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2010年9月16日 (木)

NHK交響楽団定期演奏会 マリナー指揮②

Suntry_hall_1
 朝からしっかり降った雨もあがった赤坂、サントリーホール。
こちらは、終演後のホール。
ナイスなブラームスを聴いて満足の足どりは軽い。
来日中の、サー・ネヴィル・マリナー指揮するNHK交響楽団の定期演奏会を聴いてきました。

前回も書いたけれど、序曲ないしは、オーケストラ曲+協奏曲+交響曲、といった安定感ある王道プログラムがオーチャード定期も含めて組まれたマリナー卿のシリーズ。
よくみたら、シェイクスピアを題材とした作品に、イギリスにゆかりのある作品(フィンガル)が、それぞれ冒頭に置かれていて、これもマリナーならではのスパイスなのでありました。

Nhkso_20109
 

     チャイコフスキー 幻想序曲「ハムレット」

     サン・サーンス  チェロ協奏曲第1番

     バッハ       無伴奏チェロ組曲第6番~プレリュード

           Vc:アルバン・ゲルハルト

     
     ブラームス    交響曲第1番


      サー・ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
                   (2010.9.16@サントリーホール)


チャイコフスキー
のハムレットが演奏会にのるのは、非常に珍しいのでは。
もちろん、ライブでは初めてだし、CDはバーンスタインを持ってはいても、その印象は薄い。
ところが、今宵、サー・ネヴィルの鮮やかな演奏を聴いて、その良さに開眼。
悩めるハムレットを象徴するかのように重苦しいムードに包まれてはいるが、中間部で、オーボエが愛の主題をメランコリックにかなでると雰囲気は一変して、バレエのひとこまのような旋律的な情景に変わる。
全曲で、2度ほど訪れるこの場面、チャイコフスキー特有のメロディーを嫌みなくスマートに聴かせるマリナーの指揮にN響がしっかり応えていて、聴き惚れましたよshine
劇的場面との対比もとれて痛快なチャイコフスキーでございました。
それにしても、このような曲をひょいひょいと、さりげなく指揮するマリナー卿のお姿。
本当に若い。
その指揮姿は、昔とちっとも変わらない。
今日は、ティンパニのほば上、P席だったから、サー・ネヴィルの真っ正面でじっくり対面聴きすることができました。
ティンパニや金管がもろに聴こえてしまい、バランスはイマイチの席だけど、卿のお姿をしっかりこの目に焼き付けることもできましたよhappy01

サン・サーンスのチェロ協奏曲もロストロさんやデュプレで馴染んだ曲ながら、実演は初。
しかし、P席では、チェロは背中を向けていて、やや音像が遠い。
情熱と抒情、軽快さと新古典風、いろんな要素が詰まった幻想曲のような協奏曲。
おもにオーケストラを聴きつつ、ソロの音色に耳を澄ます状況。
ゲルハルト氏は、見た目、青年のようだが42歳。
プログラムによれば、父親がベルリンフィルの首席第2ヴァイオリン奏者、母親が声楽家というサラブレット君で、すらりとした容姿でかなりのイケメンでこりゃ鬼に金棒。
そして、遠い音像ながら、その音はマイルドでかつブリリアント。
マリナーの曲を知り尽くしたかのような見事なサポートを得て、素直で好印象のチェロでございました。
 アンコールのバッハ、オケが鳴らなかったこともあって、ホールにこだまする1本のチェロが朗々と響くさまに、大いに感動してしまった。
そして、なんてきれいなチェロを弾く人なのだろうか。
そうそう、ゲルハルト氏、次のブラームスでは、黒っぽいカーディガンを着て第2プルトでN響の一員として弾いておりましたよ!
終演後、学員に囲まれ、なごやかに握手大会。
いい光景でしたぁ。

Marriner1
休憩後は、マリナー卿のブラームス
意外なレパートリーと思われるけれど、アカデミーと録音した全集録音は、私の愛聴盤のひとつ。
マリナーは、思いつめたような演奏を絶対にやらない。
苦節うん十年のブラームスの1番を演奏するに、指揮者は、まず足を踏みしめ、立ち位置もしっかり押さえて、オケを見渡して、渾身の指揮棒を振りおろすのが定番かと。

でも、サー・ネヴィルは、そんなことはいっさいありません。
元気に指揮台に駆け上り、それこそさりげなく、指揮棒を振りおろして、曲をスタートさせるのであります。
この何気ない普通さと、飾らずに振りかぶらないところが好きなのでして、マリナーの演奏に常々感じるところなのであります。
コクが足りない、浅い、内容が薄い・・・、こんな風に思う方はそれはそれとして、マリナーやアカデミーの演奏に縁のない方でございましょう。
 そんな風な印象に終始してるかと思ったら、不覚をとってしまう。

