ワーグナー オペラ管弦楽曲集 カンテッリ指揮
横浜ベイクォオーターのツリー。
こちらは、東口にある商業施設で、もとは倉庫だった場所。
昔は、西口しかなかった横浜の商業エリア。
わたしが大学生の時に、東口に地下街ができて、そごうやルミネもできた。
西に比べると、人の数は少ないし、ベイエリア方面にもたくさん流れてるから、こちらも特徴付けが大変かも。
大企業の本社ビルや、大型店舗のあるエリアとも通じていて、歩いたら、みなとみらいまでそんなに遠くない。
遠からず、そちらと一体化して、大ベイアリアとなるんでしょうな。
今日のワーグナーは、グィド・カンテッリの指揮。
伝説と化した感のあるカンテッリは、イタリアの指揮者。
年代的には、ジュリーニの後の世代で、もし、もう少し存命だったらならば、ジュリーニ、カンテッリ、アバド、ムーティ、シャイー、ガッティ、ルイージと、おおどころで並ぶイタリア指揮者たちの一角としてとらえられる大物指揮者だった。
その系譜の直前に位置するトスカニーニから可愛がられ、自身のNBC響を託され、スカラ座をも手中にしたカンテッリ。
1920年、ミラノ近郊に生まれ、若い時より楽才を発揮。
しかし、時が時、早くして召集され戦地に駆り出され、ファシスト・反ファシストのややこしい局面に巻き込まれ常に敗走・脱走、そして敗戦後にようやく指揮者として本来の活動に復帰をみた、極めてドラマテックな人生を歩んだ指揮者。
生死の局面を垣間見たカンテッリは、アメリカでトスカニーニに目をつけられたことから、欧米の超一流楽団を指揮するようになり、世界を股にかけた売れっ子指揮者となった。
今でこそ、ヨーロッパ・アメリカ・アジアと、飛行機で安全性も約束されたなかで自在に飛びまわることが音楽家にとって必須のこととなった。
しかし、カンテッリの不運は、楽旅に向けて飛びったった飛行機が、離陸に失敗してしまい墜落事故。
そこに乗って、居合わせたことで、戦争からは生き延びたのに、飛行機事故からは生きのびることができない運命にあったことだ。
もし・・・、の、たらればですが、カンテッリがあんな事故に遭わなければ、カラヤンやバースタインと並ぶ大スター指揮者が、もうひとり存在していたかもしれない。
ワーグナー 「リエンチ」序曲
「神々の黄昏」~「ジークフリートのラインの旅」
「パルシファル」~「聖金曜日の音楽」
「ファウスト」序曲
「リエンツィ」リハーサル風景
グィド・カンテッリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
NBC交響楽団(リエンツィ)
(1953、56、49~リハーサル @ニューヨーク)
これらは、黄昏とファウストだけが同じ日のコンサートで、ほかはみな異なる演奏機会のライブ録音である。
まず、驚きは演奏の鮮度の高さ。
わたしにとって、もう、それこそ耳タコ状態のこれらの音楽。
イキが良くって弾んでる。
そして音楽の隅々に、演奏者と指揮者が音楽してる喜びに満ちあふれて、幸福そうにしてるのがよくわかる。
リエンツィなんて、浮かれた音楽に演奏してしまうむきもあるが、カンテッリはしっかりした歩調でじっくり歩みながらも、リズム感が抜群なので知らず知らずに乗せられてしまう。
テンポをいじるわけでもないのに、最後のクライマックスには興奮させられてしまい、おやおや、聴衆も曲が終わらないのに拍手しまくりだ。
わかるよ、その気持ち。
「たそがれ」における解放感とスケールの大きさ。
ドイツの演奏とは明らかに異なる明るさではあるが、トスカニーニとはまた違った音の明晰さと透明感があるように感じる。
「パルシファル」の清らかさは、歌優先。
それが極めて自然で作為が一切ない。
こんな「パルシファル」を、きっとヴィーラント・ワーグナーは気に入って、絶対バイロイトに招致していたことでありましょう。
これもまた残念なこと。
暗くて陰湿な「ファウスト」が、こんな立派な曲に響くのは初めて。
アバド(非正規)やブーレーズと並ぶ、曇りひとつない名演と思う。
最後に収録のリハーサルでは、甲高いテノール声の興奮したカンテッリの声が聴かれます。エモーショナルです。
録音状態は、かなりいいです。
全然普通に聴けます。
全体に、もう少し音を磨きあげることにおいて、いま一歩厳しさが必要かなとも思うけれど、カルロス・クライバーを思わせるような情動の豊かさは、意識しないで育まれた天性のものに感じ、若くしてこんな感じだったのだから、さぞかし。。。と思うわけなのです。
カンテッリの音源を少し漁ってみようと思っている、さまよえるクラヲタ人なのでありました。
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コメント
カンテッリ!
私としては、夭折が最も惜しまれる指揮者です。
若々しくも完成度高く、素晴らしい演奏で、もし長生きしていたら20世紀の指揮界は随分変わっていただろうと思います。
メンデルスゾーンの「イタリア」やベートーヴェンの7番など凄い名演だと思っております。
ワーグナーは未聴ですが、これも素晴らしそうですね。聴いてみたくなりました。
投稿: golf130 | 2010年12月18日 (土) 21時10分
ありゃ、ArchipelからこんなCDが出ているのですね!
