ラフマニノフ 「フランチェスカ・ダ・リミニ」 ノセダ指揮
今日は涼しかったですな。
30度近くあったのに、涼しく、いや寒くも感じてしまった。
暑さ慣れしてしまった我々の体でございますゆえ。
こちらは涼しげなゼリー。
桃果汁なんですよ。うま〜イ
今日の「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、ラフマニノフのオペラ。
このCDは、だいぶ前に買って、一度聴いたきり。
甘味なラフマニノフ・サウンドを期待してたら、その暗い雰囲気に肩透かしを食って、それっきりになっていた。
ザンドナーイのオペラに接し、その暗さの要因が、許されざる愛ゆえに地獄にさまよう恋人たちを描いたことにあると知り納得。
そう、あのオペラでは二人のなれ染めから、悲劇的な死までをドラマティックに描いていたのに対し、こちらのラフマニノフのオペラでは、ダンテと地獄を案内するヴェルギリウスも登場し、地獄の場面を前後に、間に恋人たちの物語を描いている。
こちらの台本は、なんとチャイコフスキーの弟、モデストであります。
プロローグと2つの場、エピローグの3部構成、65分のコンパクト設計でございます。
ラフマニノフのオペラは、3作あって、そのいずれもがCD1枚分。
「アレコ」「けちな騎士」「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
短いがゆえに、そしてドラマ的にも中途半端ゆえに、なかなか上演に恵まれない。
でもロシア臭が濃く、時おり思いだしたようにあらわれる甘い旋律には、ラフマニノフ好きなら堪らない音楽でございましょう。
1904年の作曲で、ザンドナーイが1914年だから、ラフマニノフの方が先んじていたわけ。
ヴェルギルの影:ゲンナジ・ベズベンコフ ダンテ:エウゲニ・アキモフ
ランチェオット・マラテスタ:セルゲイ・ムルザエフ
フランチェスカ:スヴェトラ・ワシレア パオロ:ミシャ・ディディク
ジャナンドレア・ノセダ指揮 BBCフィルハーモニック
BBCシンガース
(2007.5@マンチェスター)
プロローグ
ダンテとその案内役のヴェルギル(ヴェルギリウス)が地獄の淵にたってその底知れない穴を覗き込んでいる。
次に案内したところでは、泣き叫び嘆く魂の声がこだまする。
そして、そこにフランチェスカとパオロの二人の姿を見つける。
ヴェルギルは、「惨めな時に、幸せだった時期を思い起こすことほど悲しいことはない」と語る。
第1場
ここより、物語は遡り、悲劇の顛末を。
リミニ家の宮殿。ランチェオット(ザンドナーイのときは、ジョヴァンニ)は、相次ぐ戦勝で領主の覚えもめでたく、再度、戦に出陣しようとしている。
ところが、ランチェオットは彼の若い妻が自分を愛しておらす、美男の弟パオロとの仲を怪しんでいる。
しばらく戻らないと言い置いて出陣して、留守中と称してを見張ってやろうと画策する。
第2場
夕暮れ、パオロがフランチェスカのもとに忍んでくる。
兄がいないとわかると愛を告白するパオロ。
フランチェスカは、本を読みつつ、その内容のとおり、私たちの愛はこの世ではなく、天国でこそ永遠なるもの・・と拒むが、パオロの情熱にほだされ、ついに抱き合ってしまう。
「永遠の二人の幸福!」と甘味なる二重唱を歌う。
雲であたりが陰り、そこに潜むランチェオット。憎悪をみなぎらせる。
「いや、永遠の天罰だ!!」と・・・・
エピローグ
プロローグと同じく地獄の光景。
フランチェスカとパオロの魂があらわれ、「あの日、あれ以上はもう読むことはなかった・・・」と歌う。彼らは罰せられた。
同情するダンテは力を落とす。
合唱が、プロローグのヴェルギルの言葉を歌いつつ、音楽はドラマテックに終了する。
ざっとこんな感じです。
