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2011年4月11日 (月)

モーツァルト 「皇帝ティトゥスの慈悲」 ウェルザー・メスト指揮

Chidorigafuchi

まだ桜が咲く前の3月はじめの「千鳥ヶ淵」。
このお堀の先が皇居。
わたしは、ときどき海外のネットラジオで音楽を流しているが、ドイツの放送のニュースでも、日本の話題がのぼることが多い。
出てくる単語は、「ツナミ」「フクシマ」「エダノ」「ナオト・カン」など。
そして、ついに「カイザー・アキヒト」も登場した。
天皇にあたるドイツ語は、「Kaiser」ということになる。
意味合いは大幅にかわって、象徴としての天皇なんだけど、Kaiserとくると、より高貴で勇ましく聴こえるから只事じゃないね。
 でも、今回ばかりは、テレビに向かって玉音のごとく語りかけるお姿に、避難所を訪問されるお姿に、国民誰もが威厳と安らぎを覚えたに違いない。
役割が異なるとはいえ、おろおろする政治家たちとは大違い。

そして、日曜は、統一地方選挙。
静かな選挙戦ゆえ、再選と無難候補者の当選が目立ちます。
これもしょうがないねぇ。
地方の長や議員の方々には、言い逃れのできない立場という強い認識のもと、リアルな立場に立って行政を取り計らっていただきたい。
都の老獪も、常識の範囲のなかで、国をけん制しながら、強い権限を正しく行使していっていただきたい。

そして、月曜も止むことない余震が続いている。
ほんとにほんとにもう、勘弁してほしい。
余震域が南下してるのも気になる。


La_demenza_di_teto
モーツァルトの最後のオペラ「皇帝ティトゥスの慈悲」。
今日はDVD観劇。
モーツァルト最後の年、1791年の作品のうちのひとつ。
同年には、27番のピアノ協奏曲、その旋律の歌曲、アヴェベルム・コルプス、グラス・ハーモニカの作品、弦楽五重奏、クラリネット協奏曲、魔笛、レクイエム・・・・、などが書かれている。
これら晩年の作品には、死の影とともに澄み切った境地を映し出していて、わたしたち音楽好きの誰もがもっとも大切にしている音楽の数々だと思う。
 このティトゥスも、その晩年様式にあるといえるけれど、人気の点でいまひとつ。
そしてアリアとメロディの宝庫ともいえるが、どこかよそよそしい。
生真面目なオペラ・セリアということもある。
それと、動き少なめの単調なドラマにありか。
それが、ダ・ポンテやシカネーダのようなひらめきがない台本で増長しているかも。
でも、音楽は素晴らしく素敵なもの。
クラリネット協奏曲と同じフレーズも聴きとれる。
そして、そのクラリネットをともなうセストとヴィテーリアの二つのアリア、そして2幕のセストのアリアが絶品。

   ティトゥス:ヨナス・カウフマン   ヴィテーリア:エヴァ・メイ
   セスト:ヴェッリーナ・カサロヴァ セルヴィリア:マリン・ハルテリウス
   アンニオ:リリアナ・ニキテアヌ  プブリオ:ギュンター・グロイスベック

  フランツ・ウェルザー-メスト指揮 チューリヒ歌劇場管弦楽団/合唱団
               演出:ジョナサン・ミラー
                         (2005.6@チューリヒ)

AC間もないローマ。実在のローマ皇帝ティトゥス・フラヴィウス・ヴェスパジャーヌスの物語。

第1幕

3
 
先代皇帝の娘ヴィテーリアは、現皇帝ティトゥスの妃になるものとばかり思っていたら、選ばれたのは異国の娘。嫉妬に怒ったヴィテーリアは、自分に思いを寄せる皇帝の親友セストをたぶらかせて皇帝暗殺を計画。

4

しかし、一転、異国の娘を去らせた報が入り、喜ぶ・・・、もつかの間今度は、セルヴィリアが選ばれる。またも怒るヴィテーリアは暗殺実行を指示。
彼女は、セストの妹で、これも皇帝の友アンニオのいいなずけ。
アンニオは耐え忍ぶも、彼女はティトゥスにアンニオとのことを直訴し、皇帝も納得。
二転三転して、ようやく妃にヴィテーリアが選ばれるも、すでに宮殿は暗殺グループが放った火によって大騒動に・・・・・。

