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2011年4月24日 (日)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 金聖響 指揮

Minatomirai

雨の土曜日、月一回の神奈川フィル定期に行ってきました。
近未来風の光景は、みなとみらい駅へ続くコンコース。

前回の定期は、震災のすぐ翌日
あの日、あの時、そしてあの曲でなければできなかった壮絶きわまりない音楽体験だった。
マーラーの6番を聴きながら、脳裏にはテレビで見た津波のすさまじい映像が、何度も訪問したことのある東北各地の風景や人々が、それぞれに浮かんできて、それはもう生涯忘れることができない演奏会だったと思われます。
100人のオーケストラと700人の聴衆が一体となってしまったエモーショナルな出来事。

あれから40日。

同じマーラーでも、今回は不思議な明るさをともなった第7番。
救済から復旧。
そう、日常生活の復元へと向かう日本を後押ししてくれる音楽であり、そんな前向きになれる素晴らしい演奏が展開されたのでありました。

20110423

  バッハ   管弦楽組曲第3番より「アリア」

  マーラー  交響曲第7番「夜の歌」

     金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                コンサートマスター:石田泰尚
                   (2011.4.23@みなとみらいホール)

マーラーに入るまえに、弦楽だけで演奏されたバッハ。
心をこめた丁寧なアリア。
目をつぶって聴いていたら、あまりの美しさに悲しくなってしまって涙が出てしまった。

本編マーラーは、これまで聴いてきたこのコンビのマーラー演奏のトレンド上に位置する、素直で爽快なもので、神奈川フィルの持ち味の美音のシャワーを80分間にわたって浴びつくした思いであります。
7番を実演で聴くのは、これが初めて。
以前、若杉さんの演奏会のチケットを手にしながら、発熱でふいにしてしまった因縁の曲。
   
 CD で聴くのと大違いの、断トツの面白さ。普段お目にかかることのない楽器が、あちこちに出てくるし、ソロもたくさん、いろんな奏法もたくさん。
なんでもありのマーラーの典型みたいな曲だから、実際に目で見ながら聴くのが楽しい。

 素直な演奏だから、7番という曲の良さが今更ながらに、よくわかった。
番号を追って聴き進むことも、とても意義深くて、グループ分けできるそれぞれの番号が、グループを超えて互いに密接だったり、ターニングポイントになっていたり、というようなことも解ってくる次第だ。
声楽を伴わない純粋交響曲として、5、6、7番は仲間同士だし、旋律の関連性もある。
そして、7番にはその次ぎのオペラのような「千人の交響曲」への橋渡しが感じられるし、「大地の歌」「9番」、表現主義音楽、無調などへの扉も感じられる。
 そんなことを思いつつ聴くことができた。

幻想味豊かな第1楽章。テノール・ホルンの存在感にうれしくなりつつ、徐々にテンポと活力を上げてゆく場面のかっこよさにワクワク。
第1楽章からして大興奮のワタクシ。
野生的であり、神聖でもあり、柔和でもあり、激情的。
そんな音楽のジェットコースター的な起伏を、聖響さんは気負わずに自然に描いておりました。外から聴こえるカウベルの音は、ちょっと弱め。
 夜曲のはじめの第2楽章。夜の行進曲ともいわれるが、各楽器間の橋渡しが絶妙で、退屈しがちのこの楽章がとっても楽しく聴けた。
 暗い影が時おりサッとよぎるかのような不思議な舞踏曲のような3楽章だけど、中間部の木管の明るい響きはこのオケならではだし、明快なヴィオラソロ、チェロ軍団のおおらかな歌い口。いろんなことがあって、これまた面白くてしょうがなかったんです。
 夜曲ふたつめの第4楽章は、わたしの大好きな楽章。
寝る前にナイトキャップみたいにして聴くこともあります。
ここにおいて、神奈フィルの透き通るような美しい音色が最大に楽しめたのです。
できれば、この演奏を持って帰ってナイトキャップの定番としたいくらい。
石田コンマスの華奢だけれど存在感たっぷりソロに始まる、うっとりするくらいのセレナーデは、この日の演奏の白眉でありました。
こんなオケを指揮できる聖響さんも幸せそうにしてましたよ。
ちょっと遠めだったけれど、愛らしいギターとマンドリンの音色まで神奈フィル化していて、うれしい限り。
でも、そんなほのぼのムードの中にも、ときおり不安な表情が入り込んでくるのがマーラーらしいところ。
 一転、晴れやかムードにつつまれる第5楽章は、もう何も考えずに思い切り大突進。
何度も何度も、姿かたちを変えて繰り返されるロンド主題、その色分けを明確に描きわけるところまではいま一歩。
でも、こんな明るく輝かしい終楽章の演奏もあってもいい。
最後に、第1楽章のあの主題が、高らかに響きわたると、感動で、全身に鳥肌が立ってしまいましたよ。
痛快で、ワタクシも、ひとつ吹っ切れたような思いでございます。