ザンドナーイのオペラが、ふたりの愛に焦点を当ててワーグナーばりの濃厚サウンドにしたてていたのにくらべ、ラフマニノフは、地獄の禍々しい場面を前後において、ダンテやヴェルギリウスも登場させ、神曲のモットーを語らせるようにした。
もちろん、嫉妬に狂う兄の激唱と、若い二人の甘々の情熱二重唱もおおいに聴きものです。
この愛の場面は、ラフマニノフの交響曲の緩徐楽章そのものですよ。
地獄の場面では、ヴォカリーズ唱法の合唱による苦しみの声が、なかなかに不気味な雰囲気を醸し出してます。
それと、1場と2場のあいだの間奏曲が、やたらと美しいことも付け加えておきましょう。
ノセダとBBCフィルが、先鋭な音楽造りで実に引き締まっていてよろしい。
歌手では、なんといっても、いま各所で活躍するワシレアの清潔な歌いぶりが素晴らしい。
あと、ロシアっぽい深いバリトンの声を持つムルザエフ、徐々に熱を帯びてきてやたらと情熱的になるパオロを歌うディディクという熱いテノール氏、それぞれ気にいりましたぞ。
むにゃむにゃするロシア語は苦手だけど、ラフマニノフやムソルグスキー、チャイコフスキーのオペラにはよく似合う。
こうした音楽には、英語やドイツ語ではピンとこないですし。
このジャケットは、オルセー美術館にある、カバネルの「フランチェスカとパオロの死」。
道化(たぶんヴェルギリウス?)が覗きこんでます。
あと印象的なのが、ロセッティの作品。
ダンテとヴェルギリウスをはさんで、使用前と使用後みたいに左右にフランチェスカとポアロ。
フランチェスカ・ダ・リミニ特集終り。
ラフマニノフのオペラ記事
「アレコ キタエンコ指揮」
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コメント
おはようございます。
ご無沙汰しております。
ラフマニノフってオペラ書いてたんですね。
暗くて、不気味で、そして甘い・・・
なんか想像つきますね~。
ロシア人作曲家の中では、
例外的にわりと好きな作曲家なので
興味津々です・・・。笑
投稿: 恋するオペラ | 2010年9月10日 (金) 10時08分
yokochanさま、こんにちは
ラフマニノフも「フランチェスカ・ダ・リミニ」書いてたんですね。
しかもオペラ……
「アレコ」はプレヴィン指揮の交響曲第2番の余白にあったので、「けちな騎士」はなんだか笑えるタイトルだったのでそれぞれ(存在だけは)知っていましたが…。
そう考えるとかなりワリを食ってる感じですね。
暗い雰囲気ですか。
昨シーズンのフィギュアスケートで浅田真央選手がラフマニノフの「鐘」を使いましたが暗かったですよ~。
あんな感じでしょうか??
ってか、同じラフマニノフの「鐘」なら合唱交響曲の方にすればスペクタクルぽくて面白かっただろうに。
あ、歌が入るからダメか(笑)
投稿: ライト | 2010年9月10日 (金) 11時21分
恋するオペラさん、こんにちは〜。こちらこそ、ご無沙汰をしております。
ラフマニノフは何気に好きでして、そんなに作品も多くはないので、結構揃えました。
落ち込みやすい人だったらしく、落ちているときは、自信なさげですか、乗ってるときや、故郷を思うときなどは、暗くて、甘〜い音楽を書いてたみたいです。 ムソルグスキーよりは、はるかに単純でわかりやすい方だと思います(笑)
投稿: yokochan | 2010年9月10日 (金) 17時36分
ライトさん、こんにちは。ラフマニノフのオペラシリーズ(といっても3つだけですが)もあと、けち騎士だけです。
名前とは裏腹に、けち騎士は悲劇みたいですよ!
で、フランチェスカ・ダ・リミニも暗いし、アレコもそう。
なんだか、ラフマニノフのオペラは暗いんです。
でも、甘味料もたっぷりですが!
鐘は、ちょっと苦手なんですが、あんな感じのところもあります。
投稿: yokochan | 2010年9月10日 (金) 17時44分