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2010年11月22日 (月)

コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会 ヤンソンス指揮

Muza
ミューザ川崎
音響の良さは、外来オケが好んで来演することからも折り紙つき。
わたしは、ホールの構造が苦手なのだけれど、音の良さやアクセスのよさは最高と認めざるをえません。
Muza1
ホールの中身は、ロビーのテレビにて。
開演に間に合わなかったかったり、途中退席したら、ここで観劇するんだろうな。
幸いにして、わたしは今までそうした経験はありませぬが。

ここで、日曜の晩に最高級のマーラー演奏が展開されたのでございます。

Rco2010_2

      マーラー     交響曲第3番

        Ms:アンナ・ラーション

     マリス・ヤンソンス指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
                    新国立劇場女声合唱団
                    FM東京少年少女合唱団
                        (2010.11.21@ミューザ川崎)


毎年この時期は、日本はヤンソンス一色になります。
ふたつの手兵、コンセルトヘボウとバイエルンを交互に引き連れて来日してくれる。
去年のバイエルンは、ソリストのマネジメントギャラ高で、高額チケットに遅れをとってお休みしたけれど、ここ数年ずっとヤンソンスを聴いてきたわたくし。
今年はなんといっても、マーラー・イヤーだし、そのマーラーゆかりのコンセルトヘボウとの3番なんだから、これはもう、何を差し置いても行かなくちゃならん。
おまけにですよ、わたくしの誕生日の公演なんだから、もう~。
家族は祝っちゃくんない歳だからして、自分で自分を、そしてマーラーに、マリスに、コンセルトヘボウに、それから音楽仲間に祝ってもらっちゃおうという寸法ですわ

マーラーって、どうしてこんなに優しいのですか?
ちょっと、泣かせないでよ
「愛が私に語ること」、終楽章では、もう涙が、涙が止まりません。
自然に溢れる涙が、頬を伝い、口に達する。
あっ、しょっぺぇ~。
そんなことを無意識に感じつつ、わたくしは、マリスとコンセルトヘボウの紡ぎだす純粋なマーラーに心身ともにどっぷり浸り、陶酔しきってしまったのです。

そして、この曲の独唱のスペシャリスト、ラーションが4楽章で登場するや、音楽は急激に引き締まり、深淵さと親密度とを増した。
ともかく、彼女の歌はとんでもなく素晴らしい。
大柄なお姿とは裏腹に、繊細かつ絶妙な歌はツァラトゥストラの詩の言葉ひとつひとつの重みをしっかりと、我われ一人一人の心に刻みつけるような名唱。
彼女のドレスの紫から紅の色合いにピッタリの歌声でありました。
 次いで、「ビムバム」は、毎度おなじみ新国合唱団の生き生きとした歌声に、可愛い子供たちの無垢な合唱、そこに加わるラーションの琥珀色の声。
夢のような世界でした。
ビム・バムが余韻を伴って消えると、静かに始まる「愛が私に語ること」・・・・・。
ここから溢れだす涙・・・・・。
ずっと、ずっと浸っていたかった。
ほんと、自然に高まっていった最後の感動の頂点。
2基のティンパニの連打、オーケストラ全員の全奏は観ているだけで鳥肌が立ち、両手を握りしめ、感動にわなわなと打ち震える。
エンディングの最強音で、ヤンソンスの指揮は3度にわたって大きく振りかぶり、ホールを圧倒するフォルテで曲を終結させたのでした。
拍手できませなんだ・・・・・。

