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2010年8月29日 (日)

ヴェルディ 「シモン・ボッカネグラ」 サンティーニ指揮

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もうだいぶの前だけど、鹿児島に夏旅行に行った時のもの。
写真を整理してたら、出てきた。
子供たちも小さかった。小学生だもの。この頃の方がよかった・・・・。

ここは、薩摩半島南端の長崎鼻という岬と、そこから見える薩摩富士と呼ばれる開聞岳。
こんな景色を、西郷さんも、篤姫さんも見てたんです。
海を臨んでいると、人の心は大きくなるのかしらん。

そんな、私は、まだ冗談の通じない子供たちにむかって、「ここでは、買いもんだけ」と言って沈黙を作り出していた小さな人物であります。

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イタリアといえば、オペラ。
そして、イタリア・オペラといえばヴェルディであります。
ヴェルディのオペラで、一番好きなのが、「シモン・ボッカネグラ」
この男の渋いドラマは、ヴェルディ中期44歳の作品で、自信作と思っていながらも、フェニーチェ座で初演されたときは不評。
ヴェルディとしては愛着捨てがたく、長年喉に刺さった小骨のようにずっと気になっていた作品らしく、後期の円熟期にリコルディ社の提案もあってボイートとの共同作業で改訂版を作りあげたのが、68歳。
前奏曲などはまったく別物
ミラノ・スカラ座での初演は大成功だったそうな。

ヴェルディが、ここまで執着したのは、「シモン」が持つ深いドラマ性にあるのではないかと思う。
ヴェルディは、中期以降、ドラマと言葉と音楽の融合にますます磨きがかかり、そうした素材をオペラに求めるようになった。
それが、最大の結実を見せるのが、オテロとファルスタッフのシェイクピアの悲喜劇。

ここで思うのが、ヴェルディのオペラの主役たちに、バリトンのロールが多いこと。
ナブッコ、フォスカリ、アッティラ(バス)、マクベス、リゴレット、シモン、ファルスタッフ。
26作品中、7作品がバリトン系の歌手がタイトルロールになっている。
バリトンが重要な役回りをするオペラを加えたら、もっと多い。
もちろん、ヴェルディはあらゆる声部に万遍なく素晴らしい歌を書いたわけだけど、ヴェルディのバリトンは特別だと思う。
ソプラノを愛したプッチーニがメロディの人なのにくらべ、ヴェルディは、メロディもさることながらドラマの人・・・と言えるかも。

このシモン・ボッカネグラは実在の人物で、14世紀ジェノヴァの元海賊。
貴族派の対立の中、平民から選ばれた名総督。
この海の男の運命にもてあそばれる悲劇の物語。

絶対的に愛するアバド盤を取り上げたおりには、あらすじを略したので、簡単に。

プロローグ
平民のパオロとピエトロは、シモンを総督として推すことを決し、シモンを促すが、彼にはその気もなかったが、貴族派のフィエスコの娘マリアと恋仲だったシモンは、政敵ゆえに引き離されており、総督になることで和解が図られると思いその提案を受け入れる。
 ところがフィエスコの元にあったマリアが病気で亡くなり、フィエスコは有名なアリアで、その悲しみを歌う。
その悲しみの家に忍びこみ、かつての恋人の死を知ったシモン。
そこにシモンが総督に選ばれた知らせ。熱狂する市民に担ぎあげられるシモンの胸中とは裏腹に音楽は熱い。


第1幕
25年後、アメリーアが美しいロマンツァを歌っている。やがて恋人のガブリエーレが現れ、一緒になろうと二重唱を歌う。
アメーリアは孤児として、フィエスコのグリマルディ家に育てられているが、実はシモンと亡くなったマリアの一人娘で、その事実に誰も気づいていない。
シモンは、グリマルディ家を救うため、腹心のパオロとアメーリアの結婚話を進めようとしていた。
 そのアメーリアに会いに来たシモンに、彼女は自分が今好きな人のことと、孤児の過去を話すが、胸に付けたペンダントの肖像からそれが愛するマリアと自分の娘であることがわかり、感動の親子対面となる。

(ここにおける、ヴェルディの音楽の高揚感といったら、もう言葉にできないくらに素晴らしい。そして、それを心の高まりの必然として描いたアバドの実演は、もう忘れることができない体験だ)
 シモンは、パオロとの結婚話を中止し、アメーリアの意をくむこととする。
しかし、パオロはこれを逆恨みし、アメーリア略奪を計画する。

 ジェノヴァの議会。ガブリエーレとフィエスコが民衆に追われやってきて、シモンに襲いかかる。アメーリア誘拐はシモンと疑ってのこと。
シモンによって助け出されたアメーリアが飛び込んできて、これを制止し、犯人はほかにいると告発。シモンは、市民よ貴族よ、と争いの虚しさを名アリアで歌う。
シモンは、パオロに命じて、その犯人に呪いをかけろという。

