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2010年9月27日 (月)

ラフマニノフ 交響曲第2番 マリナー指揮

Yukakiyo1
美しくも涼しげな刺身盛り。
それに冷酒とくればもう、酒飲みならば生唾ごっくんでございましょうよ。
夏の小料理屋にての光景。
これからは、肴も変わってきて、そしてお酒はぬる燗で。
四季に応じて同じ酒肴でもいろいろ楽しめる日本の食べ物、飲み物はほんとうに絶妙で繊細。
どっかの国にも季節の食べ物はあるだろうけれど、こんな細やかな味わいからは遠く、強火で強引に炒める料理ばかり。

Rachmaninov_sym2_marriner
忘れたころに、ありえへんマリナー・シリーズ(マリナーらしくない驚きレパートリーのこと)。
相変わらずの、爽やかな印象を残して帰国した、サー・ネヴィル・マリナー
4つのコンサートのすべてを聴くことができて、ほんとうに幸せだった。
当初は、ドイツもの中心のオーソドックスプログラムに苦言を呈したものの、実際に聴いてみれば、やはりマリナーはマリナー、マリナー以外のものではありえない、明るく爽快な演奏ばかりで、べートーヴェンもブラームスもシューマンも、みんな素敵な交響曲演奏だった。
本流ドイツ音楽好きの方からしたら、まったく不甲斐なく、指揮もわかりにくいし、可も不可もないじゃないか、とみなされようが、音楽の楽しみ方は一様でなく、わたしなどマリナーの芸風をしみじみ味わえるようになってきたから、こんな聴き手もいるもんなんです。

マリナーがシュトットガルト放送響時代に録音したラフマニノフ交響曲第2番
協奏曲やヴォカリーズならそんなに不思議じゃないけれど、濃厚甘々の交響曲となると、ちょっとびっくりのレパートリーじゃないでしょうか。
放送交響楽団のポストは、広範なレパートリーをこなさなくてはならないから、ブルックナーやマーラーまで指揮していたマリナーなのであります。
 ドイツの放送オーケストラは、高機能でフレキシブルなオケばかりだから、マリナーのさわやかでこだわりのない個性と不思議なマッチングをしていていて、何度も聴くCDなどでは、出来栄えは完璧だし、飽きのこない普遍的な演奏に仕上がっているように感じる。

全曲で49分間。
繰り返しを省略していることもあるけれど、短いです。
テンポもいつものように若干早め。
のびのびとした第1楽章、弓を思い切り引っ張って弦をしっかり歌わせていて実に気持ちがよい。録音がやや高音がキツく、きんきんするのがちょっと残念。
爽快で、中間部もまったくサラッとした2楽章。
そしてキターっ、美しの3楽章。
どこまでもニュートラルで、情に溺れることのないクラリネット独奏から、しなやかな弦楽器にその雰囲気は橋渡しされ、ラフマニノフの音楽の持つ歌心と美しさのみが素直に引き出されているのを感じる。
この音楽に思い切り浸って恍惚となってしまうことが多いワタクシ、そしてそんな演奏も多く聴いてきたけれど、このマリナー卿のように音楽だけをナチュラルに感じさせる気品ある3楽章はあまりないかもしれない。
この甘味なる3楽章は、プレヴィンのもっとビューティフルでやわな雰囲気がいいし、ヤンソンス(フィルハーモニア)の感傷的な没頭感もいいし、尾高さんの上品ノーブル演奏も好き。マリナー卿の一歩引いたようなスマートな音楽に語らせた演奏も好きになった。
 4楽章では、弦による大きな呼吸の第2主題が、テンポを落としこれまでの流れと変わって、驚くほど滔々と歌わせるものだからびっくり。
でも主部の速い部分はずんずん進む感じで、そのあたりの対比が意外や劇的であったりして、最終コーダとエンディングではマリナー・マジックの驚きの超アッチェランドが待ち受けているんだ
びっくらこく、ありえへんマリナー卿ですぞ。

この演奏、誰にもお薦めの一品ではありませんが、マリナー好きは当然として、ラフマニノフ2番好きなら一度は聴いても損はありませんね。

ところで、このシュットットガルト放送響、歴代の指揮者がユニークですな。
シューリヒトやカルロスも指揮してた創立時代から、70年代チェリビダッケ、次がマリナー、ジェルメッティ、プレートル、ノリントン。
来シーズンからは、若手のステファン・ドヌーヴが就任。
フランスのドヌーヴは、スコテッシュ管の指揮者もつとめる注目株で、日本にもやってきているみたい。ピリオドもしっかり身につけてしまったこのオケ、どうなるでしょうか。

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コメント

今晩は。4回のマリナー卿の演奏会、お疲れ様でした。次に来日する時は本当にモーツァルトや英国ものをやって欲しいですね。マリナーがラフマニノフのシンフォニーを録音していることを不覚にも知りませんでした。カラヤン、レニー、オーマンディをしのぐほどのレパートリーの広さとレコードの多さですね!
 ノリントン、シュトゥットガルトを辞めるのですね。名コンビだっただけに残念です。ドヌーヴという指揮者は初めて聞く名前ですが頑張って欲しいものです。
 このオケ、シノーポリの自作自演CD「ルー・サロメ組曲」も録音しているんですよね。再発売されないかなぁ・・・

投稿: 越後のオックス | 2010年9月28日 (火) 03時52分

訂正します。モーツァルトはクラリネット協奏曲をやったのでしたね。モーツァルトの少年期や青年期のシンフォニーをやって欲しいと言いたかったのです。私は20番と21番が好きです。

投稿: 越後のオックス | 2010年9月28日 (火) 06時15分

越後のオックスさん、こんにちは。
多彩なマリナー、でもその音楽は相変わらずいつものマリナーでした。
とてもいい半月間を過ごすことができました。
レコード録音の多さでは、どうも一番らしいですね。
ヤルヴィも多いですが、ふたりとも強烈な個性はなくとも、変な演奏はひとつもなく水準が高いのも同じです。
モーツァルトの初期・中期の交響曲、それにセレナードなんかもいいですね。
 シノーポリのルー・サロメは、彼のほどんどデビュー盤だったように記憶します。
ルチア・ポップが歌っておりました。

投稿: yokochan | 2010年9月28日 (火) 13時06分

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