シベリウス レンミンカイネン組曲 ヤルヴィ指揮
猪苗代湖を望む図。
鴨だらけ。
今回も、過去画像から。一昨年の2月の終わりごろ。
暖冬がしばし続き、北国では雪不足に悩んだものだが、今年は豪雪ときて、ちょうどいい加減がない。
従来の自然の摂理を超えた容赦ない自然の変貌ぶり。
人間がもたらしてしまったツケかもしれませぬ。
九州の噴火もとどまらず、嫌なのは、関東に大きな地震がないこと。
繰り返しという原理からすると、関東に限れば、元禄→天明→安政→関東と、サイクル的に起きていたものが、その後に間がかなり空いているから、なんか、いゃぁーーな気がするんです。
日本がいま陥っているマイナス・フラストレーションからしても・・・・・・。
不吉なことは、とりあえず置いといて、今日の北欧は、大御所シベリウス(1865~1957)とまいりましょう。
シベリウスの音楽こそ、大自然、そしてその大自然と人間との営みを感じさせるものはないと思います。
北国・北欧の厳しいけれど、美しい自然。
わたくしのように、まだ見ぬかの地の風景や、風物を想像したり偲んだりするのに、シベリウスの音楽はまさに「耳で聴く北欧」なのであります。
そんな観光大使のようなシベリウスの典型的な作品は、交響曲と並んで表題的な交響詩のジャンルなのです。
「フィンランディア」に代表されるそれらは、ホント素晴らしくて、聴いているだけでクールな清涼作用と熱い民族色にほだされるのだ。
今日は、有名な「トゥオネラの白鳥」もそのひとつとして組み込まれた、連作交響詩、「レンミンカイネン」を聴きます。
シベリウスといえば、毎度おなじみのフィンランドの叙事詩「カレワラ」。
その物語の一部を題材とした「レンミンカイネン」という男の数奇な人生を4つの交響詩にした組曲がこちら。
かつては「4つの伝説曲」と呼ばれ、わたしなどは、その呼び名で親しんだが、昨今は「レンミンカイネン」組曲とされていて、原作に近い表記のようだ。
「レンミンカイネンとサーリの乙女たち」
「トゥオネラの白鳥」
「トゥオネラのレンミンカイネン」
「レンミンカイネンの帰郷」
この4つの交響詩。
2番目の白鳥のみが有名。あとは4つめの帰郷がバルビローリやカラヤンが録音したりしてるくらい。
4つを1枚のレコードやCDに収めている演奏もそこそこあるけれど、なかなかに聴く機会は少ないのかも。
物語は荒唐無稽・噴飯もので、そう言ってしまうとかの地の方々に怒られそう。
「レンミンカイネンは踊りの得意なサーリの娘のひとりに恋し、求愛し断られつつも結ばれ、お互いに条件を出し合う。
彼は戦いに赴かないこと。彼女は踊らないこと。レンミンの母は嫁を迎えて大喜び。
ところが、彼女は禁を破って踊ってしまう。
それを見たレンミン君は、怒って違う妻を探しにポヒョラに出向き、ころあいの彼女を見つけるが、求愛の条件をいくつか出され、そのひとつがトゥオネラ川に浮かぶ白鳥を射ること。
その川に出向くも、レンミン君の敵対勢力によって、水蛇をけしかけられ、哀れ心臓を噛まれ死んでしまい、黄泉の国たるトゥオネラでバラバラにされてしまう。
それを嘆いたレンミン君の母は、息子の体を大きなクマデで集め、特殊膏薬も処方し祈りの末、息子の蘇生に成功する。
生き帰った息子レンミン君は、またもやポヒョラに向かって新妻を得ようとするので、健気な母が大いに諭して、改心した息子は故郷に向かって帰還する・・・・という、どーしようもないお話。」
母は偉大なり。息子はダメなり。
シベリウスの書いた幽玄で勇壮かつ幻想的な音楽からは、こんなおバカ息子や残酷なシチュエーションはうかがえない。
あの「トゥオネラの白鳥」は、黒く沈んだような静的な湖に浮かぶ白鳥が、まるで映画のシーンのように瞼に浮かぶ。
どこに正妻とは別の女性を得ようと、無垢なる白鳥を狙うおバカ息子の姿を感じえようか。
北欧神話は、ワーグナーも没頭したとおり、「オランダ人」や「リング」にあるとおり、身勝手な男たちと、それに献身する強い(!)女たち、という要素がどうもあるようだ。
