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2011年3月18日 (金)

ハウェルズ 「楽園讃歌」 ハント指揮

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震災から1週間。
今日、3月18日の午後4時半くらいの東京タワーです。
きれいに晴れたけれど、冬を思わせる肌寒さ。
ゆえに、空がとても澄んできれいでして、薄雲もしっかり見えるところが、停電の影響下にある稼働半ばの首都の空を思わせます。

ともかく人が少ない。
朝のラッシュは本数が少ないから、混雑としては変わらないけれど、帰宅は分散し、明日からの連休もあって、早めの帰宅が多いみたい。

でも、この連休。
子供たちの春休みもからんで、脱出組が東京駅や羽田は混雑しそうだ。
お父さんを置いて、プチ疎開であります。
 仕事仲間が、どうしても中国に飛ぶ用事があるというのに、フライトは高いチケットがかろうじて残っているのみという。
財なした方々が大挙して帰国。
お隣韓国も同じ状況。

時節柄、よせばいいのに、わたしも誘われましたが断りました。
歌舞伎町へ飲みに行きましたそうな。
ところが、韓国系のお店は、ほとんどお休み。
脱出であります。
それほどまでに揺らいだ安全神話。
東北・関東はデンジャラスなのでありましょうか。


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東京タワーの先っぽ。
曲がっちゃいました。
同期のわたくしもいち早く、いろいろと曲がってます・・・・。

大きな企業や組織の大系のなかには、それぞれの役回りがあって、そうした体系のもと、その冠たる企業ネームが、一体として保たれている。
全部とはいえませぬが、大企業に籍を置く方々に、組織上関係ないのは末端の現場。

大元の組織からは、直系の関係会社がまずあって、その下に、その関係会社の子会社、さらに、その子会社から委託された実務を請け負う会社。

その最後の会社=人が、現場を張る人々。

大企業中心の日本のシステムは、そうなっているものと思います。

東電とて同じこと。
連絡や意思のストレートな疎通が、もしかしたらそこなわれていたのでななかったのでしょうか。表面的にしか見てなくて、こんなこと書いて、事実でなければ申し訳ないと思います。
 
 しかし、この1週間、日本のシステムそのものが、どうみてもそうなってるとしか思えません。
表に出てくるのは、冠をかぶった方々。
死を決して、ロシアンルーレットのような立場に追い込まれているのが現場の方々。
会見に出てらっしゃる方々も、本心で必死に仕事をされていると思いますが、現場感覚はないと思う。

現場から組織のトップまでの曲折を、きっと日本は、今後、町や村の感覚でもって、この教訓をもとに解決・前進させてゆくことになり、また強くなっていくのか、と期待します。

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イギリスの作曲家、ハウェルズ(1892~1983)の、「楽園讃歌」。
第二次大戦を、その生涯にはさんだ人で、戦火もさることながら、1935年最愛の息子をポリオで43才にして亡くしてしまい、心の傷を得てしまった人である。

そんな辛い思いを神への思いへと昇華させ、1938年に完成させたのが「楽園讃歌」で、6部からなるレクイエムなのだ。
ところが、この作品は、自身の「秘なるドキュメント」として公開を拒むハウェルズによって封印され、1950年、RV・ウィリアムズの勧めでもって、ようやく初演された作品なのであす。

英語もときおり交えたラテン語の聖句によるレクイエム。

心に突き刺さるくらいに切実な音楽は、ハウェルズの音楽をずっと聴いてると、共通のものがある。
かなりシビアで真面目な感じだけれども、そこには抒情とモダンな和声とのせめぎ合いが感じられ、傷ついた人の心の襞をひたひたと、そして静やかに埋めてくれるような優しさがあるのでありました。

ハウェルズは、かの悲劇があってから、どちらかというと宗教の人というイメージが強いが、本日、かくなる日本の状況を踏まえて聴くと、悲劇を受け止め、その先の何かを求める短調のハーモニーの中ながら、強いメッセージを発信する作曲家と聴くことができた。

英国合唱音楽の司祭のようなハントとロイヤルフィル、そしてロンドン近郊の3つの合唱団のコーラスに独唱者。
つつましくも、すばらしく力強い演奏でした。

この作品がまったく大好きなわたくし。
ヒコックスの演奏が、だれがなんといおうと素晴らしすぎる。
この系統の音楽ジャンルのなかでも、トップクラスで好きなハウェルズの作品なのでした。

 「ヒコックスの楽園讃歌」

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コメント

ハウェルズのこの傑作を私はまだ知りません。
ヒコックスにしようかハンドレーにしようか迷いながら1年以上経ってしまいました。
今日ハウェルズの「弦楽オーケストラのための協奏曲」という曲の2楽章を聴いて静かに過ごしました。息子さんとエルガーに対する追憶にために書かれた楽章らしいですね。

投稿: Tod | 2011年3月22日 (火) 21時40分

Todさん、こんばんは。
ハンドレーのCDは、まだ聴いたことがないのです。
素晴らしい作品ですので、贅沢ですが、手に入る音源はどれも聴いておきたい思いです。
ご指摘の弦楽の協奏曲も、モダンと古典の相まった雰囲気のいい曲ですよね。

ハウェルズは、フィンジにも通じる、抒情派に思います。

投稿: yokochan | 2011年3月23日 (水) 22時01分

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