レスピーギ グレゴリオ聖歌風協奏曲 アモイヤル
秋を先取りするような高い雲に月。
日がどんどん短くなってきて、6時過ぎると急に空が赤く染まって、一気に暗くなってしまう。
その按配が日によって、とても美しいことになる。
猛暑の異常気象のせいか、今年の夕空は、ドラマテックなものが多いような気がする。
夕焼け好きのワタクシには、うれしいこと。
今日もイタリア
駆け足でイタリア作曲家をめぐっているけれど、イタリアで、オペラが主力じゃない近代作曲家といえば、レスピーギ(1879~1936)。
ローマ三部作のみがあまりにも有名になりすぎて、それ以外のレスピーギは人気の点でいまひとつかもしれない。
それでも、「リュートのための古風な舞曲とアリア」、「鳥」、「教会のステンドグラス」、「シバの女王」、「ヴァイオリンソナタ」、歌曲のいくつか、などが比較的聴かれているのでしょうか。
しかし、レスピーギには、オペラもちゃんとあるんですな。
オペラ的作品として9作。
そのなかでは「炎」という作品を聴いてみたいし、それも含めて、ガルデッリの指揮のハンガリー録音がいくつかあってチャレンジしてみたいのだ。
前置きはともかくとして、今日は、そんなレスピーギのヴァイオリン協奏曲を。
レスピーギらしく、こうした協奏曲ジャンルでも、純協奏曲ではなくって、古風な旋法や旋律をまとったものが多い。
こちらは、グレゴリオ聖歌風協奏曲とあるだけあって、その旋法をとりいれた、まさに○○風の味付けによるヴァイオリン協奏曲。
だから、グレゴリオ聖歌の具体的引用はなく、あくまでテイストだけ。
1932年、イタリアでは、プッチーニの死後8年を経て、脱ヴェリスモ・19世紀ロマン主義への懐古運動が高まり、当時ローマ三部作を大成功させ、押しも押されぬ作曲家となったレスピーギは、そうした流れのなかにおいては、もっとも適任の大家であったようだ。
もう晩年を迎えつつあったレスピーギだが、ファシストの台頭など、きな臭い動きからも自由でいることは出来なかったであろう。
この協奏曲は、そうした復興運動以前、1921年に作曲されている。
今回、このCDを外盤初出の時いらい、15年ぶりくらいに聴いてみて、その美しさに、甘味なヴァイオリン協奏曲好きの私の心を大いに刺激してくれた。
え、こんな素敵な曲だったっけ。
古えの旋法をことさらに意識することなく、むしろ民謡風の懐かしい雰囲気すら感じつつ、ノスタルジックな思いを抱いた。
これは、私には、ブルッフのスコットランド幻想曲や、バーバーの協奏曲、しいてはコルンゴルトやディーリアス、モーラン、ハゥエルズなどの大好きヴァイオリン協奏曲軍団に一脈通じる音楽なのだ。
英国音楽の系譜を思い起こさせるということは、中世的な雰囲気がケルトの世界と相通じるからだろうか・・・・。
ローマの朝を思わせるようなさわやかで憂愁を帯びた旋律がオーボエから始まり、懐かしさも感じる第1楽章。
遠くを見つめるような儚い雰囲気の第2楽章は、泣きのヴァイオリンが最高。背景のオーケストラも注意深く聴いていると、うごめく低音に太古の響きを感じ取ることができる。このあたりは、ローマ三部作の作者であることを痛感。オーケストラ部分が精緻に書かれているのがさすが。
ともかく絶美の2楽章は、その終りの方はまるで、夕焼けが刻々と藍色に染まってゆく風情なのだ。
アレルヤと題されたフィナーレ楽章は、前ふたつの楽章とうってかわって元気があふれてる。少し浮ついて感じなくもない。親しみあふれる旋律が闊歩する。
その中間部では静かな雰囲気になり、その旋律をヴァイオリンが何度も愛しむように奏でるところは、オーケストラとともに、とても美しい。
最後は活気あふれたエンディングとなる。
フランスの名手、ピエール・アモイヤルとデュトワ&フランス国立管は、これ以上はないというくらいの、素敵な演奏でありました。
ほかにもCDが出ているみたいです。一度、お試しを。
そうそう、この協奏曲と同じころに書かれた姉妹作みたいな、ヴァイオリンとオーケストラのための幻想曲「秋の詩」も収められていて、これがまた詩情にあふれた桂作なんです。
秋のムード、ばっちりです。
| 固定リンク
コメント
おはようございます。レスピーギのバイオリン協奏曲ですか!初めてききました。そういう曲があるんですね。それにしてもさまよえる様!守備範囲が広いですね。2軍選手から先発投手まで、キャッチャーフライからセンターフライまで、佐々木希からはるな愛まで、ローソンチケットからダフ屋まで、なんでもありですね。私の鑑賞しているジャンルも広げるようにがんばります。
投稿: モナコ命 | 2010年8月29日 (日) 11時39分
yokochanさまこんにちはm(__)m
レスピーギのグレゴリオ聖歌風協奏曲とはまた珍しい曲ですね。
だいぶ前にブックオフでシャンドス盤(演奏者失念)を見かけたのですが、その時は持ち合わせがなかったんです。
で、後日お迎えに上がりました時には売れてしまったのか、既に売場に無く残念な思いをしました。
さて、この曲なんだか面白そうですね。
あくまで「~風」で、ダイレクトな引用が無いというところも心憎い感じもします。
今度見つけたらぜひともおさえなければ!!
投稿: ライト | 2010年8月29日 (日) 12時08分
モナコ命さん、こんにちは。
レスピーギには、ローマ以外の作品がたくさんあるんです。
いろいろ仕込んで研究中ですので、今後出してまいります。
いやぁ、おほめにあずかりまして。
ダフ屋以外は、概ね守備範囲でございますよ。
はるな愛ちゃん、少しオッサンはいったところが、親近感って好きですぅ(笑)
音楽はやめられません。。
投稿: yokochan | 2010年8月29日 (日) 21時53分
ライトさん、こんばんは。暑いですねぇ。
この曲は、昔かって一度聴いたまま。
久しぶりに取りだしましたら、自分と波長のばっちり合う曲でした。
こんな曲がブックオフにあるなんて、都会ですね!
そのCDは、女流のモルドヴィッチ?のもので、きっとよさげな演奏です。
シャンドスには、レスピーギシリーズがありましたから。
そして、都会はやはり、マニアクラシックものでも、足が速いのですね。
いい曲ですよ~
投稿: yokochan | 2010年8月29日 (日) 22時00分
yokochan様
ピエール・アモイヤル様、お懐かしいです。ハイフェッツの御弟子さんで、フランスEratoにバロック、近代問わず印象深い演奏を音盤に刻まれ、フランス・ヴァイオリン界期待の星で在ったのが、ついこの間のようです!
投稿: 覆面吾郎 | 2023年6月24日 (土) 13時52分
アモイヤルは、エラートを代表するヴァイオリニストでした。
同じフランス系のピアニスト、たしかコラールさんだったか、との共演も多かったです。
エアチェック私家版ですが、カラヤンとのベルクの協奏曲が美しい演奏です。
投稿: yokochan | 2023年7月 2日 (日) 10時21分