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2010年9月26日 (日)

NHK交響楽団定期演奏会 マリナー指揮④

Nhk
今日も、サー・ネヴィル・マリナーを聴きに渋谷。
こちらは、総本山NHK様でございます。

台風は去り、強い風が街をきれいにしてくれた。
青い空は高く、空気は清涼で気持ちいい。
マリナーの清潔なシューマンを聴くのに最高のお膳立てが整った。

今日はNHKホール1階L5の真ん中あたり。
ステージ近く、マリナーの指揮姿もよく見えるし、弦出身だけに、ヴァイオリンに体を向けて指揮することが多いから、その表情もまるわかり。
クールな指揮ぶりと、その表情だけど、顔色がだんだん朱に染まってきて、熱が入ってくるのもよくわかる。

Nhkso20109

  シューマン   序曲、スケルツォとフィナーレ
  
            ピアノ協奏曲

             Pf:アンティ・シーララ

           交響曲第3番「ライン」

      サー・ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
                      (2010.9.26@NHKホール)

         
シューマンの作品のなかでも、一番マリナーにあっていると思われる交響曲第3番
おおらかなラインの流れとその周辺の風物や生活。
1楽章冒頭から、壮大さというよりは、一陣の風のような爽快さが先立つマリナーならではのライン
そう、ラインの川岸に吹く風と、そこに咲く可憐な花々を感じさせるチャーミングなシューマン。
 全体にホルンの響きは強め、木管はおとなしめ、弦は透けるような軽やかさと繊細さ。
こう書くと、ちぐはぐに思われそうだけど、主旋律のヴァイオリン中心のバランス設定ながら、第2ヴァイオリンの副声部、ビオラ・チェロの中低音域にも目が行き届いていて、耳に心地よい安心感あふれる響きが醸し出されているんだ。
 マリナー演奏の、気持ちよさは、このあたりの配分の妙にあると思う。

早めのテンポで、こだわりなく進んだ「ライン」。
5楽章のアンバランスな交響曲。
マリナーのてきぱきとした指揮で聴くと、楽章が次々に進んで、もうちょっと立ち止まって風景を眺めていたくなる気分が高じてくるのも事実。
でもそんな時は、立派なシューマン演奏がたくさんあります。
そちらを聴けばいいこと。
マリナーは、いつもこうなんです。ちゃんと、マリナーの個性が反映されたシューマンに、私はシートにゆったりと腰掛け、軽~い気持ちで音楽に身をゆだねることができました。
 私にとって忘れられない「ライン」は、敬愛するシュナイト翁と神奈川フィルの演奏。
敬虔なクリスチャンでもあったシュナイト師が、4楽章で聴かせてくれた聖堂の大伽藍のような響き。それと鮮やかな対比を示した堂々たる終楽章。
 サー・ネヴィルの今日の「ライン」は、聖堂の圧倒感や王道をゆくドイツの響きとは、遠く離れたところで、シューマンの抒情と爽やかな歌心を紡ぎだした点で、こんなシューマンもありだ!と思わせるにたる名演奏でありました。
終楽章の心地よいアッチェランドも印象的で、びっくりするくらいのブラボーを浴びてましたよ。
紅顔のサー・ネヴィル、うれしそうに楽員を称え、コンマス篠崎さんを引っ張っていって今回も早めのオケと一緒の退場。
なんて、飾らない愛すべきマリナー卿でありましょうか。
前のほうにいたもので、少しシャイにしながらも、前列付近の聴衆に手を振ったりと、満足そうにしておりました。

ライン中心に書いてしまいましたが、冒頭の「序曲、スケルツォとフィナーレ」。
これは、実はすごくいい曲なのではないでしょうか。
CDでもほとんど聴くことがない曲で、緩徐楽章がない短め交響曲として、気軽に聴ける桂作に思った。
1番「春」と同じようなフレーズも飛び出してきて、ここではもう、マリナーらしい明るく開放的なシューマンが楽しめたのである。