6楽章のこの長大な交響曲。
この作品には、全編、歌がみなぎっている。
オペラを書かなかったマーラーの、「千人」とは別のオーケストラによるオペラ的作品。
オーケストラによる、これまた長い前半の3つの楽章。
連日のコンサートによる疲れもあるのでしょうか、オケは、ちょろちょろとやらかしてます。
でも、それはご愛嬌だし、熱烈なヤンソンスの指揮に免じて、そして名門コンセルトヘボウも人の子だった。
鉄壁のバイエルンでは、決してこんなことはないであろう。
でも、このちょっと人間的な温もりのような感じが、コンセルトヘボウでありまして、ハイティンク時代の味わいの豊かさは一部失われたかもしれないけれど、とっても親しみを感じさせるオケになってきたのではないでしょうか。
今回の席は、2階Lで、ヤンソンスの左手、ハープの真上最前列。
オケの全体とヤンソンスの指揮ぶりを俯瞰でき、ホールに響きがこだまするのを正面に感じることのできる良席だった。
ゆえに、オケのメンバーが、ときおり目配せをしたり、他のソロに聴き入ったり、心配そうにしたり、出番に備えたり、微笑みあったり、そして、子供たちの歌と姿をにこやかに見守る、そんな様子をしっかりと確認できたのです。
人間的な、素晴らしい奏者が集まった素敵なオーケストラであります。

行進曲としての生き生きとした推進力を感じさせた1楽章。
弾むヤンソンスの面目躍如たる自在さと、豊かなアゴーギク。
しなやかなで、コンセルトヘボウの弦の美しさ、とりわけ、ヴィオラとチェロの素晴らしさを感じた2楽章。
私の席から、開いた扉から白いTシャツ(下着?)姿で演奏するのが丸見えだったポストホルン氏の澄んだ音色が印象的だった3楽章。
こちらは、モザイクのようなとりとめなさも、不思議な調和を感じさせるヤンソンスの巧みな棒さばきが光ります。

そんなこんなの前半に、感動炸裂の後半。

ホールは異様なまでの熱気を伴った歓声に包まれました。
鳴りやまぬ拍手に応えて、ヤンソンスは楽員の去ったホールに一人、出てきてくれました。
少し猫背になって、マリスもちょっと歳をとったな、と思ったりもしました。
真上から手を振ったら、こちらを見てくれましたよ

その鑑賞の興奮をそのままに、アフターコンサートになだれ込み、終電を逃す、はしゃぎぶりのさまよえるクラヲタ人なのでした

Muza2
乾杯の儀。
今回は、「アバド愛の会」と「クラヲタ会」が合流して、わたしには、とっても嬉しいシテュエーションと相成りました。
しかし、皆さんよく飲む。
飲みにきたのか、コンセルトヘボウしにきたのか、さっぱりわかりません(笑)
 しっかし、今宵のマーラーの素晴らしさが、このような気持ちの高まりになっていたのは間違いありません。

月曜の今日も、彼らは東京で同じ曲を演奏しているはず。
多くの皆さんが、ヤンソンスの終楽章に焦点を定めた名演と、なによりもマーラーの愛に感動していらっることでしょう

Muza3

酔ってさまよう。シネチッタの美しい様子。

いま私は、NHKで放送された、このコンビの同じ演目の映像を観ております。
同じメンバーが弾いてます。ヤンソンスの指揮ぶりも同じ。
やはり、本拠地の響きと楽員の演奏の精度はこちらの方が素晴らしい。
しかし、昨日のミューザも、それにも負けない博愛の神が舞い降りたような終楽章だった。

そして、思いおこすのは今年、神奈川フィルで聴いた、金聖響のマーラーの3番。
青春譜のようなどこまでも純真なマーラーだった。
ヤンソンス&RCOは、ヨーロッパの大人のマーラー。
聖響&神奈フィルは、横浜の生み出した若い真っ直ぐなマーラー。
ヴァイオリンの音色は、実は、コンセルトヘボウのコンマスより、石田コンマスの方が息が詰まるような繊細さで、上をいっている。

2番も3番も、今年、こんな素晴らしい演奏を聴いてしまっていいのだろうか。

マーラーの3番の記事を自己リンクしておきます。

「アバド&ウィーンフィルの音盤」
「ハイティンク&シカゴの音盤」
「ハイティンク&コンセルトヘボウの音盤」
「金聖響&神奈川フィルのコンサート」


Lazona1

今回はネタが豊富なので、隣接するラゾーナの画像も追加しちゃいます。

Lazona2

きれいでしょ。

アンドレア・シェニエに、マーラーの「復活」に3番。

いずれの充実ぶりに、ちょっと腑抜け状態です。

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コメント

お疲れ様でした。
そして改めて誕生日おめでとうございました。ホンと、素晴しい演奏でしたね。クライマックスのフィナーレの感動からすれば、第1楽章のへたりは、お説のとおり、愛嬌です。今回の3番、1月の10番、去年の8番と、ミューザはマーラー・ホールになってきたという感じがしました。ホールには演奏の魂の記憶が宿るといいます。静かで、響きすぎないのに十分鳴る、このホールを某ホールより気に入っているマリスが入魂の演奏ができたのは、当然なのかもしれません。
今度は、バイエルン放送交響楽団でブルックナーを聴きたいです。

