シュレーカー 「Flammen~炎」 ストローベル指揮
東京タワーを三田方面から望むの図。
このオレンジカラーのバージョンは、冬ものなんです。
いまもそう。
いつ降るかわからない雨で、夏バージョンの白色に電球交換作業ができないのだそうです。
次の予定では13日に衣替えといいます。
無理に換えなくても、これはこれでいいと思うんですけどね。
フランツ・シュレーカー(1878~1934)のシリーズ。
完成された9作あるオペラの第1作、「炎」~Flammenを聴きます。
シュレーカー24歳の若書きで、彼のオペラは常にそうだが、台本もすべて自分で書き上げ、ウィーンにて学生たちによって初演された。
もともとのテキストは、シュレーカーが歌曲をたくさん付けている、ドラ・レーン(Dora Leen)。
初演ののち、ほどなく、オーケストレーションを施している。
作品10ではあるが、すでにかなりの作品を残しているものの、のちの濃密かつユニークな痺れるような大オーケストラサウンドを知るものとしては、かなり先達たちの強い影響下にある折衷的な音楽に聴こえる。
その音楽は、ワーグナーというよりは、R・シュトラウスの古典風なスッキリサウンドでもあり、響きとしてはブルックナーのスコアを学んだとされるように、ホルンや低弦の重奏に多少の野暮っぽさも感じる次第。
中世十字軍派遣の時代の夫婦の物語で、忠誠を誓いつつも堕ちてしまい、やがて死を選ぶ女性を描いていて、こうした女性をかたちを変えつつも常にオペラの素材に求めたシュレーカー。変わっているといえば変わってるし、ひねくれてますな。
80分以内でCD1枚のオペラ。
15のシーンを前奏曲と間奏曲で二つの場に分けたシンメトリー構成。
皇太子:アダム・クルーツェル
イルムガルト:クリスティン・ティーゼン
アグネス(イルムガルトの妹):レスリー・ボーリンガー
吟遊詩人:オイゲン・プロクター
未亡人マーゴット:ザビーネ・ヒューズ
フランク・ストローベル指揮 ミュンヘンPPP劇場アンサンブル
(1989.8 @ミュンヘン)
吟遊詩人が、皇太子留守中の館にやって来て祈りをささげ、そこに滞在することとなる。
マーゴットが改めて歌う。
皇太子が十字軍に従軍し聖なる戦いに出征している。残した妻のがほかの誰かを愛するようになっていたならば、帰郷したときの、妻への挨拶の接吻が彼女に死をもたらすだろうと、その皇太子は言い置いて出ていったと。
イルムガルトは妹と語る。夫の言葉は日々重くのしかかっていると。
純情な妹は、兄さんも遠い国で3年の間、あなたのことを思ってるのよ、と歌う。
先の吟遊詩人の歌に妹アグネスは心動かされる。
ところが、テノール役の二枚目吟遊詩人は、情熱の歌の矛先をイルムガルトに向ける。
熱い歌の数々に、ついにイルムガルトもほだされ、二人揃って愛を高らかに語り始めてしまうのであった。
ところが、そこへ、夫の皇太子が帰還するとの伝令が入る。
帰国の喜びに湧く、マーゴット、アグネス、そして人々。
ますます盛り上がり、一緒に逃避行へと走ろうとするイルムガルトと吟遊詩人。
優しいアグネスは、兄が無事に帰り、そして何事も口づけで発覚しないようにと、姉のためにも祈る。
ところが、イルムガルトは小一時間のうちに、自分の進むべき道を見出し、詩人に別れを告げ、詩人もなんでやねん、とかいいながらも別れ去るのであった。
館を飾り付け、夫の帰りを熱烈歓迎ムードにしたてるイルムガルトに妹も安心。
皇太子の晴れやかな帰還に湧きたつ人々。
おお、妻よ、と駆け寄る夫に、待ったをかける妻は、もうよろけるようで衰弱していて、妹は、姉が死んじゃうと慌てる・・・・。
イルムガルトは、吟遊詩人の歌声に魔法のように引きこまれ、幸せを感じてしまった。
