ハイドン 交響曲第102番 クレー指揮
秋がなくって、冬が来てしまった。
秋晴れの高い空なんて、今年は見たかしら?
油断のできない今年の天候。11月にまた暑い日が来るかも・・・。
そして油断ならないのは、台風と地震。
自然も政治も仕事も日常生活も、なにもかも落ち着きなく、いやぁ~な雰囲気ただよいまくり。
音楽に逃避するわけじゃないけれど、それこそ音楽だけが救いの毎日を送っております。
ベルンハルト・クレー特集。
クレーは、1936年、ドイツ・チューリンゲンのシュライツの街に生まれていて、現在74歳。
先日の都響来演時の背筋の真っ直ぐ伸びた流れるような指揮ぶりを見ると、とうていその年齢を感じさせない。
シュタット・シュライツを調べてみたら、ドイツの森に囲まれた自然豊かな美しくも可愛い街のようだ。
中世の香り漂う街と森、そしてそこにある教会の尖塔は、まさに先日感動したブルックナーの世界そのもの。
ドイツの地方都市の劇場のカペルマイスターを歴任したたたき上げのオペラ指揮者で、ハノーヴァー、リューベック、デュセルドルフのオーケストラと関係を築き、英国ではBBCのマンチェスター響の首席客演をつとめてもいる。
レコーディングでは70~80年代にメジャーレーベルへの録音が多く、巨匠たちがひしめく有名曲ではなく、彼らが取り上げない曲目や、大全集録音の補完的な演目などを担当させられることが多く、ちょっと気の毒かつ地味な存在だったのだ。
でも、それらはクレーにしか録音はなく、演奏の完成度も高かったから、逆にクレーの実力のほどを好楽家に印象づけることとなったわけだ。
それらの一例としては、1970年のべートーヴェン生誕200年記念のDG全集の管弦楽曲や、EMIのシューマン合唱作品、フィリップスのモーツァルト全集の初期オペラ、などであります。
本領のオペラや伴奏指揮などは、また次に。
今日は、主席指揮者をつとめた、ハノーヴァー北ドイツ放送フィルハーモニーとのライブ録音シリーズのなかから、ハイドンの交響曲第102番を。
93年のライブ録音で、さすがは放送局、実に鮮明で響きも美しく音楽的な録音であります。
そして、古楽だ、ピリオドだ、言ってる昨今の演奏スタイルからしたら、完全に一時代前のコンサートスタイルの演奏。
でも私の世代には当たり前に普通だったこうした演奏が、とても新鮮に感じる。
皮肉なことだけど、こうした演奏で初めてクラシック音楽に接し、ずっと何十年も聴いてきた音楽のスタイルも正しいことだと思う。
ミンコフスキのような奏法だなんだかんだの領域を超えてしまった演奏スタイルも知ってしまったし、かたや、こうしてクレーのハイドンを極めて新鮮な想いで聴くことができる。
思えば、音楽の楽しみ方が、幅の広がりをもって、贅沢な選択ができるようになったわけであります。
ハイドンのザロモンセットの中でも、最後の3つの交響曲はさらにワンセットなっていて、ほかのふたつと違ってタイトルがないので地味な存在だけれども、102番はハイドンが行き着いた交響曲の完璧な姿が見てとれる名作とされる。
クレーは、この素晴らしい名品をいつもの清々しさでもってすっきりと歌い、くっきりと楽章の特色を描きだし、どこまでも気持ちのよいハイドンを聴かせてくれるのだ。
ことにチェロのオブリガート・ソロをともなった2楽章の古典的な清潔さの中に、ちょっとロマンの香りを感じさせるあたりが実に素晴らしい。
もちろん、悠揚な序奏を持つ1楽章は、主部との対比が鮮やか。
小股の切れ上がったようなメヌエット楽章。ピリオドにたよらずとも、こんなに生き生きとした弾んだ表現ができるのだよ。
クレッシェンドの連続するリズミカルな終楽章の歯切れのよさと、堂々としたエンディングの築き方。
曲よし、演奏よしの、いいハイドン。
クレーのハイドンは、DGに「朝」「昼」「晩」の初期3作をプラハ室内管と録音したものがあって、いまは入手不可の廃盤レアものでございます。聴きたい
このCDは、ハノーヴァーのオケのライブラリーの1枚で、モーツァルトの初期交響曲とハフナー、シューベルトのドイツ舞曲も収録されていて、いずれも清廉たる名演でございます。
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コメント
こんばんは。
先日のコンサートの記事、今日の記事を読みながら、クレーさんを聴きたくてたまらなくなってしまいましたよ。かなり僕好みのような印象を受けました。都響でのコンサートは全て終わってしまったんですね。残念です。
投稿: ナンナン | 2010年10月28日 (木) 00時01分
ナンナンさん、おはようございます。
ベルンハルト・クレー、まさにナンナンさん好みと推察されます!
すっきり系の嫌味のない音楽造りです。
残念なのは、音源があんまりないことです。
しかし、爆演堂さんにたくさんありますよ〜
是非聴いてみてください。
投稿: yokochan | 2010年10月28日 (木) 08時32分