投稿: IANIS | 2010年11月22日 (月) 23時46分

今回もお疲れ様でした&ありがとうございました♪ワタシもとても素晴らしい演奏に立ち会えて幸せでした。
あら?席がワタシの前方だったんですね。ワタシはそこから数列後方だったので。なるほどそこだと、袖から演奏もよおく見えたわけですね。。。。あれやっぱ下着ですかね(^^;。
ヤンソンスの最後の舞台挨拶、ワタシもヤンソンスと目が合った♪と思ったのですが。。。あれはyokochan様と合ってたのですね(^^)。

>IANIS様
横レス失礼いたします。昨夜はありがとうございました。ミューザでヤンソンス+バイエルン放送響でブルックナー!是非聴きたいものです。

投稿: 左党 | 2010年11月23日 (火) 00時24分

IANISさん、どうも昨夜はお世話になりまして、かつ飲み過ぎお疲れさまでした。
先輩を前になんですが、もうこの歳になると、なんともどうでもいいや、という感じなのですが、最上のマーラーと皆さまとの乾杯が最高の祝福でした。

いやぁ、たしかに、ミューザはマーラー・ホールと化してますねぇ。
NHKの映像も今ほどまで観てましたが、あちらのホールはまた格別で、オケと完璧な一体化でした。
これからも、ミューザではマーラー神が宿ることを期待します。

そして、マリス&バイエルンorコンセルトヘボウのミューザ・ブルックナー、私も大賛成です。
3番か、6番あたりを是非にも。

投稿: yokochan | 2010年11月23日 (火) 00時39分

左党さん、こんばんは。
どうも昨日はお世話になりました。
そしてお疲れさまでした。

あんなすごい演奏を聴いてしまうと、クラヲタ冥利に尽きますね。
あら、そしてお近くだったのですね。
わたしは、諸々、取材をしてギリギリのホール入りでしたので、皆さんにお会いできず、気が付きませんでした。
ヤンソンスのあの微笑みは、L席すべてですよ!
サービス精神満点のマリスですから!

次回、飲み会を楽しみにしております。
そして、来年のバイエルンとのブルックナーに期待です。

投稿: yokochan | 2010年11月23日 (火) 01時07分

先日はありがとうございました!そして、たんじょうび、おめでとうございます!
素晴らしい誕生日になりましたですね!
私も今年は家族に祝ってもらえないものだから、コヴェントガーデンの「マノン」を誕生日に入れたものです。
それにしても素晴らしい演奏会でございました。
この曲、生で結構聴いておりまして、最高峰はアバド&BPOであったのですが、ヤンソンスはこれに匹敵する感動でありました。
yokochanさんの席、ちょうど私の対面ぐらいでしたでしょうか。私はティンパニが1基しか見えず、
「最後の連打、大丈夫だよなぁ?」なんて思いましたが、がっつり鳴っており、安心いたしました?!
演奏会後の酒宴も盛り上がりましたねぇ。またぜひやりましょう!出来ればアバドの演奏会の後がいいんですがねぇ~!
あ、なんか、来年はバイエルンの来日がないとかなんとか。1年空いてしまうなんて情報がありましたが、どうなんでしょう?