ジャン!と終わって、ホールはブラボーの嵐。
力を使い果たしお疲れムードの指揮者とメンバーたちでしたが、充実・大満足の表情でした。

7番は、マーラーの感情やとりまく環境の要素、そのすべてのごった煮みたいな音楽だから、演奏によって聴こえ方が全然違ってくる。
聖響&神奈フィルの「7番」は、音楽にあまりのめり込まずに、適度に外側にいながらも、実に美しい音色で奇矯なマーラーの響きを包みこんでしまったような不思議に魅力あふれる演奏でした。
次に7番をやるときは、また違う顔を描きだすことでしょうね。

5月は、いよいよ「第9」です。
いまから期待と不安(?)の思いです・・・・。

Noge_banri1

アフターコンサートは、ゲストにもいらっしゃっていただき、いつもの店で、興味深いお話を聞かせていただきながら、いつもと同じものを飲んで食べて、楽しく過ごしました。

そして2軒目は、野毛にある中華料理店で、紹興酒。

Banri

しかし、よく食べ、よく飲むのであります。
正しき経済活動。
皆さま、お世話になりました。

 マーラー 7番の過去記事

「アバド&シカゴ交響楽団」

「テンシュテット&ロンドン・フィルハーモニック」

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コメント

yokochanさん、ご一緒できなくて残念でした。僕は3回目の第7。アマチュア→群響(トリフォニーの地方オケ・フェスティヴァルで)→今回。で、3回目でやっと引っかかりました。特に第1楽章とフィナーレ、よかったです。真ん中3つの楽章、もそっと毒があってもいいとは思いますが、神奈フィルの響きの性格からすれば、あのような、地中海の夕べの音楽でOKです。
フィナーレのコーダなんぞは、神奈フィルから轟音がとどろきましたね。やっぱ7番は、ああでなくっちゃいけません。ちなみに、指揮者待ちから拍手があった直後までで78分15秒でした。スピーディな演奏でしたね。7番は、変に粘っても仕方ありません。粘るんだったら、クレンペラー位におどろおどろしくあるべしと思っております。
来月の第9は、気合を込めて参上いたします。その節はアフターのお付き合い、私も同行させてくださいませ。

投稿: IANIS | 2011年4月24日 (日) 16時34分

今年度の聖響マーラーも快調な滑り出しだったようですね(^^)

神奈川フィルであの第4楽章だけでも聴きたかった!
聴いていなくても素晴らしいことは簡単に想像がつきます。

ちなみに僕は、この曲は飯森&東響の実演とたまたま手元にあるシノーポリ&フィルハーモニア管弦楽団のCDを聴いてるんですが、全然印象が違いますね。
聖響さんのあまりのめり込まない演奏が特にピッタリ合いそうな気がします。

