オルフ 「カルミナ・ブラーナ」 ハーディング指揮
夕刻の六本木ヒルズ。
最近、通いだした客先の帰り道。
散歩しながら、麻布十番を抜け、三田、田町と、いい運動なのです。
なんだか、ジェームス・ディーンみたいなジャケット。
すっかりお馴染みとなったダニエル・ハーディング。
御歳35歳。若い、若い。
ベルリン・フィルを初指揮したのが21歳。
ラトルとアバドに認められ、その影響も大きく受けているハーディングを、聴いたのは1度だけ。
2006年にマーラー・チェンバーと来日した時のもの。その記事はこちら。
その時は、アバドがルツェルンとやってきて、生涯忘れ得ぬマーラーを聴かせてくれたときで、ルツェルンに参加していたメンバーがそのまま日本に残り、ハーディングを迎えての演奏会だったのだ。
だから、あのルツェルンの神が舞い降りたかのような、アバドの執念が乗り移ったかのような興奮をオケの主力が引きずりながらであったはず。
モーツァルトの後期3曲を、痛いほどの緊張感と、その真反対のリラックスムード、そして爽快さ、疾走感・・・、ありとあらゆる感情がびっしりと詰まった表現力豊かな演奏だった。
演奏後は、さすがのハーディングもへとへとだった。
まだ30歳だったこのスゴイ男は、ますます活動の場を広げている。
そして、昨年2010年にバイエルン放送響に客演し、オルフの「カルミナ・ブラーナ」を指揮したライブが、もう年内にはスピード発売された。
わたしは、即買いでしたよ。
なんたって、パトリシア・プティボンが歌ってるんですからね。
S:パトリシア・プティボン
T:ハンス-ウェルナー・ブンツ
Br:クリスティアン・ゲルハーヘル
ダニエル・ハーディング指揮 バイエルン放送交響楽団
バイエルン放送合唱団
テルツ少年合唱団
(2010.4@ミュンヘン・ガスタイク)
でも、封を切ったのは今宵。
なんだか、カルミナを聴く気がずっとしなくて・・・・。
去年6月に聴いた現田&神奈川フィルのビューテフル&ゴージャス演奏が忘れられなかったのもひとつの要因だし、この原始的かつ単純、オスティナート効果丸出しの音楽を1時間聴くことは、そう何度もしたくないことなのだ。
プティボンのところだけ聴こうかとも思ったけれど・・・・。
ようやく聴いた全曲。
私のもっとも気にいった場所、そしてもっとも心動かされたのは、やはり、プティボンの歌う第3部の「In trutina」と、そのあとひとつおいて(ここでもヤマモリ云々と歌うプティボン、バリトン・合唱のユニゾンだけど、ユニークな彼女は目立ちます)の「Dilcissime~愛しいお方」のコロラトゥオーラの名技と無垢なるお声。
短い出番だけど、どこを取っても、聴いてもパトリシアさま。
彼女の声、だんだん強くなってきたと思う。
しかし、かつての羽毛のようなしなやかさが若干後退したかもしれない。
それを彼女の進化と捉えたい・・・・・・。
そろそろ、新盤も期待したいし、今の彼女を、もっと別な形で聴いたみたい。
プティボンばっか、書いちゃったけれど、ゲルハーヘルは、こうした歌はまったく上手いし、青年風でよろしい。でも真面目すぎかも。
ブンツというテノールの酔っ払い具合は、正しい居酒屋の様子(?)
それで、ハーディングなのであるが、どこか遊びというか、泥臭さがないのよね。
キレイごとすぎるんだ。
ライブなのに完璧な仕上がりで、どこにも難点がない。
でも難点がないところが、ちょっと不満。
もっと切羽つまっていたっていいし、はちきれる若さの爆発があってもいい。
バイエルンのオケの高い機能と、精緻さも、ここでは良すぎるように感じる。
なんだか、誉めてるんだか、けなしてるんだかわかんないけど、要は立派すぎる演奏なんだ。
だから、音は素晴らしく、現代的なパーフェクトな演奏という意味では文句なし。
でも、好漢ハーディング君、もっと踏み外してもよかったかも。
そんな風に、悩んだ風にジャケットに収まってないで、もっと暴れてみてよ。
今日は、多忙のせいか気が乗りきれずに聴いたせいもあるかもしれず、再度、気分のいい時に晴れやかに聴いてみたいですな。
また印象が変わるかもしれませぬ。
新日フィルとの共演も多く、定期的に聴けるようになったハーディングだから、この耳で確かめてみなくちゃいけませんね。
ちょっと位置を変えて、けやき坂の望む。
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コメント
こんにちは。
ハーディング、来年の新日でついにメインにあの曲(英国物)で登場ですね。海外での過去のプログラムを見てもコンチェルトの伴奏以外は英国物はとても少ないようです。
どんなふうになるのか予想がつきませんね。こりゃナマで聴かねばなりますまい!と、意気込む私です。
投稿: Tod | 2011年2月 9日 (水) 15時39分
Todさん、こんにちは。
情報ありがとうございます、早速チェックしました。
まさかの、あの曲!
その意外性にびっくり。
彼もまた英国人であったことに気が付きました(笑)
でも、師匠の英国人は、変奏曲以外はやりませんね。
来年ですが、ワーグナーとともに楽しみです。
投稿: yokochan | 2011年2月10日 (木) 10時11分