東京交響楽団新潟定期公演 大友直人指揮
新潟市の文化会館「りゅーとぴあ」。
いつもお世話になってますIANISさんにお誘いいただき、日曜日に新潟へ行ってまいりました。
お目当ては、東京交響楽団の新潟定期公演。
英国ものですから。
そして、美しい「りゅーとぴあ」のホールトーンで聴けるのですから。
パヌフニク 交響曲第3番「祝典交響曲」
(シンフォニア・サクラ)
ラヴェル ピアノ協奏曲
Pf:上杉 彩子
スタンフォード 交響曲第3番「アイリッシュ」
大友 直人 指揮 東京交響楽団
(2011.2.27@りゅーとぴあコンサートホール)
ヤナーチェックのあの曲ですよ・・との開演前のIANISさんのご指摘のとおり、そうだったポーランドの作曲家パヌフニク(1914~91)の1963年作曲の交響曲。
フルオーケストラの4隅に陣取ったトランペット奏者4人のみによるファンファーレで始まる第1部。爽快な出だしで、ホールもすぐに温まり響きが心地よい。
3つに分かれる第1部は、最後はフルオケの大強奏。
そして、第2部は、グレゴリオ聖歌、それもポーランドで親しまれていたという聖歌がピアニッシモで、それもごく静かに奏でられ、その繰り返しが徐々に各パートに広がり、やがて全オーケストラのフルサウンドになって華々しく曲を閉じる。
非常に聴きやすい音楽ではあるももの、最後のくだりなんてのは、非常にベタなやりくちで、そうですか・・・ってな感じもありました。
パヌフニクは、交響曲を10曲も残しているそうで、試しにほかも確認したくもあります。
こうした曲を頭にもってきたけれども、私を含めた聴衆は、もの珍しさを通りこして、曲にしっかり反応しておりましたし、それは最後のスタンフォードでも同じこと。
したり顔の東京の聴衆よりも、音楽に対するどん欲さといいましょうか、しっかり聴いてやろう的な雰囲気が感じられました。
演奏も的確で、キビキビしたものでしたね。
オケの人数を刈り込んで、次はラヴェル。
前の曲といやでも比べてしまうとわかる、その格の違い。
ラヴェルには、敵いませんな。
小編成で、管などは、1管。
それでいて、あの鮮やかな色彩感。
音の煌めきが違いますよ!
ラヴェルのすごさが引き立ってしまった前半でありました。
上原さんのピアノは、なかなかに落ち着いたもので、第2楽章をオケの方に思い切り体を向けて聴きあいながらしっとりと弾くさまなどは、バリバリ弾くイメージがあった彼女の新境地でありましょう。
この楽章は、それにしても美しいのです。
コールアングレのソロと、楚々としたピアノに涙ぐんでしまいました。
ちなみに、わたしの大むかしの結婚式で選んだ音楽のひとつが、この楽章なのでございました・・・・。
東響の管や打楽器の方々は、皆さん腕達者でして、ソロのたくさんあるこの協奏曲のオケの大切さが、こうしてライブで観て聴くと実によくわかる。
休憩中にIANISさんと、ラヴェルその人を絶賛しながらアルコール注入。
いい気分で、スタンフォード(1852~1924)であります。
7曲あるスタンフォードの交響曲は、ハンドリー&アルスターの全集を持っていて、何度か聴いていたけれども、どれもが同じような顔をしていて、唯一の特色はといえば、アイルランドのブラームスだな、という点のみの印象しかなかった。
今回は、「アイリッシュ・シンフォニー」を何度も何度も聴いて耳にすっかりなじませて本番に挑んだので、その印象はかなり明確になったとともに、こんないい曲だったんだ、と思いを新たにした次第なのです。
そして、ここでも素晴らしかったのは、聴衆の集中力。
うつらうつらしている方は、まったくいらっしゃいません。
曲が終わると、熱い拍手とブラボーに包まれたんです。
とりわけ素敵な楽章が、3楽章のアンダンテ・コン・モトの緩徐楽章。
これぞ、アイリッシュ。まさにアイリッシュハープをイメージさせるハープの清冽で夢見るようなソロから始まり、アイルランド民謡をモティーフとした郷愁をそそる旋律が木管で奏でられる。これは、「庭の千草」に似てると思った。
「The Lament of the Sons of Usnacht」(ラメントは嘆き、Usnachtは地名でしょうか?)