今回も若手奏者による協奏曲が、据えられている。
これまで何度も書きましたが、コンサートの王道は、序曲や交響詩の導入部に、協奏曲、そしてラストは交響曲。というのが王道プログラム。
今回のマリナーは、すべてそのパターンで、そこに英国文学がからんだりという味わい深い仕掛けもあったが、今宵はオール・シューマンというくくり。
 31歳の若いアンティ・シーララというピアニスト。
フィンランド出身。紅顔の金髪青年といった面持ちで、バリバリ弾くタイプではなく、ちょっとやわな感じで、難しいパッセージの連続も、さらさら何事もなかったように弾いてしまう草食タイプ。
これはこれで、いいのだけれど、個性弱すぎで、マリナーに完全に位負けしてたような・・・・。ちょうどコンサートの中間で、眠気もさそうような、ある意味では気持ちいい演奏。
もう一皮も二皮もむけてほしい若すぎのシーララ君に感じましたが、いかに。

今回の一連のマリナー・コンサート。いずれも名も知らない、これから活躍しそうな若手奏者ばかりが共演者として選ばれた。
若手ゆえに、マリナーの合わせものの達人としての才が際立ち、ソリストを救ったヶ所も随処にあったが、マリナーの音楽性とソリストの素質がばっちりかみ合ったのは、ゲルハルト氏の弾いたサン=サーンスのチェロ協奏曲と、フロストのクラリネットによるモーツァルト。
今日のシューマンは、活力不足でちょいねむ、でした。

こうして、今回のマリナー詣では、今日で終了。
あと明日も同じプログラムによる演奏会があって、その後、サーは英国へ帰郷。
ポストを持つようなお歳でもないけれど、ともかくその若さを日本のファンに印象づけたサー・ネヴィル。
ヨーロッパでの活動も拠点は絞って少なめ。
願わくは、古巣アカデミーと録音も演奏会も再開して欲しいもの。
そして、すぐにでも再来日してN響と、そして神奈フィルに客演して欲しいもの。

Guinness

 終演後、pocknさんと久しぶりのご対面。
アバドを通じてお知り合いになったpocknさん。
私と同じような音楽鑑賞歴をたくさんお持ちで、欧州でのコンサート経験も豊富。
好きな音楽談義は尽きません。
これも、マリナーの爽快演奏を聴いたがゆえの気持ちのよさ。
英国風のパブが満員で、数歩、歩いた先にあったバーにて麦酒に興じました。
 まずは、卿に敬意を評してギネス。

Fishchips

フィッシュ&チップス。
ちょっと洗練されすぎかもですが、美味でしたよgood

Krombache

シューマンに敬意を表して、ドイツのビールをbeer

pocknさん、楽しいひとときをありがとうございました。
アバド・オフ会やりましょう!

そして、サー・ネヴィル、素晴らしい演奏の数々、ありがとう。
また元気に日本に来てくださいnote

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コメント

いいなぁ。。。
私は突然の取り込み用で行かれませんでした。
。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
せっかくの記念年のシューマンプログラムだというのに。。
来月のBS放送を録画して楽しむことにしますだ。

序曲、スケルツォとフィナーレ
私、この曲大好きですよo(*^▽^*)o
最初このへんなタイトルを見たとき「なんじゃこれは~~」と思ったのですがね。
なかなか、いや、かなりいい曲なのですよ
シューマン・プログラムには欠かせない曲ですよね。
私はこの曲を聴きたかったのですが今回はホントに残念です。

いいなぁ。yokochanさん。
今度お話を聞かせてくださいね。

投稿: はるりん | 2010年9月26日 (日) 16時50分

はるりんさん、こんばんは。
もしかしたらとも思いましたが、土日のコンサートゆえ厳しかったのだろうなと推察しておりました。
すいませんねぇ、シューマニストはるりんさんを差し置いて、楽しんできてしまいました。
序曲云々の曲は、ほとんど真面目に初めて聴きましたが、とてもいい作品でした。気に入りましたよ。

あと3カ月のシューマン・イヤー、満喫してくださいね。
次の機会にはシューマンイヤーの総括をしたいものです。

投稿: yokochan | 2010年9月26日 (日) 20時42分

yokochanさんのサー・ネヴィル讃の記事で、これまではそれほど聴いてこなかったマリナー独特の良さを教えていただいたおかげで、この演奏会が益々楽しめたように思います。
アカデミーを連れての来日、是非実現して欲しいものです。
今度N響に来たら、モーツァルトの青年期のシンフォニーを聴きたいな。
アフターコンサートのひととき、楽しかったですbeer!また是非ご一緒しましょう。