(ここでもヴェルディの音楽の緊張感はすごいものがあり、アバドも演出もすごかった)
パオロは自分に呪いをかけることとなり、恐れつつも、さらにシモンを恨むようになる。

第2幕
怒りにまかせてパオロは、シモンの水差しに毒をもる。
捕えられていたガブリエーレとフィエスコに、シモン暗殺を持ちかけるが、フィエスコはきっぱりと断り退出するが、ガブリエーレはパオロにシモンとアメーリアの仲を吹きこまれ、怒りにまかせてその気になってしまう。
 アメーリアはシモンに、ガブリエーレの罪の許しを乞い、シモンも了解。
水差しの水を飲み、一人になったシモンは眠ってしまう。
そこへ隠れていたガブリエーレが剣を片手に忍びよるが、戻ってきたアメーリアに止められ、目覚めたシモンに父であることを告げられ、謝罪しシモンに臣下の礼をつくす。
シモンは二人に祝福を施し、素晴らしい3重唱が歌われる。
外ではパオロが反乱をおこし、ガブリエーレはそれを鎮めるべく退出する。


第3幕
釈放されたフィエスコに、反逆で捕えられたパオロは、シモンにもう毒がまわっていると伝え、フィエスコは汚いやつ、自分には関係ないこととして冷ややか。
 毒がまわり、体中が熱くなったシモンが、海をみて懐かしんで歌う。
フィエスコが現れ、もう時間がない、お前を許すには、お前たちの娘を探し出すことだ、と語るが、実はアメーリアがその娘だったのだ、とシモンはしみじみと歌う。
それを聴いて、自分が孤児から育てた娘が孫だったことがわかり、後悔の涙にくれるフィエスコと、運命のいたずらに泣くシモン。
ふたりの男の感動の和解。
そこに、結婚衣装姿の若い二人も加わって、4重唱となるが、シモンはいよいよ最後の時をむかえる。
くるしそうに、フィエスコにあとの差配を頼み、アメーリアの名前を呼んでこときれる。
窓の外の民衆に向かい、新総督はガブリエーレががなることをフィエスコが表明。
民衆は、シモンはどうした・・といぶかるが、フィエスコは死んだ。。。。と語る。
音楽はレクイエムのように静かに終わる。

(スカラ座公演では、ここでホールは静寂につつまれた・・・・)


身に染みついたようなオペラなので、なにも見ずにすらすらと筋が書ける。
1976年のNHKイタリア・オペラで、このオペラを見たのが本格外来オペラ初体験。
高校生だった自分は、大方が熱中したドミンゴが歌うカヴァ・パリは無視して、この「シモン」と「アドリアーナ・ルクヴルール」を観劇した。
チケット売り場のおばさんが、「え、ドミンゴはいいの?」とけげんそうにしてた(笑)

あの時のキャストは、カプッチルリギャウロウリッチャレッリ、メリーギと素晴らしいもので、オケはファブリティースとN響。
その5年後、社会人1年目にやってきたアバドとスカラ座の「シモン」を観劇。
これが、生涯忘れ得ぬ舞台であります。
アバドの一挙手一頭足、すべてがまぶたに焼き付いてるし、ストレーレルの緊張感に満ちた舞台の隅々と、名歌手たちの素晴らしい声と演技・・・、カプッチルリ、ギャウロウ、フレーニ、ルケッッティ。
NHKとはけた違いの完璧なオーケストラと舞台は、アバドが執念のようにして取り上げ続け完成させた最高峰のヴェルディ演奏であり上演である。

今回は、アバドのCDが今もって誰をも超えることができない超名演とわかったうえで聴く、サンティーニとローマオペラのもの。

  シモン・ボッカネグラ:ティト・ゴッピ  ヤコポ・フィエスコ:ボリス・クリストフ
  アメリーリア:ヴィクトリア・デ・ロスアンヘレス
  ガブリエーレ・アドルノ:ジュセッペ・カンポーラ
  パオロ:ワルター・モナチェージ    ピエトロ:パオロ・ダーリ
  
   ガブリエーレ・サンティーニ指揮ローマ歌劇場管弦楽団/合唱団
                     (1957.11@ローマ~モノラル録音) 

やはり、アバド盤の呪縛は解けないのだけれども、ここではなんといっても、ティト・ゴッピの歌うシモン。
これもまた、シモン=カプッチルリという図式が出来あがっていて、容易にそれは解けないのだけれど、やはりゴッピは旨いものだ。
ときどき、これまたゴッピ=イヤーゴということで、そちらの顔が思い浮かぶことがあるが、このシモンはとっても人間的で悩める海の男を見事に歌いだしている。
カプッチルリは、もっと気品があって、政治家としての複雑な心情や、それに対する親としての心情も種々歌い込んでいたがが、ゴッピはもっと真っ直ぐ。
全然悪くない。
 あと、ロスアンヘレスの清純なアメーリアもよい(でもフレーニとリッチャレルリも忘れられない)。
フィエスコに関しては、ギャウロウ以上のものはなかろう。これもまたイコールの関係にあって、同じスラヴ系のバスとしても、クリストフは圧倒的な低音ながらもアクがちょいと強すぎ。
サンティーニとローマオペラのオケは、これはまさに本場の香りむんむんで、オペラのオーケストラむき出し。いまどきこんな音は聴けない。
でもやはり、アバド&スカラ座以上のものではない。