マリナーの面白いところは、突如として燃え盛るところがあるから油断がならない。
ティンパニの連打も心地よく、さらさらと進行した1楽章に続いて、2楽章開始までの短いインターバル(マリナーは、楽章の間も短め)で、テンポを指示したかのように柔らかい感じで空振りをしてから曲に入った。
とてもよく歌い込んで、N響の腕っこきの皆さんのソロもよく決まって、ほんと、心洗われるような名演でした。
すいすいの3楽章から、アタッカで入る終楽章。
深刻ぶらずとも、悠揚たる響きは出せるという典型のような力みのまったくない演奏。
主部の有名な主題は、期待どおりの早めのテンポで、堂々としてないところはまったくよろしい。爽快さを第一に感じるブラームス。
なにもしんねりむっつり、重厚さばかりがブラームスじゃない。
重たいN響から、こんなスマートな響きを引き出してしまうマリナー卿が、さらに好きになりましたよ。
しかし、徐々に熱してきて、ティンパニの強打、強烈な金管、エッジの効いた低弦など、最終場面に向かってどんどん音楽は高まってゆき、最後は軽くアッチェランドがかかって、壮麗なエンディングを晴れやかに迎えたのでありました。
最終の一振りは、うなり声を発した熱いものでございました。

いやぁ、気持ちいいブラームスを聴かせていただきました。

私のブログをご覧いただいているとおわかりのとおり、私のフェイバリット指揮者は、アバド、ハイティンク、プレヴィン、マリナー。
いずれも強い個性というよりは、どちらかというと控えめな音楽造りをする人たち。
でも音楽が好きでしょうがない生真面目さと、時に彼らが燃え上がるとき、音楽におのずとドラマを語らせることができる指揮者たち。

帰宅後、CDでマリナーのブラームスを確認した。
繰り返しを励行しつつも、テンポ感は今日の演奏とだいたい同じ。
でも、音のエネルギーがライブでは倍増してる。
次の2番が楽しみなサー・ネヴィルのブラームスです。

 「マリナー&アカデミーのブラームス1番」過去記事

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コメント

こんばんは。
今日のブラームスはすばらしかったですね。
僕は昨日のコンサートも聴いたのですが、今日の演奏が断然よかったですよ。
昨日は、もどかしさというか、生彩にかける印象をうけましたが、今日はいい意味で、マリナーの格調高さに、厳しさと情熱がひしひしと感じられた演奏だったと思います。
次の2番、待ち遠しいです。

投稿: ナンナン | 2010年9月17日 (金) 01時08分

ナンナンさん、おはようございます。
2日連続のサントリー定期だったのですね。
マリナー卿への思いのほど、篤く伝わります!

初日は、FM放送も忘れて聴くことができませんでしたが、マリナーらしくない演奏だったようで・・・・。
今回はP席でマリナーの指揮を堪能しましたが、堀コンマス殿がときおりオケを見渡しつつ確認を入れていたのが印象的でした。
オケとの相性もよいようで、マリナーをずっと聴いてきてよかったな、との認識を強く持てた気分です。
いいブラームスでした!
チャイコもよかったですね!

投稿: yokochan | 2010年9月18日 (土) 07時30分

yokochanさん、同じ日にサントリーにいらしてたのですね!マリナーのブラ1、最高でした。こんな良いとは思いませんでした。

yokochanさんのおっしゃるとおり、重苦しさや押しつけがましさの全くない自然体でありながら、聴かせるところのテンションの高さ!N響の合奏力や各セクションの上手さも、マリナーの意図を見事に実現していましたね。

マリナーはとても元気。N響の常連に加わってほしいですね。週末のシューマン、行くことにしました!

投稿: pockn | 2010年9月20日 (月) 16時28分

pocknさん、こんばんは。
初日かと思ってましたら、振り替えられたのですか!
案外お近くに座っていたのですね。

よいブラームスでした。
歳とると(笑)、こんな爽快なブラームスが心地よく、寝ざめもスッキリでした!

このところ、久しぶりにN響を聴いてますが、やはりうまいし、実力が高いです。
さりげなく完璧にしたててますし、マリナーとのコンビネーションも最適に感じてます。

今日は、オーチャードでした。
そして、わたしも週末参りますよ!

投稿: yokochan | 2010年9月21日 (火) 00時45分

古い記事にコメントすみません。
本日N響アワーでこのブラームスを楽しみました。
この記事をもう一度読んでからテレビに向かえばよかったと反省することしきりです。

いや~、気持ちいいって言ったらおかしいでしょうかね。
冒頭からしてすがすがしく、あのきりきりした冒頭が私はなんとなく苦手なので、とっても気持ちよく聴けた実にすばらしいブラームスでした。
それにしてもN響からあのようにすがすがしい音が聴けるとは思いませんでした。
ちょっと、いえいえ、かなりびっくりw(゚o゚)wです。
シューマンの放送も楽しみです。結局そこか!!!(笑)

投稿: はるりん | 2010年10月 3日 (日) 23時19分

はるりんさん、こんばんは。
わたしも、N響アワーで、元気なマリナー卿を再度確認できました。

そうです、気持ちいい、というのがマリナーの演奏の常なのです。
あの気難しいブラームスの苦節何年ともいえる冒頭を、あんなにすんなり聴かせてくれるなんて、とてもうれしかったんです。
N響も、デュトワを経て、ドイツ一辺倒が薄まって、指揮者によって柔軟な演奏をするようになった、ということでしょうか。
実は、シューマン、序曲・スケルツォ云々と、ラインがとっても素敵な演奏だったんですよ。
是非観てくださ~い。
きっと気に入るはずですよ。

投稿: yokochan | 2010年10月 4日 (月) 00時32分

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