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2010年11月28日 (日)

アルファーノ 「シラノ・ド・ベルジュラック」 アラーニャ

Cyrano

アルファーノ「シラノ・ド・ベルジュラック」を視聴。

アルファーノ(1875~1954)は、ご存じの方は知っている、未完に終わったプッチーニの「トゥーランドット」を補筆完成させた、イタリアのオペラ作曲家であります。

弊ブログでは、トルストイの小説をオペラ化した「復活」をすでに取り上げております。
10作以上ものオペラや、広範なジャンルに曲を残した人ながら、これまで全然かえりみられることのない作曲家。

脱トゥーランドット・イメージを持たなくちゃいけない。
ということで、「復活」とともに音源のある「シラノ・ド・ベルジュラック」のCDは、かねてより聴いていたけれど、残念ながら歌詞も附属しておらず、大筋しかわからないオペラのひとつだった。
それが、なんと、あの秘曲に熱い東京オペラプロデュースが、12月に上演してくれるというじゃありませぬか。
それは当然に観劇するとして、このオペラをちゃんとモノにしなくちゃならない。
どげんかせんといかん、と思っていた矢先の今年半ば、某Y楽器のショップの閉店セールにて、大幅値引きで、DVDを入手。
いやはや、この実は千葉にありながらマニアックな店では、何度もこうした音源や映像を入手してきた。
こたびも、いくつか泣いて喜ぶようなものを確保してありまして、徐々に繰り出す予定につき、どうぞお楽しみに存じあげます。

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  アルファーノ  「シラノ・ド・ベルジュラック」
 
  シラノ・ド・ベルジュラック:ロベルト・アラーニャ
 ロクサーヌ:ナタリー・マンフリーノ   クリスティアン:リチャード・トロクセル
 デ・ギーシェ:ニコラス・リヴァン     ラグノー :マルク・バラール
 大尉カルヴォン、ド・ヴァルヴェール:フランク・フェラーリ
 ル・ブレー:リヒャルト・リッテルマン  

   マルコ・グイダリーニ指揮 モンペリエ国立管弦楽団
                    モンペリエ劇場合唱団

     演出・装置:デイヴィット&フレデリコ・アラーニャ
                           (2003.7 @モンペリエ劇場)

主人公のシラノは、17世紀フランス、実在の人物で、剣豪・文学者・詩人・理学者・哲学者という多彩な顔も持つ才人だったらしい。
19世紀の終わりごろ、ロスタンという人が、このシラノを題材とする戯曲を書き、舞台で上演すると大あたり。
舞台も映画もミュージカルも、人気を呼んで、日本でも盛んに上演されている。

簡単なあらすじを。
歌詞は、フランス語で書かれてます。

第1幕
 街で士官候補生のクリスティアンとロクサーヌ嬢が出会い、言葉を交わすことなくも、お互い魅かれあう。
やがて、屋外で芝居が始まり、ロクサーヌは家政婦さんとともに観劇。
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貴族が瀟洒に演じ始めるが、そこに乱入してきたのはシラノ。
人の何倍もある大きな鼻がいかつい風貌だ。
彼は、その役者をからかい、やがて決闘となるがその実力はシラノの比ではない。
適当にもてあそぶシラノ。ここでは、たくみな詩に託したアリアを歌いながら剣に従じるアラーニャの若々しさに舌を巻くこととなる。
 その騒ぎのあと、家政婦がシラノのもとに、やってきて、ロクサーヌが会ってお話がしたいと。かねてより恋こがれていたロクサーヌからとあって、すっかり舞い上がるシラノ。