投稿: syllable | 2011年4月24日 (日) 18時49分

IANISさん、こんばんは。
昨日は遠征お疲れさまでした。
神奈フィルならではのマーラーを聴いていただき、とてもうれしかったです。

踏み込みは弱めですが、彼らのマーラーはこんな感じで、わたしにはとてもお似合いのマーラーなのです。

来月の第9も、だいたい予想はつきますが、きっと楽しめるものと思います。
楽しみにお待ちしております。

投稿: yokochan | 2011年4月24日 (日) 21時10分

syllableさん、こんばんは。
やはりですよ、やってくれましたよ。
そして、そう、あの4楽章は絶品だったのです。

7番は、いろんな演奏を受け入れる、多面的な表情をした交響曲に思います。
聖響さんは、いまはあっさりでも、いずれまた異なる7番を聴かせてくれるかもしれません。

投稿: yokochan | 2011年4月24日 (日) 21時45分

今晩は。金さんと神奈川フィルのマーラーもとうとう7番まで来ましたね。私は7番はライブで聴いたことが無いので記事を拝読して聴きに行きたかったなーと思いました。確かに特殊な楽器や奏法がたくさん登場するビジュアル的にも凄く面白い交響曲ですよね。私は自室の小さな装置でちまちまと聴くことが多いですが・・・中学3年生の時に当時出たばかりだったレニーとニューヨーク・フィルの新盤を小遣いをはたいて買い、嘗め回すように何度も何度も聴きました。長大な全曲のどの部分も好きです。楽天的な終楽章を「映画のタイトルミュージックみたいだ」とこき下ろした学者さんもおられますが、私は終楽章も大好きです。粘るのならクレンペラーくらい粘って欲しいという私と同郷の方のご意見はごもっともだと思います。でも私は軟弱で根気が無いから途中で「重たい!」と弱音をはいてしまうかな・・・快速演奏なら約72分で全曲を演奏しているクーベリック盤が好きです。オケの技量も音質も指揮者の解釈も申し分ありません。最近はマーラーの交響曲だとクーベリックの6番と7番、それにバルシャイ編曲・指揮の第10番が好きです。

投稿: 越後のオックス | 2011年4月24日 (日) 23時49分

先日は遅くまでお付き合いさせてしまい申し訳ありません。
それにしても、この曲がこんなに美しく聴けることがあるなんて思いもしませんでした。
そしていろいろ考えたこともあるんですが、私のこの曲の認識を変えないといけないくらい素晴らしい美しさであったと思いました。
なんだか得難い体験をしているような気になってきます。
そしてそんな演奏を一緒に分かち合える事をとても嬉しく思います。
今度は9番、どうでしょうか。
楽しみです。

投稿: yurikamome122 | 2011年4月25日 (月) 18時46分

越後のオックスさん、こんばんは。
神奈川フィルのマーラーは、あと8、9、10、大地の4曲を残すのみです。
ただし、今回のチクルスでは、9番のみ。
ほかの指揮者でやった1番は、来年。
ここまできたら、残りの作品や歌曲ももろとも演奏して欲しいですし、マーラーの周辺音楽と新ウィーン楽派も。
しかし、このあたりになってくると観客動員という問題にぶちあたることになるわけです。。。。。

7番は、わたしはレニーのCBS盤のエアチェックと、ギ0レンN響から入り、レコードはレヴァイン、CDはアバドと盤歴を重ねました。
こんかいの演奏会で、7番が俄然面白くなり、あれこれ聴き比べました。
しかし、この神奈フィルがいまのところ一番に思います。

投稿: yokochan | 2011年4月26日 (火) 00時06分

yurikamomeさん、こんばんは。
先般もどうもお世話になりました。
豪華ゲストはうれしかったですね。

7番という曲の不可思議さと魅力をこの演奏で味わうことができたことが、とてもうれしいです。
そして、おっしゃるように「美しい!」
あれを聴いちゃうと、音源が物足りないです。
第9も大いに楽しみです。
また、よろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2011年4月26日 (火) 00時09分

管理人さんおはようございます。


土崎までいらしてたとは驚きました。
広い話題とレパートリーは旅人からですね。。


神奈川フィルさんのように身じかに応援できるオケがあるにはとても羨ましいです。クラに同郷で一緒に演奏した森川さん頑張ってますね…誠実な方です!是非宜しくお伝え下さい。


こちらはプロの団体はありませんが地元のアマチュアは地域に愛され、全国でもトップlevelの活動続けてます。
タンドゥンの交響曲天地人を演奏しますが、中国の久石譲だそうです。

投稿: マイスターフォーク | 2011年5月15日 (日) 06時01分

マスターフォークさん、こんにちは。
土崎、秋田港は、そんなわけで、イメージがあります。
いまは、なかなか遠出ができませんが、おかげさまで、見聞だけは広がりました。

神奈川フィルの森川さんとは、ご同郷なのですね!
わたしは直接の面識はございませんが、会員の集いなどで、お会いできましたら、是非にお伝えいたしたいと存じます。
 そして、なるほど、ダンドゥンですね。
不勉強で、ダンドゥンはちょろ聴きしたのみですが、聴きやすい音楽でした。
よき演奏会となりますこと、お祈りしております。

投稿: yokochan | 2011年5月15日 (日) 23時35分

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神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第271回定期演奏会 公演日:2011年04月23日(土) 開場:13:20 開演:14:00 会場:横浜みなとみらいホール 指揮:金聖響 マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」  私のこの曲の体験の中でも印象深いものとなった。  先ずは弦楽器だけで、いつもは勿体ぶって出てくるコンマスも一緒にステージに出て、聖響さんのスピーチのあとの「G線上のアリア」は被災地へ捧げられる。  透明な弦で美しい演奏だった。  聖響さんのスピーチであった... [続きを読む]

受信: 2011年4月25日 (月) 18時43分

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