ロパルツ レクイエム M・ピクマル指揮
教会の堂内に差す光は、神々しくも、心を透かしてしまうような清々しさがある。
教派によってその建築法も違うのでありましょうが、採光に心を配っているのは、どちらも同じ。
かつては、文字を理解しない人々のために四方に据えられたステンドグラスが、それこそ絶妙に映えるのであります。
こちらは、以前に訪れた「大津教会」。
100年の歴史を刻む、珍しい瓦屋根をいただく教会。
ジョセフ・ギィ・ロパルツ(1864〜1955)は、ブルターニュ地方に生まれたフランスの近代作曲家で、大学で法学を専攻しつつも、音楽が好きで学生オケを指揮しつつ、その情熱は止むところがなく、パリ音楽院にさらに進んで、作曲家となった人。
年代的に、私の愛好する世紀末軍団のひとりでもあるが、その作風は後期ロマン派風ではありながらも、敬愛したフランクやフォーレの影響が多大で、全音階に基づく、フランスの穏健な抒情派とみてよいかもしれない。
ロパルツの作曲したジャンルは、交響曲・管弦楽曲・室内楽・器楽・オペラ・歌曲・宗教曲、といった具合に、クラシック音楽のすべてを網羅した広範なもので、ここ数年で、かなり多くの音源が出て、その全貌を確認することができるようになった。
5年以上前に、名前は知りつつも何気なく買ってはいたものの、あまりに甘すぎる音楽に、これはいかがなものかと、勝手に思い込み、それっきりにしていたムッシュー・ロパルツ。
それが、ソプラノのドゥランシュ目当てに購入した、オペラ「故郷」が素晴らしく美しく、かつ劇的なものだから、このレクイエムを改めて聴き直した次第。
このレクイエムは、フォーレのそれを系譜に持つ抒情派ミサ曲で、全編が静かで優しく、聴いていてフォルテが一か所もないのではないかと思うほど。
ディエス・イレ、トゥーバ・ミルム、ラクリモサを欠き、ピェ・イエズスが入り、最後には、楽園にてで、締めくくるのもフォーレと同じ。
しかし、独唱はバリトンは入らないで、ソプラノとメゾ・ソプラノの女声ふたりによる。
1937〜8年の作品で、先輩フォーレのレクイエムは、1887年。
後輩デュリュフレのこれまた美しいレクイエムが1947年であります。
このロパルツのレクイエム。
ともかく美しい。そして甘味ささえも漂うくらいに神への祈りにあふれた敬虔な作品。
あまりにきれいなものだから、宗教感など持たずとも、ヒーリング的に癒しの音楽として受け止めて聴いても全然OK。
ピェ・イエズスは、それこそフォーレそっくりのムードで、無垢なソプラノ独唱と純な合唱とによる極めて優しい音楽でありました。
ソプラノ:カトリーヌ・ドゥボー メゾ・ソプラノ:ジャクリーヌ・メユール
ミシェル・ピクマル指揮 ジャン・ワルター・オードリ・アンサンブル
イル・ド・フランス合唱団
(録音:90年頃)
名前の知らぬ演奏者の方々、なかなか心のこもったいい演奏ではないでしょうか。
瓦屋根の大津教会。
十字架とも不思議なマッチング。
いまにも、戦国の切支丹大名が出てきそうな雰囲気であります。
| 固定リンク
コメント
懐かしい建物です。
以前、この教会の近所の学校に通っていたので。
教会の中はこのようになっていたんですね。
こういう雰囲気の中で、聖歌などの教会音楽の響きに身をゆだねてみたいものです。
投稿: ナンナン | 2010年7月13日 (火) 23時51分
ナンナンさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
お近くで、勉学されてたのですね。
大津教会の画像は、昨年、びわ湖ホールで「ルル」を観劇する前のものです。
静かな堂内で、心安らかにして、転落の女、ルルのオペラを観ました。
今年は、それに味をしめて、トリスタンも観劇しようかと思ってます。
期せずして、ドロドロドラマのオペラですが、こちらの教会で心を静やかにして臨みたいと思ってます、俗人であります。
投稿: yokochan | 2010年7月14日 (水) 00時15分