チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」 アバド指揮
今年5月の北海道、美瑛。
前の晩が零下になるくらいに寒くって、翌朝は晴れ渡り澄んだ空となった。
有名なパッチワークの丘も、シーズンオフは、こうして何もなく、ひと気もない。
観光地の顔をしていない素顔の北海道が大好きで、苦労は並み大抵ではないけれど、引越してしまってもいいと思うくらい。
キーンと澄んだ空気がいい。
クリックしてしまいました、買ってしまいました、ザルツブルクの祝祭大劇場50周年のアンソロジーセット。
充実の25CDセット。
オペラ5作品、オーケストラ・コンサート18、リサイタル2。
ここにそのすべてをご紹介するゆとりはないので、HMVサイトで内容をご確認あれ。
カラヤンのバラキシ、フリッチャイのイドメネオ、アバドのヤナーチェック、バレンボイムのオネーギンなどのオペラに心動かされつつ、アバドの悲愴やメータの英雄の生涯などに大いに触手をそそられ購入、いや酔ってクリックしてしまった次第。
そのアバドのチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」をまずは聴いてみる。
1993年8月23日のザルツブルク音楽祭での、アバドとベルリン・フィルハーモニーの演奏のライブ。
これは実にスゴイ演奏で、カラヤンの後ゆえに、あれこれ言われてたアバドが、ライブで本気出しまくりの乗りまくったアバドの最良の姿がここに聴いてとれる。
ともかくこの集中力と、それが引き起こす熱気は尋常ではない
普通にテヌートぎみに始まる第1楽章が歌いまくりつつも、終始熱いまま終え、オケの隅々まで気持ちよさそうな第2楽章を経て、元気な第3楽章では、最初のほうこそ手堅くきっちりと進行するものの、徐々にテンションが上がってきて、テンポもあがって最後は熱狂的になる。
そのエンディングから息つく暇もなく、アタッカで始まる最終楽章。
これが、この演奏の白眉。
高弦で歌いまくる弦に、思いの丈を入れ込んだ管、むせび泣くような金管にメリハリの効いたティンパニ。
強弱の幅もはっきりしてて、高性能のオーケストラが、地位も名誉も、そして個人の領域もかなぐり捨てて、熱く燃え上がるアバドの棒のもとにその思いを集中させている。
アバディアンにとっては、この終楽章を聴くだけでも、この25枚の価値はあろういというもの。
ここでは、めったに聞くことができないアバドの唸り声も聴こえる。
亡くなった筑紫哲也氏が、この演奏を聴いて大変な感動ぶりを語っていたのが懐かしい。
アバドの3つめ、伝説の「悲愴」がここに登場したことを喜びたい。
ウィーン・フィルとの1回目の録音は、ウィーンの魅力溢れ、生々しい録音とともに、若いアバドの早春譜のような素敵な悲愴だった。
シカゴとの録音では、落ち着きとオケへの信頼感が、堂々とした悲愴を作りあげていた。
ここでは、CBSの潤いのない録音がマイナスで、DGに録音してくれればもっと印象は変わったかもしれない。
そして、ベルリンフィルとのライブは、ライブならではの壮絶な悲愴だった。
シモン・ボリバルとのライブ映像は、録画済みながら未視聴。
「アバド&ウィーン・フィルの悲愴」
大地をひた走るように、どこまでも続く、未聴CDの山。
この先、どうなるんだろ。
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コメント
こんばんは。アバド、ベルリン・フィルの「悲愴」は初耳です。
「悲愴」という標題通り、私としては録音のせいもあると思うが、グラデーションの効いたウィーン・フィルの方が好みかな。ドイツ・グラモフォンの2枚組「後期交響曲集」は「第5番」だけがロンドン響と混合しているものですがお気に入り。もし、知っていたらごめんなさい。その手持ちはジャケットがパステル・カラーのイラストです。
カラヤンと共通しているのでしょうか。「交響曲」の他、ドイツ・グラモフォンで録音したベルリン・フィルの「作品集」合唱なしの「1812年」「ロメオとジュリエット」「スラヴ行進曲」この3つは他の演奏家でも固定されている。そして、「テンペスト」なお、カラヤンだと「テンペスト」が「イタリア奇想曲」に置き換わっています。
観光シーズン。つづら折りは車に乗れないと辛いものがある。しかし、直線道路はユタ州のバス事故と悲惨なこともありますからね。北海道で購入したミント・オイルをハンカチやティッシュに染みこませたのを持参するとどちらに効果あるかも。(ミントでアバドの「悲愴」を聴くのも悪くない)
投稿: eyes_1975 | 2010年8月13日 (金) 20時31分
eyes_1975さん、おはようございます。
これくらいの名曲となりますと、めったに聴きませんが、アバドの初音源となりますと別でして、多いに堪能しました。
悲愴最高の演奏は、アバド一回目のウィーン盤と思ってまして、高校時代に発売日に買ったレコードを大事に持ってます。
CDでも、外盤での2枚組を持ってます。
あと、今回のザルツブルクライブは、テンペストがカップリングです。
ヨーロッパコンサートでの映像も残されていて、アバドはこの曲、得意なんですね。
わたしも、車の運転をかなりするのですが、眠気対策は、音楽です!