第2幕
 
 殺されたのは影武者で、ティトゥスは無事。
実行犯として、セストが告発され元老院は猛獣場での処刑を言い渡し、ティトゥスは臣下のプブリオから処刑認可のサインを求められるが、親友を信じるティトゥスはセストとの面談を望む。
ふたりになり、真相を求めるティトゥスに動機を語らない頑ななセスト。
やむなく処刑を認めざるを得ないティトゥスだが、いまだに躊躇している。
自分のことを一切語らなかったセストに対し、良心と罪の呵責にとらわれ、自白する決心をするヴィテーリア。
一堂の前に出たティトゥス。
セストの処分を表明するが、そこにヴィテーリアが飛びだしてきて、自身の罪の告発をするので、ティトゥスは、二人による裏切りに、茫然とし意気消沈となり運命を嘆くが、意を決し、二人を許し、自分は慈悲に生きることを宣言して

 なんだか、いいんだか、悪いんだかわからない内容です。
妃ひとり選べず、こんな優柔不断でありながら、慈悲に生きた皇帝。
そんなティトゥスをうまく描いた演出が、このジョナサン・ミラーのもの。
ミラー演出は、いつも品があって、そして人物の掘り下げがうまいものだから、予想外の展開はないものの、納得感の残る舞台が多い。
新国のばら騎士やファルスタッフは名舞台。

5

時代設定を1930年代のイタリアに置き換え、ティトゥスと部下のプブリオは、民衆の前では軍服姿の軍人。
ほかの友人男性は、びしっとスーツ姿。
女性は、モード風ドレス。
みんなオサレなんです。
舞台セットも単品であるが、回廊をうまく使った美しいもの。
レシタティーヴォを語りで行ってドラマ性を高めている。

9

女が男を演じる今の時代には倒錯感あるこのオペラ。
誰が男で、誰が女かわからなくなる。
わたしの穿った見方かもしれないが、この倒錯感を演出にも巧みに持ち込んでみたのではないかと思う。
徹底して慈悲深い訳でもないティトゥスは、優柔不断で、ころころと心が変わる。
セルヴィリアを見つけると、猫なで声でその名を呼んだりして、観客の失笑を買う。
おまけに、美人でしっかりもののセルヴィリアにすっかり手玉に取られてしまう。
いつも、お傍に控えるプブリオがティトゥスを見る目が熱い。
セストの処刑のサインを強く求め、最後にその意に添いそうになると喜びを隠せない。
おまけに、妃候補のヴィテーリアの罪の暴露と、急転直下でアンニオとセルヴィリアを結びつけ、そしてセストとヴィテーリアをも結びつけるティトゥス。
ティトゥスは、プブリオに、「これでいいんだろよ、え?」てな仕草をする。
もしくは、「どうだ、見ろ、俺のお慈悲を」という風にもとれる。
厳格なる部下のブブリオは、こんな裁定がまったく気に食わない顔ともとれる。

なんともいろんな風に読み取れる最終場面なのでした。
悩み多き孤独な治世者の不運といったところでしょうか。

この上演は、適材適所、名歌手が集まりました。
なかでも、相変わらず顔が怖いけれど、完全に男役になりきったカサロヴァは、お得意の役に、これまた、すんばらしすぎの歌唱。
お顔が怒りや苦悩で歪んでしまう美女エヴァ・メイの真っすぐでクリアな歌唱。
おどおどと目線さえ泳ぐ名演技のカウフマン、力強さとリリカルな美声をこれでもかと堪能。
6

美人・美声のハルテリウス、すっきりくっきりのニキティアヌ、深みのある美声のバス、ロイスベック(今年バイロイトにタンホイザーのヘルマンでデビュー)。

2

メストのテキパキとしたスピーディで敏感かつ鋭敏な指揮に、チューリヒのオケが歯切れよく応えていてオケも聴きごたえ充分。
ウィーンに転出したメスト。
そのあとは、ガッテイとルイージ。
チューリヒ・オペラは、今後も安泰。

