シェーンベルク 交響詩「ペレアスとメリザンド」 エッシェンバッハ指揮
名古屋駅のイルミネーション。
去年、日帰りしたときのもの。
名古屋駅周辺は、JRタワー、そして、トヨタの新社屋ができたりしてかつてと様相が一変して、もう数年が経ちます。
わたしが、単身赴任しておった頃は、ビジネスは駅前もそうだったけれど、丸の内あたりが繊維街もあったりして名古屋本来の中心だったで。
そして、商業は栄、夜の飲食は錦三と決まっておった。
名駅は、さらに秋葉原化するともありましたで。
太閤口のユニーがやってた生活倉庫は、いまやビックカメラで、そこには昔HMVがあったもんだわ。
それから、桜通口には新駅ビルが出来て、そこにはヨドバシカメラが入るし、さらに名鉄ヤング館にもヤマダ電機が入るっていうでな。
なんやら、風情がありませんなぁ。
日本中、同じ街になっちまう。
アルノルト・シェーンベルク(1874~1951)の交響詩「ペレアスとメリザンド」。
大好きな曲でして、もう3度目の登場になります。
トリスタン、R・シュトラウス、マーラーと、思い切り私の好きな音楽の流れをしっかりと受け継いだ、濃厚かつ甘味なる後期ロマン派臭ギンギンの響き。
作品番号は5で、1902~3年の作で、「浄夜」が1899年、「グレの歌」は完成は100年前の1911年ながら、1901年からしたためていた。
ゆえに、このペレアスの立ち位置もおわかりでしょう。
今週聴いてきた作曲家たちの諸作は、いずれも1900年を境とするその前後の作品。
ツェムリンスキーの作品のみが、1800年代のロマン派に軸足があったが、その他はいずれも1900年後で、シェーンべルクも無調や十二音に走る前のもの。
ほぼソナタ形式による単一楽章、4管の巨大編成による作品ながら、その間に緩徐楽章的なものやスケルツォも交えていて、シンフォニックな構成にもなっている。
トリスタン風の半音階の調べで開始するこの曲は、とどまることなく旋律が展開し、対位法も複雑の極みで、ときに斬新な和音も響き渡る。
オーケストラの分厚い響きと、めくるめく濃厚ロマンティシズムに加え、クールで青白い抒情の輝き。
具体性は薄めながら、ゴローの暴力的な性格や、二人の悲劇的な逢瀬と別れ。
そして最後の死そのものの音楽。
それからなんといっても、素晴らしく夢見心地になってしまうのが二人の愛の情景。
生クリームを横にホイップした、あま~いザッハトルテをひとくち食べたような感じ。
口中が濃厚で芳醇な味わいで満たされ、その芳香がずっと残っているような思いに満たされる。
この味わいを洗い流すには、ビターで濃い口のブラックコーヒーがいいみたいだ。
エッシェンバッハの指揮は、まさにそんなイメージで、ねっとりと48分間にわたるペレアスを描きつくしているのだ。
シェーンベルクのペレアス史上、最長の演奏時間かもしれない。
辟易とする寸前でとどまった濃密な演奏。
エッシェンバッハを嫌いな人は、こんなところがついてゆけないところなんでしょう。
私は、結構好きで、ワーグナーにブルックナーにマーラー、それぞれ実演も含めて堪能してます。
オーケストラはテキサス洲の大都市ヒューストンの交響楽団。
ストコフスキーやバルビローリ、プレヴィンなどがその先達指揮者で、エッシェンバッハは、88年から99年までその任期にあって、ドイツものを中心に活躍していた。
このオーケストラは、実にうまくて、アメリカのメジャーにひけをとらない。
いまは、ハンス・グラーフがその指揮者で、ナクソスにツェムリンスキーなんかを録音しているから、世紀末系にゆかりもあるグラマーなオケなんだ。
94年11月の録音。
あとこのコンビには、新ウィーン楽派の3人のオケと室内楽作品を1枚に収めた素晴らしいCDがありますので、そちらはまたいずれに。
シェーンベルクのペレアス。
バルビローリ、ベーム、カラヤン、ブーレーズ、シノーポリ、エッシェンバッハ、アバドなどを愛聴してます。
あと狙いは、ティーレマンDG、バレンボイム&パリ管、メータ&イスラエルのいずれもソニー盤であります。
CooL Nagoya!
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コメント
こんばんは。
昨年末の駅前イルミネーションは観にいくことができなかったので、こうして写真で見られるのはなんだか嬉しいです。
駅前のビルにヨドバシカメラが入るんですよね。個人的にはヨドバシは好んでいるんですが、そうなるとビックカメラは撤退を余儀なくされるかもしれませんね。
松坂屋も撤退してすっかり名古屋らしくなくなったのも残念です。
シェーンベルクのペレアスはカラヤンとバレンボイムは持っています。どっちもどうも好みじゃないんでエッシェンバッハがいいかもなあと思っています。
投稿: ピースうさぎ | 2011年1月21日 (金) 21時34分
ピースうさぎさん、こんばんは。
駅前イルミは、年内だけなのでしたか?
