ヘンデル 「水上の音楽」 プレヴィン指揮
芝浦、竹芝桟橋あたりからレインボー・ブリッジを望むの図。
海はエエなぁ~。
本格的に、心が解放されるんだわぁ~
そして、造られた街、トーキョーはこうして美しい。
今日は、プレヴィン。
ヘンデルは英国に帰化してるから、英国ものともいえます。
「水上の音楽」は、ヘンデルでもっとも有名な曲かもしれないが、でも最近は意外なまでにこの曲を聴くことが少なくなった気がする。
ご多分にもれず、いまやこの曲の演奏スタイルも古楽器によるピリオド奏法が主流となり、室内オケや一般オケの録音や演奏会ではあまり登場しなくなった。
多くのオペラやオラトリオが見直されていて、そちらの方へ興味も流れているし。
学究による版もふたつあり、60年代初頭までは旧ヘンデル全集、以降は新ヘンデル全集のレートリヒ教授版。
さらに、いくつかのオーケストラ版もある。
それらの中では、なんといっても英国の作曲家・指揮者のハミルトン・ハーティの編曲によるフルオーケストラバージョンが一番かもしれない。
わたしのような世代だと、音楽の授業で聴いた「水上の音楽」は必ずハーティ版で、なんらの疑念も挟まずに、そのゴージャスな響きを堪能していたわけだ。
「メサイア」の演奏にもかつてはそうしたことが言えて、英国や米国の指揮者たちのメサイアは華麗なイメージもあったのだ。
まったく、時代の変遷というものは恐ろしいもの。
澱や埃が払われて、生まれた当時のピュアな響きをまとって復刻される音楽たち。
でも、それがすべてかというとそうでもない。
私たちの音楽には、それらが育まれ、聴かれてきた過去があるわけで、それらを否定してしまっては、また見失うものも多い。
事実、今宵、ハーティ版ヘンデルを、久方ぶりに聴いてみて、これまた耳が新鮮な喜びを感じているのだから。
ヘンデル 序曲 ニ短調 (エルガー編)
「水上の音楽」組曲 (ハーティ編)
「王宮の花火の音楽」組曲 (ハーティ編)
アンドレ・プレヴィン指揮 ピッツバーグ交響楽団
(82.12@ピッツバーグ)
プレヴィンとピッツバーグ響の紡ぎだすヘンデル。
かつて学校で聴いたはずのカラヤンとベルリンフィルのゴージャス演奏とは対局にあるような渋さである。
重い響きを出すこのコンビだったが、なかなかに思索的な雰囲気もあってエアなどは、こんなにゆっくりと抒情のたけを込めて演奏しちゃっていいんだろうか、と思ってしまうくらい。少し腰が重すぎると感じてしまうのは、録音と原編曲のせいもあるかもしれない。
そのあたりを封じるには、華麗にバリバリ演奏しちゃうのが手かもしれないが、プレヴィンはそんなことはしない。
プレヴィンらしい、温もり感もあって、爽快さとはまた違った意味で気持ちのよい演奏であります。
ピッツバーグのホルンセクションの鮮やかさと、打楽器群のキレのよさも楽しい。
録音はフィリップスらしいピラミッド型の重厚なもので、あのケチャップの名を冠したハインツホールの響きも美しい。
なにか、いにしえの名曲を聴いたような気がする今宵なのでありました。
現代の舟遊びは味気ないものです。
ハーティの音楽過去記事
「ハーティ ヴァイオリン協奏曲&ピアノ協奏曲」
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コメント
本年もよろしくお願いいたします。
私も最近、ヘンデルの演奏会に行ったばかりなのですが、そういえばヘンデルって小学校3年生の時に聴いた「水上の音楽」だったなぁ、っておもったのですけど、メロディーが全然出てこない。
昔はCMに使われたこともあったんじゃなかったけ??ともおもうのですが、それくらい遠い曲になっている気がします。
それは、やはり、古楽器による演奏スタイルが流行ってきたからなのでしょうか。
私がいった演奏会もそういえば古楽器でした。
私は、リスナーとしてよりも練習者としての立場での感じ方ですが、スタイルよりどのように演奏するか、どのように音楽を作るか、自分が意図した音楽を作るためにはどうしたらいいのか、ということに興味が出てきました。
この年からでは遅すぎる気もしますが、よりよくなりたいという気持ちには遅すぎることはないと信じてがんばります。
そういった意味でもクラヲタ様の感想や演奏への注目点がとても参考になります。
そうですよね。
あの頃は、古楽器スタイルではなかったですよね。
ただ、演奏会に行って、チェンバロやフォルテピアノでベートーベンなんかを弾いてもらうと、テクニック的なことで気づくことがあります。
両方聴くべきだし、どの場合にも演奏者の意図や音楽に至るまでの過程があると思うと楽譜もCDもものすごくなぞを秘めたミステリー小説のようですよね。
それではまた。
投稿: madahiyoko | 2011年1月16日 (日) 14時16分
こんばんは。実はプレヴィンの「水上の音楽」CDは手元にあります。購入する際はミスマッチで抵抗ありました。笑われそうなのも覚悟です。やはり、聴いてみるとプレヴィン流のリリックなヘンデルでした。
愛聴しているのはマリナー、アカデミーと英国オケによるもの。標題通り、ウォーターフロントのようなサウンド。
ヘンデルはドイツ生まれもあるのか、カラヤンの他、クーベリック、ムーティとそれぞれ版は違いますが、ベルリン・フィル録音も例外ではないようです。ドイツのオケはダイナミックです。
古楽器によるものがブームの頃、刺が刺したようなサウンドになじめなくて一般オケに集中してしまったが、最近ブームの歴女のようなものでしょうね。男性の場合は歴男かな。
投稿: eyes_1975 | 2011年1月16日 (日) 18時35分
madahiyokoさん、こんばんは。
こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします。
辻さんの歌われたヘンデル、わたくしは、仕事でどうしても都合がつきませんで残念でした。
水上の音楽に限らず、モーツァルト以前の音楽は、古楽奏法の洗礼を受け、また学究的な研究も進み、これまでのロマンテックに傾いた演奏が過去のものとされてしまった向きもありますね。
決してそうではないのですが、こうあらねばという風潮も拍車をかけたみたいで。
>スタイルよりどのように演奏するか、どのように音楽を作るか、自分が意図した音楽を作るためにはどうしたらいいのか<長く引用させていただきましたが、演奏される方の命題は大きいですね。
わたしのような、リスナーはお気楽なもので、申し訳なく存じます。
どんな演奏にも、その奏者の意図や考えがあるのですから、おっしゃるように、それを誠意を持って聴き楽しみたいと思います。
ですから、音楽の楽しみはキリがないのですね!
投稿: yokochan | 2011年1月16日 (日) 23時13分
eyes_1975さん、こんばんは。
プレヴィン盤のファンは多いようですね。
たまには、フルオケのハーティ版もいいものです。
古楽系ではまだ1枚も所有がありません。
ミンコフスキあたりが狙いなのですが。
涼しげな夏向きの音楽ですが、こうして真冬もよかったです。
ベルリンでは、ラトルあたりがピリオド奏法と、ハーティ版の両方を取り上げるなんて粋なことをやって欲しいものです。
投稿: yokochan | 2011年1月16日 (日) 23時35分