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2011年1月 6日 (木)

シューベルト 交響曲第8番「未完成」 クリップス指揮

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いつもの山のうえは、水仙も満開。
甘くて、初春の香りがあたり一面をおおっておりました。
ちょいと調べたら、この香り豊かで愛らしい花は、彼岸花科に属するそうな。
あの毒々しくもミステリアスな花と同種とはとうてい思えない。

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でも、邦名として別名「雪中花」ともいう。
これは、きれいですな。
そして、英名は「ナルシサス」。そう、ギリシア神話由来のナルシストでございます。
自分を見つめ続けて、花になっちゃった・・・・・、ふむふむ。

花言葉もいくつかあるけれど、気にいったのが、「詩人の心」。

そんな言葉にぴったりするのが、シューベルトにございましょう。

Concerthall

オチも決まったところで、本日の名曲をば。
シューベルト交響曲第8番「未完成」。

番号がコロコロ変わって、いまや7番「未完成」なわけだけど、わたしはそんなの嫌だ。
同じように、「ザ・グレイト」も、絶対9番か、せいぜい7番。
グレイトが8番だなんて、わたしは許さない。
時代考証に逆らう頑固オヤジです。

何度も書きますが、「運命」&「未完成」は、レコードとして定番で、常にベストセラーだったわけで、カラヤン、ワルター、バーンスタイン、フルトヴェングラー、クリュイタンス、セルなどなど、レコード店には常に並ぶ常連でございました。

でも、小学生だったわたしにはレギュラープライスのLPは、誕生日かクリスマスくらいしか手に入らない。
そんなときに登場したのが、日本コロムビアが出した「ダイアモンド1000シリーズ」。
1970年。これは画期的なことで、べートーヴェンの生誕200年も重なり、べートーヴェンのほとんどの曲が1000円。
そしてメインのシリーズでは、古今の名曲が次々にリリースされていった。
その記念すべき、番号1が、「運命&未完成」だったのでした。
買いましたよ、初運命。
未完成は、17㎝LPでミュンシュ盤をすでに持っていたから2枚目。
演奏は、運命が、ハンス・ユイゲン・ワルター指揮のハンブルク・プロムジカ。
未完成が、渡辺暁雄指揮の日本フィル。
マッターホルンのジャケットが郷愁をそそります。

この和製「未完成」がなかなかに歌心あふれる名演奏だったのです。
でも本当は、ミュンシュとボストンの演奏が、いまだにわたしの刷り込みNO1。

そのあとの「未完成」は、会員制レコード頒布組織のコンサートホールで求めた、ヨーゼフ・クリップス指揮するウィーン音楽祭管弦楽団のもの。
これは、同レーベルのハイライト盤みたいなうLPで、ほかにマゼールの眠りの森の美女なんてのも収録されていた。
この演奏が、妙に雰囲気のある「未完成」で、中学生のわたくしは、毎晩聴いてロマンに浸っていたものです。

生粋のウィーンの指揮者クリップスは、ウィーンフィルとの活躍に加え、ロンドン響の指揮者もつとめたから、同響との録音がとても多いし、晩年のコンセルトヘボウとの録音も素晴らしいものがたくさんある。
オペラ指揮者でもあったから、意外なものも復刻されてたりしていて、R・シュトラウスの「エジプトのヘレナ」などはもう、感涙ものであります。

この未完成は、柔らかなタッチで、ことさらロマン風にもせずに、ごく普通にシューベルトの歌心を自然に紡ぎだしている。
ゆったりとしたテンポで、柔和な表情づけが繊細で、何も変わったことはしていないのに、スコアに書かれた音楽のみがそこに流れている感じ。
だから素直に「未完成」という曲の真髄を、さりげなく味わえてしまう感じ。
ことに第2楽章は、ほんとうに美しいと思う。

こんな芸風の指揮者は、いまやなかなかいませんね。
正体不明のオーケストラは、いろんな説がありますが、木管にウィーンの響きがするから、ウィーン交響楽団か、ウィーン国立歌劇場のものと推測。
コンサートホールがCDで一時復活したとき、シューリヒトの爽快グレイトとのカップリングで発売され、それを今聴いてます。
録音の、もこもこ感は否めないものの、これもまた私には懐かしい雰囲気を呼び覚ますものなのでした。

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コメント

ご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いします。
クリップスの演奏は、つい最近になってモーツァルトの中・後期の交響曲を聴き、初めて開眼しました次第。
彼の『未完成』は、一度は聴いてみたい演奏ですね…。

投稿: さすらい人 | 2011年1月 7日 (金) 10時37分

さすらい人さま、こんばんは。
そして、こちらこそ、よろしくお願いいたします。

クリップスは、ウィーンの姿をまとった指揮者ですね。でも全部は聴いてませんが、モーツァルトはまた違った印象のようですね。
クリップスは、あとブラームスや新世界も絶品です。

まずは、未完成をお聞きなれますこと念じております。

投稿: yokochan | 2011年1月 7日 (金) 23時24分

毎日楽しく拝見しております。

このレコード、コンサート・ホール・ソサエティの入会サービス盤だったような?

貧しき者は幸いなれ、子供の頃は廉価盤しか買えず、しかもちょっぴり、カタログを穴が開くほど眺めたものです。

その時聴いた演奏家は一生の嗜好として定着しております。

ほとんど同じ経験していらっしゃるみたい。

渇望の記憶があるから、似非金満親父はオトナ買いしてしまう・・・これからもご健筆を期待します。

投稿: 林 侘助。 | 2011年1月 8日 (土) 20時27分

クリップス。。。お名前を存じているのみです。
是非探して聴いてみたいと思います(未完成に限らず)。
未完成・・・クライバー盤から聴き始め、現在のお気に入りはインマゼールです。

投稿: 左党 | 2011年1月 8日 (土) 23時39分

林侘助さま、こんばんは。
そしてようこそ、コメントありがとうございました。
わたくしの方こそ、毎度拝見しておりまして、時に感涙にむせぶことしきりにございます。

おっしゃるとおり、このレコードは入会品のものでして、悪いわたくしは、中学時代、クラシック道に引き込んだ友達に入会させ、このレコードをなんと、ダイアモンド1000シリーズのボールトの英雄と引き換えに手にいれたのでございます。
 わたしの、入会導入LPは、マガロフとオッテルローのチャイコフスキーでして、ステレオ350円、モノラル250円の広告に魅かれて会員になりました。
そのレコードは擦り切れるほど聴きました。

>カタログを穴があくほど眺めた<
そうそう、わたしもそうです。
ダイアモンドのシリーズのものは、丸とか△とか付けちゃってぐちゃぐちゃにしてました。
あの頃の音楽小僧は、きっとみんなおんなじことをしてたんでしょうね。
オトナ買いも、いまや自制と反省の時期になりつつあります(笑)
blogというナイスなツールを見つけてしまった以上、耳と目と腕が動く以上は書き続けたいと思います!
貴HPも、ますます楽しく拝読いたしたいと思います!

投稿: yokochan | 2011年1月 8日 (土) 23時45分

左党さん、こんばんは。
失礼しまくりました。
コメントもれでした。
これだから、酔っ払いはいかんです。
いつも酔って候です・・・。

クリップスのこの盤は、入手が難しいと思いますが、デッカにたしかロンドン響かウィーンフィルでいれたものが、グレイトのカップリングで出てました。
組合あたりでは手にはいるかと思います。

コンセルトヘボウとのモーツァルトなんかも、左党さんには是非お勧めですよ!

投稿: yokochan | 2011年1月13日 (木) 00時49分

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