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2010年11月12日 (金)

バーバー 弦楽のためのアダージョ プレヴィン指揮

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秋が澄んでくると、夕映えが美しくなってくる。
物心ついた頃から、嫌なことがやたらと起きてしまう11月。
自分の誕生月なのにです。

でもですよ、その頃から冬の夕空を眺めるのがずっと好きだったんです。
中学や高校の時は、自宅の自室から富士の頭が赤く染まり藍色に変わってゆくのを。
大学時代は、よく遊んだ代々木公園の歩道橋や、いまのように喧騒がまったくなかった公園通りの坂から濃紺の空を。

歳を経た今は、そんな空を見る暇がなくなってしまった気がする。

いまの日本人、空を見上げたり、眺めたりする人がいなくなってしまったのでは。

目先のことや、自分のことばかり。
見るものは、PCや携帯の画面ばかり。
このままでは、いかんですね。

でも、こんな呑気なこと言っていらんないし、空ばかり見てたら、どんどん追い抜かれてしまう・・・・。

この空は、昨秋だけど、兵庫の加西市にある世界一の地球儀時計からのもの。

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元気に来日中のアンドレ・プレヴィンを聴くシリーズ。
今回の来日では、N響メンバーたちと室内楽を演奏するコンサートも組まれていて、かつてのサヴァリッシュの活躍をも思いおこすことができる。
ともに、ピアノの名手。
でも、そのコンサートは、曲がブラームスからモーツァルトに変更されたようで、プレヴィンの指の負傷とあります。
明日・明後日の定期ではガーシュインの協奏曲を弾き振りするので大丈夫なんだろうか。

今日は、ちょっとオセンチな気分がまだ抜けきらないので、しんみり系の曲を。

バーバー(1910~1981)の「弦楽のためのアダージョ」

弦楽四重奏曲の楽章を自身で弦楽オーケストラ用に編曲したこの曲は、トスカニーニによって1938年に初演されているが、J・F・ケネディの葬儀に使われ有名になったのは皆さまご存じのとおり。
それがあるものだから、私もそういう聴き方をしてしまう。
故人を偲ぶのに聴いてしまう。親父が死んだときも、いろいろ聴いたなかのひとつだし。

でも映画での使われ方などを鑑みるに、その深い響きが、人間存在の根源に結びつき、ドラマ映像を後押しするようにしていたのを思い起こすことができる。
そこでは、人の死ではなく、人間の存在の悲しさというようなものが描かれているように思われる。
静謐で抒情的ありながら、熱気もはらんでいて、最後は慟哭にもにた叫びも聞かれる。

10分に満たない作品ながら、名作中の名作に存じます。

プレヴィンロンドン交響楽団のコンビによるこのバーバー。
ソフィスティケートされた外観を持ちつつも、プレヴィンらしい柔和な眼差しは、曲の本質と結びついて、聴く者にじんわりとした感銘を与えてくれる。
バーンスタインの演奏が刷り込みではあるが、あちらは思い入れが強過ぎる演奏で、そう何度も味わうことができない。
プレヴィン兄さんのものは、ちょっと寝る前とか、少し落ち着きたいときなどに、さらりと聴けちゃう心優しい演奏なのだ。

このCDは、プレヴィンがBBCでテレビシリーズ化した「ミュージック・ナイト」で演奏された曲をあつめたものの第2弾。

「ルスランとリュドミラ序曲」、「三角帽子第2組曲」、「牧神の午後」、「青柳の堤The Banks of Green Willow(バターワース)」、「皇帝円舞曲」などもおさめられている素敵な1枚。
バターワースは、実にチャーミングな曲であり演奏なのでありました。

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コメント

今晩は。確かに日本人で空を見上げる人は少ないと思いますね。パソコンや携帯や、若い人だとゲームの画面ばかりだったりして。
 私がはじめて聴いた弦楽のためのアダージョは、スラトキンとセントルイス響の演奏です。悪口学校序曲や管弦楽のためのエッセイ3曲なども収録されたいて、バーバー入門にうってつけの一枚でした。
 レニーの門下生のマリン・オールソップは素晴らしい指揮者ですね。ナクソスから出ている彼女がボーンマス響を指揮したバーバーは大半は持っていると思います。2曲の交響曲もヴァイオリンやチェロやピアノのための協奏曲も素晴らしいですね。バーバーのヴァイオリン協奏曲はブログ主様のフェチ曲だそうですが、私もこの曲は好きです。20世紀屈指のヴァイオリン協奏曲ですよね。

投稿: 越後のオックス | 2010年11月12日 (金) 23時19分

お疲れ様です。
「弦楽のためのアダージョ」映画「プラトーン」に使われたのは近年になってから知りました。かつてはクラシックに興味がなかったので当然ですね。
バーンスタイン、ロサンゼルス・フィルはシンフォニックでアメリカ本場のサウンドでしょうが、マリナー、アカデミー室管はイギリスのパストラルな旋律。
最近、葬式用音楽のCDが出回ることが多く、「弦楽のためのアダージョ」もセレクトされてます。優しい旋律で故人を送り出したいのでしょう。
都会は高層マンションが建ち並び、空を見上げることは少なくなりました。また、この日、地デジ設定する際、NHK総合が砂嵐になり、電波が弱かったのが原因でした。強くするのは不可能でしょうかね。空は少なくなり、デジタルTVと生活に乏しくなるのはもう現実ですね。

投稿: eyes_1975 | 2010年11月12日 (金) 23時28分

越後のオックスさん、おはようございます。
下を向いてるよりは、上を向いて生きて行った方がいいですね。
でも、注意しないと、何かに躓くかもしれないし、お宝を逃すかもしれないです(笑)
スラトキンは、カップリングは違いますが、わたしも持ってます。
そして、オールソップの交響曲2曲はわたしも聴いてますよ。
貴重な1枚ですし!
保守的と言われるバーバーですが、好きな作曲家のひとりでして、オペラ「ヴァネッサ」にも挑戦したいと思ってます。

投稿: yokochan | 2010年11月13日 (土) 10時15分

eyes_1975さん、こんにちは。
わたしは、まだ未デジ化人間です。
最後まで抵抗したくなってます(笑)
ほんと、東京は空が少ないですね。
ちょっと地方へ出ると、空の広さに清々します。

バーバーのこの音楽も、空を見上げながら聴きたいものです。
映画では、あと「エレファントマン」にも使われていて、その演奏はこのプレヴィン盤なのだそうです。

投稿: yokochan | 2010年11月13日 (土) 12時18分

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