよく、極めて美しい舞台で人物や群集の動きも見事なもの。
そして、物売りや酒場の人達も動きが細かく、手がこんでいる。
ホームレス風の人が常時うろちょろしてるのは、ちょっとやり過ぎ。
酒場の第2幕では、前面に酒ボトルがずらりと並べられた。数えたら約100本(笑)
こうして、細部まで徹底してるのが最近のオペラ演出なのだけれど、どこか物足りない。
整いすぎているのです。
もっと毒々しさや、生々しさといったリアリティーが感じられるといいんだけれど・・・・。

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終幕、闘牛士に投げられた色鮮やかな花が地面に、カルメンとホセの息詰まるやりとりに、あたりも暗くなり、二人の周辺だけに光があたる。
舞台が回ったのは不明なれど、緊迫した結末の描き方は見事だった。
動かなくなったカルメンを掻き抱くホセをとりまくように、無言の群衆があらわれ幕となった。

こうしたちょっと贅沢な不満は、別な意味で歌唱にも感じられた。
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アメリカ人シャベスは、エキゾチックな風貌とボリューミーなバディ(?)で、肉惑的なカルメンで、歌も演技もカルメン歌いとして場数を踏んだ堂々たるもの。
奔放なカルメンを見事に打ち出していたけれど、死という運命に向かって突き進んでゆく宿命的な存在としてのカルメンはちょっと弱め。
声だけだけど、ベルガンサやトロヤノスらの女性的な儚いカルメンが懐かしく思えた。
でも、シャベスさん、美人だし立派でした。

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マイスタージンガーのヴァルターで新国デビュー予定が、奥さんの病気で今回までお預けとなったケルルのドン・ホセ。
ワーグナーやコルンゴルトのオペラで、耳になじんでいる声だけど、このドン・ホセでは、力強く暗めの中音域に、明るく伸びる高音域、CDに比べそのバランスがとてもよくなってきたと思う。演技はやや鈍重ながら、その爽快な声は私にはとてもよかった。
次回はドイツものでしっかり聴いてみたい。

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ヴェーグナー
のエスカミーリョは、あまりに異質な存在。
この人の声は、テルラムントやヨカナーン(新国サロメでは凄かった!)の声で、決してエスカミーリョじゃない。
ミスキャスト。冴えない闘牛士の歌でした。

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そして、浜田さんのミカエラ
ともかく素晴らしいの一語に尽きます。
メリザンド、リュー、ミミときて、このミカエラ。
いずれも存在感あふれる心を打つ歌唱と演技で、小柄なのにその声はエスカミーリョよりもよく通っていた。


ほかの日本人歌手の皆さんも強力外国勢に一歩もひけをとらず、歌唱もアンサンブルとしても最高。
 それととりわけ感心したのが、児童合唱のみんな。
舞台で一番生き生きとしてたかも。
合唱団の強力さもいつもの通り。

でオーケストラ。
日本で一番カルメンを演奏しているであろう東京フィル
ほぼ完璧で、手慣れてます。
音楽をうまくまとめ上げることに専念したかのようなバルバチーニの指揮は、合わせは完璧。でも、演出と同じく、それ以上のことがない。
もっと弾んで、キレのあるカルメンが聴きたいところ。

いろんなスタイルの歌唱が混在の歌手、うまいけど、きれいだけど、薄味の舞台とオーケストラ。
こんな感じの印象ですが、CDや映像ばかりでいい演奏慣れしてしまった名曲ゆえのオペラに対する、極めて贅沢な不満であります。
初カルメン舞台、しっかりと楽しませていただきました。

オペラって、ほんとに楽しい~

Wakasugi
ロビーには、故若杉さんの新国芸術監督としての偉業をたたえるパネル展示がありました。
「鹿鳴館」はソールドアウトで行けないから、私の新国今シーズンは、これにて終了。
そして、若杉さんの治世とも私はこれでお別れ。
なんだか寂しくなってしまう。

尾高さんの来シーズン、予算問題を抱えつつも鮮やかな舵取りを期待します。

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コメント

こんばんは! 
わたくしは先週の火曜日に行って来ました。 
エスカミーリョに「へ?」と思ったのはわたくしだけではなかったようで安心です。 
 
そうそう、劇場横オペラ通りのタバコ屋さんの前には白黒のなかなか可愛いにゃんにゃん様が居られました。 
ご存知でしたらお許しくださいませ。

投稿: moli  | 2010年6月21日 (月) 23時58分

moliさん、こんばんは!
火曜日の観劇でしたか。
ゆったりとした日曜日、外は暑いけど、涼しい劇場内で大いに楽しみました。
 やっぱり、「へ?」でしょ?
発声も姿もすべて違うって感じでした。

白黒にゃんこ目撃情報ありがとうございます。
ご存じじゃなかったです(笑)
今度、取材します!!

投稿: yokochan | 2010年6月22日 (火) 00時28分

こんばんは。
先週日曜日、気がついたらタンクレーディと重なっていて行けませんでした。若杉先生のシリーズ今週の鹿鳴館で終わりです。どんな音楽かわかりませんが、なにがなんでも頑張って行きます。なぜか寂しいです。

投稿: Mie | 2010年6月22日 (火) 22時01分

Mieさん、こんばんは。
そうですね、べタンクレディと重なってました。

お譲りいただいたチケットにあれこれ書いてしまいましたが、こうした大衆オペラにこそ、普遍版とともに進歩的な演出も欲します。
主催する側が思うほどには、我が方の日本オペラファンはフレキシブルだと思いますので、そろそろ有名オペラも冒険が欲しいと思いました!

鹿鳴館、羨ましいです。
またご感想をお聞かせいただけましたら幸いです。

投稿: yokochan | 2010年6月22日 (火) 23時43分

こんばんは。
鹿鳴館聞いてきました。2列目サイドでしたが、前に席がなく快適でした。腰越、与那城、素晴らしい声でした。安井も。ほとんど全員良い声。音楽は?三島のテキストの緊張感・完成度をサポートするものはありませんでした。全く心に響きませんでした。でも、若杉先生の企画されたものをみんな聞き終わったことには幸せを感じています。

投稿: Mie | 2010年6月27日 (日) 23時10分

Mieさん、こんばんは。
鹿鳴館の観劇、お疲れさまでした。
そして、有終の美を飾る演目をご覧になられて羨ましいです。
若手の実力歌手たちの舞台はきっと見ごたえがあったのでしょうね。
音楽はさもありなんと予想されますが、やはり若杉さんの執念が実った最後の舞台ですから、大事にしていただきたいプロダクションに思います。
ご案内ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2010年6月27日 (日) 23時49分

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