マーラー 歌曲集「子供の不思議な角笛」 アバド指揮
夕暮れの六本木ヒルズ。
バラの巨大オブジェの下で。
都会のど真ん中に巨大バラ1本。
不可思議なる光景です。
土曜日の聖響&神奈川フィルのマーラー4番の感銘の余勢をかって、今日もマーラーします。
交響曲第2番~第4番までが、角笛交響曲と呼ばれる由縁の歌曲集「子供の不思議な角笛」。
アルニムとブレンターノの二人のロマン派詩人は、ドイツ古来の伝承詩に、ロマン派ならではのテイストを、時に皮肉たっぷりに、時に悲劇的なまでに付けて600もの詩を残した。
そこに歌をつけたのは、マーラーが一番多い。
1888年から1899年にわたって書かれた数曲をまとめあげたもので、その頃、交響曲は1番から4番までを書いていた。
この曲集から、3~4番の楽章が転用されていて、それらを省くケースもあり、10曲だったり、12曲だったり、14曲だったり、いろいろです。
以前は、バーンスタインのコンセルトヘボウ盤で取り上げたことがあるが、今回はアバドの指揮で。
Ms:アンネ・ゾフィー・オッター
Br:トマス・クヴァストホフ
クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(98.2@ベルリン)
1.「レヴェルゲ」(Br) 起床ラッパがなる、太鼓がなり、行進曲が
完璧なマーラー・ワールド
でも詩の内容は不気味なのでありました。
2.「ラインの小伝説」(Ms) レントラーによる可愛い歌
3.「不幸の時の慰め」(Br) 男女で歌われることもあるが、ここではBrのみ
4.「無駄な骨折り」(Ms) ここでもレントラー調のユーモラスな歌、
ウィーンのオペレッタ風、第4交響曲の旋律も
5.「番兵の夜の歌」(Br) 1曲目に持ってくることが多い、いかにもマーラー風
軍楽隊の響き、夢想、不平不満などが入り混じる
6.「この世の生活」(Ms) 母ちゃんハラペコ・・・、少しお待ちよ・・・、これが続いて
子供は死んじゃった。
皮肉極まりない辛辣な内容。第10の煉獄のベースとも。
7.「塔の中の囚人の歌」(Br) 囚人とその外の恋人との会話
ここでも軍隊の勇ましい響きと、
恋人のセリフの木管の面白い動きが両極端
8.「誰がこの歌を作ったのか」(Ms) これまたレントラー。R・ポップの声が耳に・・
鮮やかな歌いまわしを要する桂品。
9.「魚に説教するパドヴァのアントニオ」(Br) 第2交響曲3楽章~ 馬の耳に
念仏状態の虚しさをユーモラスに皮肉たっぷりに
10.「高き知性をたたえて」(Br) かっこう、ろば、ナイチンゲールが鳴きみだれ
第5交響曲の終楽章ロンドの明るいモティーフ
11.「トランペットが美しくひびくところ」(Ms) 空しく響くラッパが寂寥感をあおる
この曲集1,2の深い内容の音楽に耳をそばだてるしかない
12.「少年鼓手」(Br) 第5交響曲の葬送行進曲のイメージ
営巣から引っ張りだされて絞首台に向かう少年の歌~暗い
13.「原 光」(Ms) 第2交響曲の4楽章
アバドは最後にもってきた。深淵です。
アバドは、最後の方に、深みのある曲を持ってきて、作品スタイルがまちまちなだけに、散漫な印象で終わってしまうこの歌曲集に有終なる完結感をもたらすことに成功している。
それにしても、アバドとベルリンフィルの描き出す精妙極まりない背景は、生き生きと、そしてどこまでも歌心にあふれた新鮮なもので、マーラーへの愛に溢れ出た演奏なのだ。
ルチア・ポップの歌が情感にあふれすぎて(それはそれで大好きなのだけれど)、そう何度も聴けないのと対象に、フォン・オッターのクリアーで蒸留水的歌唱は、冷た過ぎもせず、冷静な中に恋人の心情や、母親、しいては人間そのもを嫌味なく歌っていて気持ちがよい。ときに、オクタヴィアンみたいなところもあって面白い。
とりわけ、11と13は名唱です。今回も何度も聴いてしまいました。
クヴァストホフの多彩な歌も聴きごたえがあって、FDのような言葉ひとつひとつへの思い入れを込めた歌とは違う意味で、やたらと上手く感じる。
頭脳的な歌唱ともいえるけれど、アバドのたくみなサポートもあって濃淡もゆたかに味わい深い歌が楽しめる。
アバドのマーラーへの傾倒ぶりがよくわかる1枚。
この歌曲集、これらの中から選抜して、リッケルト・リーダーとともに、アバドは、いまも何度も何度もことあるごとに手掛けております。
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コメント
この演奏すばらしいですよね。
原光まで入っているので、バーンスタイン盤と共に聴いております。
角笛はあとブーレーズとテンシュテットを聴いています。
マーラーの歌曲は交響曲とともに重要な作品群ですね。
投稿: ピースうさぎ | 2011年1月26日 (水) 10時16分
ピースうさぎさん、こんばんは。
この演奏、さきに取り上げられていらっしゃいますね。
TBありがとうございました。
今回、久方ぶりに聴いて、アバド指揮のベルリンフィルの素晴らしさに感じ入りました。
ブーレーズ、テンシュテットともに、聴いてみたい演奏ですし、ハイティンクが復活するとよいのですが。
投稿: yokochan | 2011年1月27日 (木) 20時59分