>IANISさま
私も横レス失礼いたします。大変楽しい時間、ありがとうございました!
いろいろなお話が出来まして、光栄でございます。今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: minamina | 2010年11月23日 (火) 19時18分

yokochanさん(←やっぱ慣れない^^;)、皆様、日曜日はアフターコンサートのオフ会に参加させていただきありがとうございました。

IANISさんのコメント、泣けました。私のブログに書いて欲しかったよーぅ(笑)。

このミューザでのマラ3を思い出すたびに、きっと楽しかった飲み会がセットとなって蘇ってくることでしょう。素晴らしい演奏の後のお酒はやめられませんよね。お互い飲み過ぎに注意しつつ、またの機会で大いに盛り上がりましょうね

投稿: ゆうこ | 2010年11月23日 (火) 20時03分

minaminaさん、こんばんは。
先日はどうもお世話になりました。
この歳になると、誕生日もクソもないもんですから、何をしようともお構いなしなのですよ(笑)

アバドのベルリンとの来演は、わたくしは、新婚だったり、子供ができたり、転勤あったりで、まったく聴けない時期なんでした・・・。
でも、今回のヤンソンスは、それこそ一生ものの思い出かもです。
あれを連ちゃんしてしまうとは、またまたスゴイこってす。
おまけにラッキーもあったご様子で!

そりゃそうと、来年のヤンソンス祭りはないのですか?
ゆゆしきことです。
まさか、中国にだけこっそり行っちゃう寸法だったりして・・・・。

そしてまたもや飲み過ぎでしまいました。
そして、ほんと楽しかったですね。
また次回!

投稿: yokochan | 2010年11月23日 (火) 22時20分

ゆうこさん、こんばんは。
慣れないyokochanの世界へ、ようこそ(笑)

ほんと、素晴らしいコンサートでしたね。
マーラー3番が、ますます好きになってしまう名演奏。
そして、ミューザも見直しましたよ!
見事な音響に加え、観客と奏者の一体感が身近に味わえるホールですね。
IANISさんの、ゆうこさんの心をくすぐるような名コメントの通りに存じますよ!

それにしても楽しい飲み会でしたね。
赤・白両方飲んじゃったんですね。
デジカメ写真のみが、記憶を唯一とどめるものです。
みんな忘れてしまうワタクシですが、ともかく楽しかったです。
またの機会を楽しみにしております。

投稿: yokochan | 2010年11月23日 (火) 22時30分

ヤンスンスは病気で長期(3ヶ月?)に休んでいて、最近復活したばかりです。復帰1回目は、聴衆が大変暖かい拍手で迎えていました。少しやせたような気がしますが、すばらしい演奏でした。コンセルトヘボー+ヤンソンスは本当に素晴らしいと思いますし、ヤンソンスが元気になって良かったと思います。

投稿: オランダの日本人 | 2010年11月24日 (水) 05時06分

オランダの日本人さま、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。
インフルエンザのお話は聴いていたのですが、そんな最近だったのですか。
ウィーンでのカルメンも残念でしたし、働き過ぎかもしれませんね。

確かに、少し痩せたように見受けられましたが、指揮をし始めると、その没頭ぶりとオケの夢中さに感動してしまいました。
現地でお聴きになると、さらに素晴らしいのでしょうね!
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2010年11月24日 (水) 18時06分

yokochanさん,遅ればせながらお誕生日おめでとうございました。

21日の演奏会は,ミューザが自宅から徒歩数分ということもあり私も参加しておりました(もちろんヤンソンスもヘボウも大好きというのもあります)。
あのホールのどこかにyokochanさんもいらしたんですね!!

演奏の方は,長旅の疲れがあったのかオケにミスは散見されましたが,ヤンソンスらしいマラ3が聴けて非常に満足いたしました。

どうやら次年度以降のヤンソンスの来日は未定のようですが,また日本で素晴らしい演奏を,できればミューザで奏でてもらいたいと個人的に思っております。

投稿: ナインチェ | 2010年11月25日 (木) 10時35分

ナインヂェさん、こんばんは。
誕生祝い、どうもです!
誕生日にヤンソンス&コンセルトヘボウのマーラーだなんて、なんて至福の時だったでしょうか。

お近くのナインヂェさんもいらっしゃったのですね。
今回、つくづくとミューザというホールのよさを実感できましたのも、このコンビの名演のゆえです。
ほんと、素晴らしい演奏でした。

おっしゃるとおり、来年のバイエルンの番の来日は未確定ですが、ミューザでのコンサートは、必ずまたやって欲しいと願っております。

投稿: yokochan | 2010年11月26日 (金) 00時23分

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