11

ところで、23時36分現在、11日月曜の震度1以上地震の回数はなんと「77」。
いつも微妙に揺れているようで、体がおかしい。
容赦ない自然に、なすすべもない。
余震も原発も、早く終息して欲しいです。

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コメント

お早うございます。私も一昨日このDVDを鑑賞しました。私がウェルザー・メストのファンになるきっかけになったディスクです。モダン楽器オケを指揮しながらもピリオド的なスパイスも効いた序曲からしてもうノックアウトされました。名歌手たちの歌に見事な伴奏をつけているのにも脱帽です。カウフマンは軍服もスーツもとてもカッコイイですね。私は古典派オペラのレシタティーヴォが何故か苦手なのでそれを敢てセリフにしてしまったのにも好感がもてました。
 昨日の余震は怖かったし、「またかよ」とウンザリもしました。
 余談ですがナクソスのヨハン・シュトラウス全集をアマゾンで注文しました。CD52枚という壮大な全集です。マルコ・ポーロ原盤ですが、ナクソスから再発されて、バラで買うよりも格段に安くなったので思い切って注文してしまいました。

投稿: 越後のオックス | 2011年4月12日 (火) 06時13分

こんばんは。「皇帝ティートの慈悲」はベーム、シュターツカペレ・ドレスデンの全曲版CDのみ。
今朝も余震がありました。携帯の緊急地震速報は2回キャッチ。まだ、揺れているような気がします。
私がいつも行っているハンバーガーショップなど募金箱の義援金が被災地に行き渡ってないと報道されています。一時の買い控えから今度は消費者のために支援する買い物を呼びかけています。
やはり、熱血セールスマンと言われた前宮崎県知事より石原氏が農作物や水を売り出した宣伝が効いたもか。
千葉は液状化問題や東京以上の大きな余震で大変かと思います。どうか、体に気をつけて下さい。

投稿: eyes_1975 | 2011年4月12日 (火) 20時38分

管理人さんこんばんは。

そうですね。クラリネット・オブリガ―ト付きアリアは確か数年前のニゥ―イャ―コンサートの中でウィーンが誇るエルンスト・オッテンザマ―の素晴らしい演奏で唸らせましたね。

メストとチュ―リッヒ歌劇場管のバックはザビ―ネマイヤ―の至芸との楽しめる録音もありますね。

投稿: マイスターフォーク | 2011年4月13日 (水) 00時21分

越後のオックスさん、こんにちは。
メストのティトゥスは、なかなかに鮮烈ですね。
従来の音源が少し緩めに感じてしまうくらいです。
チューリヒは、永年アーノンクールと共演を重ねてきただけって、その奏法もフレキシブルで堂に入ってました。

そういえばマルコ・ポーロのシュトラウス全集は懐かしいものですね。
ナクソスに鞍替えとなったのですね。
わたしは、大昔にボスコフスキーのデッカ録音のものを外盤で相当枚数揃えましたが、難点は、どこに何が入っているかさっぱり分からないことでした。
いまだに不明のまま20年が過ぎようとしております。

投稿: yokochan | 2011年4月13日 (水) 12時29分

eyes_1975さん、こんにちは。
ベーム盤はかっちりした名盤ですね。
ドレスデンが渋いです。
あと、デイヴィス、ケルテス、レヴァイン、アーノンクール、ガーディナーと名演が目白押しです。

それにしても余震が多すぎ。
先週後半から激しすぎます。
注意は怠れませんね。
そして、自粛から、どんどん消費しろと。
急に言われたって、これもまた困りものですが、東北の食材を選んで購入したいと思ってます。
千葉も揺れてますよ・・・・。

投稿: yokochan | 2011年4月13日 (水) 12時34分

マイスターフォークさん、毎度どうもありがとうございます。
ウィーンのクラリネットは、歴代素晴らしい奏者が続出してますね。
わたしは、あと、プリンツが懐かしいです。

ザビーネさまとメストの共演があるのですか?
それは失念しておりました。
ルツェルンでやってきたとき、まじかでお会いしたザビーネさまでした。

投稿: yokochan | 2011年4月13日 (水) 12時40分

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