彼の言葉は、詩になり、やがて甘い歌になり、愛を運んできたの。
でも彼は死も運んできた。
この燃えるような感覚は、今まで知らない世界で、私の魂は炎の中にあるの・・・。
こうして、わたしはあなたの言いつけにそむきました。
神よお許しください、私は死を選びました。。。。
一方で人々は神を賛美しつつ、幕。
なんだか、はっきりしませんねぇ。
対訳がないので、私も想像も交えてますが、もやもやしすぎですよ。
無理くりに浮気させて、いけない女にして、周りは固いオバサンと純な女子で固めて、際立たせている感じ。
登場人物の顔や性格が、まったく見えない。
まだまだの若きシュレーカーのオペラ第1作でありました。
演奏してるグループは、ミュンヘンの劇場グループのもので、調べたら、ワーグナーの息子、ジークフリートのオペラを次々に取り上げている実験的な団体。
でも、合唱はヘロヘロだし、歌手も女声の姉妹二人は、かなり危なかっしくてガックシきてしまう。というか、ひどい。なんだろ、これ・・・って感じなんだけど、熱っぽさは大いに評価。
男は、まずまず。
あと、オケも頼りない・・・・。
CPOのキール盤を買うんだった。
指揮のストローベルは、マニアックな音楽、それも無声映画とか隠れた映画音楽などもどんどん取り上げる妙な指揮者で、これはこれで、そうした方面で実力発揮してる人。
演奏は、あれれ、なんだけど、シュレーカーののちのちの顔を拝める、妙に気になる第一作オペラを手軽に聴ける意義は大きく、楽しめました。
シュレーカーのオペラ9作中、この「炎」と「烙印された人々」は取り上げ済み。
あと、「はるかな響き」、「おもちゃと姫君」、「宝捜し」、「クリストフォス、あるいはオペラの幻想」以上4作のCDを手当て済みでして、日々聴いてます。
これらが入手できる音源でして、順次取り上げる予定ですが、この手のオペラは対訳もなく、独語だけのCDもあり、とっても難渋してます。
酔ってる場合じゃないけれど、シュレーカーの甘味かつシャープ、和声の失われつつあるギリギリの音楽は、私にとって、極めて魅力的なサウンドで、ついつい飲んじゃいます。
ヨーロッパの劇場のように、新国でも上演してもらいたいなぁ。
いまの状況では無理だろうな・・・・。
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コメント
こんにちは。
シュレーカー、面白そうですねぇ。
前から気にはなっているのですが未聴のままです(@_@)
先週は、図書館で「烙印~」かリヒャルト・シュトラウスのどれかを借りようと思っていたのですが、見事に「ベアトリーチェ・チェンチ」(ゴルトシュミット)に目移りしてしまいました…(^^;
(↑個人的には面白いと思いました。)
今週こそ「烙印を押された人々」を借りて来ようと思います。
さすがにこの「炎」は無いでしょうが…(笑)
オペラって思ったより面白いですねぇ。
(↑洗脳されすぎですね(汗))
投稿: ライト | 2010年7月13日 (火) 12時20分
ライトさん、こんばんは。
過疎状態のシュレーカー記事にコメントいただき、ありがとうございます(笑)
行かれてらっしゃる図書館は、烙印がおいてあるくらい、なかなかの高レベルですね。
私の周り、というか田舎の図書館は、普通の曲しかありません・・・・。
ゴルドシュミットは、「堂々たるコキュ」というオペラを聴いてますが、結構モヤモヤ系ですが、不思議な魅力もあったりします。
是非、感想をお聞かせください。
ふっふっふ・・・、これでオペラの呪縛の烙印を押された人がまたひとり・・・・。
投稿: yokochan | 2010年7月13日 (火) 21時20分