R・シュトラウス 「ばらの騎士」組曲 ヤンソンス指揮
いまだ冷めやらない日曜に聴いたヤンソンス&コンセルトヘボウの絶品マーラー。
何度も何度も、あの3番のいろんなフレーズが頭の中でなっております。
コンセルトヘボウのサイトに、日本やお隣、韓国での様子が動画で紹介されてますよ。
http://cultuurgids.avro.nl/front/indexklassiek.html
開演前に見たラゾーナ川崎の写真もたくさんありますもので、本日も、ヤンソンスを聴きながらここにアップさせていただきたく。
今年、ヤンソンスは、体調がすぐれず、春はウィーンのカルメンもキャンセル、来日前もインフルエンザにかかってしまいいくつかキャンセル。
でも、相変わらず元気な姿をわたしたちの前に見せてくれました。
ちょっと痩せたかな、歳とったかな、とも思いましたが、仕事の鬼のようなヤンソンスだから、これからますます復調して凄演を各地で聴かせてくれることでしょう。
ふたつの名門をかけ持ち、合間にベルリンやウィーンでも指揮をすることは大変なこと。
少しばかり仕事量を減らして、さらに大変かもしれないけれど、オケピットでの仕事を増やして欲しいものであります。
そう痛感するのは、今日の1枚を聴いてなおのこと。
もう一方の手兵、バイエルン放送交響楽団を指揮したR・シュトラウス。
今年2月から聴きだした、バイエルン放送響60周年のボックスの最後の1枚なのです。
歴代の指揮者の代表的なライブを1枚1枚丁寧におさめたボックスは、ほんとうに聴きでがあった。
R・シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」組曲
交響詩「ティルオイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」
最後の4つの歌
S:アニヤ・ハルテロス
マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団
(2006.10、2009.5@ヘルクレスザール&ガスタイク)
録音が新しく、放送局のぴっかぴかの音源だけに、音質はやたらと良く、へたなスタジオ録音より、ずっと音楽的で雰囲気も豊か。拍手も入ってます。
冒頭のブリリアントで目覚ましい響きのホルンによる開始から、これはもう、劇場にいて幕がサッと上がって、マルシャリンとオクタヴィアンがいちゃついているのが見えちゃうくらいに生き生きとした「ばらの騎士」の開始。
冒頭→銀のばらの献呈→オックスの怪我→マリアンネとのからみ
→オックス男爵のワルツ→終幕の3重唱→オックス男爵の陽気な退場
こんな配列で休みなく演奏されるが、コンサートピースではありながら、そこはシュトラウスだし、本編オペラをこよなく愛するものとしては、その場面を思い浮かべながら視覚を補いながら聴く25分間は、最高の楽しみなのであります。
バイエルンのホルンと金管の素晴らしさと、柔らかな木管、暖かな弦、それらがマイルドに溶け合い、けだるいまでに私の耳をくすぐる。
そして、精妙極まりない、ばら贈呈や3重唱での透明感。
弾みまくり、いやでも乗せらてしまう、オックスがらみの場面。
来日公演でも、ふたつのオケで、アンコールで何度も取り上げてくれた。
ヤンソンス&バイエルンで、「ばらの騎士」を全曲やってくれないものだろうか。
同時に、コンセルトヘボウでもそれを望みたい。
「ティル」も生きがよく、その精度の高さは抜群で、ピアニシモからフォルティッシモまでの段階のレベルがいくつもあるように感じる鮮やかさ。
聴いていて面白いと同時に、音楽的な演奏。
こちらは、コンセルトヘボウとも日本で演奏してくれましたな。
「4つの最後の歌」は、この曲だけ、ガスタイク・ホールになっている。こちらのホールの方が音が近くリアル感が強いが、雰囲気では昔からのヘラクレスザールの方が良いかな・・・。
しかし、ここでも絶妙で、刻々と変化するシュトラウスならでは音の色合いの妙を堪能できる。秋や、夕空にうつろいゆく想い、そして死を前にした諦念の美しさ・・・、こんなシュトラウスのこの音楽に必須の要素が心をこめて表出されている。
ヤンソンスは、こうしてだんだんと、しみじみした音楽を深いところで表現できるようになってきているのだろう。
先日のマーラーの後半部分などもそう。
音楽を生き生きと、あるがままに聴かせるところから、さらに一歩踏み込んで人の心に触れる何かを掴み取ろうとしているように感じる。音楽に真摯に、深く接することをますます極めているヤンソンス。
ただ美しいだけではない音楽が、自ら語っているようだ。
この曲は、何度も書くけど、シュナイト&神奈川フィルの神がかり的な演奏を聴いてしまって、独唱の松田さんが泣きだしてしまうという途方もない名演で、あれがまだ耳にある。
あれは別格として、このヤンソンス盤はオーケストラの素晴らしさでは相当なものに思う。
ハルテロスは、だいぶ前に新国の「マイスタージンガー」で、エヴァを歌うのを観劇したが、やたらと背が高かったのが印象的で、その時のやや可も不可もない歌唱からすると、歌いまわしが実に自然で、少し強めの声質をコントロールしながら、ニュートラルな表現につとめている。
ヤンソンスの描きだす、絶美のオーケストラを背景に美しく歌いあげているのがよく、若く鮮度高い声を聴く喜びもある。
あと何年かしたら、もう一度歌ってもらいたいようなハルテロスの歌でした。
手元には、この録音の3年前、2006年4月のルツェルン・ライブ音源もあり、聴き比べてみた。
歌手はリューバ・オルゴナソーヴァで、彼女の歌がハルテロスに比べると、隈取りが濃く、濃厚に感じる。無垢なハルテロスの方がいいかも。
そして、ヤンソンスはここでも確かに精緻で、やたらと上手い。
しかし、後半の2曲では、テンポがそれぞれ30秒ずつ短く、2009年盤の方がよりじっくりと音楽に向き合った感がある。
3年の隔たり、このコンビの親密度とヤンソンスの円熟ぶりを物語っているのだろうか。
バイエルンもコンセルトヘボウも、日本で人気オケになりました。
本日より、クリスマス1ヶ月前、クリスマスバージョンに切り替えます。
バイエルン放送響ボックス過去記事一覧
「ヨッフム〜フルトヴェングラー交響曲第2番」
「クーベリック〜ブルックナー 交響曲第8番」
「コンドラシン〜フランク 交響曲」
「デイヴィス〜エルガー エニグマ変奏曲」
「マゼール~春の祭典・火の鳥」
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コメント
こんばんは。マリスが体調不良?残念ですね。
在来のロシア物からマーラーと後期ロマンへと幅が広がってオペラなんかも楽しみにしているところです。
ベーム、カラヤン、プレヴィンといった3本柱に続いてR.シュトラウス作品まで伸び、父親に届く指揮者であるのが証明されてます。
一刻でも回復し、日本人ファンを安心させて欲しいですね。
投稿: eyes_1975 | 2010年11月24日 (水) 23時52分
eyes_1975さん、こんばんは。
今年はヤンソンス、体調面でご難続きでしたが、もう大丈夫です!
ほんとに元気に指揮してくれました。
シュトラウスに強いふたつのオーケストラを得て、今後ますます期待ですね。
投稿: yokochan | 2010年11月25日 (木) 00時05分