あぁ、他盤を聴いて、本命盤を想い誉めてしまうというありさま。
シモンボッカネグラという作品は、それが宿命のようになってしまったオペラなんです。
みなさま、どうぞ、あしからず。

Nagasakihana_kaimondake

   

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コメント

こんばんは。
昨夜、ヴェルディ・ボックスの消化試合でショルティのシモン・ボッカネグラ聴いていました。レオ・ヌッチの声はさすがでしたが、気がついたら1枚目で寝てしまっていました。ショルティは苦手ですが、この音楽は案外普通でした。

投稿: Mie | 2010年8月29日 (日) 22時04分

Mieさん、こんばんは。
ショルティのシモンがあることは知っておりましたが、どうも手が伸びません。
このような渋いオペラには、ショルティ閣下とは相性が悪いのではと思われます。

たしかにとっつきが悪いオペラではあると思いますが、舞台を一度観ると違うと存じます。
昨年、日本の団体が上演しておりました。
外来はまず取り上げないでしょうね。

投稿: yokochan | 2010年8月29日 (日) 22時16分

これはこれは、見事な開聞岳でごわすなぁ。
「かごんま」といえば桜島ばっかり有名になってしまってねぇ。
こちらの美しいお山もぜひ見ていただきたいもんです。
指宿枕崎線のローカルで南国情緒たっぷりな列車から見る開聞岳は本当にきれいなんだから!

で、「シモン」ですが、「ああ、アバド盤以外、あったんだ~そうですか~」てなもんで、
うちにはDG盤とフィレンツェ五月音楽祭のDVD盤があるだけでした~(苦笑)。
やっぱり他の録音も聴かないといけないですよね。
サンティーニの指揮は例のヴェルディ/スカラ座・ボックスの「ドン・カルロ」で大変気に入りましたので、
このCD、聴いてみたいです。

って、まだ手に入ります?

投稿: minamina | 2010年9月 1日 (水) 00時00分

minaminaさん、おはようございます。
この時は、車での旅行でしたが、旅情あふれる列車の旅も九州はいいもんですね。
鹿児島ラーメン食いましたが、枕崎ラーメンも食べてみたかぁごあす!

で、ゴッピさまのシモンは味ありすぎ、サンティーニは純正ヴェルディ。
しかし、こちらの耳はアバドになれきってしまって、何を聴いてもアカン状態にございました。
こちらはEMIの廃盤攻勢にあっている不遇のシモンかと思います。
シモンは、あと、ガヴァツェーニ、ショルティ、レヴァインなどがありますが、3種あるアバドの比ではありませぬ!
ドミンゴがシモン挑戦中ですので、そちらも映像になるかもです。指揮はバレンボイムかも・・
まあ、どうでもいいですが

投稿: yokochan | 2010年9月 2日 (木) 09時56分

こんばんは。
生で聴いたのはサントリー・ホールオペラだけです。ブルゾンとサバティーニの掛け合いに痺れたのを覚えています。二人とも若く、イタオペに熱く感じていた頃でした。今日、ライブ盤を聴います。感激。

投稿: Mie | 2010年9月 2日 (木) 21時51分

Mieさん、こんばんは。
ブルソンの歌ったホールオペラがCDになってましたね。
指揮はパーテノストロだったかと。
あれを聴かれたとは羨ましいです。
椿姫とかリゴレットもやってましたね。

投稿: yokochan | 2010年9月 2日 (木) 23時39分

こんばんは。 

地味な感じは受けますがヴェルディの中で一番好きなオペラです。 
そして一番泣かされます。 
わたくしが持っている唯一がDVDでオマケに愛しのミルンズ様のものです。ただ単にミーハーな(死語でしょうか…)だけなのですが。 
生は未だご縁がありませんが、METのライブビューイングを春に観てきました。 
25年後のシモンがフィエスコよりも年寄りに見えたのは目の錯覚だったのか不思議です。

投稿: moli | 2010年9月 4日 (土) 00時22分

moliさん、こんにちは。
シモン好きの方がいらっしゃって、とてもうれしいです!

ミルンズは、私も好きなバリトンです。
カプッチルリと人気を二分したミルンズ。
録音では、当時は二人のうちのどっちかが登場でしたね。
映像の彼のシモン。レヴァインの指揮のものですね。
私は観たことがないのですが、評論で、西部劇のよう、と書かれていて、興味シンシンでございます。
 そういえば、メットもみてないんです。
どうしても、この作品は過去にこだわってしまうです(涙)

投稿: yokochan | 2010年9月 4日 (土) 11時23分

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