バックスもこの民謡で曲を作ってるようです。
その旋律を下支えするホルン。そのホルンモティーフが徐々に形を変えて出てくると、これはもうブラームス。
クライマックスでは、第4交響曲(ブラームスの)第2楽章なのです。
しかし、それはあるとしても、ともかく美しく儚い。
これは、ブラームスでも、ブルッフでもシューマンでもない、アイルランドを愛する作曲家スタンフォードの作品なのです。
古典的な佇まいのきっちりした1楽章は、流麗な第2主題が美しく気にいった。
リズムが面白い2楽章はスケルツォ楽章で、妙にクセになる。
快活で、終楽章としてのククリが見事な4つめの楽章。
ここでもふたつのアイルランド民謡が用いられていて、その奏法が1番(ブラームスの)の終楽章のようにはればれとしているものだから、どうしてもブラームスチックに思ってしまう。
その民謡は、「Molly McAlpin」と「Let Erin remeber the days of old」のふたつ。
しかし、ここで鳴るフィナーレは、勝利や暗から明といったドイツ的なものでなく、先に記したとおり、やはりアイルランドの風物や空気が織り込まれた清々しいもので、爽快そのもの。
くどいくらいのエンディングの和音の繰り返しも、どこか微笑ましいものでありました!
東京公演を経て、しかも遠征最後の曲となると、指揮の大友さんも、東響もその力の入れ具合と曲へののめり込みぶりは尋常でなく感じられ、これは素晴らしい名演でした。
曲はあまり知られてなくても、熱意と愛情あふれる演奏に、聴衆の意気込みでもって、名曲へと昇華され、盛り上がってしまうという典型です。
いい演奏会でした。
広々とした空間のホールロビー。
こんな贅沢空間は、首都圏ではありえません。
札幌のキタラにも似てる。
ホールの様子。
見た目も、その響きも美しいのでした。
終演後は、このホールをあとに・・・・。
もちろん、おいしい日本酒でございますよ
そちらは、また次回に。
IANISさん、どうもお世話になりました。
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コメント
yokochanさん、お疲れ様でした。遅くまで済みませんでした。お仕事に差し障りございませんだしたか?
全く未知数の音楽でも演奏するほうと聴衆の意気込みがマッチすると、「いい音楽」になるものですね。
しかしまあ、yokochanさんといつもいっているショップのSさん(その方も私と同じ苗字。そしてクラヲタ会の皆さんも私と同じ苗字の方が大勢いらっしゃいますそうで)の影響で、ケクランとロパルツ、ダンディの蒐集一段落したこともあって、どんどんイギリスにはまりそうです。恐ろしい話であります。フィンジ、ラター、ブリテン・・・。音楽の底なし沼状態です。
投稿: IANIS | 2011年3月 1日 (火) 00時29分
IANISさん、こちらこそどうもお世話になりました。
よい酒は、翌日に残りません。
元気に帰京し、日常を過ごしてます。
それにしても、いい演奏会でした。
それでも、サロメは、頭から離れませんが、スタンフォードも併行して鳴っております。
英国音楽の探訪は、すでに長いですが、まだまだ未知の作品がたくさんあります。
どうぞ、底なし招待状を受け取ってください(笑)
投稿: yokochan | 2011年3月 1日 (火) 01時13分
『ウィーンフィルが東日本大震災の追悼演奏をして観客と共に1分間の黙祷をした』とNHKのニュースでやっていました。追悼曲がモーツァルトだったのは???でしたが、やはり被災し家族を失った僕にとっては感動的なニュースでした。
今も避難所で悲しみと被ばくの恐怖に震えています。
僕は大友直人と東京交響楽団のファンで、昨年4月4日、遥々東北から東京の芸劇に被ばく二世の作曲家佐村河内守の交響曲第一番“HIROSHIMA”を聴きに行きかつてない感動を得ました。あまりの感動に8月14日の秋山和慶と京響の演奏を聴きに京都まで行きました。もちろん大友直人と東響のほうが素晴らしかったです。
大友直人と東京交響楽団で佐村河内守の交響曲第一番“HIROSHIMA”の全曲演奏を期待しています。
祈りの大交響曲である佐村河内守の交響曲第一番“HIROSHIMA”こそ被災した僕たちに今最も希望をもたらす曲であると信じています。
投稿: 辰之 | 2011年3月21日 (月) 15時25分
辰之さん、被災地にあられ、しかもご家族を失われたとのこと。
適切な言葉もなく、どうお見舞いを申し上げいいのかわかりません。
音楽を通じ、メッセージをお送りすることしかできません。
ウィーンフィルの報道は、いまほど確認しました。
バレンボイムの弾き語りだったのですね。
そして、素晴らしくも、すごい音楽と、その作曲家を逆にお教えいただきました。
youtubeで、佐村河内氏の人となり、そして交響曲の第3楽章を聴きました。
感動で、鳥肌が立ちました。
そして、涙が出ました。
わたしは、大友さんは、英国音楽ばかりで追いかけておりましたが、こうした音楽を広く紹介してゆく真摯で誠実な音楽家に思います。
そして、まだ未聴の祈りの大交響曲を是非にも聴きたいと思うとともに、辰之さまが、おっしゃるとおり、希望をもたらすこの音楽が皆さまを勇気付けるものと、わたくしも思い、微力ながらyoutubeをリンクして、記事にしたいと存じます。
寒さもまだ厳しいようですし、物資の不足も心配ですが、どうか気持ちを強くお持ちになってお過ごしになられるようお祈りしてます。
投稿: yokochan | 2011年3月21日 (月) 17時14分