まぁ、そんなことは別として、この内容や素材は、サブ・インフォメーションとして、フィンランド・北欧を思いながら、この素晴らしいシベリウス作品を聴くのがよろしいかもしれない。
全編クールで、力強く、かっこいい音楽。ロマンテックでもあります。
交響曲第1番よりも前の作品。
「カレワラ」をもとに、オペラの創作も検討していた時期で、結局、自身はオペラという劇作品ジャンルに適正なしとして、この連作交響詩に姿を変えたいう。
ネーメ・ヤルヴィとエーテボリ交響楽団のシベリウスは、巧まずしてシベリウスの真髄を音にしてくれていて、安心して身をゆだねることができる。
クリアーな弦に、若干鄙びて憂いも帯びた木管、力強い金管。
BISに入れた、かれらのシベリウスは私にとって指標のひとつであります。
この曲、ホルスト・シュタインが得意にしていて、N響でも演奏してそのCDRを愛聴してますが、スイス・ロマンドとの録音は廃盤。欲しいです。
あとは、オッコ・カムとフィンランド放送響のDG盤に、オーマンディ盤なども欲しい!
実にいい曲ですので、未聴の方は是非ともどうぞ。
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コメント
今晩は。今年の冬は寒さといい降雪量といい異常でしたね。雪かきでヘトヘトになりました。
ヤルヴィ指揮のこのCD、私も持っております。高校時代か大学時代の初期に買い、何度も聴きました。ギリシア神話もそうですけど、神話に出てくる英雄や神様ってヘンな方が多いですよね。
トゥオネラ白鳥とレンミンカイネンの帰郷だけが突出して演奏される機会が多いようですが、後の2曲も少し長いけど素敵な曲だと思います。
オーマンディは私も聴きたいですね。
シュタインのCDRをお持ちとは恐れ入りました。
投稿: 越後のオックス | 2011年2月 4日 (金) 18時03分
こんばんは。実は私の唯一の手持ちはシュタイン、スイス・ロマンド管です。「トゥオネラの白鳥」はいくつかあります。ラテン・オケのシベリウスには抵抗を感じるかも知れませんが、彼が「交響曲第2番」を始め、めったに全曲で取り上げない「ペレアスとメリザンド」なども北欧の響きを壊さないで仕上げています。元々、カラヤンのアシスタントで歌劇場修行したことがあるし、ワーグナー指揮者でもあるのか、シベリウス指揮者として好条件だったのでしょう。低音弦の引き出し方が非フィンランドでも暑苦しくないし、ベスト・サウンドに入ります。
カラヤン得意の「トゥオネラの白鳥」は癒し音楽の代名詞なのか、「アダージョ・カラヤン」シリーズにセレクトされるくらい愛されてますね。シュタインのシベリウスはどことなくカラヤンに似たサウンドかな、と伺えられるような気もするでしょう。
今日は3月の陽気で春は近づいています。
投稿: eyes_1975 | 2011年2月 4日 (金) 21時25分
越後のオックスさん、こんにちは。
この盤お持ちですか。
ゆったりとしたテンポで、おおらかに、作品の雰囲気をよくつかんでいると思います。
まったく、けしからん主人公ですが、シベリウスの音楽はほんとに素晴らしいですね。
シュタインの正規盤とオーマンディ、カムが狙いです。
投稿: yokochan | 2011年2月 5日 (土) 11時38分
eyes_1975さん、こんにちは。
うらやましいですね、スイス・ロマンド管のものをお持ちですとは!
フランス語圏のジュネーヴのオケですが、山と湖に囲まれたスイスは、シベリウスの音楽にも親近感を抱くような気がします。
シュタインは、スマートな音楽つくりをしましたので、シベリウスやチャイコフスキーが得意だったのですね。
カラヤンと同じです。
それにしても、シュタイン盤。単独での復活を願いたいです。
投稿: yokochan | 2011年2月 5日 (土) 11時44分