第2幕
 ご馳走を囲んで大騒ぎ。そこへロクサーヌがひと目を偲んでやってくるので、シラノは皆をしっしっと締めだす。
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ロクサーヌと二人きり。「兄のように慕ってまいりました」の言葉で、うれしくなるシラノ。
手のすり傷を包帯してくれて手を握り合い舞い上がるが、話すうちに、彼女は、彼の隊(カスコン青年隊)にいる若い士官候補生を愛していると告白する。
茫然としつつ平静を取り繕うシラノに、彼女は愛する彼を前線に行かさないでと頼み、気のいいシラノは約束する。
 彼女が去ったあと、傷心のシラノのもとに、連帯仲間がなだれ込んできて、シラノの男爵昇進を告げ担ぎあげる。
そこへ、デ・ギーシェ伯爵が偉そうにやってきて、彼をこれまた偉そうに讃える。
 皆の要望に応じ、武勇伝を語りだすシラノ。それを「鼻」、「鼻」と揶揄する美男のクリスティアン。名を名乗り、シラノはこいつがそうか、とピンとくるが自制し、怒ったふりをして皆を外に出し、二人きりにしろと叫ぶ。(みなは、眠れる獅子を起こしてしまった・・・とクリスティアンに十字を切る)
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勝負を覚悟してたクリスティアンに、シラノは、「俺は彼女の兄、少なくとも兄のような従兄だ」、と語ると、一転豹変する。
彼女を愛しているが自分はおバカで、愛を語れないし文才もないと。
シラノは、では自分がなり替わって手紙を書いたからと渡し、不思議な二人三脚の誕生に二人は意気投合して出て行く。
自分にないイケメン要素、自分にない文才。お互いは補完しあうということで。

第3幕
 ロクサーヌの邸宅。夜。
クリスティンが忍んできて隠れている。そこへロクサーヌが帰ってくるが、そこにあらわれたのは、かれまたかねてより横恋慕している伯爵デ・ギーシュ。
戦地に行くこと告げにくるが、ロクサーヌは辟易としていて適当にあしらい、伯爵はそうは思わず、籠に乗り帰ってゆく。
 今度はシラノが登場。クリスティアンが来ることも告げ、入れ替わりにそのクリスティアンが出てきて、ロクサーヌといい雰囲気になるが、「愛してます」しか言えない。
「どんな愛なのか語って?」というロクサーヌに答えられず、彼女は幻滅して部屋に上がってしまう。
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困ったクリスティアンに、シラノは、任せなさいと言わんばかりに、バルコニーの下からロクサーヌに向かって延々と甘い歌でもって語りかけ、ロクサーヌも徐々に心をほどき、歌も情熱的になると、彼女も陶酔したようになってゆく。
彼女が酔っているのが、自分でなくシラノの歌なのでクリスティンも横にいて穏やかではない。しかし、とうとうバルコニーをよじ登って彼女を抱きしめ接吻にいたるのであった。
その下で悲しい心境のシラノは、複雑な思いを口にする。

第4幕
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 悔し紛れにデ・ギーシュに戦場に送り込まれたシラノとクリスティアン。
前線で大活躍のシラノは、友人ル・ブレーが忠告するのにかかわらず、危険を顧みずクリスティアンの名でロクサーヌに恋文を送り続けていたのだが、当のクリスティアンはそのことを知らない。
みな寒さと空腹に耐えかねているが、シラノは祖国を熱く歌い慰める。
そこへ恋文にほだされて、戦場にまでロクサーヌはやってきてしまう。
クリスティアンに向かって、その恋文のこと、そしてあのバルコニーでの歌の素晴らしさなどを熱く歌う彼女に、クリスティアンは自分でなくシラノが描き出した人物が愛されていることを感じる。
彼女のいない隙に、シラノを呼び、「彼女はあなたを愛している、そしてあなたも彼女を愛しているのだから今こそ真実を言うように」と勧め、ロクサーヌを呼び、シラノが大事な話があると言い、自分は最前線に飛び出してゆく。
ロクサーヌに向かって、「いや、何もないよ、たいしたことないんだ」と語るシラノ。
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 その時、銃声がして、クリスティアンが銃弾を受け運び込まれてきて、ロクサーヌにシラノの書いた辞世の手紙を渡す。
敵兵も進んできて、ロクサーヌはクリスティンの死を悲しむ間もなく立ち去り、残ったシラノをはじめとする戦士たちは、戦いに備える。