たくさん撮ったので、賞味期限切れ覚悟で、あといくつか出しますのでご覧ください。
出張族には、便利だか不便だかわからない名駅周辺です。
わたし的には、寂しいですね。
バレンボイム盤をお持ちですか。
しかも、お好みじゃないそうで。
バレンボイムというより、パリ管に魅かれている不謹慎なわたしです。
エッシェンバッハは、極端に濃厚かつ繊細です。
曲にぴったりでした!
投稿: yokochan | 2011年1月21日 (金) 22時27分
yokochanさま、こんばんは。
名古屋に限らず、どこの街にも似たような店が立ち並び、それぞれの個性が薄くなっているような気がしますね。
だからといってあまりコテコテに地元色の出た街並みもちょっとキツイものがありますが(^_^;)
さて、ペレアスとメリザント。
ちょっと前に聴いてみようと思い、ブリリアントからリリースされているティーレマン/ベルリン・ドイツ・オペラ管のCDを購入したのはいいんですけど、未だに封を切ってすらいません。
せっかくですので、この機に聴いてみようかと思います。
投稿: ライト | 2011年1月22日 (土) 21時38分
こんにちは。
名古屋は、最近まであまり縁のないところでありましたが、一度出張で訪問してから大好きになりました。
なんといっても食べ物が面白いし、美味しい。また今年も行きたいなぁ、なんて思っております。
たしかに名古屋駅前は派手になるというか、電気屋が入って個性がなくなりつつあるというか。
エッシェンバッハ・・・ですか・・・(笑)。
きっと濃厚なのでありましょうなぁ・・・。
うちにはブーレーズ盤しかないので、偉そうなことは言えないのですが。
今度DGから出る、ブーレーズ&グスタフ・マーラー・ユーゲントo.の来日公演のCDはきっといいと思います!
とても見通しがいいですが、ライヴで結構はっちゃけちゃうブーレーズが聴きものです。
でもこのときは別公演のマーラー6番がすごかったんですよねぇ~、あれCD化してもらいたいものです。
投稿: minamina | 2011年1月23日 (日) 14時06分
今日は。
わたしの手持ちのシェーンベルクのペレアスは、カラヤン、ブーレーズ、メータだけです。40分でぶっ飛ばしているブーレーズが一番好きです。シカゴ響の上手さにも舌を巻かされます。曲技飛行チームのアクロバット飛行みたいなペレアスですね。
エッシェンバッハですか。うーむ。苦手な指揮者です。ティーレマンも苦手です。遅いテンポで濃厚にやる人というのが私はどうも苦手で・・・例外は晩年のレニーとクレンペラーぐらいでしょうか。
私はどうも難解で長大な楽曲は速めのテンポでスカッとやってもらうと良く理解できる傾向があるようです。友人には「速すぎるとかえってついていくのが大変で疲れないか?」とからかわれています(笑)。
ブーレーズ&マーラーユーゲント管の2006年ライブがCD化されることは私も知っています。それにセルジュ・ボード&チェコフィルやアシュケナージ&ベルリン・ドイツ響のペレアスも聴いてみたいのですがお金が(出た!)・・・。
投稿: 越後のオックス | 2011年1月23日 (日) 15時01分
ライトさん、こんばんは。
各都市は、おっしゃるように無個性で、わたしの好きな居酒屋ワールドも、チェーン店ばかり。
個人のお店や小規模なものはなりたたなくなってしまう環境。
ほんとうに寂しい日本の現況であります。
ティーレマンのペレアスをお持ちなんですな。
しかも未開封という宝の持ち腐れ状況。
わたしも、数々やらかしてますし、へたすりゃその存在すら忘却してしったものたくさん。
せっかくですから聴いてください(笑)
投稿: yokochan | 2011年1月23日 (日) 20時55分
minaminaさん、こんばんは。
名古屋は何かと縁がある街でして、父・私・義弟といずれも赴任経験ありで、義弟などは嫁まで娶りました。
駅周辺は、こんなですが、ちょっと歩けば名古屋っぽいところはたくさんありますし、車で走り回るもの楽しいものです。チャレンジしてみてください。
そしてそうです濃いです、濃厚です。
エッシェンバッハそのものです。
ブーレーズはシカゴとのリアル演奏は、ちょっと興ざめなんですが、GMJOとのライブは興味があります。
しかし、なんですな、アバドもGMJOと映像を残していて、何も同じオケで・・・、という気分なんです。
アバドのベルリンフィルとのライブが音源化すれば一番いいのですが!
投稿: yokochan | 2011年1月23日 (日) 21時09分
越後のオックスさん、こんばんは。
またしてもメータ盤を持っておられる方が!
メータはイスラエルフィルということもあって気になる1枚なのです。
バーンスタインとエッシェンバッハはテンポを緩くとり濃厚な解釈をする二人と思われますが、実際はまったく違うタイプに思います。
前者は作品を思い切り自分に引き寄せてしまうのに対し、エッシェンは、もっと複雑なところがあるように思います。
遅めのテンポ設定をする人たちも、早めのスピーディ指揮者たちも、どちらも、その演奏に必然性と中身があれば、それでよいと思うのです。
ボドも録音があるのですか?
アシュケナージはともかくとして・・・・(すいません、いまだにアレなものですからして)
投稿: yokochan | 2011年1月23日 (日) 21時25分