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2010年10月23日 (土)

R・シュトラウス 「アラベラ」 サヴァリッシュ指揮

Cosmos_hiratsuka_2
コスモス咲いてます。
いろんな色の種類があるけれど、こうして単色でそろって咲いているのもキレイなもんです。
この色の種類は、ベルサイユとかいうのかしらね。

Arabella_sawallisch
サヴァリッシュ特集を始めたと思ったら、オペラウィークとなってしまった。
私の大好きなオペラ3作を、1週間で観劇するという至福に恵まれ、このところの過酷な毎日が、気分的にかなり和らいだものだ。

まだそれらの舞台の残像と音楽の響きが耳に残っているうちに、もう一度CDで聴いてみようと思う。
しかも、サヴァリッシュの指揮で。

   アラベラ:ユリア・ヴァラディ  マンドリーカ:ディートリヒ・F・ディースカウ
   ズデンカ:ヘレン・ドナート   マッテオ:アドルフ・ダラポッツァ
   ヴァルトナー伯爵:ヴァルター・ベリー  アデライーデ:ヘルガ・シュミット
   エレメール:ヘルマン・ウィンクラー ドミニク:クラウス・ユルゲン・クッパー
   ラモラル:ヘルマン・ベヒト    フィアッカミッリ:エルフリーデ・ヘーバルト
   カルタ占い:ドリス・ゾッフェル

 ウォルフガンク・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団
                      バイエルン国立歌劇場合唱団
                         (81.1@ミュンヘン)


ミュンヘン生まれのサヴァリッシュが、R・シュトラウスを得意にするのは同郷ということもあるけれど、ピアノの名手で劇場たたき上げのオペラ指揮者としての必然でもあり、ドイツの劇場の監督を転々と務めあげた実績の賜物でありましょう。
当然に、モーツァルトとワーグナーも大得意。
劇場の変遷は、アーヘン・ヴィスバーデン・ケルン・ハンブルク・ミュンヘンと着実にステッアップして故郷に返り咲いている。
ハンブルクとミュンヘンは、カイルベルトの後任で、バイロイトでも同時期に活躍したし、N響との関係においても同じ。この関係はシュタインも結びついてきます。

シュトラウスのオペラ指揮者というと、あえて現役を除外すると、K・クラウス、ベーム、カイルベルト、ケンペ、カラヤン、サヴァリッシュということになるでしょう。
しかし、その全15作を全部指揮した指揮者というと、サヴァリュシュをおいて他にないのでは。
1988年のミュンヘンで、全作品を上演しているのである。(ただし、「ばらの騎士」だけは、ミュンヘンではカルロスの専売特許ゆえに、指揮してないが、過去指揮しているはず)

サヴァリッシュのシュトラウスは、N響でもオーケストラ作品でお馴染みだが、ストーリーテラー的な面白い演奏ではなく、全体の構成をしっかり掴んで、作品の隅々までに目が行き届いた安定感あるものである。
そして、旧来のドイツの巨匠のような重厚さというよりは、明晰でスタイリッシュな響きをオーケストラから引き出すので、シュトラウスのオペラ、ことに中期以降のものほど素晴らしいわけなんだ。
いずれ、全作上演の放送音源が出てくるものと期待されるが、いま聴けるものとしては、「エレクトラ」「アリアドネ」「影のない女」「インテルメッツオ」「アラベラ」「無口な女」「平和の日」「カプリッチョ」の8作品。

この「アラベラ」の録音は、ライブではなく、スタジオ録音で、放送オケではなく手兵のシュターツオーパーのオーケストラで行われているのがうれしい。
このオケは、高名な放送オケの影に隠れがちだけど、そちらにひけをとらないくらいに、優秀で機能的なオケなんだ。独特の明るさと劇場の雰囲気を持った色のある存在。
カルロスが愛したのもよくわかる。
シュトラウスやワーグナーにかけては、理想的なコンビだった。

このコンビの「アラベラ」といえば、そう、1988年の来日公演。
この時は、わたしは結婚を控えていて、「マイスタージンガー」奮発S席1本のみだったので、テレビ観劇のみでしたが、幸い音源とモノラルビデオが手元に残っていて、ポップとヴァイクルの素敵な恋人たちを確認することができる。ズデンカのカウフマンもよかった!
Arabella_bayerisches_2
ダブルキャストの、トモワ・シントウとカウフマンを実家の「音楽の友」で発見。
こちらのマンドリーカは、アレン卿でございました。

CD録音では、なんといっても、ヴァラディF=ディースカウの実夫婦による恋人たち。
あのカイルベルト盤(64年)から、17年を経て若々しさは後退したものの、声の威力と歌い口の抜群のうまさは変わらない。相変わらず「うま過ぎ」ではあるけれど、シュトラウスやワーグナーは、こんなFDが私は好きであります。
FDよりも、ここではヴァラディの清新なアラベラがとっても素敵なのであって、旦那の歌唱指導もあろうかと思うが、すっきりとしてて暖かい声は極めて女性的で、わたしなどは、奮いつきたくなってしまうのです。ヴァラディは、それこそ旦那の影に隠れて、あんまり人気はなかったかもしれないけれど、80年代を代表する名ソプラノだと思いますよ。