第5幕
 修道院。15年の月日が立ち、ロクサーヌは修道院に暮らし、デ・ギーシュがなにかと援助をしている。
シラノは彼女の慰めにと、毎週土曜日に訪問し、その週の出来事をあれこれ話にくることが習慣となっていた。
シラノの友人デ・ブレーが先に来ていて、今日も来ますよなんて挨拶していたところに、これも友人のラグノーがただならぬ様子でやってきて、二人は飛んでゆく・・・。
 そこへ、シラノが疲れ切った様子でようやくやってくる。
シラノの敵対者グループが、彼に向って材木を落とし頭に重傷を負っていたのであった。
編み物をするロクサーヌの後ろ側、いつもの椅子に腰掛けると、「15年で初めて遅れてきたわね」と何も知らないロクサーヌにからかわれる。
いつものように、土曜から一日ごとの話を始めるシラノ。でも様子がおかしくなり、杖も落としてしまい、ロクサーヌが駆け寄るが、帽子を目深にかぶり、大丈夫大丈夫と。
ロクサーヌは、いまでもクリスティンのあの時の色あせた手紙を読んでいて、決して忘れることができない・・・と悲しく歌う。
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その手紙を読ませて欲しいとのシラノに応じて、彼に渡し、シラノは手紙を声をあげて読み出す。それに聞き入るロクサーヌ。情感をこめて読むシラノ。
そして、もうあたりは暗いのに読めるはずはない、それにその声は、あのバルコニーの・・・・、ことに気がついたロクサーヌ。
 「あなただったの・・・高貴な沈黙・・」と万感の思いに涙にくれるロクサーヌ。
友人ふたりが駆け付け、シラノが瀕死の状態にあることを告げるが、シラノはもう意識が遠くなりつつあって、「そう、決して愛してなんかない・・・、そう土曜日は・・・、これでもういい。。。」と倒れ、友とロクサーヌに看取られながら息をひきとる。
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また長くなってしまいましたが、この劇の筋が面白いし、センチメンタルな悲しみと男粋の悲しさにも満ちているものだから、ついつい映像を想い起こしつつ書いてしまいました。

このオペラ、アルファーノの見事な筆致が光っていて、プッチーニでもなく、ジョルダーノやマスカーニ、レオンカヴァッロでもない。
親しみやすいメロディが多く、それらは抒情と甘味さが勝っていて、劇的な激しい要素はあるにはあるが控えめ。
以前の復活の記事では、プッチーニとジョルダーノの中間くらいと書いたけれど、今回は、どちらかというと抒情派のチレーアに近いと思った。
第3幕のバルコニーの場のシラノの愛を語る歌とその後の二重唱などは、もう美しすぎて甘味すぎて、ホントたまらない。トリスタンの長大な二重唱さえも思いおこすことができる。
 1幕のシラノの登場の場、2幕のロクサーヌの告白の場、3幕のバルコニー・シーン、4幕でのシラノの羊飼いの歌、ロクサーヌの歌、5幕の枯れ葉舞うシラノの終焉。
こんなところが聴きどころ。

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そしてこのオペラはなんといっても、主役テノールのもの。
アラーニャあっての舞台であり、映像。
若々しく、機敏。情熱と知性を兼ね備えた歌と演技にずっと釘付けになり、いつしかシラノの心情を思いはかって見てしまうようになる。
最後の死の場面には、思わずホロリとされてしまうことうけあい。

アラーニャ以外は、トロクセル以外あまり知らない歌手たちだが、いずれも雰囲気抜群で、日本初演を前になんですが、17世紀頃の人物たちの雰囲気はやはり欧州の方々には適わないかも。
ロクサーヌの可愛いマンフリーノに、ぼんぼんのようなトロクセルのクリスティアン。
すべてを知り、いつもシラノのそばにいる友人たちも素敵な連中だった。
 モンペリエの劇場は、こうしたヴェリスモ系のオペラ上演に強いようで、音源もいくつもある。南フランスのこの地は、アルルの女や、このシラノの戦闘の地に近いし。

デイヴィットとフレデリコのアラーニャ一族の演出は極めて具象的で、こうした作品の場合とても相応しく、舞台の豪華さも見ごたえありです。

最近、ドミンゴも映像を出したが、そちらも是非観てみたいけれど、シラノのイメージは、アラーニャが相応しく感じるからどうかな? 最後の場面はいまのドミンゴ向きだけど。

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 あとひとつ音源はこちら。
トリノで上演されたもののライブで、75年にかかわらず、非正規ゆえに音はモノラルでやや貧弱。
でも、こちらも歌手にオケが熱いです。
シラノは、ウィリアム・ジョーンズで、この人はワーグナーやヴェルディのヒロイックな歌を得意としたテノール。ハンブルクオペラが来たときに、私はローエングリンを観劇したが、その時のジョーンズは、ドラマテックというよりはリリカルでとてもよかった。
アラーニャにも負けない、ここでは素晴らしい歌唱です。
曲を知るには、充分の出来栄えの演奏。