投稿: pockn | 2010年9月27日 (月) 00時37分

pocknさん、こんばんは。
土曜はどうもお世話になりました。
むやみにマリナーを讃じてますが、いつもマリナーを聴くと気分よくなりますから。
次はそう、モーツァルトですね。
あと、わたしはイギリスもの。
また次回、よろしくお願いしますbeer

投稿: yokochan | 2010年9月27日 (月) 22時55分

こんばんは。

ピアノ協奏曲はイマイチな演奏でしたね。
シーララはあまり自己主張しないようで、かといって曲の個性があらわになることなく・・・。う~ん、残念。
「ライン」は、マリナーらしい演奏でしたよね。オケが本当に心地良く開放的に鳴り響く。テンポは少し早めながら、せわしない印象をあたえない。

今回の来日を機に、少しでもマリナーファンが増えれば嬉しいですね。

投稿: ナンナン | 2010年9月30日 (木) 19時08分

ナンナンさん、こんばんは。

最初の曲は、曲も気に入り、とてもよかったですが、ピアノ協奏曲はお馴染みの曲で、しかも何事もなかったので、正直眠くなりました・・・。
で、ラインはともかく気持ちがよかった!
一連のコンサートの最後が、シューマンのラインでよかったです!

N響アワーでも放送されましたし、私のブログの検索ワードも上位に来てます。
マリナー人気、来てますねぇ。
でも、また静かになってしまうのも、またマリナーらしいところで、地道に応援していきたいと思ってます。

投稿: yokochan | 2010年9月30日 (木) 22時17分

初めまして。
サー・ネヴィル・マリナーを検索したらこちらに辿り着きました。
9月28日、N響定期公演(いわき)に行って参りまして、聴いてきました。
ブログを読んで、その時が思い出されるようでした。素敵な文章ですね。
ピアノをちょっこしやっていた位の素人ですが、ラインについて激しく同意する部分がありましたのでいわきの公演について少しコメントさせていただけたら、と思います。
サー・マリナーのラインはとっても軽やかで、輝く草原が広がっていました〜。アンティの後だったので、そのままなんとなくで進んでいくかと思いきや、第4楽章の荘厳な音に引き込まれ、そのまま第5楽章の歌うような響き、一気に聴衆も引き込まれていって、とても素敵でした。
あれで86歳とは‥ピアノコンチェルトではもう疲れて疲れて‥という雰囲気だったのが、全くそれを感じさせない振りで。たくさんブラボーを貰っていて、拍手もなり止まず、サーも非常にご満悦だった模様でした。シューマンは少し気難しい雰囲気と勝手に思っていたので、今回の公演とこのブログを読んで、シューマン少し好きになりました。
長々とすみません‥ともかく、とっても興味深い文章を読ませていただいてありがとうございました!シューマン、勉強してみます!

投稿: daisy | 2010年10月 3日 (日) 21時52分

daisyさま、こんばんは。そしてはじめまして。
N響アワーで元気なマリナー卿やってましたね。
ユーモアあふれるサー・ネヴィルのお話に、ますます好きになりました。

いわき公演は、実は思いきって行ってしまおうとも思っていたのです。
美しいホールで、オーケストラを聴いてみたくでです!
いわきの街も何度か行って、おいしいお魚を食べましたし。
でも時間と懐中をにらんで諦めました・・・。

お話を拝見しますと、いわき公演でも素敵な「ライン」をマリナーさんは聴かせてくれたみたいですね!
のどかに、明るく爽快に始まったライン、おっしゃるように、4楽章以降の緩急と鮮やかな曲想の対比。
気持ちよかったですね!

こんなシューマンなら、日頃、気構えずに何気なくちょっこし気分で聴けます!
これからのテレビ放送も楽しみです。
コメントどうもありがとうございました。

投稿: yokochan | 2010年10月 3日 (日) 22時52分

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