バーンスタイン 「キャンディード」 佐渡裕プロデュース・オペラ①
初めての兵庫県立文化センター。
阪急西宮北口駅に直結。
この施設が開館5年。震災から15年。バーンスタインが没後20年。
この符合の年に、バーンスタイン晩年の最愛の弟子、佐渡裕が、氏が1956年の作曲以来こだわり続けた「キャンディード」を上演する。
しかも演出は、今をときめくロバート・カーセン。
2006年のシャトレ劇場版で、スカラ座、SNOの共同制作とある。
西宮で7回、東京(オーチャードホール)で3回の東西上演で、わたしの場合、東京で観ればいいのだけれど、オーチャードはどうも舞台が遠く好きじゃないし、チケットも東京の方が高い。
ということで、初ホールでもあるので、西宮へ。
すっきりとした木質感漂うホールで、席もゆったり、ステージの観え具合もよし。
音は、曲が曲だから次の機会に再度確認したいところ。
「キャンディード」は、ミュージカルでありながらコメディ・オペレッタとしてのクラシカルな存在でもある。
1956年にブロードウェイで初演されたものの、翌年の「ウェストサイド・ストーリー」の影にすっかり隠れてしまった存在。
フランスのヴォルテール(1694~1778)の「カンディード」を原作として、アメリカ人のリリアン・ヘルマンが台本を書いた。
その哲学的な複雑な内容からか、初演は失敗で、その後も作曲者の手を離れて、何回か改訂されていて、その時はジョン・モウチェリが行っているのが面白い。
そして88年にSNO(スコテッシュ)で上演する際に、バーンスタインによる改訂が行われ、このときもモウチェリがたずさわり、そこに常に居合わせたのが佐渡さんだったわけ。
レニーの娘にあたるジェイミーさんも来日して応援メッセージを残してます。
ヴォルテール(パングロス博士):アレックス・ジェニングス
キャンディード:ジェレミー・フィンチ クネゴンデ:マーニー・ブレッケンリッジ
オールド・レディ:ビヴァリー・クライン 大審問官:ボナヴェントラ・ボットーネ
パケット:ジェニー・バーン マクシミリアン:デヴィット・アダム・ムーア
カカンボ:ファーリン・ブラス そのほか多数
佐渡 裕 指揮 兵庫芸術文化センター管弦楽団
ひょうごプロデュース・オペラ合唱団
オリジナル・ダンサーメンバー
演出:ロバート・カーセン 振付:ロブ・アシュフォードほか
(2010.7.31@兵庫県芸術文化センター)
第1部75分 第2部:80分
長丁場を飽きることなく楽しむことができましたよ。
荒唐無稽・支離滅裂の目まぐるしいドラマ展開を、一本筋の通った見事な舞台に仕立てたカーセンのお洒落でかつ鋭い解釈は、原作の持つ社会風刺をさらに深めていてお見事
ヴォルテールの描いた18世紀の世界を、バーンスタインの作曲当時に移し替えたカーセン。そればかりでなく、現在の問題も諸所提起。
序曲とクネゴンデのアリアしか知らなかったわたくしですが、いっぺんでこの作品が好きになってしまった。
チケットはあまりないかもしれませぬが、東京公演を是非観劇いただきたいと思います。
長くなる舞台の様子は次の記事にて。
クネゴンデ、ヴィルテール、キャンディードの3人。
ブレッケンリッジはオペラ畑の人で、しっかりしたコロラトゥーラを駆使して見事な歌いぶり。真夏のロングランだったから、ちょっと声をセーブぎみだったかも。
キャンディードのフィンチは、英国のミュージカル歌手とのことで、伸びのよいよく通る声で、無垢なこの主役を歌い込んでいた。
そして、終始舞台に出まくり、パングロスや労働者も演じたジェニングスは英国の名優との由。
その味わいある語り口のヴォルテールと、嫌味と自信に満ちたパングロス先生、先生の最善説と対比する悲観論者の労働者マーティンの怒りに満ちた存在感。
これら3役を鮮やかに演じていて、このオペレッタの核になりきってました。
あと、ユーモラスなオールド・レディのクラインも楽しかったし、その歌も踊りもたいしたもの。
古楽系の歌手や、ミュージカル系歌手、本場のすてきなダンサー、地元兵庫の合唱団などが、たくさん出演した今回のプロダクションは、チームとして完全に出来上がっていて、東京の千秋楽ではその完成形を披露してくれることでしょう。
で、この上演のカーセンと並ぶ立役者、佐野 裕さん。
終始、オーケストラとともに舞台をリードしつつ、師の作品を愛情込めて、時には情熱がほとばしらんばかりに指揮をしておりました。
舞台の動きも目まぐるしいものだったけれど、ピットの中の佐野さんの指揮ぶりを覗き込むのも楽しいものでありました。
これだけ、完璧な上演だから、是非とも映像化をして欲しいものであります。
休憩時間には、3階にある中庭に出て冷えた体に喝入れ
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