私もカンテッリ大好きで、いくつか集めたりしたものですが、ワーグナーの管弦楽曲集は知りませんでした。
彼のワーグナーでいうと、Testamentから出ているジークフリート牧歌は絶品であります
(といいますかTestamentのシリーズはいずれも絶品)。
あと、Music&Artsから出ているThe Art of GUIDO CANTELLIという12枚ボックスがすごい演奏の集まりなのです。
大体がラジオ放送音源用の公開録音なのですが(たぶん)もう聴衆が熱狂して最後、和音に拍手かぶりまくりです(笑)。
師匠:トスカニーニから続くイタリア人指揮者の潮流、そういえばムーティはカンテッリ指揮者コンクールの優勝者だったような。
いずれにしても、この人が長生きしていれば、指揮者界に大きな影響を与えたのは間違いないと私は思います
(んなことない、って言う評論家も若干いるようですが)。
投稿: minamina | 2010年12月19日 (日) 00時50分
こんにちは。時々訪問させていただき、記事と写真を楽しく拝見しています。
ワーグナーの音楽の魅力は語りつくせないものがありますね。私が次に聴く予定は「トリスタンとイゾルデ」です。指揮者のグィド・カンテッリには興味がありましたが、聴いたことがなかったので大変興味深く読ませていただきました。演奏をきいてみたくなりましたね。
私は最近「メサイア」を聴きました。感想やバッハの音楽との違いなどをブログに書きましたので、こちらもぜひ読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/11662999/
よろしかったらブログにご感想、ご意見などコメントを書き込んでくださると嬉しいです。
投稿: dezire | 2010年12月19日 (日) 08時30分
golfさん、こんにちは。
カンテッリ初心者のわたくしですが、これはとても気にいりました。
こんなに新鮮な演奏をする指揮者とは知らず、これまでもったいないことをしました。
調べたら、音源も結構ありますので、ご案内の「イタリア」に7盤。ぜひ聴いてみたいと思います。
こちらのワーグナー、なによりも安く手に入りますし、思いのほか音がよかったりしました!
投稿: yokochan | 2010年12月19日 (日) 14時54分
minaminaさん、こんにちは。
そうなんです、Archipeレーベルを閲覧してて、ホイホイとクリックしたらお家に届いたのがこちらでした。
こんな素晴らしいワーグナーとは思いませなんだ。
今更ながらに、カンテッリを聴かなくては、と思っているわたくしです。
その、なんですか、12枚のボックス。
置き場所も顧みず、欲しくなってございますよ。
最近、劇安ボックスものが多くでていて、持ってて安心みたいに、購入するだけで終わってしまうのが恐ろしいのですが、こりゃ買わねば気がすまない・・・・、という心情がクラヲタの神髄といえよう。
これ1枚ではなんですが、やはりカンテッリが存命だったら、ワーグナー演奏史上も変わっていたと思いますね。
投稿: yokochan | 2010年12月19日 (日) 15時12分
dezireさま、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ワーグナー狂になって数十年。
いっこうに飽きることなく、そしてしばらく聴かないと禁断症状がでるという、困ったしろものにもございます(笑)
年末年始のトリスタン。もちろんまいります。
楽しみですね。
カンテッリは、ほとんど聴いてなかったのですが、こちらのワーグナーは素晴らしいものでした。
そして、いまは、メサイアのシーズンですね。
よいコンサートをお聴きになられたようで、うらやましいです!
投稿: yokochan | 2010年12月19日 (日) 15時18分
こんばんは。
悲惨な事になってきました。被災地在住のかみさんには、二日間連絡不能。三日目にやっと公衆電話から無事との知らせがきました。水道、電気は復旧しましたが、ガスが無く、ガソリン、灯油は全く入手できないそうです。食料は少し改善してきたそうです。当方も元気だそうとカンテッリ聴いています。リハーサルの気迫に。
投稿: Mie | 2011年3月21日 (月) 20時58分
Mieさん、おはようございます。
奥様がご無事で、ほんとうによかったです。
安否確認ができないというのが一番不安なことですから。
無情に、時が経ってしまいますが、状況が少しでも改善することを願ってやみません。
このカンテッリの気迫ある声には元気づけられますね。
また曲がリエンツィなものだから。
投稿: yokochan | 2011年3月22日 (火) 10時26分
夭逝の天才指揮者カンテッリ。不慮の航空機事故で、祖父のような世代の大トスカニーニより早く、あの世に旅立たれたのでしたか。音楽も魅力的、容姿も端麗、御存命ならアメリカのビッグ5オケのいずれかの常任の椅子に就いておられたでしょう。アメリカのASディスク-レーベルで、ケルビーニの交響曲の、放送録音からの起こしのCD、時折鳴らして、偲んでおります。イギリスTestament盤のフィルハーモニア管弦楽団との、ドビュッシー『海』も手応え充分の佳演でしたね。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年12月14日 (土) 17時10分
カンテッリ、存命だったらアバドのような存在になっていたかもです・・・・
シカゴ、スカラ座、ウィーン、ベルリンです。
ケルテスもそうですが、神さまは残酷であります。
投稿: yokochan | 2019年12月17日 (火) 08時13分