そして、12月11日と12日は、日本初演が予定されている。
ダブルキャストで、私は大隅さんのファンなもので、そちらに参ります。
楽しみです。

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コメント

お〇〇です。アルファーノ、興味は大いにあったのですが、手が回りません。またまたyokochanさんに一歩先をいかれました。でも、ピアノ作品と一緒で、発掘次第ではお宝ザクザクがオペラの世界。奥が深くて恐ろしいです。

投稿: IANIS | 2010年11月29日 (月) 01時42分

IANISさん、おはようございます。
さすがに、この手になりますとアクセス急降下します(笑)
しかし、未体験オペラの発掘は時間はかかりますがやめられません。
自分の嗜好から、どうしてもヴェルディ以降となってしまいますが、とりわけプッチーニ世代はたまらなく魅力です。
自分のあとの人生、おそらくピアノや室内楽には手がまわりません(笑)
ともかく未体験ゾーン、恐ろしいですな。

投稿: yokochan | 2010年11月30日 (火) 09時16分

このオペラ、実はよく知らなかったんですけど。
素晴らしい紹介を読んで行きたくなりました。
なんとか二日目に行きたいと思います。

投稿: コバブー | 2010年12月11日 (土) 09時19分

 お早うございます。フランス・デッカの世界のオペラ100に入っているんですよね。このオペラ。あの全集、リリングのバッハ大全集ともども欲しいのですが、家人に「またしょうもないものを買って!」と言われるのが怖くて未だに購入しておりません(笑)。置き場所を確保するのも大変になってきましたし。室内楽もオペラも、そして交響曲も本当に未体験のお宝ザクザクの世界ですよね。

投稿: 越後のオックス | 2010年12月11日 (土) 10時37分

コバブーさん、こんにちは。
お読みいただきありがとうございました。

トゥーランドット補完者ということで、ずっと気になる存在のアルファーノでしたが、「復活」と「シラノ」の音源をずっと聴いてきて耳になじませ、映像でそのイメージが完成された感があります。

日曜の公演が楽しみですね。

投稿: yokochan | 2010年12月11日 (土) 13時41分

越後のオックスさん、こんにちは。
仏デッカのオペラ100なんてあるんですね。
そちらに入ってるとすれば、シラノはなかなかのものです。
正規の音源・映像では、cpo、ドミンゴ、アラーニャの3つだけだと思います。
CD置き場は、ほんと、困りものですね。
我が家は、溢れかえるCDに呆れられ、自分の居場所を急速に失いつつあります。
お宝を目の前にして手も足もでない状況ですよ(笑)
越後のオックスさんは、お若いのですから、お宝採集まだまだこれから。頑張ってください。

投稿: yokochan | 2010年12月11日 (土) 13時52分

 今晩は。訂正し、お詫びしたいことがあります。仏デッカの世界のオペラ100と書いてしまいましたが、正しくは仏ユニバーサルの世界のオペラ50曲でした。100枚のCDにモンテヴェルディからアルファーノまでの古今のオペラ50作が収録されています。シラノはグイダリーニ指揮の音源が投入されています。独逸・墺太利の作品が比較的少なく、フランスやイタリアの作品が質・量ともに充実しているのがいかにもフランスの会社の商品らしいです。でもワーグナーがドラティのオランダ人とラインスドルフのワルキューレのみ、R・シュトラウスはベームのサロメのみというのは少し寂しいです。
 余談ですが、マーラーの10番の5楽章版のバルシャイ編曲版を昨日初めて聴いたのですが、すっかり気に入ってしまいました。打楽器が6番や7番なみに多く、ギターまでオケに入っていますが、比較的淡白なクック版には無い豪壮・華麗な響きにすっかり魅せられてしまいました。特に打楽器部隊が縦横無尽の活躍をする第2楽章が聴きものです。
 追伸:シラノの日本初演の記事、今から楽しみにしています。

投稿: 越後のオックス | 2010年12月11日 (土) 22時08分

越後のオックスさん、こんにちは。
訂正ありがとうございました。
そうですか、50となるとドイツ物は少なめに、変わりにアルファーノとは珍しいです。

バルシャイ版は、そんな風になってるんですか!
打楽器にギター、興味がわきますね。
情報ありがとうございます。

投稿: yokochan | 2010年12月12日 (日) 12時43分

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