ズデンカのリリカルなH・ドナートは、まさにぴったりの役柄で、わたしは彼女のパミーナを観たことがあるけれど、とってもチャーミングだったなぁ。
甘口テナーのダラポッツァのマッテオ君は、これでよいでしょう。
R・コロの声が贅沢にも頭にあるもんだからしょうがないです。
パパ・ママは、ベリーシュミット。完璧ですな。

Arabella_1_bayerisches_1
こんな風に、完成度の高いミュンヘンの「アラベラ」であります。
が、私には、すべてが白日のもとに晒されてしまいすぎたかの感もあるんです。
かつての先輩カイルベルトの趣きある過去を懐かしむような演奏や、旧ショルティ盤のウィーンのかぐわしきよき時代を感じさせるオケと録音に、いまだ魅かれるんです。
このオペラって、デジタルな最新録音で聴くよりは、古めの録音で聴く方がどこかいい。
ヴァラディも、ヤノヴィッツもポップもいいけど、やっぱりデラ・カーザかな・・・・。
とか言いながら好きなオペラは、どの演奏でもみんな好きになってしまうんですな、気が多いもので、これがまた。

それにしても、シュトラウスはこのオペラにも、美しい旋律を惜しげもなく投入したものだ。
それらは、主人公アラベラに与えられていることが多く、彼女のモノローグや可愛い妹との二重唱、マンドリーカとの二重唱などであります。
1幕で街から帰ってきて、マッテオを勧める妹に向かって「彼は私にふさわしくないの・・・、理想の男性が現れたら・・・」と揺れ動く心情を歌う場面。やがて姉妹の二重唱となる。
ここはほんとうに美しい!
あとこの幕の最後にも長いモノローグが歌われる。ここでも周りの男性たちを否定し、街で見かけた男性を想う。けれど、今宵の舞踏会を想ってきっぱりする。ワルツが素敵すぎ。
彼女だけ、こんなに歌いどころが満載でおいしい役柄だけど、それはまだ続きます。
 2幕では、マンドリーカと出会い、これまた可憐な二重唱を歌う。
この幸せな愛の歌は、youtubeで発見した、ローテンベルガーとプライの映像がやたらと心に残っていますね。
 最後の幕では、なんといっても、混乱が静まり一杯の水を手に回廊をしずしずと降りてくる場面。この清涼かつ、精巧なガラス細工のように美しい音楽をなんと例えようか。
そのあとの、幸せ急転直下のような洒落た幕切れの場面もシュトラウスの天才的なまでの鮮やかさである。

アラベラのこうしたおいしい聴きどころを脳裏に置きながら、マンドリーカが天然男からひとり恋する男に変貌してゆくところや、本当は一番素直で可愛いズデンカちゃんの心情を想いつつ、マッテオの情熱一本やりのおバカさんぶりを楽しむ。
そして、ブッフォ的な存在のパパ・ママの娘を想う心情をを推し量りつつ、求愛振られ3人組のそれぞれの個性までも聴き分ける。
さらに、いわずもがな的にとって付けたように組み込まれコロラトゥーラの妙技も楽しむ。

何度聴いても美しくも愛らしい「アラベラ」でございました。

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コメント

こんばんは。
大好きなアラベラ今回初めてでした。かみさんは1988年のバイエルンの時に行ったそうです。マイスタージンガーを二人でNHKに行ったのは当方は記憶しているのですが。デラ・カーザがやはり一番素敵です。ゴルツも良いです。

投稿: Mie | 2010年10月23日 (土) 21時25分

Mieさん、こんばんは。
奥さまは、バイエルンのアラベラ行かれたのですね。
そしてお二人でマイスタージンガーとはまた羨ましい。
わたくしは、かみさんが音楽がまったくですので、常に劇団ひとりです。経済的には助かります!

やはりデラ・カーザですね。
そして、ゴルツも美人さんですよね。

投稿: yokochan | 2010年10月23日 (土) 23時26分

  今晩は。ブログ主様、メールを本当にありがとうございました。過去記事に書き込み失礼いたします。
このサヴァリッシュ盤、私も持っています。
高校時代にドラティのエジプトのヘレナと一緒に買いました。DVDは、フレミングとメストが共演したものしか持っていません。ショルティ指揮の映画版も欲しいところです。私はスデンカちゃんが大好きです。けなげで姉思いだからです。シュトラウスのオペラの女性キャラクターで一番好きです。

投稿: 越後のオックス | 2012年11月 2日 (金) 00時19分

越後のオックスさん、こんばんは。
こちらこそ、失礼の段はお許しください。

昨日、たまたま、アラベラの一節をひさかたぶりに聴きました。
姉妹の美しい二重唱でした。
女声を愛したシュトラウスの真骨長ともいうべきオペラですね。
映像では、ショルティ、ハイティンク、ティーレマン、サヴァリッシュ(NHKの録画)の4つを持ってまして、かなり恵まれた状況です。
映画タッチのショルティは、機会があれば是非、体験ください。
ここでのズデンコ君はとても可愛いですよ。

投稿: yokochan | 2012年11月 2日 (金) 23時06分

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