好きなアリアを歌っちゃいます(笑)
でも、北見のミントは効きそうですね!
投稿: yokochan | 2010年8月14日 (土) 08時44分
チャイコか。6番か。そういや久しく聴いていません。その昔小沢先生が新日本フィルと一緒に私の街で6番を演奏してくれたことがありました。弦は大学出たてのネエちゃんグループで、管は「どうした!大丈夫か!」レベルのプレーヤーばかり。でも小沢先生のおかげでとても楽しめました。小沢オーラ恐るべし!さらに昔々、私の街にモスクワ国立管弦楽団が来たときに、チャイコの6番5番を一晩で演奏していました。序曲もチャイコで聴いている方がぐったりでした。休憩のロビーで「ああ、またチャイコを後半もやるんだ、、、」と疲労困憊の聴衆でした。しかし!モスクワのトランペットは5番の4楽章の最終場面でビブラートのついた音色で堂々たる演奏をし、コンサートを締めくくりました。驚きの体力です。イナカモノの体力ではとうていチャイコは聴けないのだということを嫌と言うほど知らされました。
投稿: モナコ命 | 2010年8月15日 (日) 13時00分
あー、やっぱりこれ、お買いになられましたか・・・。
すごいセットですよね!私も買おう買おうと思いながら・・・現在に至る(笑)。
それにしても、アバドの「死者の家から」、ネトレプコの「椿姫」、
バレンちゃんの「エフゲニー・オネーギン」、カラヤンの「薔薇の騎士」に、ブーレーズの「春の祭典」、
ベームのモーツァルトにブレンデル、アルゲリッチまでついてくるって、すごすぎ!
手持ちでかぶってるのはショルティの「幻想」とレニーのマーラーぐらいなもんで。
しかし、現在激しく金欠中・・・。秋のコンサートのチケット、売っちゃってこれ買おうかしら(笑)。
またいろいろご感想聴かせてください!
あ、私はシカゴ響盤から入った口です。CDの帯に〈アバドの「悲愴」〉とあり、
髪を振り乱し、腕を首に巻き付けんばかりの、動的でかっこいいジャケットがとてもかっこよくて。
ウィーン・フィル盤の素晴らしさも重々承知の上、でもシカゴ響盤が私の「悲愴」の刷り込み演奏だったりします。
ああ、ベルリン・フィル盤、聴いてみたい!
投稿: minamina | 2010年8月16日 (月) 21時19分
モナコ命さん、こんにちは。
残暑お見舞い申し上げます。
小澤オーラはスゴイものがありますね。
先般もある奏者が、小澤眼力のスゴザを語っておられました。
かつて、ロシアのオケがやってくると、チャイコの4~6と協奏曲ばかり。
それにショスタコ5番が定番でしたから、聴く方もスタミナ定食でも食って挑まないとへこたれてしまいましたね。
東京の聴衆は、年齢が上がっておりますから、決してタフではございませぬよ。ワタクシも含めまして・・・・。
昨今の絶倫タフマンは、なんといってもゲルギエフでございますね。
昨年は、鼻、ピアノ協奏曲、交響曲1番、10番というショスタコプログラムを展開してました。
もうやめてほしいです。
来年また、日本で、すごいことやるみたいです、あのオッサンは。
オペラは、トゥーランドット、影のない女。
演奏会形式で、パルシファル抜粋、トロイアの人々だそうで・・・・・。
投稿: yokochan | 2010年8月17日 (火) 10時57分
minaminaさん、まいどこんにちは。
暑いですなぁ~
これ、クリック数秒のことでした。
飲んで、酔って、これ見て即クリ。
いかん癖ですが、これほんとにすごいラインナップです。
いつ聴き終えるかは、まったくもってわかりせんが、今後の人生の楽しみが増しました。
アバドの悲愴は、シカゴもいいのですが、私には、青春の思い出のようにウィーンのレコード盤です。
一音一音、体に染みついてしまってるんです。
しかし、このベルリン盤もスゴイ演奏でした!
投稿: yokochan | 2010年8月17日 (火) 11時18分
Abbado の悲愴、3から4楽章へのattacca!!最高です!!!
感動し過ぎで検索したらここへ来ましたw
投稿: takaya | 2010年8月21日 (土) 02時55分
takuyaさん、こんにちは、はじめまして。
そうなんですよね、3から4楽章の劇的な流れといったらちょっとないです。
ライブならではですし、燃えるアバドが素晴らしすぎです。
コメントどうもありがとうございました。
投稿: yokochan | 2010年8月21日 (土) 15時13分